最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

文字の大きさ
637 / 804
★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

624:邪魔

しおりを挟む
 あ~もぉ~!
 ティカの馬鹿っ!!
 どうしてそうなるのぉっ!??

「一人でって、ノリリア達は!? 近くに居ないの!??」

 声を張り上げるグレコ。
 すると、かなり顔の険しいカナリーが……

「ノリリア副団長及び騎士団のメンバーは皆、悪魔を封印する為の準備に取り掛かっているようです。敵に見つからないように身を隠しながら、封印の結界を創る為に、所定の位置で待機しています」

 眉間を皺皺にしながらそう説明してくれた。 

 なるほど!
 それがティカの言っていた作戦ってやつか!?
 ティカが悪魔の気を引いている隙に、ノリリア達が封印しちゃうって作戦だなっ!!?

「しかし、勝手に飛び出したティカさんが邪魔で、封印魔法を行使できないようなのです。このままだと、悪魔もろともティカさんまでもが封印されてしまう事になります」

 なっ……、だぁあっ!?
 もはや邪魔者っ!!?
 何やってんだよティカ~!!??

「あんの、馬鹿……」

 呆れてものも言えず、俯くグレコ。

「アイビーさん、我々はどうしましょう?」

 パロット学士がアイビーに指示を仰ぐ。

「うん……。ボナークさん、この出口はどこに通じているんですか? 具体的に!」

 頭上に広がる、光が差し込む縦穴を指差し、アイビーが問い掛ける。
 まだ地面を食べようとしているポインシェラを宥めていたボナークが、円な瞳でこちらを見た。

「ユーザネイジアの木の真下だど。南側はハーピーが群生しとるっけ、北側に穴を開けたど」

「なるほど……。カナリー、ノリリア達の現在地はどの辺りなのか聞いてくれ」

「了解しました!」

 すぐさま杖を上に向けて、通信魔法を試みるカナリー。

「いったい何を考えてるのかしら? まったく……」

 ティカに対する怒りが収まらないらしいグレコは、鬼の形相でぶつぶつと独り言を呟いている。
 こ、怖い……

「しかしグレコよ、ティカも何か考えがあっての事であろう」

 俺を背負ったまま、ドーンと言い放つギンロ。

 やめなよギンロ、火に油を注ぐって言葉知ってる?
 今ティカの味方をすると、グレコの怒りに引火して、噴火しちゃうよ??
 それにさ、俺が背に乗ってる事忘れてないよね???
 この場合、俺にも確実に飛び火するから、やめてくんない????
 
「どういう根拠があって、そういう事が言えるのよ?」

 静かに、じろりとギンロを睨み付けるグレコ。
 ちょっと怖かったのだろう、ギンロの全身の毛がフワッと震えた。

「う、うむ……。我と共に地上を行き、お主らが上空でハーピーに襲撃を受けた際、助けに向かおうと提案した我にティカはこう言ったのだ。あっちに何かがいる、と」

 ……あっち? あっちってどっちよ??

「あっち? それでティカは、勝手にユーザネイジアの木まで走って行って、勝手に悪魔と戦っているってわけ?? ……それのどこが根拠なのよ???」

 ひぃっ!?
 口調はゆっくりなんだけど、グレコの全身から放たれる怒りのオーラが半端ねぇっ!!?

 またしても、ちょっと怖かったのだろう、ギンロの全身の毛が再度フワワッと震えた。

「つ、つまりだな……。ティカは元々、そこに悪魔がいる事を知っており、敢えて戦いを挑んだと考えられるのではないか、という事だ。それ即ち、何か策があるに違いない、かと……」

 少しずつ声が小さくなるギンロ。
 情けなくも、その尻尾はスーッと下へと垂れ下がって、足の間に隠れている。
 犬がビビっている時になるあれだ。

「ギンロ、それはあなたの憶測に過ぎないでしょう? ティカにちゃんとした作戦があるという根拠には到底ならないわ。悪いけど私は、まだ彼の事を完全に信用したわけじゃないの。リザドーニャの王宮ではモッモがお世話になったみたいだけど……、一度は悪魔に乗り移られた身でしょ?? まさかとは思うけど、彼の中に悪魔の一部が残ってるんじゃないかって、私は心配なのよ」

 なぬっ!? グレコったら、そんな事を考えていたのかっ!!?
 ただ単に、ティカの爬虫類紛いな外見が気に入らないから嫌ってるのかと思ってたぜ!!!

