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第三章 人形の恋
12話 不具合
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初めて彼女と会った日のことを、今となっては鮮明に思い出すこともできない。私はあまりに幼く、彼女のことについて受けた説明を理解すらせずにいた。
いつの間にか彼女は私の隣にいた。私は成長とともに彼女……、そして彼女たちのことを多く学んだ。あの日、空から降る炎の矢が私達の故郷を焼いた、あの時も……。
うねる熱気の中、視界を包むのはどこまでも炎、炎、炎の海。宮殿の梁が焼け落ちる音、次から次へと襲い来る爆発の音、その轟音の中に人々の悲鳴さえ掻き消されていた。空は黒い煙で包まれ、崩落する建物から外へ飛び出してもなお、息をすることすら苦しかった。
死にたくないと、そう心の中で叫びながら、私はただ彼女の腕にしがみつくばかりだった。彼女は私の体を抱きかかえてただ走っていた。
襲い来る炎に怖気づくこともなく、崩れてくる石塀を片手で弾き飛ばし、瓦礫の山を裸足で踏み越え、まるで空を駆けるように。
「大丈夫よ、ジュリ。あなたのことはわたしが絶対に死なせない」
彼女の言葉は力強く、私の心に熱を与えた。……人形に意思などあるはずがない。そう分かっていてもなお。
……魔道人形を扱う術を、最低限は教わっていた。それでも必要以上に彼女の“中”を開かなかったのは、まるで彼女が人間と同じ心を持っているように動く、その幻想が壊れるような気がしたからだ。
しかし今、私は自らフェリアのコードを展開し、その奥に隠された謎を暴こうとまでしていた。
厳重にかけられた“鍵”、そのいくつかを、奇妙なトレンティア人の魔術師パウルは容易く突破してしまった。それによって私は否応もなくフェリアの深部へと近付いたのだ。
長い間彼女と一緒にいて、見たこともないその“中身”。次から次へと立ち現れる解読不能のコードは、トレンティアの文字とズミの文字とが混ざりあった複雑な術式。
それを見た私は、あろうことか胸が高鳴るのを感じてしまった。……そこに浮かび上がった魔法陣の数々は美しくさえあって、私の胸を打つのだ。
私は臆病な自分を乗り越えるような気持ちで探求を始めた。いつも彼女に守られるばかりだった、そんな弱い自分のままでいないために……。
ガダンの町で出会ったトレンティアの魔法学者、エルド・レーヴァーは死んだ。
私達ズミ人に対しても優しく接してくれた……、魔法を親身に教えてくれた。侵略を目的にきたわけでもない、戦う力を持っているわけでもない一市民だ。
その彼を殺して、男達は「敵国人なのだから仕方がない」と割り切る。
罪のない人間の命が戦争のなかで奪われていく、その不条理な痛みに国家の別があるだろうか。何より腹立たしいのは、そんなやるせなさを感じながらも何もできないでいる無力な自分だ。
あの男達の庇護に縋らねば生きていくことも難しい。ずっと頼りにしていたフェリアも、パウルの魔術の前には瞬時に無力化されてしまう。自分にできることは何もない……、無力、ただ無力!
男達は殺したレーヴァーの研究所から魔力物資や金品を盗んできたらしい。そこに居合わせた私は、やりようのない感情を噛み締めて、せめてもの勇気を振り絞って……、同じことをした。
この無力な自分から一歩でも前に進むために。レーヴァーの研究所を捜索するうちに棚の奥で眠っているのを見つけたのは、ズミの古代文字を扱う辞書だった。
これがあれば、解読不能だったフェリアのコードの奥に進める可能性が出てくる……。
宿屋で二部屋とったうちの女部屋の方で、フェリアを寝かせ、そのコードを開く。ずしりと重たい辞書を床の上に開き、浮かび上がる文字のひとつひとつを入念に見ていく。
魔道人形の展開を維持している間、その魔力の暴発や漏れが起こらないようにこちらが術を加え続けて安定させなければならない。ただ展開を維持しているだけでも消耗する、人形のメンテナンスは重労働だ。
そんな中で読めない文字を辞書で引きながら文法を紐解いていくのは思った以上に神経のすり減る作業だった。
今までは展開の術者はパウルだった。私は横からそれを眺めているだけで済んだが、今はそうはいかない。途端に難航する作業に、私はすぐに疲労を感じ始めた。
だが、ここで弱音をはいてパウルを頼りたくはない。彼は人形を扱う魔術にも、そして戦闘魔術にも信じられないぐらいに長けた人物だ。しかしあのような男に、大事なフェリアの中身を弄られるのは怖かった。彼女のコードを暴ききったあかつきには一体何をされるか分かったものではない。
……この古代文字が表すのは桃の花。なぜ花? 流れる川。塩の味。愛する人よ、愛する人よと繰り返す詩文。なぜ術式の中に詩が!?
