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「待って」と懇願され、気がつけば鏡花は玲の自室で立っていた。手には葉の形の上生菓子がのった皿があるのだが、改めて男性の部屋だと意識してしまうと滑り落としてしまいそう。前入った時はなんともなかったのは、もちろん日が浅かったのもあるだろうが、今とはなんかこう、全体的な雰囲気が違うのだ。
目の前にはなぜか頬を紅潮させ、どこか思い詰めたような顔をする婚約者。間違いなく、そういう雰囲気だと悟る。
いえ、落ち着くのよ。玲さんだって殿方だもの、そういう日だってあるわ。彼がいくら宝石にしか興味がなくたって……
そう言い聞かせるのも余計鏡花を緊張させた。そうして耐えきれなくなった鏡花はわっと声を上げた。
「あ、あの! 玲さん、私そのちょっと上手くできるか……」
何を叫んでいるんだ、と心の中で叫んだ。一応、今はまだ日が沈みきっていない夕方なのである。これからそうなってしまうのは、いささか明日の朝が心配になる。
「そうだよな、だって貴女だって初めてだから……不安にだってなるだろう」
そう呟き、玲は鏡花へと手を伸ばす。これは押し倒される――目をぎゅっと瞑った。しかし玲が手を伸ばしたのは鏡花が持つ皿。間の抜けた「え?」という声をこぼした鏡花に幸いなのか、玲は全く気が付かない様子で「わざわざありがとう」と席に座るよう促したのだった。
私の緊張、返してほしい。そう心の中で嘆いたものの、ではあのまま押し倒されていたとしたら? と考えてこれでよかったと思い直した。
「玲さんが宝石まにあでよかった」
「え?」
しまった、と鏡花は口を塞いだ。声に出してしまうなんて。なぜ、と聞かれたらどうかわそうか。
「……俺は今ばかりは、自分が宝石にしか興味がないことを恨んでいる」
そう、玲は俯いた。食べかけの上生菓子を見つめるその目は先ほど部屋の前で鏡花を呼び止めたときと同じもので。「どうして?」と間を開けてから聞き返した。宝石を誰よりも愛している彼がそんなことを言うのが少し信じられなかったからだ。
「俺は、貴女の役に立てないと、身をもって知らされているからだ」
「そんなことないわ。なぜそう思うの?」
「……春のお茶会は宝石とは真反対のものだから」
玲は藤の花や、そこにあった東屋、さらにはこの上生菓子、全てが宝石とは別物に感じると話した。花や和菓子から感じる暖かみの中に、宝石が放つ豪華さは異物であると、そう思っているらしかった。
「俺は、宝石のことしかわからないんだ。貴女は何にだって優れていて、今回だって初めての大きな仕事のはずなのに、まるでそれを感じさせない……貴女の役に立てないことが、すごく悔しいんだ」
藤の花の下で、どこか考え込んだ顔を浮かべていたのも、今さっきこう思い詰めていた表情も全て自分を思って……? そう鏡花は思わずにはいられなくなって、玲をじっと見つめた。
「あなたは、十分私を支えてくれているわ。それに私だってなんだって1人でできるわけじゃないもの。玲さんがそう思ってくれてることがとても、とても嬉しいの」
「励ましてくれているんだろう。でも俺は実際何もできていない」
「あら、私の表情を見ても嘘だって言うの?」
そう言えば、玲は鏡花へと視線を向けた。鏡花は嬉しそうに笑っている。頬が赤く染まっているのは、彼女とて少し照れくさいからだ。
「宝石商はよく観察しないと。でしょう?」
「まあ私と宝石を同じにするのは玲さんからしたら嫌かしら」と付け加え、苦笑する。
「嫌じゃ、ない。貴女はまるで――そう、アレキサンドライトみたいだ」
「アレキサンドライトってあの、すごく珍しいっていう?」
急な宝石トークに、鏡花は以前玲から聞きかじった記憶を引っ張り出す。アレキサンドライトとは希少価値がダイヤよりも高いとされている宝石。
「貴女みたいな女性は珍しいと思うんだ。アレキサンドライトのように神秘的かつ力強さもある」
玲はそう言い、力強く鏡花の手を握る。まっすぐ、おそらく宝石商にとっては大それた褒め言葉なのだろうと理解し恥ずかしくなって話題を変えようと努める。
「お菓子どうだった?」
「美味しかった。あなたの幼馴染はすごいな」
「でしょう? お茶会が楽しみね」
そして……沈黙。いよいよ居た堪れなくなり、鏡花は「夕飯もあるし長居はしないわ」と理由をつけ立ち上がろうとする。しかし、鏡花の裾はぐっと玲に引かれる。
