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第14話 僕は芸人じゃない!?
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「はー、美味しいです。このしっとりしたアンコの食感と口の中にほんのりと広がる甘み、そして抹茶のほろ苦さ。最高の組み合わせです!」
ラディアさんは注文したケーキを一口食べると、頬を緩ませて舌鼓を打っていた。
「ところで、ハルガード君。冒険の準備をするって言っても、何処へ行く予定なんですか?」
「そこなんだよね。回復アイテムになる素材を集めようと思うんだけど、そもそもどんな薬にしようかっていうアイディアから練らなきゃいけないから……まだ、どこに行くのかも決めてないんだ」
ラディアさんの質問に、僕は率直に答えた。まったくもって無計画な情けない話だった。けれど、ラディアさんは嫌な顔ひとつせず回答してくれる。
「それでは、まずは何が必要なのかを考えるところからですね。行く場所が決まらないと、準備のしようもありませんから」
僕はラディアさんの答えに納得する。そうだよね。向かう場所があるから、何が起こるか想定できる。何が起こるか想定できるから、それに備えるんだ。なるほど、勉強になる。
「えっと、私は回復アイテム作りに関してはよく分からないのですけど……何から手を付けたら良いんでしょうか?」
「うーん、お題は『ライフポーション』の後継商品だから。まずは『ライフポーション』について考えてみようかな」
アイテム設計については、実用性と効能が大事だ。効能が強くても、副作用――望まない効果も一緒に出てしまえば、実用性の面で大きく評価が落ちる。言い換えれば、効能が劣っていても使い勝手がよく、実用性が高ければ評価は高い。
「ラディアさん。アカデミーにいた時から、たまに冒険へ行くこともあったって言ってたよね。『ライフポーション』の使い勝手はどうだった?」
実際に冒険へ行く者が目の前にいるんだ。僕は現場の声を聞くのが手っ取り早いと判断すると、直接ラディアさんに聞いてみることにした。
ラディアさんはスプーンを咥えて明後日の方向を見た。過去の冒険を思い出しながら、僕の質問に答えてくれる。
「そうですね……『ライフポーション』は沢山持ってかなきゃいけないのが大変ですかね。瓶も結構かさばるし、もう少し回復量が大きいアイテムがあればなって思ってました」
「なるほど。でも、それなら『エリクシール』を持っていけば良くない?」
「『エリクシール』は万能で便利なんですけど、ちょっと冒険へ出るだけだと値段が高くつくんですよね。私にとっては、いつも持ち歩くほど必要という訳でも無いですし」
なるほどね。確かに、僕も街の近辺でモンスターを狩りに行くとき『エリクシール』までは使おうと思わなかったな。少ない回復量で十分な場面が多い人にとっては、安価で手頃な『ライフポーション』の方が良いってことだ。
逆に、ちょっと危険な場所へ冒険に行く時は、『ライフポーション』じゃ不便になる。沢山持ち歩かなければいけないから、結構な荷物になってしまうんだろう。
「となると、『ライフポーション』の利点は安価で手頃なこと。欠点は回復量が少ないことか」
「あ、凄い。そうなんです。さすが、ハルガード君。分析が上手ですね!」
利点と欠点は、コインの表と裏みたいなもの。時にひっくり返ることがある。
回復量を上げるとなると、濃度を濃くするか、より高価な素材を使うことになる。値段も当然、高くなるだろう。そうすると、今度は手軽さが失われて不便になっていく。一方で、回復量が大きいぶん荷物は減るから、持ち歩くには適した形になると思う。
つまり、ラディアさんのように気楽に冒険へ行く人にとっての利便性が損なわれるけど、ナクトル達みたいな危険な冒険へ行く人にとっては便利になるってことだ。
回復量の大きさでいえば『エリクシール』が群を抜いている。けれど、ラディアさんはそこまでの効果を求めていない。そして、『ライフポーション』を使うのはラディアさんのような人達になりそうだ。そうすると、そっちの人達が便利に感じるよう設計しなければならないだろうな……。
これは、難しい問題だ。
「そうすると、回復量を上げつつ、邪魔にならないよう瓶は大きくないものに。そして、値段も手頃な感じに抑えられるようにしなきゃいけないのか」
しかも、回復アイテムには魔力酔いの問題がついてまわる。回復量が増えれば、急激な体調の変化に体がついていけず、頭痛や目眩を起こすリスクがあるんだよね。これも使い勝手を悪くする要因のひとつだ。
これらの条件がいい塩梅で妥当なのが、現在の『ライフポーション』の位置付けなのだ。これに勝るアイテムを考えなければならないとなると、結構な難問だぞ。
「ハルガード君、そのケーキって、そんなに渋い味なんですか?」
「え? いや、そんな事ないけど」
「だって、ハルガード君てば眉間にシワを寄せて苦しそうに食べてるんですもの……」
どうやら、僕の考えは顔にはっきりと出ていたようだ。そんなに難しい顔して食べてたのかな……。
「あ、いや。とても美味しいよ。甘くて」
「それなら、もっと美味しく食べて欲しいです……」
ラディアさんは残念そうに呟いて抹茶のケーキを一口食べる。ケーキを食べると問答無用で頬がゆるむのは見ていて面白い。これが、美味しそうに食べるっていうことなのかな。僕も真似してみようか。
