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捕獲
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セルシウス・オリバーとリー・ハオランら国賓との会議が始まる前の数十時間。俺達は俺の体に投与された薬の解毒を必死で試みていた。
「ッ駄目だ!治癒の神がまず1人も応答してくれない」
「俺もだ…。」
朱輝とソンも全力でどうにかしようとしてくれてはいるが手も足も出ないようだ。
「そもそも、惚れ薬って効果あるんだろうか?」
「………確かに」
「………そ、そうだな!」
2人は微塵も惚れ薬の効果を疑っていなかったらしい。意外とそこら辺は抜けている。
「でもどうやって確かめる?」
「そうだよ!方法がないじゃん」
何言っているんだ。この間抜けさん達は。
「何で?俺の好きな人はリアンじゃん。それは今も変わってない。二人とも忘れてないだろ?」
俺がかつての仲間、6大神リアンの名前を出した途端2人は面白いくらいに凍りついた。何でずっと触れてこないんだろうと思っていたけどやっぱり気遣ってもらってたのか。そりゃそうだ。俺はリアンが亡くなってから葬式にも行ってないしお墓参りにだって一度も行ったことがない。リアンの名前を口にするのもこれが初めてだと思う。固まってしまった二人に俺はそんな気にしなくていいよ、と言う意味の笑顔を向けた。
「そんなあからさまに凍りつくなよ」
「悪い…。」
「すまない」
2人がうなだれているもんだから、俺はもう大丈夫なのに非常に気まずいこの空気感。
「それに、本当に効果があったとして俺の元々のリアンに対する恋愛感情はどうなる?それについても考えなきゃいけないだろ。」
しばらく黙り込んでしまっていたが俺の言葉に納得したらしい。まぁ、おそらくこいつらはリアンの話をしようかしまいか迷ってたんだろうな。それを急に核心疲れたもんだから罪悪感みたいな、そんな気持ちを抱いたんだ。優しいなほんとに…。
「お前が今もリアンに対する気持ちが変わってないのは俺達もわかってはいた。」
「紫は一途だったもんな!」
「おう」
朱輝の顔は依然として暗い。
「むしろ今お前に恋愛感情があることが問題なんだよ。まだ心の中に好きな人がいる人間に無理やり特定の人間を好きにさせてみろ、お前どうなると思う?」
「…俺の心が変形させられる?」
「そうだ。人間の心は目には見えないが形があるのは知ってるだろう?もちろん、当人の状況次第で心は年々変化していく。」
もちろん知っている。心は一定の形は取らない。
「外部から急に変形させられた場合、普通なら変化に耐えきれず死ぬ。だけどお前は死ななかった。相当な精神力があったからだと思う。」
「じゃあさ、俺は心の変形に耐えきったんだろ?じゃあ、セルシウスのことを好きにはならないんじゃないのか?」
「確かにそうだ。だが即死しなくとも抗原として入った物質はお前の心に侵入している。身体に影響がなくとも…心にとっては毒物だ。そして、それは心の恋愛をする部分の所を特に変型させる。それは元々好きだった人のことを忘れさせ、特定の人をそこに移植しているということだ。お前の場合、リアンの事を完璧に忘れてセルシウスの事がそこに移る。何回も言うけど、常人ではここまで耐えきれない。まず侵入された時点で死ぬ。常人がそうなるのは精神力が心が柔らかく、壊れやすいから、心が健康だからだ。心なんて自分で意識して鍛えられない。だけど俺達は普通の人とは体の仕組みが少し違う。元々から心が硬い、脆くないし、そんな簡単に壊せない。でも、俺やソンリェンがお前と同じ抗原を体内に入れられたら即死はしないだろうがもって1週間だな。それぐらい強い抗原がお前の中に入ってる。お前だけ死ななくて済んでいるのはきっと…、お前の心がすでに壊れているから…変形に寛容なんだ。」
本当に現実離れした話でついていけない。
俺の心がすでに壊れてるって、ひどすぎないか。…。
「それで、急じゃなくて徐々にセルシウスを好きになっていく。」
