最強竜殺しの弟子

猫民のんたん

文字の大きさ
14 / 38
第一章 いざ、竜狩りへ

014 ネルビス一団

しおりを挟む
「そういえば、街ではあまりあなたの姿を見かけないけれど。ザックスは、ドラガリアにはあまり来ないのかしら?」

「いや、そうでもねぇよ。つっても、七日に一回くらいの頻度だけどな」

 ザックスは腕を頭の後ろに組みながら答えた。

 ザックスたちは今、ドラガリアの中央部に来ていた。煉瓦で舗装された道を二人で並んで歩いている。

 街の往来は人が行き交うものの、それなりの荷物を持ちながらでもぶつかることが無い程度には、人が多くない。

 この時間帯は、店で作業をしている人も多いのだ。

 ザックスは色とりどりの石壁がずらりと並ぶ街を眺めながら、言葉を続けた。

「まあ、食い物の備蓄は納屋にあるし、大体は燃料とか雑貨の買い出しだな。行商も定期的に来てくれてるから、そんなに買い込むこともねぇんだ」

「へぇ、意外と悠々自適な生活を送ってるのね」

 マーブルは意外そうに口へ手をあてた。

「森の中でずっと生活してるから、不便で退屈に感じてると思ってたわ」

 ザックスは腕を組み、眉間にしわを寄せる。

「うーん、不便と言えばそうなのかもしれねぇけど、もう慣れちまってるしな。それに、狩りの感覚はやっぱ、こういう街にいると鈍ってくる気がするんだよ」

「ふーん、どうして?」

「何て言うかな。誰かがいるのが当たり前だし、自分を襲ってくる奴も滅多にいねぇからかな。危機感が薄くなりがちなんだよ。森に居たら、基本的に食うか食われるかだぜ」

「そうなのね。なんか、殺伐としてるのね」

「まーな。だから、気配には敏感になるし、物音にも気を付けるようになるんだ。でも、ここみたいにずっと喧しいこともねぇから、そんなストレスにはならねぇんだよ」

 ザックスはマーブルに苦笑いを向けた。

「そういうものかしら」

 マーブルはザックスを見上げて言葉を返す。と、ふと視界の端に意識が向いた。

「そろそろね。あそこに見える赭色しゃしょくの建物が、ネルビス一団の拠点よ」

 マーブルが指さす先には、暗赤色の大きな建物があった。

 その建物へ、甲冑を身に着けた茶髪の男が木箱を運んでいる。

「ネルビスの旦那ぁー。ブツが届きましたぜー」

 そういって、男は建物の中へと吸い込まれていった。

 ザックスとマーブルはネルビス一団の拠点までやってくると、解放された引き戸から中を覗き込んだ。

「よし、そこに置いといてくれ」
「うぃーっす」

 銀色のぱっつん前髪が指揮を執り、茶髪の男は箱を抱えながら部屋の隅へと歩いていく。

「ネルビスの旦那。対竜ネットの方が、納品に時間がかかりそうです」

 坊主頭の男が銀髪の小男へと近寄り、声をかけた。

「そうか。今回の作戦にはあった方が助かるが、間に合いそうにないか?」

「ええ。どうやら巣の移動を開始したようで、次の住処が定まるまでは回収できないようです」

「仕方がない。手元にある分で何とかしよう。……ん?」

 銀髪の男が入口で覗く二人に気が付いた。マーブルがほほえみながら手を振る。

「なんだ、マーブルじゃないか。そんなところにいないで、中に入っていいぞ」

「ごめんあそばせ、ネルビスさん。今、取り込み中だったかしら?」

「まあな。次の獲物を狩りに行く準備をしているところだ。ところで、そいつは誰だ?」

 ネルビスと呼ばれた男は、マーブルの隣に立つザックスを見やる。頭からなめるように視線を這わせると、腰のホルスターに収まったガン・ソードで目を止め、眉をひそめた。

「その銃は……」

「気付いたかしら。彼の名は、ザックス。あのガン・ソードの後継者よ」

「いや、まだ正式に決まったわけじゃねぇけどよ。親父からまだちゃんと言われてねぇし」

 ザックスは若干照れながら訂正する。が、マーブルの言葉によって辺りの空気は一変し、どよめきだした。

 竜追い人にとって、武器を引き継ぐという事はその業を引き継ぐ事を意味し、新たな竜追い人として活動することを意味していた。

 ザックスは、『竜殺し』ビゴットからガン・ソードを引き継ぎ、その業を継ぐ後継者としてここに立っている、と。世間ではそう捉えられる。

「貴様が、ビゴットの後継者、だと?」

 ネルビスが険しい顔でザックスを睨みつける。

「んー、まあ一応、その予定だ」

 ザックスは頬を掻きながら、少し照れくさそうに答えた。

「ふんっ。で、これまででお前が狩った竜は何だ? ワイバーンか? レオレッグスか?」

 ネルビスは、食用として狩られることの多いDランク竜種の名をあげた。

 マーブルはおさげを左右に振り、人差し指を立てて答える。

「いいえ。聞いて驚かないでくださいまし、ネルビスさん。ザックスが初めて狩った竜は、あの翡翠竜なのよ」

 マーブルの言葉に周囲がざわついた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...