「くすくす……。ハルガード君、変な顔ですよ」
「え、酷いなぁ……僕だって、頑張ってるのに」
「うふふ、すみません。ハルガード君って、面白いですね。ケーキ食べながら眉をひそめてニヤニヤしてるなんて。顔芸人みたいです」
顔芸人って何ですかねぇ……。
ラディアさんは注文したケーキを一口食べると、頬を緩ませて舌鼓を打っていた。
「ところで、ハルガード君。冒険の準備をするって言っても、何処へ行く予定なんですか?」
「そこなんだよね。回復アイテムになる素材を集めようと思うんだけど、そもそもどんな薬にしようかっていうアイディアから練らなきゃいけないから……まだ、どこに行くのかも決めてないんだ」
ラディアさんの質問に、僕は率直に答えた。まったくもって無計画な情けない話だった。けれど、ラディアさんは嫌な顔ひとつせず回答してくれる。
「それでは、まずは何が必要なのかを考えるところからですね。行く場所が決まらないと、準備のしようもありませんから」
僕はラディアさんの答えに納得する。そうだよね。向かう場所があるから、何が起こるか想定できる。何が起こるか想定できるから、それに備えるんだ。なるほど、勉強になる。
「えっと、私は回復アイテム作りに関してはよく分からないのですけど……何から手を付けたら良いんでしょうか?」
「うーん、お題は『ライフポーション』の後継商品だから。まずは『ライフポーション』について考えてみようかな」
アイテム設計については、実用性と効能が大事だ。効能が強くても、副作用――望まない効果も一緒に出てしまえば、実用性の面で大きく評価が落ちる。言い換えれば、効能が劣っていても使い勝手がよく、実用性が高ければ評価は高い。
「ラディアさん。アカデミーにいた時から、たまに冒険へ行くこともあったって言ってたよね。『ライフポーション』の使い勝手はどうだった?」
実際に冒険へ行く者が目の前にいるんだ。僕は現場の声を聞くのが手っ取り早いと判断すると、直接ラディアさんに聞いてみることにした。
ラディアさんはスプーンを咥えて明後日の方向を見た。過去の冒険を思い出しながら、僕の質問に答えてくれる。
「そうですね……『ライフポーション』は沢山持ってかなきゃいけないのが大変ですかね。瓶も結構かさばるし、もう少し回復量が大きいアイテムがあればなって思ってました」
「なるほど。でも、それなら『エリクシール』を持っていけば良くない?」
「『エリクシール』は万能で便利なんですけど、ちょっと冒険へ出るだけだと値段が高くつくんですよね。私にとっては、いつも持ち歩くほど必要という訳でも無いですし」
なるほどね。確かに、僕も街の近辺でモンスターを狩りに行くとき『エリクシール』までは使おうと思わなかったな。少ない回復量で十分な場面が多い人にとっては、安価で手頃な『ライフポーション』の方が良いってことだ。
逆に、ちょっと危険な場所へ冒険に行く時は、『ライフポーション』じゃ不便になる。沢山持ち歩かなければいけないから、結構な荷物になってしまうんだろう。
「となると、『ライフポーション』の利点は安価で手頃なこと。欠点は回復量が少ないことか」
「あ、凄い。そうなんです。さすが、ハルガード君。分析が上手ですね!」
利点と欠点は、コインの表と裏みたいなもの。時にひっくり返ることがある。
回復量を上げるとなると、濃度を濃くするか、より高価な素材を使うことになる。値段も当然、高くなるだろう。そうすると、今度は手軽さが失われて不便になっていく。一方で、回復量が大きいぶん荷物は減るから、持ち歩くには適した形になると思う。
つまり、ラディアさんのように気楽に冒険へ行く人にとっての利便性が損なわれるけど、ナクトル達みたいな危険な冒険へ行く人にとっては便利になるってことだ。
回復量の大きさでいえば『エリクシール』が群を抜いている。けれど、ラディアさんはそこまでの効果を求めていない。そして、『ライフポーション』を使うのはラディアさんのような人達になりそうだ。そうすると、そっちの人達が便利に感じるよう設計しなければならないだろうな……。
これは、難しい問題だ。
「そうすると、回復量を上げつつ、邪魔にならないよう瓶は大きくないものに。そして、値段も手頃な感じに抑えられるようにしなきゃいけないのか」
しかも、回復アイテムには魔力酔いの問題がついてまわる。回復量が増えれば、急激な体調の変化に体がついていけず、頭痛や目眩を起こすリスクがあるんだよね。これも使い勝手を悪くする要因のひとつだ。
これらの条件がいい塩梅で妥当なのが、現在の『ライフポーション』の位置付けなのだ。これに勝るアイテムを考えなければならないとなると、結構な難問だぞ。
「ハルガード君、そのケーキって、そんなに渋い味なんですか?」
「え? いや、そんな事ないけど」
「だって、ハルガード君てば眉間にシワを寄せて苦しそうに食べてるんですもの……」
どうやら、僕の考えは顔にはっきりと出ていたようだ。そんなに難しい顔して食べてたのかな……。
「あ、いや。とても美味しいよ。甘くて」
「それなら、もっと美味しく食べて欲しいです……」
ラディアさんは残念そうに呟いて抹茶のケーキを一口食べる。ケーキを食べると問答無用で頬がゆるむのは見ていて面白い。これが、美味しそうに食べるっていうことなのかな。僕も真似してみようか。
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