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【3話】好きになって恋をして
ちょっとしたデート1
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──何だよ、あいつ。デレデレして。俺と違って四宮はオメガっぽい見た目だし華奢だし可愛いけどさ……。
好きになったのがたまたま四宮で、性別は関係ないかもしれない。そもそも、ずっと一緒に育ってきて、優生の性的趣向も知らない。有坂か誰かが、優生の好きなタイプとやらを聞いていたような気がするが、基城の記憶は曖昧で、どんな答え方をしたのかも覚えていない。
別れるとき、優生が振った手に四宮は自分のものを合わせた。一瞬だったけれど、目撃したほうの基城は、顔が熱くなる。
何も見ていないことにして通り過ぎればいい……心の中でそう唱えていたけれど、自然と足は止まっていた。
「……よう」
「あ、基城。有坂と一緒じゃなかった?」
「バイトがあるって先に帰った。……四宮と一緒に帰らなかったのか?」
口に出していると、ストーカーっぽい行動だなと気付いて、慌てて「さっき別れるところを見た」とつけくわえた。
「用事があるから一人でいいんだって」
「そっ……か」
──って、何ほっとしてんだ俺は。
「そこは一緒に帰ってやれよっ」
「え? 本人はいいって言ってるのに迷惑じゃ」
「お前本っ当分かってねぇな!? ちょっと強引に気遣ったほうがいいんだよ。……あー、お前ってちょっとだけ見た目はいいけど、そういうところ鈍感だな」
付き合ってないとは言っていたけれど、優生が四宮のことを意識しているのは分かる。でなければ、たまたま講義でグループが一緒になっただけで、接点のなかった二人が大学で頻繁に行動を共にするなんてあり得ないはずだ。
──四宮は高嶺の花なんだし、とっとと告白してフラれてしまえ。
そうなったら、ちょっとくらいは慰めてやってもいいと思っている。
「ま、今から追いかけてもダサいだけだし、しょうがないから一緒に帰ってやる」
「はいはい」
「あ、今日も買い出しに行くんだろ? 俺今日焼肉が食べた……」
「それなんだけど、寄りたいところがあるから、いい?」
「お、おう」
電車に乗り、優生に連れられて来たのは、中規模の商業施設だった。優生はスマホで目的地を調べ、基城もそれについていく。バース系のグッズが展開されている雑貨屋に着くと、優生はオメガのためのグッズを物色し始める。
──結構、人いるんだな……。
ほとんどがカップルの客で、体格が同じくらいの基城達は浮いている気がする。しかし、優生は、基城が感じている気まずさは微塵もないようだった。
アルファ同士で、恋人に送るプレゼントでも選んでいると思われている……と、信じたい。そもそも、優生が隣にいるから、視線がこちらに集中して何だか晒されているような感覚になる。さらに、優生はグッズ選びに夢中で無言だ。
「へー。いろいろあるんだな。置いておくだけでアルファが隣にいるような安心感……本当か?」
柔らかな表現でぼかされているが、オメガの発情期のためにつくられたアロマオイルだった。
こういったグッズを真剣に吟味したことがなかったので、新鮮だった。次々と手に取る基城の横で、優生が「四宮に教えてもらって」と呟いた。
「基城に何かしてあげられることないかなって思って。俺、基城の身体の状態とか分からないし」
「え、俺? 何で?」
優生に気遣われる理由が分からなくて、基城は素で聞き返す。どうやらオメガに転化した基城のために、ここへ連れてきたらしいと、遅れて理解する。
「俺、発情期がいつくるかも分からないし、医者もまだ数値では俺がオメガじゃないって言ってるし……」
「でも用意はしておいたほうがいい」
「うん……まあ、そうだな」
基城が気になったものはとりあえず買おう、と優生は言い、買い物かごはすぐに満杯になった。発情期の気持ちを落ち着かせる香料のアロマオイルや、腰の負担を軽減するクッションなど、今の状態で本当に使うのか、と疑問に思うようなものまで買い込んだ。
店員に「ご自宅用ですか?」と聞かれて、優生は即座にはい、と返事をしていた。基城は口をぱくぱくと開閉させた。その反応に気付いた優生は、ごめんと片手だけでポーズをした。
紙袋二つに別れた荷物を優生はどちらも持とうとしたが、基城が一つを引き受けた。
「非力扱いすんな」
「はいはい」
「じゃ、焼肉はお前の奢りな」
「基城から誘ったのに?」
「焼肉は俺だけど、これ買いに行くって言ったのはお前だろ。……まあ、ありがとう、だけど」
基城は紙袋を掲げて言った。最後のほうはほとんど声にならなかったので、伝わったかどうかは疑問だ。
「奢りって言うのも冗談。姉ちゃんから引越し祝いもらったからパーッと使おうぜ」
「お返しとかしたほうがいいんじゃ」
「優生に使わないと俺が怒られるんだぞ」
焼肉で豪遊しても使い切れなさそうなくらい資金はある。いつも家族と行っている店へ向かおうとしたところ、優生が難色を示した。
「……高くない? そこ」
「そうかぁ? 家族でよく行くけどな」
「基城の家はブルジョアだから」
