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第一章 相田一郎
何かを成したい
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今俺はこの可もなく不可もなくな繰り返しの毎日にどっぷり浸かって甘んじているが、何か大きなことやりたくなることだってある。
まだ完全に枯れてるわけじゃあない。
でもその大きなことというのが分からない。何をすればいいのかが分からない。というより何ならできるのかが分からない。
そもそもこの会社へ入った理由というのもべつにこの仕事が好きだからというわけではない。
面接では『歴史ある御社にてやりがいを求めたいと思いました』とか言ったが、そんなことは微塵にも思ってはいない。それはデタラメだ。
本当の理由は土日がほとんど休みで家からある程度近くてなんとなく仕事が緩そうでやれそうな感じだったからだ。
過去に何度かいろいろ試そうとしたことはあった。ピアノを弾こうとしたり、漫画を書こうしたり、ゲームを作ろうともした。
しかしどれも中途半端で上手くいかなかった。
才能が足りないのだろうけど何より忍耐力が足りない。どこかで『ここまでやればいいだろう』という詰めの甘さが出てしまっている。
勉強だってそうだったな、高校こそ卒業できたもののせいぜい平均点を取れるかどうかの成績だった。
もし何らかの才能があれば俺はこの町を出ていたのかもしれない。この結果が今の俺というわけだ。
でも何かやりたい。自分の中だけで終わるオンリーワンじゃなく大勢の人々に認められるようなこと。こんな自分にでもできることはないだろうか?
あるぞ……
いつもやってるじゃないか。空想…想像すること。
そうだ小説を書こう!
根拠はないが何となくやれそうな気がしてきた。絵やプログラミングの技術なんていらない。センスと感性で勝負だ。
今日から始めよう。家に帰ったら始めよう。
「おーい一郎!」
背後からの近距離不意打ちのたくましい声におもわず体がビクついた。
振り返れば作業着を着た恰幅の良すぎる笑顔の中年男性の姿。彼は先輩である配送担当の金山さんだ。
金山さんはどういうわけかちょっと前歯が抜けちゃってるがとても性格が明るくて良い人だ。社長のことを裏でハゲと呼んだり職場ではよく冗談を言ったりする俺の兄貴的な存在だ。
そんな彼の冗談に俺もよく乗せられて付き合うことが多い。
「これ持っていっていいか?」
金山さんが指差しているのはPPバンドで縛られている俺が作った加工済み製品の固まり。
どうやら仕上がった製品の一部を取りに来たようだ。
「ああ、大丈夫っすよ」
「今日は太陽が眩しいな。ハゲに近づくと目がやられる」
「事務所でもヘルメット着用の義務が必要っすね」
「滑って被れないんじゃねえか?」
「ハハハ!」
そうして金山さんはベテランらしい慣れた手つきで目的のモノを年季の入ったフォークリフトで運んでいった。
彼はよく冗談を飛ばすが仕事の姿勢はいたって真面目だ。言葉ではよくふざけるが仕事はしっかりと忠実にこなす。
正に先輩の鏡といえる頼もしい男だ。
おっといつの間にか加工が終わってるじゃないか。次の材料をセットしないと。
まだ完全に枯れてるわけじゃあない。
でもその大きなことというのが分からない。何をすればいいのかが分からない。というより何ならできるのかが分からない。
そもそもこの会社へ入った理由というのもべつにこの仕事が好きだからというわけではない。
面接では『歴史ある御社にてやりがいを求めたいと思いました』とか言ったが、そんなことは微塵にも思ってはいない。それはデタラメだ。
本当の理由は土日がほとんど休みで家からある程度近くてなんとなく仕事が緩そうでやれそうな感じだったからだ。
過去に何度かいろいろ試そうとしたことはあった。ピアノを弾こうとしたり、漫画を書こうしたり、ゲームを作ろうともした。
しかしどれも中途半端で上手くいかなかった。
才能が足りないのだろうけど何より忍耐力が足りない。どこかで『ここまでやればいいだろう』という詰めの甘さが出てしまっている。
勉強だってそうだったな、高校こそ卒業できたもののせいぜい平均点を取れるかどうかの成績だった。
もし何らかの才能があれば俺はこの町を出ていたのかもしれない。この結果が今の俺というわけだ。
でも何かやりたい。自分の中だけで終わるオンリーワンじゃなく大勢の人々に認められるようなこと。こんな自分にでもできることはないだろうか?
あるぞ……
いつもやってるじゃないか。空想…想像すること。
そうだ小説を書こう!
根拠はないが何となくやれそうな気がしてきた。絵やプログラミングの技術なんていらない。センスと感性で勝負だ。
今日から始めよう。家に帰ったら始めよう。
「おーい一郎!」
背後からの近距離不意打ちのたくましい声におもわず体がビクついた。
振り返れば作業着を着た恰幅の良すぎる笑顔の中年男性の姿。彼は先輩である配送担当の金山さんだ。
金山さんはどういうわけかちょっと前歯が抜けちゃってるがとても性格が明るくて良い人だ。社長のことを裏でハゲと呼んだり職場ではよく冗談を言ったりする俺の兄貴的な存在だ。
そんな彼の冗談に俺もよく乗せられて付き合うことが多い。
「これ持っていっていいか?」
金山さんが指差しているのはPPバンドで縛られている俺が作った加工済み製品の固まり。
どうやら仕上がった製品の一部を取りに来たようだ。
「ああ、大丈夫っすよ」
「今日は太陽が眩しいな。ハゲに近づくと目がやられる」
「事務所でもヘルメット着用の義務が必要っすね」
「滑って被れないんじゃねえか?」
「ハハハ!」
そうして金山さんはベテランらしい慣れた手つきで目的のモノを年季の入ったフォークリフトで運んでいった。
彼はよく冗談を飛ばすが仕事の姿勢はいたって真面目だ。言葉ではよくふざけるが仕事はしっかりと忠実にこなす。
正に先輩の鏡といえる頼もしい男だ。
おっといつの間にか加工が終わってるじゃないか。次の材料をセットしないと。
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