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1章
16 side ギィ
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不安そうな様子や不慣れな様子を見せながらも、与えられた物には礼を言い、こちらを気遣う素振りも見せる子ども。
周囲に慈しまれ真っ直ぐ育ってきたのだろう。
時間が経つにつれて元来の朗らかな性格も見えてきた。
一度も帰りたいと言わないのは、帰れない事情故だろうか。
決して泣き事を言わず、必死に己を鼓舞して振る舞う様には胸の奥を掴まれる気がした。
元々冒険者には庇護欲の強い者が多い。己の力を、持たぬ者の為に使いたい者がなるものだからだ。強さを極めたい者は兵になる。
カイトには庇護欲だけでなく、それまで他者に感じたことのない独占欲も感じ始めていた。
慣れぬ移動に疲れたときに縋られる相手は己でありたいし、涙を耐えて蹲る夜に胸に抱えて慰めを与えてるのは己以外であってはならないと思う。
自身の想いに忠実に少々強引にでも距離を詰めると、幸いカイトは受け入れてくれたようだ。
出会ったときの逃げられっぷりを思うと今のカイトの打ち解けぶりに頬が弛む。
後の心配はカイトの目の問題だが、幸い魔王には解決の目処があるらしい。
「ギィもルークもさすがの上位冒険者よね。未知の事態にもしっかり考えて迂闊なことをしてなかったからカイトの状態はあの程度で済んでるのよ。よかったわー。
サトは自分で色々試してボロボロになってたからね」
カイトが嬉しそうに風呂に行った後、魔王は今後の話をすると言って俺たちを引き留めた。
当然一緒に風呂に行くつもりでいたのだが、カイトがいない内に話した方がいいことがあるのだろうと渋々座り直す。
「そのサトと言う人とカイトは本当に同郷なんでしょうか。魔力がない国というのは確かにそうないものと思いますが…」
「サトとカイトが同郷なのは間違いないと思う。これまでも魔力のない国から人が飛ばされてきたことはあったようよ。とは言えわたしもサトより前の事例については文献で知っただけ。
サトがこちらに来て5年程度でカイトが来てることを考えると、2人の国に何か起こって飛ばされる人が増えているのか、これまでも2人のような頻度でこちらに来ていたのに見つからなかっただけか。見つかるまで生き残れなかった可能性もあるわね」
サトも危なかった訳だしね。と魔王は小さく呟いた。
宿木の下で蹲っていたカイトの姿が思い出される。連れて来て本当によかった。
「ま、今はカイトよ。
カイトがどうしたいかは別として、貴方達はカイトをどうするつもりなの?」
魔王の問いに不意に緊張を覚えた。ヘタな返答をしたらこのままカイトに会えなくなりそうだ。
「カイトは帰れない事情があるようだ。こちらで1人で暮らしていくつもりでいるらしいが、カイトが許してくれるなら俺がカイトを守り、穏やかに暮らして欲しい」
「魔力のない者が街で暮らしていくのは大変よ?」
「わかっている。俺にある全てでカイトを支えていく覚悟はできている」
「あーあ、俺もカイト気に入ってんだけどなぁ。ギィ、お前、俺も交ぜろって言っても「断る」…だよなぁ」
自分だけ仲良くなりやがってとブツブツ言ってるルークは無視だ。
カイトは俺が守る。
「ふーん。ヤル気は認めるけど、今の貴方じゃ力が足りないわよ?圧力を跳ね返しきれないでしょう?
魔力なしの珍しさに、素直で若くて見目も良いとなるとどんな筋から声をかけられるかわからないし、もっと力がないと守りきるのは難しいわよ。自覚あるでしょ?」
わかっている。
もっと力が必要だ。
足りないことは重々承知の上でそれでも諦めきれない想いを乗せて真っ直ぐ魔王と視線をあわせる。
しばらく視線を受け止めていた魔王は、カイトに見せていた朗らかな微笑みとは全く違う、揶揄うような意地悪そうな顔をしてニヤリと笑った。
「カイトが魔力に慣れてこちらで暮らしていけるようになるまでは、ウチで預かるからね」
「なっ!
カイトの面倒は俺が…」
「ギィが仕事している間カイトはどうなるの?1人でお留守番?それともあちこちカイトを連れ回すつもり?
