最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★虫の森、蟷螂神編★

74:さて……、続きを書こうかね♪

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「ふぅ~……、少し休むかぁ……」

 羽ペンを置き、大きく伸びをして、俺は窓の外を見やった。

 テトーンの樹の葉のツーンとした香りが漂う、静かで穏やかな午後。
 聞こえてくるのは風の囁きと、ピグモルたちが畑仕事をする音、そして楽しげなグレコの笑い声。
 当たり前なようで、特別なこの時間……
 そう、俺は今、故郷のテトーンの樹の村に帰ってきております。

 とても……、とても平和である。
 数日前のあの生死を懸けた戦いがまるで嘘のような、平和の極みであります。
 あぁ、このまま時間が止まればいいのになぁ~。

 俺は心身共に、最上級にリラックスしている自分を感じていた。
 しかしながら、俺にはやらねばならぬ事があるのです。
 机の上に広げたままの分厚い本に視線を戻し、俺はパチパチと瞬きをした。

 本……、それは、これまでテトーンの樹の村には存在しなかったアイテム。
 それが何故今、俺の手元に、こんなにも分厚い本があるのか……?
 それを説明せねばなるまい。

 ……あ、その前に、この本の名前を発表しましょう。 
 この本の名前は! ズバリ!!

【冒険の書:モッモの世界旅行】

 パクリ感満載だけども、俺個人の持ち物なので、名前をパクったとて問題ないだろう!!!
 ふふふふ~ん♪

 さてさて、話を戻しましょう。
 何故この本が、俺の手元にあるのかと言いますと……

 俺が旅に出て、しばらく経った頃。 
 木陰でスヤスヤと昼寝をしていた長老のお腹の上に、空から、ドスッ! と、この分厚い本が落ちてきたのだそう。
 あまりに突然の出来事、更には本の重量が結構ある為に、長老は今まで出した事の無いような野太い声で、この世の終わりかの如く叫んだそうな。
 その声を聞いて、村中は大パニックになったそうです、はい。
 
 なんとかパニックが落ち着き、ピグモルのみんなが目にしたのが、見た事の無い、この分厚い本でした。
 テトーンの樹の村には、本はおろか、紙すらありません。
 だから、そもそもこれが何なのか、みんなは首を傾げるばかり。
 みんなであれこれと観察し、どうやら危険ではないと判断し(断末魔の悲鳴を上げた長老も生きていたからね)、でも結局用途が分からず、すぐに興味がなくなって……
 最終的にこの分厚い本は、俺の部屋の机の上に、ポツンと寂しく置かれる事になったのでした。

 ……うん、なんだろうな。
 みんなの中で、「珍しい物、よく分からない物は、とりあえずモッモの部屋に置いておこう!」っていうのが習慣付かなければいいのだが。
 なんだかそうなりそうで、とても不安だ……

 そして、帰宅した俺が、その分厚い本を発見。
 何これ? と思い、立派な革製の表紙をぱらりと捲ると、そこには手紙が一つ挟まっていました。

《君の冒険を、ここに記すといい》

 手紙には、それだけが書かれていて……

 うん……、まぁつまり、恐らく神様からの贈り物なわけですよ。
 神様本人からは何の説明も無いから(ついこの間会ったのにねっ!)、確信は無いけどさ。
 たぶん……、たぶん、そうだと思うんですよ。
 間違っても、某ハリポタの、某悪役の日記帳とかではないと思います、はい。

 ……で、俺は今、手紙に書かれていた通り、この分厚い本に、これまでの冒険の記録をつけている、というわけなのですっ!!!
 
 机の上にある、木製のコップに入ったレイコーを口に運ぶ。
 レイコーは、村の外に自生している、レイコーという植物の実を乾燥させて、軽く炒って、粉末状にしたものをお湯で溶かして作った、いわゆる……、珈琲です。
 冷えていないのに、レイコーと言うんですね、これが……、うくくくく。

 そのレイコーを二口、コクコクと飲む。
 鼻にレイコー独特の旨苦い香りが抜けると、目がシャキーン! とした。
 首を左右にコキコキと鳴らして、ふ~っと大きく息を吐く俺。

 さて……、続きを書こうかね♪
 えっとぉ~、どこまで書いたっけ?
 ……あ、そうそう、俺が湖で溺れて、ギンロが助けてくれて、気が付いたところからだったな。

 椅子に座り直した俺は、グレコから貰った大き目の羽ペンで、冒険の書の続きを書き始めた。








 三つの首を、ギンロに斬り落とされたカマーリスは、その巨体が見る見るうちに石化して、最後には巨大な灰色の岩の塊となっていた。
 地面に転がる三つの頭も同様だった。
 ただ、三つの顔にそれぞれ二つずつついてる六つの目だけは、何故か石化せずにそのまま残った。
 それらは夕日の光を浴びずとも、不思議と黄金色に輝いていた。

