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屑石の解体作業
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「本当にそれも持って帰るんかぁ? 屑石だろうに?」
ヒロトの愛車である、黒の軽トラ風魔動車の、後ろの荷台一杯に乗せられた屑石の山を前に、ワリオサは少々戸惑った。
「もしかしたら、まだ中に何か入っている可能性がありますので……。持ち帰って、詳しく調べてみます。もし何か良い物が出た時は、こちらまで持ってきますので」
「ガハハ! いらねぇよいっ! 何か出てもそっちの好きにすりゃええ!!」
「いえいえ、そうはいきませんよ。まぁ……、たぶん何も出ないでしょうけどね、ははは!」
乾いたヒロトの笑い声を聞きながら、先に車の荷台に乗ったダッグに引っ張られて、スピーもなんとか乗車する事が出来た。
足元にあるのは、大量の屑石。
まさか、これを持って帰るなんて……、ヒロトさんは変わった人だな~、と、スピーは思った。
「ベルナードさんとゲイルさんにも、よろしくお伝えください。君たちは良い仕事をしたよって」
「あぁ、伝えておこう! ありがとうっ! 気をつけて帰れよっ!」
「はい。ではまた~♪」
ワリオサとトードに別れを告げて、黒い軽トラは走り出す。
時刻はまだ、昼の二時前だが……
素材屋アルヨン御一行、本日の仕事はこれにて終了です。
ガンッ! パラパラパラ……
ガンガンッ! パラパラパラパラパラ……
「お! あった♪」
砕けた屑石の中から現れた、小さな緑色の鉱石を摘み上げて、スピーはニコッと笑う。
素材屋アルヨンの店の裏の工房で、スピーは一人、何やら作業に没頭していた。
ヒロトが新しく用意してくれた、スピー専用の小さな作業机。
その上で、持ち帰った屑石をひたすら金槌で打ち砕いていくスピー。
屑石の中には時折、金属や宝石、魔石の小さな欠片が隠れている事がある。
それらを、ダッグがやっていたように、ノミやキリを使って削り取り、研磨布で磨いて……
魔力測定器で、宝石か魔石かを見極めて、それぞれ別々の箱に入れて仕分ける。
……つまるところ、スピーは今、残業をしているのだ。
時刻は既に夕方の五時を回っている。
窓からは西日が差してきて、部屋全体がオレンジ色に染まっていた。
ヒロト達素材屋アルヨン御一行が、東地区の店舗兼自宅に帰ってきたのは、午後の二時半になる頃だった。
軽トラの荷台から、譲り受けた箱入りの魔石と、大量の屑石を運び下ろし、みんなが一息ついたのは午後の三時。
一息ついでに、マローとダッグは二階のソファーで昼寝を始めて……
その後、コルトは家の裏手にあるという温室に向かい、ヒロトは日課の散歩へと出かけようとしていた。
スピーはというと、多少疲れてはいるものの、午前中に、生まれて初めて体験した様々な仕事が刺激的すぎた為か、頭が妙に興奮しており、目がらんらんと冴えていて、昼寝なんて出来そうにもなかった。
かといって、他にやるべき事も無いので、ボンヤリと台所の椅子に座っていた。
そんなスピーの様子を目にしたヒロトは、スピーを一階へと呼んだ。
「屑石の解体作業をしてみるかい? 金槌で屑石を砕いて、中に何も無いか確認していくんだ。もし、屑石の中に宝石や魔石が見つかれば、それは売り物になる。ダッグがやっていたように、ノミやキリを使って取り出して、研磨布で磨いて……。とりあえず、出来る事をしてごらん? もし何かを見つけた時は、何でもいいから、この辺りの箱に分けて入れておいてね」
そう言い残し、ヒロトは上機嫌で店を出ていった。
屑石を入れた大きな木箱は全部で十五個。
ヒロトは、暇潰しにでもなればいい、少しでも鉱石に触れさせてあげようと思って、スピーに解体作業を頼んだのだ。
勿論、十五個の箱の中にある全ての屑石を、スピー一人に任せて解体させようなどとは、毛ほども考えていなかったのだが……
何を勘違いしたのかスピーは、自分は仕事を任されたのだ! と張り切って、それからずっと、一人で、黙々と屑石の解体作業に精を出しているのであった。
ガンッ! パラパラパラ……