忘れるって?この俺が??リアンの事を??あの人が俺の全てなのに?リアンを忘れてセルシウスを…リアンを殺した敵国の奴の事を好きになるのか?今だってリアンの死を受け入れられないのに?まだどこかで生きているんじゃないかって…俺を待っていてくれてるんじゃないかって思っているのに?……
「俺がセルシウスを好きになって、黒妖国にどんなメリットがある?俺の力が必要なだけならそんなことしなくてもただ頼めばよかっただろ」
「お前の力だけじゃなくて…お前自体をものにしたかったんだろう。お前がセルシウスの事を好きになれば、黒妖が権力を握りやすくなる。」
駄目だ。そんなんじゃ納得できない。
「才華は?それだと黒妖ばっかに利点があってあいつらには何もないじゃないか」
「セルシウス・オリバーとリー・ハオランは血が繋がっている、兄弟だそうだ。それで才華と黒妖は同盟を結んでいる。黒妖が強大になれば才華にもいろいろと有利なんだろう、他国を攻め込むのに。」
なんて醜い奴らだ。もう何も言えない。そんな奴にキスされたなんて今さら気持ち悪くなってきた。
「なるほど。今の状況はよくわかった。で、俺を差し出すのか?」
「だから!差し出さないと決定したから会議のこと伝えてなかったんだろ!」
そうだよ当たり前じゃん!っとソンも大きくうなずいている。
「俺に教えなかったのは教えたら、俺が行くって言うと思ったからじゃないのか?」
二人がうっと詰まった顔をした。やはり図星だ。俺はさらに図星をついていく。
「で、俺が敵に攻撃されて状況が変わった。心の変形は俺にしかわからないから、俺に話したんだろ。」
二人はそのとおりですって言った感じのポーズをした。なんか土下座みたいなやつ。緊張感ないな、おい。俺にとっても人生経験初だ。心にウイルスを打ち込まれるなんて。だから二人は隠しておいて俺が死んだりしたらどうしようって不安になって相談したほうがいいと思ったから俺に打ち明けたに違いない。
「俺達が、おまえに話したのはそんな感じで合ってる。だが、そうやすやすとお前を手放すわけには行かない…」
コンコンー
「朱輝様、ソンリェン様、黒妖国と才華国の皇太子様が到着いたしました。予定よりお早い到着になりますが、中にお通ししてよろしいでしょうか?」
一気に部屋の中が緊張感に包まれた。朱輝やソンリェンの顔も厳しいものになっている。二人のことだ。他の条約やらは完成しているのだろう。だけど、俺の事は拒否する予定だったのが、異常事態を引き起こされたことによって、決断を迫られている。俺の心の治療方法を考える時間がもう、ない。奴らの狙いがそれだろう。予定より早めに来てこちらの対策を充分にさせない状態で、自分たちが有利な状況で推し進めようとしてるんだ。
「…はぁ…もう時間はないってことだな」
朱輝は天を仰いだ。
そうなのだ。俺達6大神は国を守るために生まれた。いくら俺が朱輝とソンと仲が良くても、国の存亡に関わるなら切り捨てるべきなのだ。それにこの国はもう強くなった。1人1人が己の尊厳と守りたいものを守るために厳しい努力をした。現に紫灯国軍は6大国でも最強だと言われている。だけど、無駄に戦争をする必要はないはずだ。もう、先の大戦で嫌というほど俺達は味わった。それにもう俺達3人は子供じゃない。立派な大人だ。朱輝は国王、ソンは大神官っていう立場にいるんだ。俺よりも国民のことを優先しなければならない。それに…今回のことは、
「俺の責任だ。油断していなかったらこんなことにはならなかった。俺がした失態は自分で片す。だから俺にも会議に出席させろ」
そう言うと2人の表情は怒ったような悲しいような…なんとも言えない表情になった。別にいいのに、そんなに心配しなくてもさ、。
「ただ黙っておとなしく捕まっているだけじゃない。二国の情勢がどうなってるのか知る必要がある。もしこの国に戦争を仕掛けるようなら俺が、直接奴らの国ごと滅ぼしてやる」
バシッ
朱輝に胸ぐらを掴まれた。抵抗を失わせるくらいに暗い兄の声は追い詰められていた。
「もう、2度とここに帰ってこれないかもしれないんだぞ?!ッそんな、何されるかわかんないのに、何で行こうとするんだ!俺達はただでさえ特別なんだよッ!まだッ、リアンのことも忘れられてないのにっ、…そんなぼろぼろな体で何ができるんだ!!ずっとずっと毎日の襲撃を一人でッ。治療なんてこの国にいてもできるだろ!自分を犠牲にするその考えっいいかげんにしろっ!」
