116 / 796
★オーベリー村、蜥蜴神編★
111:あ~、ポチッとな!
しおりを挟む
「われら、このもりに、いられない。われら、かずがへった。このもり、たべものがない。たまごが、こどもとなると、たべもの、たりなくなる。われら、どこかへ、いかなければならない」
なるほど、そうか。
つまり、もともと数が多くて食べ物が何とかなっていたけど、数が減ったから食べ物が足りない、と……
ん~? 普通、逆じゃないかな??
「なるほど。大人の数が少ないために、産まれてくる子らを養っていけない、という事だな? 卵の数は、子らの数は幾つなのだ?」
あ~なるほどそういうことね。
ギンロにしては理解力あるな~。
こういう、種族の存続的な問題に関しては、ギンロの頭の回転はかなり良くなるようだな。
「たまご、ぜんぶで、よんじゅうと、に。かりをしても、このもり、えもの、すくない。われらだけでは、とてもむり。こども、そだたない」
「う~ん、確かにそうよね。そろそろ日暮れに差し掛かっているけど、朝からこの森にいるっていうのに、魔物の一匹も遭遇していないし……。ここに来るまでに、食べられそうな果実があったかって言われると、なかったと思うし……」
確かにそうだな。
この森は、なんていうか、本当に静かだ。
遠くで飛んでる虫の羽音が聞こえるくらいに、辺りには何もいない。
それに、グレコが言ったように、果物や野菜の匂いが全くしてこない。
あるのは木だけ、何の変哲も無い、枝と葉が生い茂った木だけだ。
「モッモの故郷はどこにあるんだ?」
カービィが唐突に聞いてきた。
「……それ、今関係ある話なの?」
すかさずグレコが突っ込む。
「いやほら、モッモは絶滅したはずのピグモルだろ?」
……やべぇ、それもバレてたのか。
恐るべし、カービィ博士の観察眼!!
「ピグモルなんざ、世界的にはもう珍獣中の珍獣。そんな種族が暮らせる場所なら、SSランクのバーバー族も、安心して暮らせるんじゃないかな~って」
その、SSランクってなんぞや?
なんか、少し前も、似たような言葉を聞いた気がするぞ??
「確かに……。テトーンの樹の村の近くならば、食べ物も豊富であるし、何よりガディス殿がおられる。ガディス殿の事だ、モッモの頼みとあらば、バーバー族の事も守ってくれるだろう」
ん~、まぁそうだろうね。
「そうね。たぶん、村のみんなも平気じゃない? ダッチュ族たちともすぐに打ち解けていたし!」
ん~、まぁまぁそうだろうね。
「ダッチュ族!? ダッチュ族もいるのかっ!??」
驚くカービィ。
「あ~うん、こないだちょっと、助けてね。今は子どもたちだけだけど、みんな元気だよ」
「うわ~お……。それが本当なら、また学会の資料は書き直しだな。ダッチュ族は、およそ二十年前に滅んだと記録されていたはずだから」
二十年前といえば……
ダッチュ族が妙な人間たちに追われて、あの虫だらけの森に移住した時だな。
確かに、まさかあの森で生き残ってるなんて、誰も思わなかったんだろうな……
「それなら尚更安心だな。ダッチュ族が暮らせているのなら、安全な所に違いない。どこだ? どこにあるんだ?? その、なんて言ったっけ、何とかの村」
「テトーンの樹の村ね。僕たちピグモルが暮らす村の名前だよ。森の名前は確か……、あれだ、幻獣の森。クロノス山の南側の地域だよ」
俺の説明に、カービィはピシーン! とした顔で固まる。
ただただ一点を見つめて、一言も発しない。
「……カービィ? どうしたのだ??」
「……本当に、クロノス山の南なのか?」
「そうよ。私の故郷、ブラッドエルフの村もあるわ」
「……ブラッドエルフの村も?」
「僕の故郷の村から、ちょっと離れた場所ではあるけどね。あとはそうだな、さっきギンロが言っていたガディスっていうのは、ギンロと同じフェンリルで、ピグモルたちを守ってくれる守護神なんだ」
「……え? ギンロ、フェンリルだったのか??」
