最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

732:第三形態

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「びっ! びんばっ!! 来てぐへだんだべっ!? ぐっ、ぐじゅっ…………、びべぇええぇぇぇ~!!!」

 涙と鼻水とで、もはや何を言っているのか伝わらないだろうが……
 嬉しさの余り、俺は嗚咽を漏らしながら叫んでいた。

 みんなが来てくれたっ!
 みんなが来てくれたぁっ!!
 みんなが来てくれたぁあっ!!!

「無事で良かった!」

 シャリンシャリンと魔法陣を踏み締めながら、俺の元へと真っ直ぐに走ってくるグレコ。
 しかし、その後ろからやってきたカービィは……

「いぃいいいっ!?!?」

 妙な声を上げながら、魔法陣の手前で急ブレーキをかけた。

「なんっじゃこりゃっ!? やっべぇえなこれっ!!? てか……、グレコさんもおまいらも、そんなとこいると危ねぇぞっ!?!?」

 魔法陣の中央付近にいる俺とテッチャ、そしてまもなく俺の隣へとやって来るグレコに対し、カービィはお決まりの変顔でそんな事を叫んでいる。

「え? 何よ!? どうかしたの!!?」

 足を止め、振り向くグレコ。

「どうかしたも何もっ!? 足元っ! 足元見てっ!!」

 両手の人差し指で、地面に描かれている、歯車のようにゆっくりと回る薄紫色の魔法陣を指すカービィ。

「足元……、えっ!? 何これっ!!?」

 グレコは気付いていなかったらしい、さすがです。

「これは崩壊の陣って言って、中にあるものを全て消滅させてしまう、恐ろしい魔法陣なんだっ! そこにいちゃ危ねぇっ!! 三人とも、早くこっちへ!!!」

 アセアセとした様子で、必死に手招きするカービィは、リアル招き猫である。

「どうしたのだっ!?」

「ぬぁっ!? ギンロ!!? 踏むんじゃねぇっ!!??」

 ワンテンポ遅れてやって来たギンロも、シャリンと音を立てて魔法陣を踏んだものの、特に何かが起きる事も無く……
 しかしながら、カービィの声に驚いて、ギンロは慌てて後退した。

「踏んっ!? だっ!!? 平気かっ!!?? どうなってんだ? まだ魔法陣が完成してねぇから、大丈夫なのか?? てか……、その玉は何なんだよモッモ!?!??」

 そう言ってカービィは、魔法陣の中央にある光の玉を、またしても両手の人差し指で、ビシィッ! と指差した。
 此方も、こんなに目立つ存在に今まで気付いていなかったなんて……、さすがだよカービィ君。

「この玉……、なんだか凄く胸騒ぎがするわ。ほらモッモ、鼻水はもうしまって。一旦ここから離れ、ってえぇえっ!?」

 ゆっくりと此方に近づいて来たグレコは、光の玉を見ながらそう言って、チラリと視線を別方向へと向けたかと思うと、今まで見た事も無いくらいに驚いた顔をして、叫びながら勢いよく俺に覆い被さってきた。

「ぷぎゅっ!?」

 グレコの重量に負けて、俺は地面に突っ伏し、グレコと地面の間に板挟みになってしまった為、変な声を出してしまう。
 すると、隣にいたテッチャも何かに気付いたらしく、同じように慌てて地面に突っ伏していて……

 ズドンッ!!! という重い物が落ちた音が聞こえた直後、ズザザザザー!!! という地面が激しく擦れる音と同時に、シャリシャリシャリン!!! という魔法陣の上を何かが転がったような音が、すぐそばで聞こえた。
 
 なんだっ!? 今度は何事だぁっ!??

「ティカ!? 何してんのよっ!!?」

 すぐさま起き上がったグレコが、ブチ切れて叫ぶ。
 俺も急いで頭を上げると、俺たちの後方、魔法陣の端の方で、ぶっ倒れているティカの巨体が見えた。
 どうやら、クトゥルーに向かって行ったティカが、勢いよくカウンターに遭い、ここまで吹っ飛んで来たらしい。

 そんなティカに続くように……

「グハァアッ!?」

「ぬぉあっ!??」

 ズドンッ! ズドンッ!! 
 ズザザザザザザザーッ!!!

 魔法陣から離れた場所に、ティカと共にクトゥルー目がけて突っ込んで行ったライラックとブリックの二人が、派手に吹っ飛んで来た。
 二人とも外傷こそ大した事無さそうだが、落下の衝撃からか、地面に倒れたままの格好で起き上がれず呻いている。

「おいっ!? おまいら大丈夫かっ!!? くそっ……」

 カービィは杖と魔導書を取り出して、一番近くにいるティカの元へと駆け出す。
 しかし頑丈なティカは、すぐさま自力で体を起こした。
 その表情は飢えた肉食恐竜のように恐ろしく、こめかみに血管が浮かび上がるほどにめちゃくちゃ怒ってて、またしても全身から悪魔のごとき黒い煙の異臭を放ち始めているではないか。
 そして……

「あれは、何だ!? 化け物かっ!!?」

 そう叫んだティカが指差す先には、白い煙幕の中で蠢く、気色の悪い八本の触手が見えた。

 えっ!? なんで八本っ!!?
 さっき、ギンロが一本斬り落としたはずじゃ……!?!?

