最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★ピタラス諸島第二、コトコ島編★

315:火傷

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「ワーーープッ!!!」

   いつもの掛け声と共に、導きの腕輪と石碑を使って、俺たちは紫族の東の村へと戻った。
   テレポートした先は、勉坐の家の勝手口から繋がる、いろんな植物が植わっているあの小さな庭だ。

   実は昨日……、毒郎の起こした反乱、及び混乱に乗じて、サクッと石碑を建てておいたのです!
   もしかすると役にたつかも知れない、なんて……、俺の中の野生的勘が珍しく働いたのである!!
   我ながら、なかなか機転が効いていたなと褒めてあげたい!!!

「ここは……、ベンザさんの家ね? さすがモッモ!」

   グレコに褒められて、俺はちょっぴり照れる。

「凄い、本当に一瞬で……?」

   信じられないといった表情で、目をパチクリさせる砂里。

「ほんじゃまぁ、騎士団のみんなと合流して、シガキって爺さんとも会わないとな!」

   そう言って、勝手口に向かって歩き出すカービィ。
   すると、ガチャリと音がして、扉がひとりでに開いたかと思うと……

「ぬ? おぉ、カービィ。それに、グレコにモッモまで……。ここで何をしておる?」

   何故だか頭に三角巾のような布を巻き、白い割烹着のような服を着て、手には木製のザルを抱えたギンロが、家の中より現れた。

 なんでギンロがここに?
   ……てか、何その格好??
 メイドにでもなったわけ???

「ぶはっ!? ギンロおまいっ!?? なんだその格好!??? だはははははっ!!!!!」

   堪らず笑い出すカービィ。
   グレコも、あまりに衝撃的なギンロの姿に、プッと小さく吹き出した。

「むむ? 何故笑うのだ?? 今、中で皆を介抱している故、これが最適解の格好であるぞ???」

   若干顔をしかめつつも、笑うカービィとグレコを無視して、ギンロは庭を横切り、何やら植えられている葉を丁寧にむしり始めた。

「え……、千切っていいのそれ?」

   勉坐に怒られるんじゃ……??

「この薬草は火傷に効くのだと、ベンザ殿に教わったのだ。キユウ殿が苦しんでいる故、追加せねば……」

   ふむ、勉坐が教えたのか……、ならいいか。

「喜勇様が? ……そんな、まさか!?」

   慌てた様子で砂里は、開かれたままの勝手口の扉から、家の中へと駆けて行った。

「火傷っておまい……。ギンロ、何があった?」

   カービィの言葉に、ギンロは葉をむしる手を休めずにこう言った。

「ベンザ殿の命令で火山へと向かったキユウ殿たち三人は、何者かに襲われたのだろう……、頂上付近で倒れておったのだ。皆、全身に火傷を負い、重症だ。なんとか我とベンザ殿で村へと連れ帰ったのだが……。エクリュ殿の白魔法をもってしても、あの怪我では長くは持たぬやも知れぬ」

   えっ!? 火傷!??
   長くは持たぬって……、死んじゃうってこと!?!?

「なるほど、そういう事か……。よしっ! おいらがちょっくら見てやろうっ!!」

   腕まくりをして、ニンマリと笑うカービィ。

「……頼むぞカービィ。ベンザ殿が涙する姿を、我はもう見たくない」

   いつにも増して声が小さいギンロにそう言われ、力強く頷いたカービィは、ズンズンと家の中へと入って行った。

「モッモ、私たちも行きましょう」

   グレコに促され、一心不乱に葉をむしるギンロをその場に残して、俺も家の中へと入った。







   勉坐の家の中は、以前は感じなかったはずの血の臭いと、生き物が焼け焦げたような臭いで溢れかえっている。
   あまりの異臭に、俺は顔をしかめつつ、グレコに続いて家の中を歩き……
   玄関扉からすぐの大部屋に、彼等はいた。

「そん、な……、酷い……」

   その光景を見て、グレコも俺も言葉を失う。

   巨大な木の囲炉裏を囲うようにして、不規則に置かれた即席の簡易ベッドの上には、勉坐の部下である喜勇とその他二名が横たわっているのだが……
   三人共、顔も体も全てを包帯でグルグル巻きにされ、荒い呼吸をしながら呻き声を上げている。
   体に巻かれた包帯は、元々茶色いものなのか、それとも血が滲んで茶色くなったのか……
   辺りを漂う血と焦げた臭いは、間違いなくこの三人から発せられているものだ。
   彼等の傍には、必死の形相で薬草をすり潰すエクリュと、三人を看病するインディゴとメイクイの姿があった。

「喜勇様……、どうしてこんな事に?」

   喜勇のいるベッドの隣に立ち尽くし、呆然とその変わり果てた姿を見つめる砂里。
   
「うしっ! エクリュ、手伝うぞっ!!」

「え……、あっ!? カービィさんっ!?? あぁっ、良かった! 僕一人じゃもう、どうすればいいのかとっ!!」

   カービィの登場に、緊張の糸がほどけたのか、エクリュは半泣きになり、インディゴとメイクイはホッとした表情になった。

「情けねぇ声を出すんじゃねぇようっ! そんな顔見られたら、ノリリアに首にされっぞ!? 白魔導師たるもの、いついかなる時も冷静であれっ!!! ほれ、ちゃっちゃと治すぞ~♪」

