最強竜殺しの弟子

猫民のんたん

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第一章 いざ、竜狩りへ

024 いざ、竜狩りへ

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「条件は飲んだぞ。さっそく、教えてもらおうか。あの角の採取方法を」

「おう、そうだったな。それじゃあ、教えてやるからしっかり聞いとけよ」

 一同の視線が、ザックスに集まる。皆が固唾を呑んで見つめる中、ザックスは口を開いた。

「翡翠竜は、魔力のあるもんが好物だ。それを持って、奴の口の中に飛び込む。奴の魔力障壁は途轍もねぇほど強力だが、てめぇの身体の中には展開できねぇ。だから、奴の身体の中からコイツでぶった切るんだぜ!」

 言って、ザックスは腰につけたガン・ソードをぽんと叩く。

 ザックスの説明に、全員があっけに取られていた。

「……ひとつ良いか、ザックス」

 ネルビスが、片手をあげて疑問を投げかける。

「貴様、まさか翡翠竜に食われたのか?」

「ああ。じゃないと、ぶった切れねぇだろ?」

 ザックスはさも当たり前のように返す。ネルビスは手を額に当て、銀色の髪を持ち上げた。

「く、くくく……っ」

 ネルビスの口から、思わず笑いが漏れ出る。

「とんでもないな、貴様は。よっぽどの馬鹿か、見たことも無い大物のどちらかだ!」

 褒めてるのか貶しているのか分からない感想と共に、ネルビスは腹を抱えて笑い出した。

 ネルビスの背後にいる男衆が唖然とした様子で、ザックスとネルビスを見ている。

「なんだよ、いきなり。何かおかしいこと言ったか、俺?」

 ネルビスの様子が気に食わなかったザックスは、自分を指さしマーブルに尋ねた。が、マーブルに代わって、ひとしきり笑い終えたネルビスが答えた。

「普通、我々竜追い人は自分の生活のため、そして人類の発展に貢献するため竜を狩る。それはつまり、生きて素材を持ち帰る前提だ。そのために準備し、作戦を練り、竜狩りに臨む。無論、命を失うことは覚悟せねばならないが、命を捨てに行くわけではない。戦略的撤退も視野に入れて討伐に向かうのが当然だ」

 ネルビスはザックスを指さす。

「ところが、貴様はどうだ。翡翠竜に食われに行く奴がどこにいる。一歩間違えば即死の行為ではないか。そんな捨て身の行為など、誰が真似できよう」

 一寸先は死の淵。そこを跳び越えられるかどうかの賭けに挑める人間は、そう居ない。ネルビスの指摘は、その場にいるザックス以外の誰もが思っていたことである。

「それと、生半可な武器では口の中からでさえ翡翠竜に致命傷を与えることは困難だろう。貴様のもつガン・ソードだからこそ、可能な芸当と言えるかもしれん。悔しいが、私の持つシグムンドでさえ、そんな事が出来るか怪しいものだ」

 もっとも、試してみる気はないが、とネルビスは付け加えた。腰に手をあて、ネルビスは自嘲気味に話す。しかし、その顔はひとつ憂いが晴れたようだった。

 ザックスの隣では、マーブルも面食らって頬を引きつらせていた。

「ザックス、そんな危険な方法で翡翠竜を狩ってきたんですの? 驚愕ですわ……」

「過去にも、この角は出回ってたんだろ? 親父も、同じ方法で狩ってたみたいだぜ。親父はもうやらなくなっちまったみたいだから、その後、誰もやる奴がいなかったんだろうな」

 ザックスが不思議そうに顎を撫でながら言う。

「誰もやりませんわ、そんなこと……」

 マーブルは苦笑いで返した。

「まあ、言っておいてなんだけど、俺も食われるときに親父の話を思い出したくらいだからなぁ。やっぱりそうだよな」

 ビゴットの破天荒ぶりを認識し、ザックスは感慨にふける。今思えばヤバかったかも、と今更ながらに身震いしたザックスであった。

「それはそうと、こっちは約束通り話したぜ。これで、連れてってくれるよな?」

「全く参考にならない話だったが、仕方あるまい。貴様の援護をしてやる」

 ネルビスは、ザックスの肩をコツンと小突いた。

「命知らずな貴様の事だ。勝手に突っ込んで食われないよう、我々の後ろにでも隠れているがいい」

 ザックスは、ネルビスの上から白髪を垂らして顔を近づると、

「へっ、道案内だけあれば十分だぜ。戦闘になればお前らの出番なんかねぇから、後ろで大人しくしてやがれ」

 口角を上げて強気にほくそ笑んだ。

「大した自信じゃあないか。俺にあっけなくのされた癖に」

「てめぇの手の内がわかりゃあ、怖くねぇぜ。同じ手は二度と食わねぇ」

「竜狩りは常に未知との遭遇と知れ。二度目などありはしないんだよ」

「ぁんだとコラ」

「口答えが出来なくなれば、すぐに凄みを効かせようとする。貴様の悪い癖だな。貴様の相手は俺じゃなくて竜だろう? そんなことでは先が思いやられるぞ」

「こんの野郎、言わせておけば」

「あー、もう! どうしてそうやってすぐに喧嘩になるのかしら、あなた達は!」

 ようやくワイバーン討伐にザックスの参戦が決まったというのに、とマーブルは出発前から不安でいっぱいだった。
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