大嫌いなアルファと結婚しまして

リミル

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【3話】好きになって恋をして

ちょっとしたデート2

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優生は久世家のアルファの跡取り息子なのに、倹約家だし持ち物も高いブランド物は持っていない。昔からそれが不思議だった。

優生の提案で、食べ放題付きの焼肉店へ行くことになった。そこはテレビなどで見かけるファミリー層や学生向けのチェーン店だった。基城達家族が通う店は、個室で年齢層も高く接待などに使われることが多いので、こういう場所は新鮮だった。

「すげぇ……! 肉もサラダもいくらでも食べていいのかっ?」
「食べきれる量にしなよ」
「分かってるって!」

ちょうど隣のテーブルでも家族連れの母親が、優生と同じ台詞を口にしていたので、基城は顔をしかめた。

肉の焼き方に、優生はいちいち口を出してくる。加熱が不十分だと何度も指摘され、美味しそうな焼き加減の肉は網の上に戻される。隣のテーブルでも、親と子供がまるで同じ攻防を繰り広げていた。

「俺いっつもこのくらいで食べてるけど?」
「それはレアでも食べられる新鮮な肉だからだよ。店によって違うからちゃんと焼いたほうがいい」
「へー」

基城の行きつけの店では、まず最初に薄切りのロース肉を頼んで、一〇秒ほど片面を焼いてから、大根おろしや卵黄のつけダレで食べる。
優生に教えられた通りに、中心まで火を通してから口に入れる。昼間は有坂と試験対策に勤しんでいたので、昼食は簡単に済ませていた。試験はまだこれからだが、腹が減っては戦はできぬ、だ。二人はしばらくの間無言でご馳走にありついた。

「はー……美味かった! あれだけ食ったのに会計、二人で一万円いかないとかすごくね? 予約なしで入れるしサラダもデザートも食べ放題だし」

はしゃぐ基城の側で、優生は「有坂が基城をよく遊びに連れ回す理由が分かった」と呟いた。

「なー、あれも寄ろう」

駅に向かおうとする優生の服の裾を引っ張り、基城は後方を指差した。
周りと比べて一際明るい光を放つ店内には、煩いくらいの音楽が漏れている。基城が寄ろうと誘ったのは、ゲームセンターだった。

UFOキャッチャーの景品の中に、大きな虎のぬいぐるみがあった。虎といっても可愛くデフォルメされたキャラクターだ。肉食獣なのにゆるい感じがギャップで、人気に火がついた。普段から基城はこぞってグッズを収集しているわけではないのだが、透明なガラスケースの中で一匹がぽつんと佇んでいる様子に胸を打たれた。

「なあ、可愛くね? これ」
「うん。基城、好きだった?」
「好きでも嫌いでも……って感じだったんだけど、こいつは可愛い」

優生はどういう意味か分からない様子で、首を傾げた。売り場にたくさん並んでいるなら、別に基城も心惹かれることはなかったが、最後の一匹なのかもと思うと、妙に家に連れて帰りたくなってくる。

ちょっと待って、と基城は優生を呼んだ。一〇〇円玉を入れると、ポップな音楽とともに、アームの操作が可能になる。
UFOキャッチャーは触ったことは何度かあるが、景品が取れたことは一度もない。
案の定、持ち上げることも叶わず、アームの爪がぬいぐるみの身体に食い込んでは抜けるだけだ。

投入金額が一〇〇〇円代に突入する頃、後ろで様子を見ていた優生が口を出す。

「どう?」
「全っ然びくともしねー」
「お金、全部入れる前に上限決めておいてね」
「分かってるって! あー、くそっ。ちょっと持ち上がったのに!」
「もうちょっと奥側じゃない?」
「持ち上がったんだから合ってるっつーの。じゃあ、お前がやってみろよ」

基城は硬化を入れると、アームの操作を優生に譲った。それはちょっとずれてるだろ……と、基城は降下するアームに言葉を投げた。が、ぬいぐるみの尻尾と後ろ足の間に上手い具合にアームの爪が食い込み、持ち上がっても安定している。

基城が数十回プレイしても取れなかった虎のぬいぐるみは、あっさり優生が取ってしまった。
落ちてきた虎を、優生が拾う。

「はい、基城」
「お、おう……」

感動が薄い基城に、優生は首を傾げる。

「……ありがと」
「えっ……? ど、どういたしまして」

向かい合って礼を言うと、何故か優生はぎこちない態度で返した。基城が顔を覗き込むと、絶妙に目線を逸らされる。

──優生のやつ。俺が嫌いだからって、そんな大人げない態度取るか? 普通。

景品をゲットできたのは優生のおかげだが、何だか煮え切らない。
ぬいぐるみの形が変わるくらいに、基城は抱く腕に力を込めた。

帰りの電車の中はいつもより人が多かった。浴衣姿の人もいて、そういえば、少し先の場所で花火大会があったな、と思い出す。

「俺ら、花火じゃなくてゲーセン行ってたな」
「花火行きたかった?」
「花火はいいや。絶対混むし。離ればなれになったら合流するの面倒くさいし……」

──って、何で俺は優生と行く前提で話してるんだ。

車内では基城達と同年代か、少し上の女性グループが優生のほうを指差して格好いい、と連呼している。酒を飲んでほろ酔いのようだった。
何を勘違いしたのか、優生はそれほど混み合っていない車内で、基城の身体を引き寄せる。

「なっ、なにっ!?」
「……基城がモテてたみたいだったから……嫉妬?」
「知らね。俺に聞くな。ていうかなぁ……」

モテてたのはお前だろ、と言おうとして、きつく飲み込んだ。それはそれで負けを認めているようで腹立たしかったからだ。
優生は気遣いできる男だと基城も承知しているが、肝心なところで大ボケをかましたりするのでよく分からない。

悪い方向の勘違いではないので、基城はあえて訂正しないでおいた。

「モテる友人を持って大変だなー。お前も」

冗談のつもりが深刻な表情をされて、言っているこっちが恥ずかしくなる。どぎまぎした気持ちを紛らわせるため、基城は少し上のほうの肩を拳で押す。自分のものよりも多少厚みがある身体は、少しも動かなかった。
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