世にも微妙な喪の語り〜2024春の特別編〜

家頁愛造(やこうあいぞう)

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2024春の特別編

開かずの扉

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 私は優菜ゆな
 都内に住むそこそこ可愛い女子高生です。
 ゴールデンウィークへ入り、私達は父の実家のある田舎町へと帰郷することとなりました。
 
 電車を乗り継ぎ、駅から出るとそこは自然豊かで長閑な景色が広がっています。
 野鳥たちの美しいさえずりがまるで私達を歓迎しているかのようです。
 タクシーを呼んでしばらくの間、山道を進んでゆくと開けた土地が見えてきました。
 そこには大きな古い木造の屋敷があるのです。

 この屋敷こそが父の実家なのです。

 家の前には祖父と祖母が待っており、こちらのタクシーを見つけると嬉しそうに大きく手を振りました。
 二人とも私達の到着を歓迎しています。

 「よう来たねタカシ。優菜ゆなちゃんもこんなに大きくなって」
 
 「ただいま父さん、元気そうで何よりだよ。何か変わったこと●●●●●●はない?」
 
 「ああ、いつも通り●●●●●だよ。まあゆっくりしていってくれ」

 それから私達は普段は食べられないようなご馳走を振る舞われ、楽しい時間はあっという間に過ぎてゆき夜となり一階の座敷で眠りにつきました。

 しかし私は目覚めてしまったのです。
 それは尿意でした。

 みんなを起こさないように気を遣い用を足すと、ふととある事を思い出したのです。

 何度かこの屋敷へ訪れているものの一度も入ったことのない謎の部屋が二階の奥にあるのです。
 その部屋はいつも障子窓で閉ざされており、外から中の様子を確認することはできませんでした。

 私がまだ幼い頃、好奇心でその部屋の扉を開けようとしたことがあるですが寸前のところで父に見つかってしまったのです。

 「そこは絶対に開けるな!!」

 こんな怖い表情の父は未だかつて見たことがありませんでした。

 『そこには何があるんだろう?』

 いけない事だとは分かります。しかし私はどうしても気になって仕方ないのです。
 幸い今はみんな眠っています。
 今なら誰にも気付かれずにあの秘密の部屋の内部をこの目で確認できるのです。

 足音を立てないように静かにゆっくりと階段を上がっていきます。
 窓から差し込んだ月明かりが私を導いてくれます。
 そして長い廊下を抜けると、目の前には全面木製の古い扉があります。
 あの開かずの扉の前へと着いたのです。

 『この奥には一体何が……?』

 金属製のドアノブに手を掛けると私は怖くなりました。
 もしかするとこの奥には幽霊が潜んでいるのではないのだろうか? と。

 鼓動が高まり手が震えます。怖い…でも見たい。
 こんなチャンスもうないかもしれない。

 私は思いきってドアを開けたのです!

 「キャアアアアアーーーーーッ!!」

 思わず悲鳴を上げてしまいました。

 その和室には誰なのか全く分からない小太り中年男性の姿、そして壁じゅうに美少女アニメのポスターが貼ってありました。

 その男と目が合ったのです!
 男はこちらを見て驚いた様子でした。

 気が付くと私は家族で眠る座敷の布団の中にいました。

 後に父から聞いた話なのですが、父に兄がいたそうです。それがあの男でした。
 定職に就かず部屋に籠もってアニメばかり見ていたので、家族ぐるみで存在を抹消して『いなかった子』扱いしていたというのです。

 その後、社会人となった私は今はもうあの屋敷へは帰っていません。
 あの男は今もまだ無職のままあの部屋でアニメを見続けているのでしょうか?


――――――――――――――――――

喪田「一見、何事もなく上手くいっている家庭のように見えても他人からは分からない闇を抱えている場合があります。ほらあなたの近所にも…」

―開かずの間 完―
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