「……もう少し、一緒にいてほしい」
そう俯いたままいう姿に、少し胸が高鳴ってしまう。当人すら体が先に動いた、というように慌てているのを見て鏡花はすとん、と腰を下ろす。それからお互い向かい合って、しばし静かになる。でも不思議と嫌な気分はない。
「ひぁっ! ちょっと玲さん、急にどうしたの」
突然足に手が伸びてきたと思ったら、慈しむように触られるものだから、鏡花は思わず変な悲鳴を上げてしまった。玲は顔を覆う鏡花を見て一瞬目を見開いたものの、すぐ足に視線を落とした。踵には靴擦れで擦れたであろう真っ赤な傷跡があり、親指と人差し指の付け根も腫れあがっている。
「怪我してる。こんなになるまでヒールや下駄で歩き回ってはよくない」
玲はおもむろに立ち上がり、引き出しを漁る。それからぺらりと絆創膏を差し出す。鏡花は自分の足なんて全然見ていなかった、と自分の足が案外靴擦れに弱いことを知る。忙しすぎて気が付かなかった。
「とりあえず今は、これを。後できちんと治療してもらってくれ」
「え、ええ。ありがとう」
「……貴女が怪我をしてしまっては、元も子もないだろう。適度に休んで」
口調は子を叱るようではあったが、鏡花を見る玲はまるで恋人を心配するかのようで。嬉しさもあるが、こんな目で見られては錯覚してしまいそうだった。鏡花は目をそっと逸らす。
「……でも、やっぱり貴女を助けられないのは辛い。支えるだけじゃなく、俺も一緒に携わりたいな」
たしかに玲の言うように宝石を取り入れるのは難しいことではある。
……でもその難題をどうするかが、経営者には大事なんだから。悪女と言わしめたくらいなんだから、婚約者の頼みくらい簡単に叶えてあげないと……そう、言い訳がましいが、要は鏡花も玲と一緒にこのお茶会を完成させたいのだ。
鏡花は頭を回転させ――以前こんな話を聞いたのを思い出した。
「今年は、天皇皇后両陛下の、結婚記念の年……」
そう呟いて、それから風の噂で天皇さまが「何かしてあげたい」と言っていた、ということも瞬間的に思い出す。前に聞いたときはこんなことになるなんて思っても見なかったから、あまり熱心に聞いてはいなかった。今は少しそれが悔やまれる。でも。
「玲さん、頼みたいことがあるの!」
鏡花は玲の手をおもむろに掴んで、閃いた素晴らしすぎるアイデアを玲に一通り語ってみせた。
目の前にはなぜか頬を紅潮させ、どこか思い詰めたような顔をする婚約者。間違いなく、そういう雰囲気だと悟る。
いえ、落ち着くのよ。玲さんだって殿方だもの、そういう日だってあるわ。彼がいくら宝石にしか興味がなくたって……
そう言い聞かせるのも余計鏡花を緊張させた。そうして耐えきれなくなった鏡花はわっと声を上げた。
「あ、あの! 玲さん、私そのちょっと上手くできるか……」
何を叫んでいるんだ、と心の中で叫んだ。一応、今はまだ日が沈みきっていない夕方なのである。これからそうなってしまうのは、いささか明日の朝が心配になる。
「そうだよな、だって貴女だって初めてだから……不安にだってなるだろう」
そう呟き、玲は鏡花へと手を伸ばす。これは押し倒される――目をぎゅっと瞑った。しかし玲が手を伸ばしたのは鏡花が持つ皿。間の抜けた「え?」という声をこぼした鏡花に幸いなのか、玲は全く気が付かない様子で「わざわざありがとう」と席に座るよう促したのだった。
私の緊張、返してほしい。そう心の中で嘆いたものの、ではあのまま押し倒されていたとしたら? と考えてこれでよかったと思い直した。
「玲さんが宝石まにあでよかった」
「え?」
しまった、と鏡花は口を塞いだ。声に出してしまうなんて。なぜ、と聞かれたらどうかわそうか。
「……俺は今ばかりは、自分が宝石にしか興味がないことを恨んでいる」
そう、玲は俯いた。食べかけの上生菓子を見つめるその目は先ほど部屋の前で鏡花を呼び止めたときと同じもので。「どうして?」と間を開けてから聞き返した。宝石を誰よりも愛している彼がそんなことを言うのが少し信じられなかったからだ。
「俺は、貴女の役に立てないと、身をもって知らされているからだ」
「そんなことないわ。なぜそう思うの?」
「……春のお茶会は宝石とは真反対のものだから」
玲は藤の花や、そこにあった東屋、さらにはこの上生菓子、全てが宝石とは別物に感じると話した。花や和菓子から感じる暖かみの中に、宝石が放つ豪華さは異物であると、そう思っているらしかった。