 いつの間にか日は西に沈み、空は夜の色に染まり始めていた。
 これからどうしようか? と相談したが、あまりに疲れた俺たちは、もう一歩も動けそうにない、という事で……
 今夜はここでキャンプをしよう、という事になったのだった。

 巨大なカマーリスであった岩塊のすぐそばで、キャンプの支度を始める俺たち。
 なんていうかこう、みんな図太くて本当に良かったよ。
 普通嫌でしょ? 三つの巨大な虫の頭が転がっているすぐ近くでキャンプなんてさ。
 おまけに目の前の湖には、見るからに汚い茶色い水が満ちていて、鎌手の虫型魔物の死骸がぷかぷかと浮いているし……
 普通なら、絶対嫌でしょ?? こんな不衛生な場所でお泊まりなんてさ。
 だけども俺たちは、そんな事なんて気にせずに、黙々とキャンプの準備を進めていきました。

 ささっと作ったキャンプの焚き火で、俺の鞄の中にストックされていたタイニーボアーの肉を焼くグレコ。
 どうやらこの鞄、やはり中では完全に時が止まっているらしい。
 タイニーボアーの肉は、狩りたて同然、全く鮮度が落ちていなかった。
 不思議だなぁ、どうなってんだ? と首を傾げる俺。
 勿論、考えたって理由は分からないし……、まぁ、腐らないならなんでもいいや。

 風の精霊シルフのリーシェは、何やら猛省しながら帰って行ったが、火の精霊サラマンダーのバルンは、俺の隣で肉が焼けるのを今か今かと待っている。
 バルンには、聞きたい事が沢山あるのだが……
 彼の頭の中は今、肉の事でいっぱいみたいだから……、また今度でいいや。

「えっ!? カマーリスって、邪神に堕ちた神様だったの!??」

 赤い瞳を真ん丸にして驚くグレコ。
 俺は、気を失っている間に、意識の中で神様から聞いた事を、グレコとギンロに話して聞かせた。
 同時に、これまでギンロに話せずにいた、俺が時の神の使者だという事と、世界各地の神様を探して旅をしているという事も、包み隠さず打ち明けた。

「ふむ、なるほど……。儀式も無しに精霊を召喚できる故、只者ではないと思ってはいたが……」

 理解力が低いかと思っていたが、案外ギンロはすんなり受け入れてくれた。

「なるほどねぇ……、それで納得したわ。ただの魔物だったカマーリスが、ここまで強大な力を手に入れたのも、きっとその神の力のせいね。それにほら、見てよ、あのカマーリスの瞳。金色でしょう? 本で読んだ事があるの。黄金の瞳は、神の力を宿しし証……。カマーリスはきっと、この世界に数多存在する、種族神とも呼べよう【八百万やおよろずの神々】の一柱なのよ」

 ほぉ~? 八百万の神々とな??
 そんなものが存在するのだね~、ふ~ん。
 さっすがグレコ! 物知り~♪
 ……じゃあ、もうちょい早く、気付いとくれよ。

「ふむ、八百万の神々か……。かつて、このワコーディーン大陸に存在したという、【蟷螂とうろう神カマリリス】ならば、聞き覚えがあるが……」

 お~いっ!
 おいギンロ!!
 どう考えてもそいつじゃねぇかっ!!!
 時が経って、名前がちょっと変わったんだよ、きっと!!!!
 
「とにかくまぁ、これでダッチュ族はもう大丈夫だね。生贄を出す必要も無くなったし、安心安心♪ ……あ、でも確か、この森には、鎌手の奴ら以外にも、恐ろしい虫型魔物がうようよいるんだっけ?」

 不安になって、キョロキョロと視線を周りに泳がせる俺。
 しかしながら、今この周囲は安全なようだ。
 何にも見えないし、何にも聞こえない。

「そうだけど……。さすがに、そんなとこまで面倒見切れないわよ!」

 ……うん、そうだねグレコ、俺もそう思うよ。
 だからさほら、怒らないで、ね?

「しかし、少々気掛かりではあるな……。モッモが先ほど言っていた、導きの石碑とやらが使えるのであれば、明日、一度ダッチュ族の里へ様子を見に行ってはみぬか?」

 案外心配性かつお世話好きなギンロ。

「まぁ、そうね……。一度関わった以上、みんながこれからどうするかも気になるしね」

 結局お世話好きなグレコ。

「うん。たぶん、ポポのお母さんが石碑を立ててくれているはずだから、行ってみよう!」

 という事で、話はまとまったのだった。
 そんな俺たちの頭上には、満点の星空が広がっていた。
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