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★ピタラス諸島第二、コトコ島編★

349:三つの島の情報

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「じゃあ、これから向かう三つの島に、その三体の神様達が存在している可能性は大いにあるという事ね。それで……、ネフェ、お願いがあるの。ピタラス諸島に存在する島々について、その特徴とか、住んでいる種族の事とか、なんでもいいから知っている事があれば教えてもらえないかしら?」

   グレコの言葉に、袮笛は再度こくんと頷いた。

「私と砂里は掟に背いて、たびたび外界の島々へと出掛けていた。そこで聞いた噂によると、ここより南に位置するニベルー島には、太古からの神が存在するという。今現在、島に暮らしているのは主に、他の島からの移住者達のはずだ。故に島民の種族は様々。おそらくだが、大陸が分かたれた後に移り住んだのだろう。ただ、彼等が暮らすのは島の東側のみ。西側には、その太古からの神が住まう、深い森が広がっていると聞いた」

「じゃあ、もしかしたらそこに……、河馬ほま神か蘑菇もご神がいるかも知れない、って事?」

「或いは蛾神だな。蛾神は当時、竜人族に守られていた故、河馬神に喰われたとは考えにくい。だが、確実に生きているとは断言出来ない。竜人族は、ここより東に位置するロリアン島に住んでいるが……、なかなかに好戦的な輩でな。私も砂里も、容易には港に近付かぬようにしていた程だ。周辺の諸島に暮らす者たちの話では、竜人族はロリアン島の全土を支配しているとの事だった。なんでも、島の中央に巨大な帝国を築いているとかなんとか……。そのような種族に、果たして神を守る意思があるのかどうかは、甚だ疑問ではあるところだな」

「なるほどね……。あ、モッモ、もう一度世界地図を見せてくれない?」

   グレコに言われて、俺は鞄の中から世界地図を取り出し、それを手渡す。
   グレコはベッドから立ち上がり、袮笛と砂里にも見えるようにと、机の上に世界地図を広げた。
   俺も、一応立ち上がってみたものの……

   あ……、あのさ、その……
   机の上だとさ、俺には見えないんだよ。
   何故って? 俺が小さいからだようっ!

「モッモさん、こっち来る?」

   机の下で怪訝な顔をしている俺に気付いた砂里が、ヒョイと俺の体を抱き上げて、自分の膝の上に乗せてくれた。

「あ、ありがとう……」

   ちょっぴり恥ずかしいのと、不意に体に触れられたゾクゾク感で、俺は少々モゾモゾとした。

「ここがコトコ島よね? それで……、ニベルー島がこっちで、ロリアン島はこれかしら??」

「うむ、恐らくそうだろう。地図というものを初めて見る故、断言は出来ぬが……。コトコ島からの位置的に考えて、こちらがニベルー島で、こちらがロリアン島だ」

「じゃあ、やっぱり……。モッモ、次の島には、きっと何らかの神様が存在するわよ。ネフェ、この地図の上の光はね、神様の居場所を示しているのよ」

   そう言って、グレコか指差す地図の上には、黄色い光が二つ存在していた。
   一つはニベルー島の西側に、もう一つはロリアン島の中央にある。

「神の居場所を示す? それはなんとも不思議な道具だな。ならば、この光がある場所は……。うむ、間違いなく、帰らずの森だな」

   帰らずの森!? また物騒なお名前ねっ!??

「帰らずの森って……、どういう場所なの?」

「その名の通りだ。ニベルー島の西側に位置する、太古からの神が存在するという森に足を踏み入れた者は、誰一人として帰ってきた試しがないと、港町の者達は言っていた。森の近くに住む者の話だと、巨大な生き物が群れを成して走る姿を見た事があると……。しかし、それが何なのかは誰も知らないと言っていた」

   ひゃあっ!? マジの帰らずだぁあっ!??
   そんなとこに神様の光があるとっ!?!?
   うぅう~……、行きたくないぃ~……

「けど……。ねぇモッモ、ニベルー島には、ケンタウロス達が住んでいるって、前にノリリアに聞いたわよね?」

「え!? けっ!?? ……あ、そんな気もする」

「そんな気もするって……、はぁ……。まぁいいわ」

   グレコ! 呆れた顔しないでくだぱい!!
   体の小ささに比例して、脳味噌も小さいんです!!!
   物覚えが悪いのは、仕方のない事なんです!!!!

