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第一章 相田一郎
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「はいはいはいはい……」
急ぎ足でリビングへ向かうとテーブルにはすでに晩飯が用意されていた。そして親父と母さんが料理には手をつけず座椅子に座ってニュース番組を眺めている。
遅れをとりながらも俺も座椅子へ座ると親父が話しかけてきた。
「一郎、最近仕事の調子はどうだ、変わったことはないか?」
「うーん、いつも通りだよ。普通だよ普通」
「そうか……会社の人たちとは仲良くやってるか?」
「まあ先輩とはよく話すし大丈夫だよ」
「そうか…」
一体何を聞き出そうとしたものか。まるで面接官みたいだな。
親父はどことなく厳格でしっかりした雰囲気があって俺とは全然タイプが違う。デカいしガタイは良いし顔はイカついし何よりエリート感が出ている。
息子があんなみすぼらしい町工場で働いていることに失望でもしているのだろうか?
でもべつに説教するわけでもないし怒ってる様子も呆れてる様子もないし、親父の考えてることは本当に分からないな。
手を合わせお辞儀をし、いただきますの挨拶をみんなですると晩飯を全てたいらげた。
「どうだ一郎、今日の料理は美味かったか?」
「まあ普通だよ普通。不味くもないしめちゃくちゃ美味いわけでもないよ」
「そうか…」
また親父との何でもないやり取りだ。
本当は何でもいいからとりあえず俺と会話したかっただけ、きっとそんなところだろう。
不器用な男にできる精一杯のコミュニケーションだ。
『今入りましたニュースです。中国政府は新型ウイルス感染拡大防止のため、発生源である町を封鎖しました』
ああそういえば朝のニュースで速報をやってたな。
テレビには日本人現地リポーターのリアルタイム映像が映し出されている。
『そちらの様子はどうですか?』
『現在、私は感染源となった場所から約三十キロ離れた隣町におります。現地では感染が驚異的な勢いで拡大しており、じきにこの町にも封鎖範囲が広がると住民たちが予想し、町には混乱が起こりたくさんの人々が出て行きます』
映像には大渋滞している道路、燃える車、そして商店への略奪行為などが映し出されている。
それはまるでこの世の終わりがきたかのようにも見えた。
『この場所も危険なようです。そろそろ我々もここを立ち去ろうと思います』
『ありがとうございました。それではお気をつけて』
なんだかとんでもない事になっているようだ。
とはいってもそれは海外の話だ。
幸い日本は島国だ。そうやすやすとウィルスが持ち込まれることなどないだろう。
所詮は対岸の火事、その程度だ。
「大変なことになったわね。こっちにも広がらなきゃいいけど……」
「いちいち心配しなくていいよ母さん、日本は大丈夫。いつものことさ」
「一郎、日常なんてのは簡単に壊れるものだぞ。父さんだって両親が事故で早死にした時は大変だったんだぞ。壊れる時は一瞬だからな」
「はいはい分かったよ」
なんだか説教になりそうな雰囲気だったので俺は逃げるように早々に部屋へと戻り、小説の続きを書くことにした。
急ぎ足でリビングへ向かうとテーブルにはすでに晩飯が用意されていた。そして親父と母さんが料理には手をつけず座椅子に座ってニュース番組を眺めている。
遅れをとりながらも俺も座椅子へ座ると親父が話しかけてきた。
「一郎、最近仕事の調子はどうだ、変わったことはないか?」
「うーん、いつも通りだよ。普通だよ普通」
「そうか……会社の人たちとは仲良くやってるか?」
「まあ先輩とはよく話すし大丈夫だよ」
「そうか…」
一体何を聞き出そうとしたものか。まるで面接官みたいだな。
親父はどことなく厳格でしっかりした雰囲気があって俺とは全然タイプが違う。デカいしガタイは良いし顔はイカついし何よりエリート感が出ている。
息子があんなみすぼらしい町工場で働いていることに失望でもしているのだろうか?
でもべつに説教するわけでもないし怒ってる様子も呆れてる様子もないし、親父の考えてることは本当に分からないな。
手を合わせお辞儀をし、いただきますの挨拶をみんなですると晩飯を全てたいらげた。
「どうだ一郎、今日の料理は美味かったか?」
「まあ普通だよ普通。不味くもないしめちゃくちゃ美味いわけでもないよ」
「そうか…」
また親父との何でもないやり取りだ。
本当は何でもいいからとりあえず俺と会話したかっただけ、きっとそんなところだろう。
不器用な男にできる精一杯のコミュニケーションだ。
『今入りましたニュースです。中国政府は新型ウイルス感染拡大防止のため、発生源である町を封鎖しました』
ああそういえば朝のニュースで速報をやってたな。
テレビには日本人現地リポーターのリアルタイム映像が映し出されている。
『そちらの様子はどうですか?』
『現在、私は感染源となった場所から約三十キロ離れた隣町におります。現地では感染が驚異的な勢いで拡大しており、じきにこの町にも封鎖範囲が広がると住民たちが予想し、町には混乱が起こりたくさんの人々が出て行きます』
映像には大渋滞している道路、燃える車、そして商店への略奪行為などが映し出されている。
それはまるでこの世の終わりがきたかのようにも見えた。
『この場所も危険なようです。そろそろ我々もここを立ち去ろうと思います』
『ありがとうございました。それではお気をつけて』
なんだかとんでもない事になっているようだ。
とはいってもそれは海外の話だ。
幸い日本は島国だ。そうやすやすとウィルスが持ち込まれることなどないだろう。
所詮は対岸の火事、その程度だ。
「大変なことになったわね。こっちにも広がらなきゃいいけど……」
「いちいち心配しなくていいよ母さん、日本は大丈夫。いつものことさ」
「一郎、日常なんてのは簡単に壊れるものだぞ。父さんだって両親が事故で早死にした時は大変だったんだぞ。壊れる時は一瞬だからな」
「はいはい分かったよ」
なんだか説教になりそうな雰囲気だったので俺は逃げるように早々に部屋へと戻り、小説の続きを書くことにした。
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