久しぶりに近くで見た朱輝の顔はこんな状況だけどすごく綺麗だった。本当に心配してくれてるのがわかる。あの時、朱輝も何もできなかった、ただ見てることしかできなかったそのことを今でも後悔してるんだろう。だから、俺の事を真剣に止めようとしてくれてるんだと思う。だけど、お前が俺を守りたいように…。俺もお前のこと守ってやりたいんだ。もう二度とその肌に傷をつけてほしくない。
「…お前は国王で、ソンは大神官だ。俺は過去に囚われてるだけで何もしてないただの人間だ。そんな奴にお前たちが気遣う必要ない。俺を出せば二国と同盟が成立するなら、俺達の夢に一歩近づく。夢のためならどんな犠牲もいとわないって約束しただろ。」
ー俺達6人の夢、それはこの世界で争いをなくすこと。本当の意味で人と人が手を取り合って生きていける世界を作ること。もう、理不尽な暴力で死ぬ人がいないように、子どもたちが平和に生きていけるようにすること。この国は狭い。もっといろんな世界を見てきてほしい…。
俺たち6人が目指したその夢はこの今の世界から考えると不可能なことかもしれない。だから、チャンスが来たなら掴むべきなんだ。
「リアンもジュハもアルフィもその為に自分を犠牲にした。もし俺が黒妖にいって人質とか奴隷とかにされても、この三人のされたことに比べたら何でもない。ただ、心が変形するだけだろ。」
バシンッー。
「ッ…、」
また、朱輝から平手打ちを食らった。
「ソンリェン、こいつを独房に連れて行け。あと拘束しておけ。絶対に逃がすな」
「なっ!ちょっと待てよ!!お前っ、どうする気なんだ!俺が行けばすむはなしだろっ!」
ソンリェンがもう決定事項だ、というようにガシッと俺を抱きかかえて連行した。必死で訴えたけど朱輝には届かなかった。もうしょうがない。ダメ元だ。俺はソンリェンにぶりっこしてみる。
「ソンは俺の味方だよな?」
きゅるるんと目をうるませてじぃっと見てみたけど、、
「可愛いから独房に入れるんだよっ!」
て笑顔で言われた。
ガチャンッ
そして俺は独房へぶちこまれた。
「ッ駄目だ!治癒の神がまず1人も応答してくれない」
「俺もだ…。」
朱輝とソンも全力でどうにかしようとしてくれてはいるが手も足も出ないようだ。
「そもそも、惚れ薬って効果あるんだろうか?」
「………確かに」
「………そ、そうだな!」
2人は微塵も惚れ薬の効果を疑っていなかったらしい。意外とそこら辺は抜けている。
「でもどうやって確かめる?」
「そうだよ!方法がないじゃん」
何言っているんだ。この間抜けさん達は。
「何で?俺の好きな人はリアンじゃん。それは今も変わってない。二人とも忘れてないだろ?」
俺がかつての仲間、6大神リアンの名前を出した途端2人は面白いくらいに凍りついた。何でずっと触れてこないんだろうと思っていたけどやっぱり気遣ってもらってたのか。そりゃそうだ。俺はリアンが亡くなってから葬式にも行ってないしお墓参りにだって一度も行ったことがない。リアンの名前を口にするのもこれが初めてだと思う。固まってしまった二人に俺はそんな気にしなくていいよ、と言う意味の笑顔を向けた。
「そんなあからさまに凍りつくなよ」
「悪い…。」
「すまない」
2人がうなだれているもんだから、俺はもう大丈夫なのに非常に気まずいこの空気感。
「それに、本当に効果があったとして俺の元々のリアンに対する恋愛感情はどうなる?それについても考えなきゃいけないだろ。」
しばらく黙り込んでしまっていたが俺の言葉に納得したらしい。まぁ、おそらくこいつらはリアンの話をしようかしまいか迷ってたんだろうな。それを急に核心疲れたもんだから罪悪感みたいな、そんな気持ちを抱いたんだ。優しいなほんとに…。
「お前が今もリアンに対する気持ちが変わってないのは俺達もわかってはいた。」
「紫は一途だったもんな!」
「おう」
朱輝の顔は依然として暗い。
「むしろ今お前に恋愛感情があることが問題なんだよ。まだ心の中に好きな人がいる人間に無理やり特定の人間を好きにさせてみろ、お前どうなると思う?」