「総員っ! 構えぇっ!!」

 勇ましい声に振り向くと、お顔がメラメラのマシコットが、杖と魔導書を手に、騎士団の指揮をとっていた。
 その言葉に従って、インディゴ、チリアン、カナリーに続いて、衛生班であるはずのロビンズ、サン、エクリュまでもが、杖と魔導書を手に、戦闘態勢でその場に立っている。
 ついでに、いつもは逃げてばかりのカサチョも、杖と魔導書を手に、戦闘に加わっていた。
 彼らが見据える先には、蠢く触手と、大きな黒い影があって……

『あぁ……、一つられちまったかぁ~。まさかこんな事になるとはなぁ~。へへへっ、楽しいなぁあ~♪』

 クトゥルーの不気味な声が響いてきた。
 そして、ズチョリッ、ズチョリッ、という気色悪い水気を帯びた重い足音と共に、白煙の中からそいつは姿を現した。
 下半身と上半身それぞれに、ドス黒い紫色をした四本の触手を持つ、ギリギリ人型の、頭のない生物。

 ぎゃあぁあっ!?
 おっ、おばっ、おばけぇえぇぇぇっ!!?

 首から上がないその姿は、怪奇以外の何者でも無い。
 クトゥルーの頭部として、先程までそこに鎮座していたはずのタコは、そこにはおらず……

『ほれ、やるよ~♪』

 上半身の触手の一本が、ブワッと振りかぶったかと思うと、こちらにポイッとそれを投げて寄越した。
 それは。クトゥルーの頭部であったはずの、触手と同じ色合いの四つ目のタコ。

 なっ!? なまっ!!?
 生首っ!!??
 ……じゃねぇわ、普通にタコだわっ!!!

 ベチャッと音を立てて地面に落ちたそれは、ブシューっと音を立てながら、見る見るうちに腐り果てていく。
 クトゥルー特有の、濃い磯の香りに加えて、何ものにも例え難い強烈な腐敗臭が辺りに撒き散らされた。

 ひぃいぃぃ~っ!?
 どっ! 毒ガスっ!!!

「うっ!? なんて酷い臭いなの……」

 グレコが顔を顰める。
 腐ったタコから放たれる余りに強烈な異臭に、俺達は皆鼻を押さえた。
 すると今度は、頭の無いクトゥルー自身の首元から、ブシューっと白い湯気が立ち上り始めて……

 グチョグチョグチョグチョ~

 吐き気を催すような音と共に、ミミズのような細かな触手が無数に生え伸びてきたかと思うと、それらは互いに絡み合い、何かを形作り始めたでは無いか。
 それは徐々に形を整えていき、最終的には……

『はははっ! お前らにゃ~、こっちの方がいいかぁ~?』

 ほくそ笑みながらそう言ったクトゥルーの顔は、先程までのタコ面からは考えられないような、凛々しい、人間の男性となった。
 加えて、頭の変化に注視している間に、四本の触手が生えていた下半身は二本の人の足となり、上半身の触手も消えて人の腕が二本生えていた。
(下半身の、普段は見えちゃいけない部分は、何も無いツルツルだ。つまり……、見た感じ男性のくせに、男性の象徴とも言えようそれは、無い……)
 
 まさか、これがクトゥルーの真の姿なのか?
 つまり第三形態……??
 普通は、第三形態が一番気持ち悪いってのが、ゲームやアニメではお決まりのパターンなのだが……、うん、さっきまでより全然マシ、ただの裸体のおっさんだもん。
 まぁ……、おっさんだから、全く綺麗ではないけれど、ギリギリ見てられるわ。

 鮮やかな真紅の髪に、少し灼けた小麦色の肌。
 細マッチョなボディは、身長およそ170センチと、ごくごく平均的な人間の体をしている。
 ただ、眼光鋭い瞳は虹色のままに、四つだったその数は人間仕様の二つに減っていた。
 目尻の皺の感じからして、歳の頃は初老手前と言ったところか。
 これといった特徴の無い姿ではあるものの、威厳に満ちたその表情に、見覚えがあるような無いような……、いや、やっぱ無いな。 

 だけど、騎士団のみんなの反応は違っていた。

「な……、どういう、事だ……?」

 強張った表情で呟くロビンズ。
 他のみんなも、驚き、怯えて、焦っていて……

「そんな、まさか……?」

「嘘でしょ? こんな事って……」

 口々にそんな事を呟いている。

 しかしながら、俺と、隣にいるグレコとテッチャ、アイビーとノリリアを抱えたままのギンロも、地面にお尻をついたままのティカも、クトゥルーのその姿が何者なのか、勿論分からない。
 だけども、カービィは違った。

「おまい、なんで……? なんでっ!? 国王の顔してんだっ!!?」

 ワナワナと体を震わせながら、カービィが叫んだ。
 その言葉で俺は、目の前のクトゥルーが何者の姿になったのかを悟った。
 
 まさか、魔法王国フーガの……、国王の姿なのか?
 え、それってつまり……、国王が、クトゥルーだったって事??
 そんな、そんな事って……???

『ははっはぁ~! さぁ~て……、ショーの続きを始めようかぁ~!!』

 燃えるような真紅の髪の初老男性の姿となったクトゥルーは、その虹色の瞳を大きく見開きながら、両手を高く広げて笑った。
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