「ふぅ~……。ちょっと、捨てた方がいいかなぁ?」
机の上に積もった、屑石だったものの欠片の山を見て、スピーは呟く。
近くにあったゴミ箱に、それらを流し入れて、家の裏手にある焼却炉へと持っていく。
焼却炉の扉は、スピーの手の届かない高い位置にあるので、その側にゴミ箱を置いておく事にした。
しかしながら、屑石とはよく言ったものだと、スピーはしみじみ思う。
解体してみて分かったのだが、それらは本当に、何の役にも立たなさそうな、細かい石や岩の塊だった。
中には砂がカチカチに固まっただけのような物もあって……
金槌で打ち付けてみると、力のないスピーでも、いとも簡単に粉々に砕く事が出来るのである。
そしてそのほとんどが、中に何も入っておらず、机の上には本当の意味での屑が山積みになったのだった。
だが勿論、ヒロトが言っていたように、中には鉱石を含む物もあった。
一粒一粒が、スピーの爪の先程しかない小さな物だが、鉱石には変わりない。
それらを丁寧に取り出して、たどたどしい手つきながらも、スピーは一生懸命に作業をしていた。
机に置かれた箱は三つ。
金銀銅や、緑がかった銀色のミスリル、白金色のオリハルコンなどの、金属物質を入れる箱。
様々な色の宝石を入れる箱に、魔石を入れる箱。
しかしながら、鉱石鑑定は一筋縄ではいかない。
経験と知識があってこそ、それは成り立つものなのである。
三つの箱に分けられてはいるものの、それらはかなりごちゃ混ぜだった。
だがスピーは、そんな事はお構い無しに、自分のわかる範囲内で、自分の出来る範囲内で、マイペースに作業を楽しんでいた。
十五個ある箱のうち、二つを既に解体し終えたスピーは、う~んと伸びをしてから、三つ目の箱に取り掛かろうと、屑石に手を伸ばした。
その時だ。
「ん? これ……。妙に暖かいな……?」
スピーがおもむろに手に取ったその屑石は、まるで焼きたてのパンのような、ホカホカとした暖かさを持っている。
そういえば……、宝石や魔石が入っている鉱石は、どれも暖かかったっけ……、だったらこの中には、結構大きな宝石か魔石が入ってるんじゃ!? と、スピーはワクワクする。
金槌を手に取り、フンッ! と打ち付けると、ガンッ! と音がして、パラパラと屑石が崩れていって……
「おおっ! これはまさ……、ん?」
中から赤い光を浴びた宝石が現れて、喜びかけたスピーだったが、その横からチラリと見えるあるものに、首を傾げた。
嫌に生々しい雰囲気の、白い……、鱗?
更に金槌を打ち付けていくスピー。
そして……
「……え? うわわわわっ!? 何これぇ~!?」
屑石の中から現れたそれに、スピーは顔を歪ませた。
スピーの手のひらよりも小さなそれは、何かの生き物だ。
死んでいるのだろうか……、白い体をギュッと丸めて、ピクリとも動かない。
その生き物の顔から背中にかけて、赤い宝石が生えているのだ。
ツンツンと、金槌の端っこで、その生き物を突くスピー。
すると、その生き物は微かに体を動かして……
ギュッと丸めていた体を緩めて、手足をダラ~ンと伸ばした。
「わぁっ!? いっ、生きてるのっ!?」
目をまん丸にして驚くスピー。
しかしながら、どうしてか、詳しく見てみないとと考えたスピーは、ルーペを手に取り、見た事の無いその生き物を観察し始めた。
真っ白な鱗に覆われた小さな体。
そこから生える、頭部と尻尾。
四本ある短い手足には、鋭い金色の爪が生えていて、顔だと思われる部分には、ピッタリと瞼が閉じた目が二つ。
口は……、ありそうだが、何処にあるのかよくわからない。
額部分には、爪と同じ金色の角が二本生えている。
そして何より異質なのは、頭から背にかけて生えている赤色の鉱石だ。
ルビーのようにも見えるのだが……、鉱石鑑定など出来るはずもないスピーには、それが本当は何なのか、皆目見当も付かなかった。
一見すると、トカゲの仲間のようにも見えるが……
もしかするとこれは……
「君は……、ドラゴン?」
ポツリと呟いたスピーの言葉に、その小さな生き物の、ピッタリと閉じていたはずの瞼が、パカッと開いた。
スピーの瞳と、小さな生き物の瞳が、バッチリ合う。
あまりに突然の出来事に、スピーは……