「…俺の心が変形させられる?」
「そうだ。人間の心は目には見えないが形があるのは知ってるだろう?もちろん、当人の状況次第で心は年々変化していく。」
もちろん知っている。心は一定の形は取らない。
「外部から急に変形させられた場合、普通なら変化に耐えきれず死ぬ。だけどお前は死ななかった。相当な精神力があったからだと思う。」
「じゃあさ、俺は心の変形に耐えきったんだろ?じゃあ、セルシウスのことを好きにはならないんじゃないのか?」
「確かにそうだ。だが即死しなくとも抗原として入った物質はお前の心に侵入している。身体に影響がなくとも…心にとっては毒物だ。そして、それは心の恋愛をする部分の所を特に変型させる。それは元々好きだった人のことを忘れさせ、特定の人をそこに移植しているということだ。お前の場合、リアンの事を完璧に忘れてセルシウスの事がそこに移る。何回も言うけど、常人ではここまで耐えきれない。まず侵入された時点で死ぬ。常人がそうなるのは精神力が心が柔らかく、壊れやすいから、心が健康だからだ。心なんて自分で意識して鍛えられない。だけど俺達は普通の人とは体の仕組みが少し違う。元々から心が硬い、脆くないし、そんな簡単に壊せない。でも、俺やソンリェンがお前と同じ抗原を体内に入れられたら即死はしないだろうがもって1週間だな。それぐらい強い抗原がお前の中に入ってる。お前だけ死ななくて済んでいるのはきっと…、お前の心がすでに壊れているから…変形に寛容なんだ。」
本当に現実離れした話でついていけない。
俺の心がすでに壊れてるって、ひどすぎないか。…。
「それで、急じゃなくて徐々にセルシウスを好きになっていく。」
忘れるって?この俺が??リアンの事を??あの人が俺の全てなのに?リアンを忘れてセルシウスを…リアンを殺した敵国の奴の事を好きになるのか?今だってリアンの死を受け入れられないのに?まだどこかで生きているんじゃないかって…俺を待っていてくれてるんじゃないかって思っているのに?……
「俺がセルシウスを好きになって、黒妖国にどんなメリットがある?俺の力が必要なだけならそんなことしなくてもただ頼めばよかっただろ」
「お前の力だけじゃなくて…お前自体をものにしたかったんだろう。お前がセルシウスの事を好きになれば、黒妖が権力を握りやすくなる。」
駄目だ。そんなんじゃ納得できない。
「才華は?それだと黒妖ばっかに利点があってあいつらには何もないじゃないか」
「セルシウス・オリバーとリー・ハオランは血が繋がっている、兄弟だそうだ。それで才華と黒妖は同盟を結んでいる。黒妖が強大になれば才華にもいろいろと有利なんだろう、他国を攻め込むのに。」
なんて醜い奴らだ。もう何も言えない。そんな奴にキスされたなんて今さら気持ち悪くなってきた。
「なるほど。今の状況はよくわかった。で、俺を差し出すのか?」
「だから!差し出さないと決定したから会議のこと伝えてなかったんだろ!」
そうだよ当たり前じゃん!っとソンも大きくうなずいている。
「俺に教えなかったのは教えたら、俺が行くって言うと思ったからじゃないのか?」
二人がうっと詰まった顔をした。やはり図星だ。俺はさらに図星をついていく。
「で、俺が敵に攻撃されて状況が変わった。心の変形は俺にしかわからないから、俺に話したんだろ。」
二人はそのとおりですって言った感じのポーズをした。なんか土下座みたいなやつ。緊張感ないな、おい。俺にとっても人生経験初だ。心にウイルスを打ち込まれるなんて。だから二人は隠しておいて俺が死んだりしたらどうしようって不安になって相談したほうがいいと思ったから俺に打ち明けたに違いない。
「俺達が、おまえに話したのはそんな感じで合ってる。だが、そうやすやすとお前を手放すわけには行かない…」
コンコンー
「朱輝様、ソンリェン様、黒妖国と才華国の皇太子様が到着いたしました。予定よりお早い到着になりますが、中にお通ししてよろしいでしょうか?」
