大嫌いなアルファと結婚しまして

リミル

文字の大きさ
29 / 36
【6話】気持ちの変化

あたたかな祝福2

しおりを挟む
「……入れば?」

何故か部屋の入り口で固まっている優生に、そう声をかけた。こわごわとした仕草で、優生は床の上に座る。

「優生は俺の部屋、来たことなかったっけ?」
「中学以来かな」
「あー……そっか。高校から外で遊ぶこと多くなったもんなぁ」

神崎一家の視線がなくなり、優生は少しほっとしている様子だった。基城は「お疲れ」と言って、何度か肩を揉んでやる。

「姉ちゃん強烈だっただろ?」
「うん、まあ……同じアルファだけど、プレッシャーがすごかった。お義姉さんを敵に回したら生きていけない」

基城と同じ感想を言う優生の顔は、少し疲れているようだった。基城は客用の敷き布団をベッドの横に敷き、優生に休むよう言った。

「まだ九時なのにもう眠い」
「だね」

話題に上がるのは中高の話だった。ついこの前流行ったものが五年前や八年前なのが信じられない。基城はベッドの上で横になり、視線が少し下の優生に話しかける。

「基城」

落ち着いた声で名前を呼ばれ、基城は口を閉ざした。薄いタオルケットの下に侵入してくる手。薄闇の中で基城の手を見つけると、指の隙間を埋めるように繋いだ。

「あったかい」
「……寒いのか?」
「そうじゃなくて。人肌がいいなって言いたかった」
「ふぅん?」

同じベッドで寝ていたのに、優生はまるで初めて手を繋いだみたいに感慨深く呟く。
基城は優生の手をぎゅっと繋ぎ直した。

「別に優生の手、冷えてないけどな」
「うん……まあ、そうなんだけど」

言いたいことがあるならはっきり言えよな。そう言えたかどうか分からない。久しぶりの実家に安心して、すぐに眠気がやってくる。

「ちび達、可愛かったな」
「うん。琴音ちゃん、小さいのにしっかりしてるよね」
「俺達もあんなふうに赤ちゃん産まれて、大きくなったら喧嘩とかすんのかなー」
「え……う、うん。いつか」

先祖返りして姉達みたいな子供が産まれたら、それはそれで大変そうだ。でも、優生相手だと大人しくなるので、優生に頑張ってもらうしかない。

「優生が赤ちゃんの面倒見て、掃除して洗濯してご飯つくる」
「それだと身体がいくつあっても足りない」
「俺が姉ちゃんの下で働くから、優生は家にいればいいじゃん」
「基城が出産するのに、俺が働かないのは非現実的かも」
「そうかぁ? ま、そのときになったら考えればいいか」

繋いだ手を握り返される。人肌がいいと言う優生の言葉を噛み締めながら、眠りに落ちていった。


……────。


夏が終わる頃に、エアコンの修理業者を騙る人達が来て、基城はついセールスか何かだと勘違いして追い返しそうになった。「数ヶ月前に予約を入れてもらった……」と説明されて、ようやく思い出すくらいには、自室の壊れたエアコンのことなど忘れていた。

あれほど何度もリモコンを操作してもつかなかったエアコンは、ものの数十分で動くようになった。せっかく直してもらったが、今は過ごしやすい秋口なので、出番は少ないだろう。

「排水口に溜まった埃が原因なんてな。はあぁ……バカみてぇ」
「まあでも、俺達にはどうしようもできなかったし」

無事に直ったものの、使う機会はもう少し寒くなってからだ。

「基城、もう食べないの?」
「んー……もう今日は寝とく」

後期は講義のコマを詰め込み過ぎて、身体がついていかない。自分の食べた後の食器だけを片付けて、基城は処方された抑制剤を飲んだ。抑制剤は何種類かあり、オメガはそれぞれ自身の体質に合う薬を試してみて、生涯それを服用する。

けれど、発情期は生理的な現象なので、全ての症状を抑えられるわけではない。基城の場合は、転化したばかりでフェロモンはまだ薄く、薬でアルファが検知できないほどに抑えられている。

厄介なのが、発情期に訪れる性的欲求だ。

──あー……やば。今回のは、ちょっとキツイかも……。

自室の扉が完全に閉まっていることを確認し、基城は履いているものを脱ぎ捨てた。

「ん……んん……っ」

下着は後孔から溢れる、とろりとした蜜ですでに濡れていた。
隣の部屋には優生がいるが、理性は働いてくれない。一度刺激してすっきりさせようと、基城は自身へと手を伸ばした。
前も後ろも濡れていて、不快さに眉毛を寄せる。

「あ、あっ……ん」

早く達しようと手を早めれば、声が漏れてしまう。優生の手だったらすぐに気持ちよくなれたのに、絶頂までは程遠い。

「……っ」

思いきって蜜を垂らす後孔へと指を添える。身体がオメガへと変化してから、そこは性器と同じように感じる場所へと変わった。
熱で潤んだ入り口は、第一関節くらいまでなら、二本の指を簡単に飲み込んだ。
縁を撫でるだけで甘苦しい電流が、身体中を駆け巡る。擦るように指を動かすと、「きもちいい……」と独りでに声が漏れ出ていた。

「基城……? ……え、あ、えっと」
「……ゆうせ……!? ば、バカ……!」
「ノックはしたんだけど……」

優生はしどろもどろに言い訳をする。そんなの、こっちに聞こえなかったら言い訳にもならない。涙の膜が張った瞳で、優生を強く睨んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる

さち喜
BL
優等生・聖利(ひじり)と校則破りの常習犯・來(らい)は、ともに優秀なアルファ。 ライバルとして競い合ってきたふたりは、高等部寮でルームメイトに。 來を意識してしまう聖利は、あるとき自分の身体に妙な変化を感じる。 すると、來が獣のように押し倒してきて……。 「その顔、煽ってんだろ? 俺を」 アルファからオメガに転化してしまった聖利と、過保護に執着する來の焦れ恋物語。 ※性描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※2021年に他サイトで連載した作品です。ラストに番外編を加筆予定です。 ☆登場人物☆ 楠見野聖利(くすみのひじり) 高校一年、175センチ、黒髪の美少年アルファ。 中等部から学年トップの秀才。 來に好意があるが、叶わぬ気持ちだと諦めている。 ある日、バース性が転化しアルファからオメガになってしまう。 海瀬來(かいせらい) 高校一年、185センチ、端正な顔立ちのアルファ。 聖利のライバルで、身体能力は聖利より上。 海瀬グループの御曹司。さらに成績優秀なため、多少素行が悪くても教師も生徒も手出しできない。 聖利のオメガ転化を前にして自身を抑えきれず……。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

巣作りΩと優しいα

伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。 そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

俺は完璧な君の唯一の欠点

一寸光陰
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。 そんな彼にも、唯一の欠点がある。 それは、平凡な俺に依存している事。 平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

溺愛アルファは運命の恋を離さない

リミル
BL
運命を受け入れたスパダリα(30)×運命の恋に拾われたΩ(27) ──愛してる。俺だけの運命。 婚約者に捨てられたオメガの千歳は、オメガ嫌いであるアルファのレグルシュの元で、一時期居候の身となる。そこでレグルシュの甥である、ユキのシッターとして働いていた。 ユキとの別れ、そして、レグルシュと運命の恋で結ばれ、千歳は子供を身籠った。 新しい家族の誕生。初めての育児に、甘い新婚生活。さらには、二人の仲にヤキモチを焼いたユキに──!? ※こちらは「愛人オメガは運命の恋に拾われる」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/590151775/674683785)の続編になります。

処理中です...