「ぬ? そうか、獣人と偽っておった故、知らなかったのだな。我はフェンリルと氷国の民との間に生まれしパントゥーなのだ。隠していたつもりはなかったのだが……」
「……何だが、一気に膨大な情報が入ってきて、おいら、……おいら、パンクするぅ~」
「おっ!? カービィっ!??」
「なぬっ!? しっかりしろ、カービィ!??」
「あ~、目を回しちゃってるわね、これは……」
文字通り、本当にグルグルと目を回しながら、プシュ~! という効果音が似合いそうなほどに顔を赤くして、カービィは後ろに倒れてしまったのだった。
「みんな、卵は持ちましたかっ!?」
「もった!」
「もったぞ!」
「すべて、もった!!」
バーバー族たちが首から下げている簡易的な動物の皮の鞄の中には、バーバー族たちの大切な卵、彼らの未来が詰まっている。
その数およそ四十二……
産まれてからが大変だなこりゃ……
「槍は全部持ちましたかっ!??」
「もった!」
「ぜんぶだ!!」
「だいじょうぶ!」
バーバー族たちは、それぞれその小さな背に大きな槍を背負っている。
自分たちの数より多い二十本もの槍を盗んでしまったので、中には槍を二本背負っているバーバー族もいる。
「じゃあ皆さん、円になって、隣と手を繋いでくださ~い!!」
俺の言葉を合図に、みんなが円形に並んで、隣同士で手を繋ぎ、大きな輪を作った。
カービィいわく、空間移動の魔法、及び魔法アイテムは、間接的に繋がっていれば行使の対象になる、という事だった。
つまり、みんなで手を繋いで輪を作れば、それが一個体と見なされて、みんなで一緒に移動できる、ということなのだそうな。
何も、ダッチュ族の時のように、みんながこう、ギュ~! と、引っ付かなくてもいいらしい。
俺の左肩をギンロが、右肩をカービィが握って、そこには大きな輪が出来上がった。
うん、これなら、手を繋ぐよりも断然ゾクゾクがマシである。
「じゃあ行きま~す! とりあえず、槍を返しにデルグの家まで~!!」
あ~、ポチッとな!
導きの腕輪に手をかざし、俺とグレコとギンロとカービィ、十四匹のバーバー族と、四十二個のバーバー族の卵たちは、迷いの森を後にした。
なるほど、そうか。
つまり、もともと数が多くて食べ物が何とかなっていたけど、数が減ったから食べ物が足りない、と……
ん~? 普通、逆じゃないかな??
「なるほど。大人の数が少ないために、産まれてくる子らを養っていけない、という事だな? 卵の数は、子らの数は幾つなのだ?」
あ~なるほどそういうことね。
ギンロにしては理解力あるな~。
こういう、種族の存続的な問題に関しては、ギンロの頭の回転はかなり良くなるようだな。
「たまご、ぜんぶで、よんじゅうと、に。かりをしても、このもり、えもの、すくない。われらだけでは、とてもむり。こども、そだたない」
「う~ん、確かにそうよね。そろそろ日暮れに差し掛かっているけど、朝からこの森にいるっていうのに、魔物の一匹も遭遇していないし……。ここに来るまでに、食べられそうな果実があったかって言われると、なかったと思うし……」
確かにそうだな。
この森は、なんていうか、本当に静かだ。
遠くで飛んでる虫の羽音が聞こえるくらいに、辺りには何もいない。
それに、グレコが言ったように、果物や野菜の匂いが全くしてこない。
あるのは木だけ、何の変哲も無い、枝と葉が生い茂った木だけだ。
「モッモの故郷はどこにあるんだ?」
カービィが唐突に聞いてきた。
「……それ、今関係ある話なの?」
すかさずグレコが突っ込む。
「いやほら、モッモは絶滅したはずのピグモルだろ?」
……やべぇ、それもバレてたのか。
恐るべし、カービィ博士の観察眼!!
「ピグモルなんざ、世界的にはもう珍獣中の珍獣。そんな種族が暮らせる場所なら、SSランクのバーバー族も、安心して暮らせるんじゃないかな~って」
その、SSランクってなんぞや?
なんか、少し前も、似たような言葉を聞いた気がするぞ??