   そう言うとカービィは、ローブの内側から杖と魔導書を取り出し、目を閉じて……

最大級メギストス 治療セラピア

   静かに呪文を唱えると、白い光を放つ巨大な魔法陣が、黒い岩の天井いっぱいに現れた。
 それはまるで、時計の歯車のようにゆっくりと、一定の速さで回り始める。
   そして、そこから白い光の糸が幾本も垂れ下がり、苦しむ三人の体を優しく包み始めた。

「これは……、凄い魔力ね」

   グレコがポツリと零す。
   魔力皆無の俺にはよくわからんが、とっても強力な魔法である事はなんとなく理解出来るな。
   白い光の糸に体を包まれた喜勇たち三人は、呼吸を落ち着かせて、呻き声も止んだのだ。

   カービィの発動した魔法陣を目にしたエクリュは、垂れ流していた鼻水をズズッとすすり、キッと表情を引き締めて、また薬草を擦り潰し始めた。

「サリさん、ここを代わってくださるかしら?」

「え!? あっ……、はいっ!!」

   水で濡らした手拭いを、横たわる喜勇の体に当てていたインディゴが、砂里を呼んだ。
   戸惑いながらも砂里は、見様見真似でインディゴと交代し、看病を始めた。

「グレコさん。無事で何よりです」

   手が空いたインディゴが、グレコに話し掛ける。

「インディゴさん……、いったい、何があったの?」

「何があったのかは、私も存じ上げませんわ。雨乞いの祭壇にて、反乱を起こした者達の回復を待っていた所に、ギンロさんが慌ててやってきて……。身体中が血に濡れてましたから、何事かと思いましたが……。祭壇はアイビーとマシコットに任せ、私たちがベンザ様の家に着いた時にはもう、皆さん、ここでこうして横たわっていらっしゃったのです。それからずっと、夜通し看病をしておりましたの」

   徹夜でっ!? 
   俺たちがフカフカ毛布で爆睡している間に、なんて大変な事に……
   
「エクリュさんの魔法では治らなかったの? 彼だって……、騎士団の白魔導師なんでしょう??」

   ……グレコ、それは言わないであげて。
   必死であくせくしているエクリュが可哀想だよ。

「エクリュはどちらかというと、薬草学に長けておりますの。だから、回復魔法や治癒魔法自体は少々苦手で……。加えて、あのお三方の火傷は、普通の火傷ではないようですの。おそらく、何者かの呪いを浴びたのではないかと」

   のっ、呪いっ!?

「呪いってそんな……。彼等は火山の山頂に行っていたはずなのに、誰がそんな呪いだなんて……、!? まさか!!? 悪魔ハンニが!?!?」

   グレコの言葉に、インディゴの表情が一瞬にして強張った。

「ハンニ……、今、ハンニと仰いましたか!?」

   インディゴの叫ぶような問い掛けに、グレコは驚きつつも頷く。
   その声に気付いたメイクイとエクリュも、ハッとした顔でこちらを見ている。

「えっと……。まだその、私たち自身もよくわかってないんだけど……。この島のどこかに、悪魔ハンニという者が巣食っているらしいの。それも、ずっとずっと昔から……、コトコさんが生きてこの島にいた、およそ五百年前から。その悪魔ハンニが、これまで幾度となく、紫族に多大なる危害を加えているって……」

   そうなのよね? といった感じで俺の方を見るグレコに対し、俺は小さく頷いた。

   グレコは昨日、コトコの伝玉を聞いた時、あの場にいなかったから……
   今朝、俺が起きる前に、野草や桃子からその話を聞いたのだろう。

「悪魔ハンニが、生きている……。こうしてはいられませんわ。私、ノリリア様にその事をお知らせして参ります! メイクイ、ここを頼みますわよ!!」

   インディゴはローブの中から杖を取り出して、足早に外へと出て行った。

   えと……、じゃあ……、俺たちは何をすれば……?
   砂里と一緒に、喜勇達の看病をすればいいかな??
   それよりも、志垣を探しに行こうか???
   いやいや、この状況を放っておいて、そんな事をするわけにはいかないか。

   何をすればいいのかと、キョロキョロとする俺とグレコに対し……

「モッモさん、グレコさん、ちょっと……」

   話し掛けてきたのはメイクイだ。

「ベンザさんの様子を見てきてくれないかな? 随分前に地下室に入ってから、一度も出てきてないんだよ。相当参っているみたいで……。昨日知り合った僕よりも、きっと君達の方がいいだろう??」

   そう言って笑みを浮かべ、地下室へと続く扉を指差した。
 メイクイは、見た目はどっちかっていうとチャラい感じなんだけど、いつもなかなかに気が効くし、優しいんだよな。

   地下室へと繋がる扉についている鍵は、どうやら開けられたままのようだ。

「分かったわ。モッモ、行きましょ」

「うん」

   この場をカービィ達に任せ、グレコと俺は、地下室にいるという勉坐の元へと向かった。
      
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