「お前の家だって会社大きいだろ。一人っ子だし多少我儘言っても怒られないから羨ましい。俺んとこなんか、アルファの姉三人だぜ? ストレスで胃がおかしくなりそー……」
「基城ってストレス感じることあるんだ」
「どういう意味だよ、それ。ひしひし感じてるわ!」
好きになったのがたまたま四宮で、性別は関係ないかもしれない。そもそも、ずっと一緒に育ってきて、優生の性的趣向も知らない。有坂か誰かが、優生の好きなタイプとやらを聞いていたような気がするが、基城の記憶は曖昧で、どんな答え方をしたのかも覚えていない。
別れるとき、優生が振った手に四宮は自分のものを合わせた。一瞬だったけれど、目撃したほうの基城は、顔が熱くなる。
何も見ていないことにして通り過ぎればいい……心の中でそう唱えていたけれど、自然と足は止まっていた。
「……よう」
「あ、基城。有坂と一緒じゃなかった?」
「バイトがあるって先に帰った。……四宮と一緒に帰らなかったのか?」
口に出していると、ストーカーっぽい行動だなと気付いて、慌てて「さっき別れるところを見た」とつけくわえた。
「用事があるから一人でいいんだって」
「そっ……か」
──って、何ほっとしてんだ俺は。
「そこは一緒に帰ってやれよっ」
「え? 本人はいいって言ってるのに迷惑じゃ」
「お前本っ当分かってねぇな!? ちょっと強引に気遣ったほうがいいんだよ。……あー、お前ってちょっとだけ見た目はいいけど、そういうところ鈍感だな」
付き合ってないとは言っていたけれど、優生が四宮のことを意識しているのは分かる。でなければ、たまたま講義でグループが一緒になっただけで、接点のなかった二人が大学で頻繁に行動を共にするなんてあり得ないはずだ。
──四宮は高嶺の花なんだし、とっとと告白してフラれてしまえ。
そうなったら、ちょっとくらいは慰めてやってもいいと思っている。
「ま、今から追いかけてもダサいだけだし、しょうがないから一緒に帰ってやる」
「はいはい」
「あ、今日も買い出しに行くんだろ? 俺今日焼肉が食べた……」
「それなんだけど、寄りたいところがあるから、いい?」
「お、おう」
電車に乗り、優生に連れられて来たのは、中規模の商業施設だった。優生はスマホで目的地を調べ、基城もそれについていく。バース系のグッズが展開されている雑貨屋に着くと、優生はオメガのためのグッズを物色し始める。
──結構、人いるんだな……。
ほとんどがカップルの客で、体格が同じくらいの基城達は浮いている気がする。しかし、優生は、基城が感じている気まずさは微塵もないようだった。
アルファ同士で、恋人に送るプレゼントでも選んでいると思われている……と、信じたい。そもそも、優生が隣にいるから、視線がこちらに集中して何だか晒されているような感覚になる。さらに、優生はグッズ選びに夢中で無言だ。
「へー。いろいろあるんだな。置いておくだけでアルファが隣にいるような安心感……本当か?」
柔らかな表現でぼかされているが、オメガの発情期のためにつくられたアロマオイルだった。
こういったグッズを真剣に吟味したことがなかったので、新鮮だった。次々と手に取る基城の横で、優生が「四宮に教えてもらって」と呟いた。
「基城に何かしてあげられることないかなって思って。俺、基城の身体の状態とか分からないし」
「え、俺? 何で?」
優生に気遣われる理由が分からなくて、基城は素で聞き返す。どうやらオメガに転化した基城のために、ここへ連れてきたらしいと、遅れて理解する。
「俺、発情期がいつくるかも分からないし、医者もまだ数値では俺がオメガじゃないって言ってるし……」
「でも用意はしておいたほうがいい」
「うん……まあ、そうだな」
基城が気になったものはとりあえず買おう、と優生は言い、買い物かごはすぐに満杯になった。発情期の気持ちを落ち着かせる香料のアロマオイルや、腰の負担を軽減するクッションなど、今の状態で本当に使うのか、と疑問に思うようなものまで買い込んだ。
店員に「ご自宅用ですか?」と聞かれて、優生は即座にはい、と返事をしていた。基城は口をぱくぱくと開閉させた。その反応に気付いた優生は、ごめんと片手だけでポーズをした。
紙袋二つに別れた荷物を優生はどちらも持とうとしたが、基城が一つを引き受けた。
「非力扱いすんな」
「はいはい」
「じゃ、焼肉はお前の奢りな」
「基城から誘ったのに?」
「焼肉は俺だけど、これ買いに行くって言ったのはお前だろ。……まあ、ありがとう、だけど」
基城は紙袋を掲げて言った。最後のほうはほとんど声にならなかったので、伝わったかどうかは疑問だ。
「奢りって言うのも冗談。姉ちゃんから引越し祝いもらったからパーッと使おうぜ」
「お返しとかしたほうがいいんじゃ」
「優生に使わないと俺が怒られるんだぞ」
焼肉で豪遊しても使い切れなさそうなくらい資金はある。いつも家族と行っている店へ向かおうとしたところ、優生が難色を示した。
「……高くない? そこ」
「そうかぁ? 家族でよく行くけどな」
「基城の家はブルジョアだから」
「お前の家だって会社大きいだろ。一人っ子だし多少我儘言っても怒られないから羨ましい。俺んとこなんか、アルファの姉三人だぜ? ストレスで胃がおかしくなりそー……」
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