「いっ!? ぎゃあぁぁ~!!」
生まれて初めて、大絶叫するのだった。
ヒロトの愛車である、黒の軽トラ風魔動車の、後ろの荷台一杯に乗せられた屑石の山を前に、ワリオサは少々戸惑った。
「もしかしたら、まだ中に何か入っている可能性がありますので……。持ち帰って、詳しく調べてみます。もし何か良い物が出た時は、こちらまで持ってきますので」
「ガハハ! いらねぇよいっ! 何か出てもそっちの好きにすりゃええ!!」
「いえいえ、そうはいきませんよ。まぁ……、たぶん何も出ないでしょうけどね、ははは!」
乾いたヒロトの笑い声を聞きながら、先に車の荷台に乗ったダッグに引っ張られて、スピーもなんとか乗車する事が出来た。
足元にあるのは、大量の屑石。
まさか、これを持って帰るなんて……、ヒロトさんは変わった人だな~、と、スピーは思った。
「ベルナードさんとゲイルさんにも、よろしくお伝えください。君たちは良い仕事をしたよって」
「あぁ、伝えておこう! ありがとうっ! 気をつけて帰れよっ!」
「はい。ではまた~♪」
ワリオサとトードに別れを告げて、黒い軽トラは走り出す。
時刻はまだ、昼の二時前だが……
素材屋アルヨン御一行、本日の仕事はこれにて終了です。
ガンッ! パラパラパラ……
ガンガンッ! パラパラパラパラパラ……
「お! あった♪」
砕けた屑石の中から現れた、小さな緑色の鉱石を摘み上げて、スピーはニコッと笑う。
素材屋アルヨンの店の裏の工房で、スピーは一人、何やら作業に没頭していた。
ヒロトが新しく用意してくれた、スピー専用の小さな作業机。
その上で、持ち帰った屑石をひたすら金槌で打ち砕いていくスピー。
屑石の中には時折、金属や宝石、魔石の小さな欠片が隠れている事がある。
それらを、ダッグがやっていたように、ノミやキリを使って削り取り、研磨布で磨いて……
魔力測定器で、宝石か魔石かを見極めて、それぞれ別々の箱に入れて仕分ける。
……つまるところ、スピーは今、残業をしているのだ。
時刻は既に夕方の五時を回っている。
窓からは西日が差してきて、部屋全体がオレンジ色に染まっていた。
ヒロト達素材屋アルヨン御一行が、東地区の店舗兼自宅に帰ってきたのは、午後の二時半になる頃だった。
軽トラの荷台から、譲り受けた箱入りの魔石と、大量の屑石を運び下ろし、みんなが一息ついたのは午後の三時。
一息ついでに、マローとダッグは二階のソファーで昼寝を始めて……
その後、コルトは家の裏手にあるという温室に向かい、ヒロトは日課の散歩へと出かけようとしていた。
スピーはというと、多少疲れてはいるものの、午前中に、生まれて初めて体験した様々な仕事が刺激的すぎた為か、頭が妙に興奮しており、目がらんらんと冴えていて、昼寝なんて出来そうにもなかった。
かといって、他にやるべき事も無いので、ボンヤリと台所の椅子に座っていた。
そんなスピーの様子を目にしたヒロトは、スピーを一階へと呼んだ。
「屑石の解体作業をしてみるかい? 金槌で屑石を砕いて、中に何も無いか確認していくんだ。もし、屑石の中に宝石や魔石が見つかれば、それは売り物になる。ダッグがやっていたように、ノミやキリを使って取り出して、研磨布で磨いて……。とりあえず、出来る事をしてごらん? もし何かを見つけた時は、何でもいいから、この辺りの箱に分けて入れておいてね」
そう言い残し、ヒロトは上機嫌で店を出ていった。
屑石を入れた大きな木箱は全部で十五個。
ヒロトは、暇潰しにでもなればいい、少しでも鉱石に触れさせてあげようと思って、スピーに解体作業を頼んだのだ。
勿論、十五個の箱の中にある全ての屑石を、スピー一人に任せて解体させようなどとは、毛ほども考えていなかったのだが……
何を勘違いしたのかスピーは、自分は仕事を任されたのだ! と張り切って、それからずっと、一人で、黙々と屑石の解体作業に精を出しているのであった。
ガンッ! パラパラパラ……
「ふぅ~……。ちょっと、捨てた方がいいかなぁ?」
机の上に積もった、屑石だったものの欠片の山を見て、スピーは呟く。
近くにあったゴミ箱に、それらを流し入れて、家の裏手にある焼却炉へと持っていく。