 しかし、悪魔に乗り移られたから、悪魔の一部が残っているかも~なんて……、そんな事、本当にあるの?
 いや、そんな事あっちゃ困るだろ??
 ティカはもう既に俺の仲間なのだ。
 悪魔の一部が残った仲間なんて……、いやいや、困るわそんなの。

「アイビーさん! ノリリア副団長達はユーザネイジアの東側に待機しているそうです!! 同じく、ティカさんが悪魔と対峙しているのも東側だという事です!!!」
 
 通信を終えたカナリーが、アイビーに告げる。

「了解! ボナークさん、ハーピー達を正気に戻す為の閃光弾はもう準備できていますか!?」

 アイビーに尋ねられたボナークは、ニヤリと笑って自らのローブをめくり、その内側を見せた。
 そこには閃光弾と思われる丸い玉が、いくつもいくつもぶら下がっている。

「大丈夫そうですね。それじゃあ……、みんなよく聞いて! 僕達は今から、この縦穴を上って地上に出る。そして、ユーザネイジアの木の東側へと向かう。恐らく外ではハーピー達が待ち構えているだろうから、ハーピーの対処はボナークさんと、ヤーリュとモーブに一任するよ。いいね?」

 アイビーの言葉に、ヤーリュとモーブが力強く頷く。

「地上の地形がどうなっているのかは分からないけれど、ノリリア達は身を隠せている。だから僕達も、敵に見つからないように二手に分かれて、ノリリア達の所まで進もう。モッモさん達四人とボナークさんは僕と一緒に、残りはカナリーが先導してくれ。今はティカさんが悪魔と対峙しているようだが、恐らくノリリアは機会を伺っているはずだ。ティカさんが悪魔と一定の距離を取ったところで、一斉に封印魔法を行使するつもりだろう。相手がどのような悪魔か分からない以上、その力も計り知れない。念には念をだ、僕とカナリーも封印魔法を行使しよう。カービィさんも、お願いします!」

 ポインシェラの傍で、ポインシェラの背中の宝石を撫で撫でしていた締まりのない顔のカービィは、アイビーに声を掛けられて、咄嗟に敬礼ポーズをしてみせた。
 キラーン☆っていうキメ顔だけれども……、とてもじゃないが、作戦を理解しているとは思えないな。

「俺様達はどうすりゃいい?」

 ずっと黙っていたザサークが口を開く。

「キッズ船長とビッチェさんは、僕達とは逆方向の西側に回ってください。そして、行方不明になられているソーム族の青年を探してください。悪魔の方は我々に任せてくださって大丈夫です」
 
 アイビーの言葉に、ザサークとビッチェは互いに目を合わせて頷いた。
 
「けど、封印をするにしても、ティカが邪魔なのよね? 機会を伺うって……、そんな悠長な事をしていて大丈夫なの??」

 グレコの問い掛けに、アイビーは少しばかり目を伏せる。

「そうだね……。階級こそ分からないが、相手は悪魔。それも、あれだけの数のハーピーを、興奮状態にした上で操る事の出来る力を持っている。グレコさんの言うように、機を逃せばこちらがやられ兼ねない。だから、最悪の場合……、僕が一時的にティカさんを行動不能状態にして、強制的に悪魔から引き離す」

 行動不能状態!?
 え、それってどういう!??

「……どうするつもり?」

「麻痺魔法か、眠り魔法を行使する。ただその場合、魔法を行使した時点で、敵にこちらの位置を知らせる事になるだろう。つまり、一瞬の躊躇が命取りになる……。カナリー、ノリリアに伝えてくれ。ティカさんが行動不能状態になったのを確認したら、すぐさま全員で封印魔法を行使して欲しいと」

「了解です」

 わわわわ!?
 なんだか大掛かりになってきたぞっ!??
 そんな一か八かの作戦で大丈夫なのかぁっ!?!?

「モッモ、ティカに連絡を取れぬのか?」

 ギンロがボソボソっと呟いた。

「連絡って……、あ、絆の耳飾りで?」

 俺はコソコソと返事をする。

「うむ。リザドーニャの王宮にて、かの悪魔と対峙した時、我には声が聞こえていたのだ。しかしながら、我は声が出せぬ状況だったが故、心内で応えだのだが、そちらからの応答がなく、止むを得ず我は目の前の敵に集中した。ティカは手練れ故、我と同じく、戦いの最中にても心内で応答出来るはずだ」

 ギンロの言葉には引っかかる点が幾つかあるものの……
 なるほど、つまりティカに作戦を伝えろと言いたいのだな?

「でも……、何て言えばいいの?」

 悪魔を封印したいから、そこを退けって?
 退かないと、ティカごと封印しちゃうよって??

「後方に援軍がいる、機を見て退避しろと伝えるのだ」

 おぉ、なんかそれ、カッコいいね。
 
「分かった! やってみる!!」

 俺は絆の耳飾りに意識を集中させて、ティカと通信を試みる。
 何故そうしたかは分からないが、アイビーやグレコにばれないように、コッソリと。

「ティカ? ティカ聞こえる?? モッモだよ」

 すると、ティカの声が聞こえてきた。
 だがしかし、それは俺に対する返答ではなくて……

「我が名はティカ・レイズン! 神に選ばれし使者である!! 悪しき魂を持つ貴様を、この手で討ち滅ぼす者なり!!!」

 雄叫びのように激しく、すご~く嫌な予感がする言葉を口にするティカの声が、俺の耳に届いたのだった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...