五人の賢者 〜白の王と黒い竜〜

玉美-tamami-

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第8章:明らかになる真の敵

5:ロドネス・ブラデイロ

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「私の名はロドネス・ブラデイロ。五大賢者の一人、常闇の主と呼ばれる闇魔法の使い手だ。それが……、ある事件がきっかけで、黒竜の姿から人へと戻れなくなり、このような場所で、長い間ずっと……」

 魔導師ロドネスだと名乗った女は、悔しそうに下唇を噛みしめた。

「やっぱり、黒竜ダーテアスは、魔導師ロドネスさんだったんですね!」

 リオが、嬉しそうな声を上げる。

「君達は……、五大賢者の弟子……、と言ったか?」

 リオ達五人を、順番に見つめるロドネス。

「はい! 僕はリオ! クレイマンさんの弟子のリオです!」

 リオは、誰よりも早く自己紹介した。

「初めまして、魔導師ロドネス様。自分は、魔導師ケットネーゼの息子で、マンマチャックと言います」

 ぺこりと頭を下げるマンマチャック。

「お初にお目にかかります、魔導師ロドネス様。私は、神風の使い手、魔導師シドラー様の弟子、エナルカです」

 緊張はしているものの、なんとか早口にならずに言えたエナルカ。

「俺はジーク。レイニーヌの弟子だ。それで……、どうしてあんたは、こんな場所で、黒竜の姿になってたんだよ?」

 臆することなく話すジークに対し、マンマチャックとエナルカは、もう少し丁寧に話しなさい! と言いたげな目を向ける。

「話せば長くなる……。少し、場所を変えようか」

 ロドネスは、手の平に描かれた魔法陣を使って、何もない目の前の空間に、黒い光を帯びた闇の渦を生み出した。

「この先は、私の創り出した異空間へと繋がっている。ついてきなさい」

 そう言ってロドネスは、黒い闇の渦の中へと入って行ってしまった。

「すっごい! 空間魔法っ!?」

 目をキラキラとさせて、黒い渦を見つめるリオ。

「まさか……、こんな事ができるなんて……」

 マンマチャックは息を飲み、その小さな目を見開かせる。

「五大賢者の中でも魔導師ロドネス様は、飛びぬけて魔力に満ち満ちたお方であったと、師であるシドラー様より聞いいたけれど……。遥か昔に失われたはずの空間魔法を使えるだなんて、信じられないわ」

 エナルカは驚きの余り、そう言った後も口が開いたままである。

「こりゃあ……、よっぽどの理由があるんだろうぜ? 中に入ってみるか」

 そう言ってジークは、珍しく緊張した面持ちで、黒い渦の中へと足を踏み入れた。
 ジークに続き、マンマチャック、エナルカも渦の中へとその姿を消した。

「テスラ、僕たちも行こう!」

 どこかぼんやりとした表情で立ち尽くしているテスラを、わくわくした表情で見上げるリオ。
 しかし、テスラは返事をしない。

「テスラ? どうかした?」

 テスラの服の裾をつんつんと引っ張って、リオはテスラの気を引こうとする。

「あ、あぁ……、ごめんなさい。あまりにその……、感情が……。今までこんなに、何度も泣いた事がなくて……。なんだかちょっと、疲れたというか……」

 そう言ったテスラの目元は確かに、母である魔導師ロドネスと再会できた喜びに涙した事によって、少しばかり赤く腫れている。
 リオは、テスラの二つの瞳が、右は血のような赤色なのに対し、左は深い水底のような青色である事がとても不思議で、ジーっとその目を見つめた。
 だがしかし、今はそれ以上に、目の前にある黒い渦の中へと足を踏み入れたいのである。
 リオは、ぼんやりしているテスラの手を、そっと握った。
 テスラはそのリオの行動にとても驚くが、決して嫌がったり振りほどいたりはしなかった。

「ほら、行こ! テスラのお母さんの話を聞かなくちゃ、ね?」

 リオの言葉に、テスラは小さく頷いた。
 二人は一緒に、ロドネスが創り出した黒い闇の渦の中へと、足を踏み入れた。





 黒い闇の渦の先は、小さな小部屋へと繋がっていた。
 木製の板が張られた床には絨毯が敷かれ、煉瓦造りの壁際には様々な魔導書がぎっしりと詰まった本棚が立ち並んでいる。
 天井からは小さなシャンデリアがぶら下がっており、中央には小さいながらも品の良いテーブルと椅子が五脚あって、奥の壁際にはリオ達が見た事も聞いた事もないような、様々な魔導具が並べられたガラス扉の飾り棚が設置されていた。

「好きな場所へかけておくれ」

 そう言うとロドネスは、魔法で別の椅子をどこからともなく取り出して、腰掛けた。
 言われるままに、椅子に座る五人。
 あまりに異質な状況と、自分達の師以外では初めて会う五大賢者のその一人を前にした事で、皆が一様に緊張し、何を話せばいいのか、何を尋ねればいいのか、考えあぐねていた。

「何から話せばいいのか……、私も少々混乱しているのでね……。テスラ、君は今、歳はいくつになった?」

 不意に問い掛けられたテスラは、どぎまぎしつつも、

「あ、えと……。今年で、十五歳に、なりました」

 少し恥ずかしげな様子で、そう答えた。

「十五歳か……。随分と長い間、私は竜化の術が解けずにいたらしい……。先ほどまでの私は、私ではなかった。あまりに長い時間、竜化していた為に、昔の記憶はおろか、自分の本当の姿でさえも忘れかけていた」

 頭を抱えるロドネス。

「あの……、聞いてもよろしいでしょうか?」

 マンマチャックが、遠慮がちに切り出した。

「十五年前……、テスラが生まれた日の夜、いったい何があったのですか? 自分たちが知っている事実と、本当に起こった真実は、違う気がしてならないのです」

 マンマチャックの言葉に、ロドネスは首を傾げる。

「君たちは、何をどのように聞いているのだ? そもそも、君たちはここへ何をしに来た? どうして……。君たちの師は、今どこにいる?」

 ロドネスの問い掛けに、五人は押し黙る。
 五人が五人とも、何をどう説明すればいいのか、悩んでいた。
 するとリオが、いつもの調子で話し始めた。

「僕の師であるクレイマンさんは、邪悪なる力の呪いによって、異形な生物達にその身体を喰い荒らされ、死に至りました。その他の五大賢者の方々も、みんな様々な呪いによってこの世を去りました。弟子である僕達は、師に、五大賢者を探せと言われて旅をして……、王都で出会いました。そして、国王の命令で、邪悪なる力の根源だと考えられている黒竜ダーテアスを打ち滅ぼす為に、ここまで来たんです。だけと……。旅の途中でテスラに、黒竜ダーテアスは魔導師ロドネスさんであり、テスラのお母さんだと聞かされました。だから僕達は、戦わずに話をしようと決めて、今、ここにいます」

 思いのほか、上手く要点をまとめて話したリオに対し、マンマチャックはとても感心したし、ジークはニヤリと笑って、エナルカは目をぱちくりさせて驚いた。
 テスラは、母であるロドネスをジッと見つめて、次なる言葉を待っていた。

「そうか、彼らは……、私の友はもう、皆この世を去ったのだな……」

 ロドネスは、少しばかり悲しげな表情でそう言って、テーブルの上に視線を落とした。
 そして、心を整えるかのように、ふ~っと息を吐くと、話し始めた。
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