焼却炉の扉は、スピーの手の届かない高い位置にあるので、その側にゴミ箱を置いておく事にした。
しかしながら、屑石とはよく言ったものだと、スピーはしみじみ思う。
解体してみて分かったのだが、それらは本当に、何の役にも立たなさそうな、細かい石や岩の塊だった。
中には砂がカチカチに固まっただけのような物もあって……
金槌で打ち付けてみると、力のないスピーでも、いとも簡単に粉々に砕く事が出来るのである。
そしてそのほとんどが、中に何も入っておらず、机の上には本当の意味での屑が山積みになったのだった。
だが勿論、ヒロトが言っていたように、中には鉱石を含む物もあった。
一粒一粒が、スピーの爪の先程しかない小さな物だが、鉱石には変わりない。
それらを丁寧に取り出して、たどたどしい手つきながらも、スピーは一生懸命に作業をしていた。
机に置かれた箱は三つ。
金銀銅や、緑がかった銀色のミスリル、白金色のオリハルコンなどの、金属物質を入れる箱。
様々な色の宝石を入れる箱に、魔石を入れる箱。
しかしながら、鉱石鑑定は一筋縄ではいかない。
経験と知識があってこそ、それは成り立つものなのである。
三つの箱に分けられてはいるものの、それらはかなりごちゃ混ぜだった。
だがスピーは、そんな事はお構い無しに、自分のわかる範囲内で、自分の出来る範囲内で、マイペースに作業を楽しんでいた。
十五個ある箱のうち、二つを既に解体し終えたスピーは、う~んと伸びをしてから、三つ目の箱に取り掛かろうと、屑石に手を伸ばした。
その時だ。
「ん? これ……。妙に暖かいな……?」
スピーがおもむろに手に取ったその屑石は、まるで焼きたてのパンのような、ホカホカとした暖かさを持っている。
そういえば……、宝石や魔石が入っている鉱石は、どれも暖かかったっけ……、だったらこの中には、結構大きな宝石か魔石が入ってるんじゃ!? と、スピーはワクワクする。
金槌を手に取り、フンッ! と打ち付けると、ガンッ! と音がして、パラパラと屑石が崩れていって……
「おおっ! これはまさ……、ん?」
中から赤い光を浴びた宝石が現れて、喜びかけたスピーだったが、その横からチラリと見えるあるものに、首を傾げた。
嫌に生々しい雰囲気の、白い……、鱗?
更に金槌を打ち付けていくスピー。
そして……
「……え? うわわわわっ!? 何これぇ~!?」
屑石の中から現れたそれに、スピーは顔を歪ませた。
スピーの手のひらよりも小さなそれは、何かの生き物だ。
死んでいるのだろうか……、白い体をギュッと丸めて、ピクリとも動かない。
その生き物の顔から背中にかけて、赤い宝石が生えているのだ。
ツンツンと、金槌の端っこで、その生き物を突くスピー。
すると、その生き物は微かに体を動かして……
ギュッと丸めていた体を緩めて、手足をダラ~ンと伸ばした。
「わぁっ!? いっ、生きてるのっ!?」
目をまん丸にして驚くスピー。
しかしながら、どうしてか、詳しく見てみないとと考えたスピーは、ルーペを手に取り、見た事の無いその生き物を観察し始めた。
真っ白な鱗に覆われた小さな体。
そこから生える、頭部と尻尾。
四本ある短い手足には、鋭い金色の爪が生えていて、顔だと思われる部分には、ピッタリと瞼が閉じた目が二つ。
口は……、ありそうだが、何処にあるのかよくわからない。
額部分には、爪と同じ金色の角が二本生えている。
そして何より異質なのは、頭から背にかけて生えている赤色の鉱石だ。
ルビーのようにも見えるのだが……、鉱石鑑定など出来るはずもないスピーには、それが本当は何なのか、皆目見当も付かなかった。
一見すると、トカゲの仲間のようにも見えるが……
もしかするとこれは……
「君は……、ドラゴン?」
ポツリと呟いたスピーの言葉に、その小さな生き物の、ピッタリと閉じていたはずの瞼が、パカッと開いた。
スピーの瞳と、小さな生き物の瞳が、バッチリ合う。
あまりに突然の出来事に、スピーは……
「いっ!? ぎゃあぁぁ~!!」
生まれて初めて、大絶叫するのだった。
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