「俺は、宝石のことしかわからないんだ。貴女は何にだって優れていて、今回だって初めての大きな仕事のはずなのに、まるでそれを感じさせない……貴女の役に立てないことが、すごく悔しいんだ」
藤の花の下で、どこか考え込んだ顔を浮かべていたのも、今さっきこう思い詰めていた表情も全て自分を思って……? そう鏡花は思わずにはいられなくなって、玲をじっと見つめた。
「あなたは、十分私を支えてくれているわ。それに私だってなんだって1人でできるわけじゃないもの。玲さんがそう思ってくれてることがとても、とても嬉しいの」
「励ましてくれているんだろう。でも俺は実際何もできていない」
「あら、私の表情を見ても嘘だって言うの?」
そう言えば、玲は鏡花へと視線を向けた。鏡花は嬉しそうに笑っている。頬が赤く染まっているのは、彼女とて少し照れくさいからだ。
「宝石商はよく観察しないと。でしょう?」
「まあ私と宝石を同じにするのは玲さんからしたら嫌かしら」と付け加え、苦笑する。
「嫌じゃ、ない。貴女はまるで――そう、アレキサンドライトみたいだ」
「アレキサンドライトってあの、すごく珍しいっていう?」
急な宝石トークに、鏡花は以前玲から聞きかじった記憶を引っ張り出す。アレキサンドライトとは希少価値がダイヤよりも高いとされている宝石。
「貴女みたいな女性は珍しいと思うんだ。アレキサンドライトのように神秘的かつ力強さもある」
玲はそう言い、力強く鏡花の手を握る。まっすぐ、おそらく宝石商にとっては大それた褒め言葉なのだろうと理解し恥ずかしくなって話題を変えようと努める。
「お菓子どうだった?」
「美味しかった。あなたの幼馴染はすごいな」
「でしょう? お茶会が楽しみね」
そして……沈黙。いよいよ居た堪れなくなり、鏡花は「夕飯もあるし長居はしないわ」と理由をつけ立ち上がろうとする。しかし、鏡花の裾はぐっと玲に引かれる。
「……もう少し、一緒にいてほしい」
そう俯いたままいう姿に、少し胸が高鳴ってしまう。当人すら体が先に動いた、というように慌てているのを見て鏡花はすとん、と腰を下ろす。それからお互い向かい合って、しばし静かになる。でも不思議と嫌な気分はない。
「ひぁっ! ちょっと玲さん、急にどうしたの」
突然足に手が伸びてきたと思ったら、慈しむように触られるものだから、鏡花は思わず変な悲鳴を上げてしまった。玲は顔を覆う鏡花を見て一瞬目を見開いたものの、すぐ足に視線を落とした。踵には靴擦れで擦れたであろう真っ赤な傷跡があり、親指と人差し指の付け根も腫れあがっている。
「怪我してる。こんなになるまでヒールや下駄で歩き回ってはよくない」
玲はおもむろに立ち上がり、引き出しを漁る。それからぺらりと絆創膏を差し出す。鏡花は自分の足なんて全然見ていなかった、と自分の足が案外靴擦れに弱いことを知る。忙しすぎて気が付かなかった。
「とりあえず今は、これを。後できちんと治療してもらってくれ」
「え、ええ。ありがとう」
「……貴女が怪我をしてしまっては、元も子もないだろう。適度に休んで」
口調は子を叱るようではあったが、鏡花を見る玲はまるで恋人を心配するかのようで。嬉しさもあるが、こんな目で見られては錯覚してしまいそうだった。鏡花は目をそっと逸らす。
「……でも、やっぱり貴女を助けられないのは辛い。支えるだけじゃなく、俺も一緒に携わりたいな」
たしかに玲の言うように宝石を取り入れるのは難しいことではある。
……でもその難題をどうするかが、経営者には大事なんだから。悪女と言わしめたくらいなんだから、婚約者の頼みくらい簡単に叶えてあげないと……そう、言い訳がましいが、要は鏡花も玲と一緒にこのお茶会を完成させたいのだ。
鏡花は頭を回転させ――以前こんな話を聞いたのを思い出した。
「今年は、天皇皇后両陛下の、結婚記念の年……」
そう呟いて、それから風の噂で天皇さまが「何かしてあげたい」と言っていた、ということも瞬間的に思い出す。前に聞いたときはこんなことになるなんて思っても見なかったから、あまり熱心に聞いてはいなかった。今は少しそれが悔やまれる。でも。
「玲さん、頼みたいことがあるの!」
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