「確かに……。テトーンの樹の村の近くならば、食べ物も豊富であるし、何よりガディス殿がおられる。ガディス殿の事だ、モッモの頼みとあらば、バーバー族の事も守ってくれるだろう」
ん~、まぁそうだろうね。
「そうね。たぶん、村のみんなも平気じゃない? ダッチュ族たちともすぐに打ち解けていたし!」
ん~、まぁまぁそうだろうね。
「ダッチュ族!? ダッチュ族もいるのかっ!??」
驚くカービィ。
「あ~うん、こないだちょっと、助けてね。今は子どもたちだけだけど、みんな元気だよ」
「うわ~お……。それが本当なら、また学会の資料は書き直しだな。ダッチュ族は、およそ二十年前に滅んだと記録されていたはずだから」
二十年前といえば……
ダッチュ族が妙な人間たちに追われて、あの虫だらけの森に移住した時だな。
確かに、まさかあの森で生き残ってるなんて、誰も思わなかったんだろうな……
「それなら尚更安心だな。ダッチュ族が暮らせているのなら、安全な所に違いない。どこだ? どこにあるんだ?? その、なんて言ったっけ、何とかの村」
「テトーンの樹の村ね。僕たちピグモルが暮らす村の名前だよ。森の名前は確か……、あれだ、幻獣の森。クロノス山の南側の地域だよ」
俺の説明に、カービィはピシーン! とした顔で固まる。
ただただ一点を見つめて、一言も発しない。
「……カービィ? どうしたのだ??」
「……本当に、クロノス山の南なのか?」
「そうよ。私の故郷、ブラッドエルフの村もあるわ」
「……ブラッドエルフの村も?」
「僕の故郷の村から、ちょっと離れた場所ではあるけどね。あとはそうだな、さっきギンロが言っていたガディスっていうのは、ギンロと同じフェンリルで、ピグモルたちを守ってくれる守護神なんだ」
「……え? ギンロ、フェンリルだったのか??」
「ぬ? そうか、獣人と偽っておった故、知らなかったのだな。我はフェンリルと氷国の民との間に生まれしパントゥーなのだ。隠していたつもりはなかったのだが……」
「……何だが、一気に膨大な情報が入ってきて、おいら、……おいら、パンクするぅ~」
「おっ!? カービィっ!??」
「なぬっ!? しっかりしろ、カービィ!??」
「あ~、目を回しちゃってるわね、これは……」
文字通り、本当にグルグルと目を回しながら、プシュ~! という効果音が似合いそうなほどに顔を赤くして、カービィは後ろに倒れてしまったのだった。
「みんな、卵は持ちましたかっ!?」
「もった!」
「もったぞ!」
「すべて、もった!!」
バーバー族たちが首から下げている簡易的な動物の皮の鞄の中には、バーバー族たちの大切な卵、彼らの未来が詰まっている。
その数およそ四十二……
産まれてからが大変だなこりゃ……
「槍は全部持ちましたかっ!??」
「もった!」
「ぜんぶだ!!」
「だいじょうぶ!」
バーバー族たちは、それぞれその小さな背に大きな槍を背負っている。
自分たちの数より多い二十本もの槍を盗んでしまったので、中には槍を二本背負っているバーバー族もいる。
「じゃあ皆さん、円になって、隣と手を繋いでくださ~い!!」
俺の言葉を合図に、みんなが円形に並んで、隣同士で手を繋ぎ、大きな輪を作った。
カービィいわく、空間移動の魔法、及び魔法アイテムは、間接的に繋がっていれば行使の対象になる、という事だった。
つまり、みんなで手を繋いで輪を作れば、それが一個体と見なされて、みんなで一緒に移動できる、ということなのだそうな。
何も、ダッチュ族の時のように、みんながこう、ギュ~! と、引っ付かなくてもいいらしい。
俺の左肩をギンロが、右肩をカービィが握って、そこには大きな輪が出来上がった。
うん、これなら、手を繋ぐよりも断然ゾクゾクがマシである。
「じゃあ行きま~す! とりあえず、槍を返しにデルグの家まで~!!」
あ~、ポチッとな!
導きの腕輪に手をかざし、俺とグレコとギンロとカービィ、十四匹のバーバー族と、四十二個のバーバー族の卵たちは、迷いの森を後にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
482
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる