最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

731:ズゴゴゴゴゴゴゴゴォオォォォ~!!!

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 だ、駄目だ……、絶望的だ。
 こいつは……、クトゥルーは、テトーンの樹の村を知っている。
 俺の故郷であり、帰るべき場所であり、そして俺が旅に出た目的……、守るべき場所を、こいつは……

 頭の中が真っ白で、考えがまとまらない。
 全身の血が凍ってしまったかのような寒気に襲われて、体にうまく力が入らない。
 まるで、クトゥルーに逆らってはいけないと、俺の全てが叫んでいるようだ。

『ははっはぁ~! ようやく自分の立場ってもんが理解出来たらしいな!! 思ったよりも賢いじゃねぇか、モッモ~』

 上機嫌でニヤつくクトゥルー。
 心臓の鼓動が速まり、呼吸が荒くなっていく俺。

『もう分かったろ? お前は、俺に従う他ねぇ~んだって。とりあえずよ、それ持ってこっち来いよ。崩壊の陣を完成させるなんざ~、馬鹿げてるぜ?? どうやったらこれを消せるのか……、あそこに倒れているハーフエルフにでも聞いてみるか???』

 そう言って、クトゥルーは上半身から生える触手のうち一本を、離れた場所に倒れているアイビーに向かって伸ばしていく。
 
 な……、何を、するつもり……?

 触手は、アイビーの体にグルグルと巻きついて、その体を宙に持ち上げた。

 なっ!?

 アイビーは、その額から血を流しており、岩の地面にポタリポタリと赤い雫が零れ落ちる。
 そんな事はお構い無しにクトゥルーは、アイビーを掴んだ触手を自らの目の前へと引き寄せた。

『よぉ、前世がアーレイクのハーフエルフさんよぉ。起きてっか?』

 ぐったりとするアイビーの体を、空中でユサユサと揺さぶるクトゥルー。
 すると、気を失っていたアイビーが、朦朧とした表情ながらも、薄らと目を開いた。

 あ……、アイビー!?
 良かった、生きてたっ!!

 しかしながら、状況は全く芳しくない。
 今にも息絶えてしまいそうな様子に見えるアイビーを、クトゥルーの触手が捕らえているのだ。
 アイビーの、苦しそうな息遣いと、滲み出る血の匂いが、俺を更に焦らせる。

『はははっ! お前も残念だったな!! せっかく古代の邪法まで使って、この時代まで生き延びたってのによぉ。あの阿呆なモッモのせいで、お前の友達は木っ端微塵になっちまったなっ!!!』

 ケラケラと笑いながら、クトゥルーは話し続ける。

『ま、それはもういい。俺はな、過ぎた事は気にしねぇ~んだ! だからよ、これからの事を考えようぜ!! 俺は、このクソつまらねぇ世界を変えてぇ~んだ。昔みたいによ、ぐっちゃぐちゃのごっちゃごちゃにしてぇ~んだわ。その為にはさ、お偉いアーレイク様が必死こいて閉じてきた魔界への時空穴を、片っ端から開ける必要性があるんだよぉ。なぁ~に、簡単さ。同じ力を持つモッモがいるからなぁ。けどお生憎様、方法が分からねぇ。だからな……、お前に聞くよ、無力で半端者のハーフエルフさんよぉ。崩壊の陣を消滅させるには、いったい何をどうしたらいいんだぁ~?』

 クトゥルーは、虹色に光る四つの瞳で、アイビーの顔を覗き込みながら問うた。
 だけどもアイビーは、その問いに答える事なく、静かに目を閉じて……

「モッモ、君……、は、早く……。早く、崩壊の……、陣を……、完成させ、る、んだ……」

 弱々しく震える声で、途切れ途切れになりながら、アイビーはそう言った。
 
『あぁ? おいおい、この状況で俺を無視するとは……、なかなかに肝が座ってんじゃねぇかよこら~』

 ニヤつきながらそう言ったクトゥルーは、アイビーを縛り上げている触手に力を加える。

「うがっ!? ぐっ……、ぐぅ~っ!??」

 アイビーは、苦痛に顔を歪ませて、声にならない悲鳴を上げた。

 アイビー!?
 どうしよう、このままじゃアイビーは……
 な、何か……、助ける方法は無いのか?
 何かっ!!? 何かぁっ!!??

 俺は咄嗟に、五芒星の盤を小脇に抱え込んで、鞄に手を突っ込んでいた。
 この鞄は、神様が俺に与えてくれた、中が異空間と繋がっている不思議な鞄だ。
 それ故に、取り出したい物、求める物が中にある場合、俺が手を突っ込めば、それがひとりでに手に握られる事がこれまでに多々あった。
 だから今もきっと……、アイビーを救う為の何かが、きっと!
 そう思って、俺が手にしたのは、あの黒革の手帖。
 アーレイク・ピタラスが俺に残した、旧世界の神々を……、いや、神代の悪霊を滅ぼす為の、邪滅の書アポクティ・ビブリオだった。

 これを……、使えと?
 でもこれ、俺には、使い方が分からない……

 戸惑う俺。
 だけど……

『おぉ~い? くたばる前に吐けよ~??』

 そんな事を言いながら、執拗にアイビーを揺さぶるクトゥルー。
 アイビーは目を閉じたまま、尚も地面に血を滴らせるのみだ。
 その光景を前にして、俺は邪滅の書を握る手に力を込めた。

 俺が、やらなくちゃ。
 今ここで、アイビーを助けられるのは、俺だけなんだ。
 俺が、なんとかして、これで……、アイビーを助けなくちゃ!

 俺は、意を決して、邪滅の書を開こうとした。
 黒いドラゴンの鱗で覆われた、大層重厚な作りのその書物は、外側の作りに対して中はあまりにも薄っぺらい。
 数十ページしか無いように見えるその書物の、ちょうど真ん中辺りを開こうと……、したのだが……

 んっ!? んんんっ!!?
 ひ、開かないっ!?!?

 邪滅の書は、ピタリと閉じたまま、全く開かない。
 開かないどころか、紙の隙間に指を入れる事すら出来ないのだ。
 
 そういや、これを俺に渡したプラティックも、中を見る事は出来なかったと言っていた。
 それは、プラティックに神の力が無いからだと、本人は言っていたが……

 俺にはあるはずなんですけどっ!?
 微々たるものではあれ、神力があるはずなんですけどっ!??
 なのになんで開かないんですかねっ!?!?

 グヌヌヌヌ~と、おおよそ書物を開く事を目的とした力加減では無い精一杯の力で、俺はそれを開こうと試みる。
 しかし、微動だにしない邪滅の書。
 焦りと戸惑いで、俺の心臓の鼓動はかなり速くなっているし、息遣いもかなり荒くなっていた。
 
 何故だ? 何が原因で??
 ……ん???

 その時だ、俺はある違和感に気付いた。
 邪滅の書の、中の紙の部分。
 なんとなくだが、普通の紙より硬いと言うか……、いや、これは本当に紙なのか?
 そして同時に、妙な物を見つけた。
 邪滅の書の背表紙の一部、ドラゴンの鱗と鱗の間に、めちゃくちゃ小さな、変な形の凸凹があるのだ。
 これは……、なんだ??
 明らかに鱗では無いそれに触れてみると、何やら触り心地に覚えがあるような、そうでも無いような……
 試しにそれを、慣れた手つきでスライドさせる俺。
 すると……

 カチッ!

 ん? カチッて……?? え???

 パカッ!!

 邪滅の書が開いた。
 俺は、その中身を見て首を傾げた。

 ……な? は?? これは……、ス???

 その時だった。

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴォオォォォ~!!!

『なんだぁ~?』

「うわわっ!?」

 物凄い轟音と共に、地面が激しく揺れたのだ。
 それはまるで、巨大地震に見舞われた時のような、立っているのがやっとなほどの振動である。

 ま、まさか……、俺が邪滅の書を開いたから、何かがどうにかなったのかぁあっ!?!?

 そう思った、次の瞬間!

 タタタタタッ!!!

 何者かの足音が遠くに聞こえたかと思うと、それはすぐさま近距離まで迫ってきて、懐かしい獣臭を俺の鼻が嗅ぎ取った。
 そして、ヒンヤリとした空気と、水色の光を帯びた二本の刀身が、俺の真横を駆け抜けて行った。

 キンッ! ………ズシュウッ!!

『ぐわぁっ!?』

 ほんの一瞬の出来事だった。
 アイビーを掴み、持ち上げていたクトゥルーの触手が、何者かによって斬り落とされた。
 鈍い悲鳴を上げ、触手の切断部より青い体液を噴き上げるクトゥルー。
 切り離されたクトゥルーの触手は、グチョッ! と音を立てて地面に落ち、魚のようにビタビタッと跳ね回っている。

 きっ!? きもっ!!?
 てか……、え、何が起きたんだ?
 誰が……??
 いや、それよりも……、アイビー……、アイビーはどこっ!?!?

 慌ててアイビーを探す俺。
 すると、少し離れた場所で倒れるノリリアの近くに、そいつはいた。
 意識を失っているアイビーを背負い、倒れているノリリアを抱えようとしている、大きな犬型の獣人。
 狼の如き、三角に尖った耳と長い鼻面。
 そして、魔法陣の放つ光を薄らと反射する、美しい青銀の毛並み。

 まさか……、あれは……?

 すると今度は、後ろから声が聞こえた。

「モッモ! 伏せてっ!!」

 ふぁっ!?!?

 慌てて身を屈めた俺の頭上ギリギリを、何かが掠めていった。
 それは、緑色の魔力のオーラを纏った、黒い荊の矢。
 
 ドスッ! 

『ごっ!??』

 矢は、クトゥルーの喉元に突き刺さった。
 即ち、頭部に鎮座するタコの真下である。
 その衝撃に、クトゥルーは後ろへと重心を大きく傾ける。

「くらえっ! 最大級メギストス!! ケラベノス!!!」

 ピンク色のあいつの声が聞こえた次の瞬間、仰反るクトゥルーの真上に、ピカッ! と稲妻が走った。

 ドーーーーーン!!!

『あがぁあぁぁっ!?!?』

 雷魔法をもろに受けたクトゥルーは、全身から白い煙を放出する。
 そこへ、更に追い打ちをかけるように……

「今だっ! 総攻撃っ!!」

 どこぞの兵士長のごとき勇ましい号令に、様々な色の閃光が暗闇を駆け抜ける。
 それは、魔導師が己の魔力を凝縮して、相手を攻撃する手段……、その名も魔素弾マギア・スフィア
 
 ダーン! ダーン!! ダダーーーン!!!

 悲鳴を上げる間もなく、魔素弾をその身に受け続けるクトゥルー。
 奴の表皮に着弾すると共に上がる白い煙の中で、触手がのたうち回る様が見てとれた。
 そして……

「モッモ! 大丈夫かぁっ!?」

 その声に、驚いて振り向く俺。
 シャリン、シャリンと、魔法陣を踏み締める足音が聞こえてきて、いつの間にか俺の真後ろには、肩で息をするテカテカ頭の彼が立っていた。

「て……、テッチャ~?」

 俺は、半泣きになってその名を呼んだ。
 汗だくになりながらも、ニカッと笑って、グッと親指を立てて見せるテッチャ。
 正直なところ……、なんでお前やねんっ!? と突っ込みたかったが、その言葉はグッと喉の奥へと飲み込んだ。
 そしてその後ろから、徐々に姿を現す面々。

「モッモ!」

 グレコ!

「モッモ~!」

 カービィ!!

「討ち取るっ!」

 ティカ!!!  ……は、俺を無視してクトゥルーに一直線。
 その後に続いて、クトゥルーに攻撃を仕掛けに行く本物のライラックと、岩人間のブリック。 
 その他にも、塔の外にいるはずの白薔薇の騎士団のメンバーが全員と、沢山の仲間が勢揃い。

 みんな……、みんなが……
 みんなが助けに来てくれたっ!!!!

 嬉しいやら、安心したやらで、瞬時に視界が滲む俺。
 そして……

「遅くなってすまぬっ! 大事無いかモッモ!?」

「うぅっ、ギン……、ギンロぉおぉぉ~!!!!!」

 救出したアイビーと、未だ気を失ったままのノリリアを小脇に抱えたギンロが、俺の方へと駆けてくる姿が見え、一気に涙腺が崩壊した俺は、情け無くも、大粒の涙をボロボロと零した。
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