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第一章 いざ、竜狩りへ
031 本陣突入
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ワイバーンに続いて黒の大地を進んでいくと、ややあって、上空のワイバーンが声を上げ始めた。翼をはためかせて滑空しながら、地上へと降下していく。
「どうやら、着いたようだな。さて、ここからが本番だ。準備は良いか、お前たち」
ネルビスが団員たちに号令をかけると、男たちは鬨の声を上げた。
「へ、腕が鳴るぜ」
「貴様が役に立つとは思えんがな。せいぜい、死なないように逃げ回っているがいい。くれぐれも我々の邪魔だけはしてくれるなよ」
「んだとコラ? ワイバーンの前にテメェをぶちのめしてやろうか?」
「戦う前から敵を見誤るな。貴様の目は節穴か、馬鹿者?」
「おぉん?」
二人が顔を突き合わせてにらみ合う。
そこへ、深緑の群れが沼地より飛び上がってきた。
ザックスとネルビスは、彼方より押し寄せるワイバーンたちへと振り向く。
その数、十頭。
中央で先陣を切り群れを率いる一際大きな個体が、黄色の双眸でザックスらを捉えた。
「奴が、この群れのリーダーだ」
ネルビスが緊張の面持ちで呟き、盾の持ち手を強く握る。
ザックスは強敵の登場に不敵な笑みを浮かべた。
額に十字の傷を持った一際大きな竜が近づいてくると、顎を開き、奥の歯をカチカチと鳴らす。
「お前たち、防御陣形を組め! 来るぞ!」
ワイバーンの動きに気が付き、ネルビスが振り返って叫んだ。
「貴様は我々の後ろに下がっていろ、丸焼きにされるぞ!」
ザックスの前で壁をつくるように、盾を持った団員たちが隙間を埋めて密集した。
先頭のワイバーンが喉を鳴らす。すると、口から勢いよくガスを噴き出した。同時に、歯が鳴り、小さな火花が起きる。火花は吐き出されたガスに引火すると、たちまち巨大な炎となってザックスらに放射された。
ザックスは唐突に空から降り注がれた炎の雲に目を見開き、驚きに身を固くする。が、ネルビスらがザックスを押し倒し、盾の束によって炎を弾いた。
続けて、周りのワイバーンも奥歯をカチカチと鳴らす。喉を鳴らしワイバーン達から次々と炎が放出された。
襲い来る火の嵐を、ネルビスらは盾の束で次々と受ける。熱風が波のように押し寄せ、盾に弾かれて割かれると、背後へ流れていった。
「何とか持ちこたえろよ、お前たち……そう、長くは続かないはずだ!」
盾を構えながら、ザックス以外の全員が額に汗を浮かべて頷く。
「おい、コイツは一体なんなんだ? ここじゃ魔力が使えねぇんだろ?」
「だから言っただろう。奴らは、魔力を使わずに敵を葬る術に長けていると。あれは、奴らのゲップだ」
「げ、ゲップぅ?」
「腹に貯め込んだガスを一気に噴き出しながら、牙を火打石のように打ち引火させる。それほど大量には溜め込めないから、すぐに枯渇はするが……こうも断続的に放射されると相当に厄介なものだ」
チッと舌打ちしながら、ネルビスは粛々と炎に耐える。
断続的に盾へ打ち付けられる炎は勢いこそ変わらないものの、次第に頻度が減っていった。
打ち付けられる炎の明かりが消える。と、今度は猛烈な風が辺りに吹き荒れた。
一団は盾を構えたまま、吹き荒ぶ嵐の中で次々と降り立つ竜の姿を見る。
翼をはためかせ降臨する、ザックスの三倍程度の全長をもつワイバーン達。
気がつけば、ザックス達はワイバーンの群れに取り囲まれていた。
ネルビスの前に降り立つ十字の傷を持つワイバーンが、鋭い眼光を放ち一団を見下ろす。
「ギュウウゥルルル」
「ふん、その傷……あの時のワイバーンか。いまや群れのボスとは、偉くなったものだな」
ネルビスが鎌首をもたげてよだれを垂らす、傷持ちのワイバーンを睨みつけた。
「なんだ、ネルビス。お前、こいつのこと知ってんのか?」
ザックスは立ち上がると、ガン・ソードを構えながらネルビスをちらりと見やる。
「まあな。以前、巣のワイバーンを討滅させたときに、一匹だけ取り逃がした奴がいる」
ネルビスはふっと口元だけ笑みをつくる。目は真剣なままだ。
「こいつは、その当時のボスと戦っている最中に傷を負わせた奴だな。額に一撃を浴びせ、怯んだ隙にとどめの一撃を喰らわせてやろうとしたときに、横からボスの頭突きで邪魔された。当時のボスのお気に入りかは知らんが、運の良い奴だ。そのまま逃げおおせて、仲間を集めたか。まさか、こうして再び相見えることになろうとはな」