一気に部屋の中が緊張感に包まれた。朱輝やソンリェンの顔も厳しいものになっている。二人のことだ。他の条約やらは完成しているのだろう。だけど、俺の事は拒否する予定だったのが、異常事態を引き起こされたことによって、決断を迫られている。俺の心の治療方法を考える時間がもう、ない。奴らの狙いがそれだろう。予定より早めに来てこちらの対策を充分にさせない状態で、自分たちが有利な状況で推し進めようとしてるんだ。
「…はぁ…もう時間はないってことだな」
朱輝は天を仰いだ。
そうなのだ。俺達6大神は国を守るために生まれた。いくら俺が朱輝とソンと仲が良くても、国の存亡に関わるなら切り捨てるべきなのだ。それにこの国はもう強くなった。1人1人が己の尊厳と守りたいものを守るために厳しい努力をした。現に紫灯国軍は6大国でも最強だと言われている。だけど、無駄に戦争をする必要はないはずだ。もう、先の大戦で嫌というほど俺達は味わった。それにもう俺達3人は子供じゃない。立派な大人だ。朱輝は国王、ソンは大神官っていう立場にいるんだ。俺よりも国民のことを優先しなければならない。それに…今回のことは、
「俺の責任だ。油断していなかったらこんなことにはならなかった。俺がした失態は自分で片す。だから俺にも会議に出席させろ」
そう言うと2人の表情は怒ったような悲しいような…なんとも言えない表情になった。別にいいのに、そんなに心配しなくてもさ、。
「ただ黙っておとなしく捕まっているだけじゃない。二国の情勢がどうなってるのか知る必要がある。もしこの国に戦争を仕掛けるようなら俺が、直接奴らの国ごと滅ぼしてやる」
バシッ
朱輝に胸ぐらを掴まれた。抵抗を失わせるくらいに暗い兄の声は追い詰められていた。
「もう、2度とここに帰ってこれないかもしれないんだぞ?!ッそんな、何されるかわかんないのに、何で行こうとするんだ!俺達はただでさえ特別なんだよッ!まだッ、リアンのことも忘れられてないのにっ、…そんなぼろぼろな体で何ができるんだ!!ずっとずっと毎日の襲撃を一人でッ。治療なんてこの国にいてもできるだろ!自分を犠牲にするその考えっいいかげんにしろっ!」
久しぶりに近くで見た朱輝の顔はこんな状況だけどすごく綺麗だった。本当に心配してくれてるのがわかる。あの時、朱輝も何もできなかった、ただ見てることしかできなかったそのことを今でも後悔してるんだろう。だから、俺の事を真剣に止めようとしてくれてるんだと思う。だけど、お前が俺を守りたいように…。俺もお前のこと守ってやりたいんだ。もう二度とその肌に傷をつけてほしくない。
「…お前は国王で、ソンは大神官だ。俺は過去に囚われてるだけで何もしてないただの人間だ。そんな奴にお前たちが気遣う必要ない。俺を出せば二国と同盟が成立するなら、俺達の夢に一歩近づく。夢のためならどんな犠牲もいとわないって約束しただろ。」
ー俺達6人の夢、それはこの世界で争いをなくすこと。本当の意味で人と人が手を取り合って生きていける世界を作ること。もう、理不尽な暴力で死ぬ人がいないように、子どもたちが平和に生きていけるようにすること。この国は狭い。もっといろんな世界を見てきてほしい…。
俺たち6人が目指したその夢はこの今の世界から考えると不可能なことかもしれない。だから、チャンスが来たなら掴むべきなんだ。
「リアンもジュハもアルフィもその為に自分を犠牲にした。もし俺が黒妖にいって人質とか奴隷とかにされても、この三人のされたことに比べたら何でもない。ただ、心が変形するだけだろ。」
バシンッー。
「ッ…、」
また、朱輝から平手打ちを食らった。
「ソンリェン、こいつを独房に連れて行け。あと拘束しておけ。絶対に逃がすな」
「なっ!ちょっと待てよ!!お前っ、どうする気なんだ!俺が行けばすむはなしだろっ!」
ソンリェンがもう決定事項だ、というようにガシッと俺を抱きかかえて連行した。必死で訴えたけど朱輝には届かなかった。もうしょうがない。ダメ元だ。俺はソンリェンにぶりっこしてみる。
「ソンは俺の味方だよな?」
きゅるるんと目をうるませてじぃっと見てみたけど、、
「可愛いから独房に入れるんだよっ!」
て笑顔で言われた。
ガチャンッ
そして俺は独房へぶちこまれた。
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