「ケンタウロス? かつての大陸にあった、各種族が住処としていた森の位置から考えると、ニベルー島に位置する土地には、半人半馬の馬人族共が存在していたが……」

「半人半馬の馬人族? それはきっとケンタウロスね。特徴が一致するもの。となると、帰らずの森に住んでいるのは、ケンタウロスで間違いなさそうね。でも……、ノリリアは、彼らは五種族の中でも知性が高くて、一番話が通じるって言っていたのに……。そんな彼らの住む森に、どうして帰らずの~なんて名前が付いているのかしらね」

   ……ねぇグレコ、気付いてる?
   今君、暗に、鬼族は話が通じないって言ったんだよ??
   きっと、袮笛も砂里も、気にしちゃいないだろうけどね。

「ニベルー島には、島の南東に交易の為の港町がある。小さい町ではあるが、とても綺麗な所だ。そして、足を運んだ事はないが、島の北側には古くから島に暮らす者達の国があると聞いた。どんな種族の者達が暮らしているのかは定かではないが……、先ほども言ったように、港町の者は他の島からの移住者が多い。帰らずの森の情報を知り得たいのならば、一度北の地に赴き、古くからの住人である北の国の者達に話を聞いた方が賢明だろう」

   袮笛の言葉に、俺とグレコはふむふむと頷いた。

「そして、こちらのロリアン島にある光は、恐らく竜人族の帝国がある場所だ。島のほぼ中央に位置している故、間違いない」

「竜人族の帝国かぁ……。まだその、竜人族ってのがどんなものなのか分からないから何とも言えないけれど……。とにかく、行き先は決まったわね。ニベルー島の西側にある帰らずの森と、ロリアン島の中央にある竜人族の帝国。この二つには、是が非でも足を運ばないと」

   くぅおおぉぉ~……、帰らずの森も、竜人族の帝国も、どっちも俺には荷が重いぞぉ~!?

「姉様、ここは? こちらにも光がありますよ??」

   砂里が指差すのは、ピタラス諸島のほぼ中央に位置する大きな島。
   大小様々な形をした島々に囲まれた、アーレイク島だ。

「この島は駄目だ。砂里、お前も知っているだろう? ここには凶暴な鳥人族が暮らしている」

「あっ! もしかして……、他種族であれば何者であろうとも攻撃を仕掛けて、その肉を喰らい尽くすというあの、恐ろしい鳥人族の島ねっ!?」

   うえぇええぇぇ……、アーレイク島が一番ヤバいの~ん?

「それって、ハーピー族の事かしら? 背中に羽の生えた……、半分鳥で、半分人間のような姿の種族よね??」

「恐らくそれだろう。我々は奴らの事を鳥人と呼ぶが、奴ら自身は自らの事をハルピュイアと呼んでいた。かつての大陸でも、現在の諸島内でも、鳥人族がもっとも獰猛で危険な種族だと私は考えている」

   ぐはっ! ……もう、行きたくないれす。
   やっぱり、パーラ・ドット大陸に到着するまでの間、ずっと船の中に閉じこもっていた方がいいんじゃないかなぁ?

「そうなのね……。でも、ここにも神様の光がある以上、避けて通る事は出来ないわね」

   あぁああぁぁ……、考えただけでも死んじゃいそう……

「アーレイク島には近付いた事すらない故、島内がどうなっているのかは私にも分からない。ただ、一番近くの島の者の話では、鳥人族達はある建物を守っているそうだ」

「建物?」

「うむ。なんでも、ピタラス諸島に暮らす種族の力では到底造る事など出来そうもない、天にも届きそうなほどに高い建物だと聞いた事がある」
   
   それは、もしかして……、いや、もしかしなくても、アーレイク・ピタラスの墓塔、別名封魔の塔なのでは?

「ハルピュイア達が、建物を守っている……? それは興味深い話ね」

   顎に手を当てて、考える素振りを見せるグレコ。

「私が二人に伝えられる事はこのくらいだな。だが、これだけは言っておかねばなるまい……。神というものは、どのような神であっても、邪神となり得る可能性がある存在だ。あの白様ですら、邪神になりかけた過去をお持ちなのだからな。一度滅びる事で、自らそれを阻止なされたが……。そのような意志の強い神はそうそういないだろう。この光が示すものが神々であるのならば、二人とも、それ相応の覚悟を持っていけ。神に近付くという事は、そういう事だ」

   袮笛の言葉に、俺とグレコは、ゴクリと生唾を飲んだ。

   ……ねぇグレコ、とりあえずさ、各島々の港に導きの石碑を建てておくからさ、島の攻略はまたの機会にしない?
   ノリリア達がいろいろと問題を解決して……、安全になってから、島を巡る事にしない??
   なんかもう、話を聞いている限りだと、命がいくつあっても足りない気がします、はい。
   野蛮で危険な種族達と、邪神かも知れない神々だって???
   もう……、最弱の俺には、いろいろと難易度高すぎですよぉっ!!!!!
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