ネルビスが鋼鉄剣『シグムンド』の切っ先を眼前のワイバーンへと向けた。
「今度は、逃がしはしない。覚悟しろ」
「どうやら、着いたようだな。さて、ここからが本番だ。準備は良いか、お前たち」
ネルビスが団員たちに号令をかけると、男たちは鬨の声を上げた。
「へ、腕が鳴るぜ」
「貴様が役に立つとは思えんがな。せいぜい、死なないように逃げ回っているがいい。くれぐれも我々の邪魔だけはしてくれるなよ」
「んだとコラ? ワイバーンの前にテメェをぶちのめしてやろうか?」
「戦う前から敵を見誤るな。貴様の目は節穴か、馬鹿者?」
「おぉん?」
二人が顔を突き合わせてにらみ合う。
そこへ、深緑の群れが沼地より飛び上がってきた。
ザックスとネルビスは、彼方より押し寄せるワイバーンたちへと振り向く。
その数、十頭。
中央で先陣を切り群れを率いる一際大きな個体が、黄色の双眸でザックスらを捉えた。
「奴が、この群れのリーダーだ」
ネルビスが緊張の面持ちで呟き、盾の持ち手を強く握る。
ザックスは強敵の登場に不敵な笑みを浮かべた。
額に十字の傷を持った一際大きな竜が近づいてくると、顎を開き、奥の歯をカチカチと鳴らす。
「お前たち、防御陣形を組め! 来るぞ!」
ワイバーンの動きに気が付き、ネルビスが振り返って叫んだ。
「貴様は我々の後ろに下がっていろ、丸焼きにされるぞ!」
ザックスの前で壁をつくるように、盾を持った団員たちが隙間を埋めて密集した。
先頭のワイバーンが喉を鳴らす。すると、口から勢いよくガスを噴き出した。同時に、歯が鳴り、小さな火花が起きる。火花は吐き出されたガスに引火すると、たちまち巨大な炎となってザックスらに放射された。
ザックスは唐突に空から降り注がれた炎の雲に目を見開き、驚きに身を固くする。が、ネルビスらがザックスを押し倒し、盾の束によって炎を弾いた。
続けて、周りのワイバーンも奥歯をカチカチと鳴らす。喉を鳴らしワイバーン達から次々と炎が放出された。
襲い来る火の嵐を、ネルビスらは盾の束で次々と受ける。熱風が波のように押し寄せ、盾に弾かれて割かれると、背後へ流れていった。
「何とか持ちこたえろよ、お前たち……そう、長くは続かないはずだ!」
盾を構えながら、ザックス以外の全員が額に汗を浮かべて頷く。
「おい、コイツは一体なんなんだ? ここじゃ魔力が使えねぇんだろ?」
「だから言っただろう。奴らは、魔力を使わずに敵を葬る術に長けていると。あれは、奴らのゲップだ」
「げ、ゲップぅ?」
「腹に貯め込んだガスを一気に噴き出しながら、牙を火打石のように打ち引火させる。それほど大量には溜め込めないから、すぐに枯渇はするが……こうも断続的に放射されると相当に厄介なものだ」
チッと舌打ちしながら、ネルビスは粛々と炎に耐える。
断続的に盾へ打ち付けられる炎は勢いこそ変わらないものの、次第に頻度が減っていった。
打ち付けられる炎の明かりが消える。と、今度は猛烈な風が辺りに吹き荒れた。
一団は盾を構えたまま、吹き荒ぶ嵐の中で次々と降り立つ竜の姿を見る。
翼をはためかせ降臨する、ザックスの三倍程度の全長をもつワイバーン達。
気がつけば、ザックス達はワイバーンの群れに取り囲まれていた。
ネルビスの前に降り立つ十字の傷を持つワイバーンが、鋭い眼光を放ち一団を見下ろす。
「ギュウウゥルルル」
「ふん、その傷……あの時のワイバーンか。いまや群れのボスとは、偉くなったものだな」
ネルビスが鎌首をもたげてよだれを垂らす、傷持ちのワイバーンを睨みつけた。
「なんだ、ネルビス。お前、こいつのこと知ってんのか?」
ザックスは立ち上がると、ガン・ソードを構えながらネルビスをちらりと見やる。
「まあな。以前、巣のワイバーンを討滅させたときに、一匹だけ取り逃がした奴がいる」
ネルビスはふっと口元だけ笑みをつくる。目は真剣なままだ。
「こいつは、その当時のボスと戦っている最中に傷を負わせた奴だな。額に一撃を浴びせ、怯んだ隙にとどめの一撃を喰らわせてやろうとしたときに、横からボスの頭突きで邪魔された。当時のボスのお気に入りかは知らんが、運の良い奴だ。そのまま逃げおおせて、仲間を集めたか。まさか、こうして再び相見えることになろうとはな」
ネルビスが鋼鉄剣『シグムンド』の切っ先を眼前のワイバーンへと向けた。
「今度は、逃がしはしない。覚悟しろ」
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