魔力に慣れるには3ヶ月かかるか1年かかるか、ともかく時間が必要だし、ここは安全よ?」
何よりわたしが居るんだし?と続く言葉に言い返せない。
横からルークが肩を叩く。ゆっくりルークを見ると無言で首を振っていた。
ギィのショック受けた顔、面白いー。と嗤う魔王を横目に、俺は少しでも早くカイトを迎えに来れるようにするための算段を必死で立て始めた。
周囲に慈しまれ真っ直ぐ育ってきたのだろう。
時間が経つにつれて元来の朗らかな性格も見えてきた。
一度も帰りたいと言わないのは、帰れない事情故だろうか。
決して泣き事を言わず、必死に己を鼓舞して振る舞う様には胸の奥を掴まれる気がした。
元々冒険者には庇護欲の強い者が多い。己の力を、持たぬ者の為に使いたい者がなるものだからだ。強さを極めたい者は兵になる。
カイトには庇護欲だけでなく、それまで他者に感じたことのない独占欲も感じ始めていた。
慣れぬ移動に疲れたときに縋られる相手は己でありたいし、涙を耐えて蹲る夜に胸に抱えて慰めを与えてるのは己以外であってはならないと思う。
自身の想いに忠実に少々強引にでも距離を詰めると、幸いカイトは受け入れてくれたようだ。
出会ったときの逃げられっぷりを思うと今のカイトの打ち解けぶりに頬が弛む。
後の心配はカイトの目の問題だが、幸い魔王には解決の目処があるらしい。
「ギィもルークもさすがの上位冒険者よね。未知の事態にもしっかり考えて迂闊なことをしてなかったからカイトの状態はあの程度で済んでるのよ。よかったわー。
サトは自分で色々試してボロボロになってたからね」
カイトが嬉しそうに風呂に行った後、魔王は今後の話をすると言って俺たちを引き留めた。
当然一緒に風呂に行くつもりでいたのだが、カイトがいない内に話した方がいいことがあるのだろうと渋々座り直す。
「そのサトと言う人とカイトは本当に同郷なんでしょうか。魔力がない国というのは確かにそうないものと思いますが…」
「サトとカイトが同郷なのは間違いないと思う。これまでも魔力のない国から人が飛ばされてきたことはあったようよ。とは言えわたしもサトより前の事例については文献で知っただけ。
サトがこちらに来て5年程度でカイトが来てることを考えると、2人の国に何か起こって飛ばされる人が増えているのか、これまでも2人のような頻度でこちらに来ていたのに見つからなかっただけか。見つかるまで生き残れなかった可能性もあるわね」
サトも危なかった訳だしね。と魔王は小さく呟いた。
宿木の下で蹲っていたカイトの姿が思い出される。連れて来て本当によかった。
「ま、今はカイトよ。
カイトがどうしたいかは別として、貴方達はカイトをどうするつもりなの?」
魔王の問いに不意に緊張を覚えた。ヘタな返答をしたらこのままカイトに会えなくなりそうだ。
「カイトは帰れない事情があるようだ。こちらで1人で暮らしていくつもりでいるらしいが、カイトが許してくれるなら俺がカイトを守り、穏やかに暮らして欲しい」
「魔力のない者が街で暮らしていくのは大変よ?」
「わかっている。俺にある全てでカイトを支えていく覚悟はできている」
「あーあ、俺もカイト気に入ってんだけどなぁ。ギィ、お前、俺も交ぜろって言っても「断る」…だよなぁ」
自分だけ仲良くなりやがってとブツブツ言ってるルークは無視だ。
カイトは俺が守る。
「ふーん。ヤル気は認めるけど、今の貴方じゃ力が足りないわよ?圧力を跳ね返しきれないでしょう?
魔力なしの珍しさに、素直で若くて見目も良いとなるとどんな筋から声をかけられるかわからないし、もっと力がないと守りきるのは難しいわよ。自覚あるでしょ?」
わかっている。
もっと力が必要だ。
足りないことは重々承知の上でそれでも諦めきれない想いを乗せて真っ直ぐ魔王と視線をあわせる。
しばらく視線を受け止めていた魔王は、カイトに見せていた朗らかな微笑みとは全く違う、揶揄うような意地悪そうな顔をしてニヤリと笑った。
「カイトが魔力に慣れてこちらで暮らしていけるようになるまでは、ウチで預かるからね」
「なっ!
カイトの面倒は俺が…」
「ギィが仕事している間カイトはどうなるの?1人でお留守番?それともあちこちカイトを連れ回すつもり?
魔力に慣れるには3ヶ月かかるか1年かかるか、ともかく時間が必要だし、ここは安全よ?」
何よりわたしが居るんだし?と続く言葉に言い返せない。
横からルークが肩を叩く。ゆっくりルークを見ると無言で首を振っていた。
ギィのショック受けた顔、面白いー。と嗤う魔王を横目に、俺は少しでも早くカイトを迎えに来れるようにするための算段を必死で立て始めた。
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