読むほどに深まっていく謎に目が回る。しかし幼い頃から刻み込まれるようにそなえた知識の中から、その閃きが出てくるのは簡単だった。この詩文は古代の神ジーゴールを慰めるものだ。
しかし続く文字はトレンティア語だ、読めない。だがその中にたびたび出てくる文字には見覚えがある。これは参照を意味する助詞……、繰り返し、繰り返し参照……、詩文を参照して、何かを……、
意味を掴みかけたその瞬間、頭の中にざっとノイズが入った。魔力が途切れた。
まずい、文字にとらわれるあまりに維持の集中が乱れた。立て直し……、できない。息が切れる。
思わずその場に私は両手をついて項垂れた。暴発だけは避けなければならなかった。半ば無理やりに陣を閉じた……、その途端にぱちりとフェリアは目を覚ます。
不具合が出ないだろうかと不安に思って見ていると、フェリアはうっとりとした顔をして、何も無い場所を見つめた。
「ねえ、ジュリ。わたし……」
唐突に喋り出した。
「わたし、恋がしたい……」
その言葉を聞いた途端、ああ、不具合が出ている、と胸の内で叫んで脱力した。しかし生憎、すぐさまメンテナンスを続けるだけの魔力が私には残っていない!
疲れ切った頭で、どうしようもなく、結局わたしは情けなくも隣の部屋を訪ねることになった。
パウルは私から事情の説明を受けて、不機嫌そうに顔をしかめた。
「ジジイの研究所から辞書をくすねてきたと……。勝手にやる前に俺に言え、バカ!」
そう罵られるのも当然だ。私は力なく肩を竦めることしかできなかった。
様子をパウルに見せるためにフェリアを連れてくる。男部屋の方に移ると、ヨンの姿はない。買い物か情報集めかにでも出かけているのだろう。
今見るとフェリアの表情はいつも通りだ。穏やかな微笑を緩めて、心配そうに私の顔を見てきた。
「どうしたの? ジュリ。なんだか顔色が悪いように見えるわ」
「ん、ちょっと疲れただけ。フェリア、さっき言ってたのって……」
曖昧に頷きながら聞き直すと、フェリアはころりと明るい笑顔を浮かべた。
「ああ、急に言ってごめんなさい。驚いちゃったわよね。でもわたしだってもうとっくに年頃じゃない? やっぱりしてみたくって……、恋を」
うっとりとした表情になって同じ言葉を言った。それを見て、パウルはぎょっとしたようだ。
ほら、おかしいでしょ、と無言の言葉を浮かべて私はパウルの顔を見やる。
「どういうミスをすればこんなおかしなことになるんだ?」
「わ、分かりませんよ……。私だって別に新しい術式を書き加えたわけじゃありません。もともとあった条文が、何かのはずみで想定外の作用をしているんじゃ……」
弱々しい私の言葉を聞きながら、パウルはてきぱきとフェリアを寝かせてすぐに陣を展開していた。私もそれを横から見て、指さしながら件の術式までの道を案内する。
「なるほど、ここか。この古代文字が……なんだって?」
「ジーゴールの詩文です」
「何だよジーゴールって」
パウルはむすっとして聞いた。トレンティア人である彼にとっては馴染みもないだろう。
「ズミの神話に出てくる神様の一人ですね。ミュロスの部下で、地上の乙女に恋をしたせいでミュロスに破門されたんですよ」
聞いているパウルは仏頂面だ。魔術式の中に神話にまつわる詩文が出てくるなんて、彼だって思わなかっただろう。
「ここのトレンティア語は純粋な規定式ですよね? 読めますか?」
私には読めなかった部分を指さして聞いてみる。
パウルは黙ってその式を読み込んでいるようだが、すぐには答えない。次第に難しそうな顔になっていくのを見るに、パウルにも読み難いらしい。
「なんとなくの方向性は分かるが……、ダメだな、肝心の指し示す命令内容はやっぱりもっと奥の鍵を開けないことには分からん。しかもなんだ、この鍵のかけ方は……、大人しく真っ当な封印術をかければいいものを……、ミョーネ……?」
次第に独り言のように細くなっていく声色は、やがてぽつりとその名前を零した。それは既に亡くなった、フェリアの親の名前。
「……はっきりしたことは分からんが……、恋をしたいなどと抜かしたのは、もしかすると想定外の作用ではないのかもしれん」
ふいにパウルは、フェリアに向かってかがみ込んでいた姿勢から背筋を伸ばした。釣られるようにその顔を見る。パウルの視線はまだフェリアの術式を見ていたが、それ以上触ろうとはしない。
「恐らくだが……、この人形が目的にしていることは“人間”の完全な再現だ」
そう言った表情はどこか真剣だった。ぎょっとして私は彼の顔を見つめ直す。その言葉の意味を……理解はできたが、あまりにも突拍子がなかった。
同じことを思っているのだろう、パウルはやや苦そうな顔になった。
「お世辞にも趣味がいいとは思えんがな。人形自身の経験と学習、それがこいつ自ら“鍵”を外すトリガーになっている可能性が高い。ジュリ、もしお前がこの人形の秘密を知りたいと望むのなら……」
そう言いかけて、しかしそこでパウルは一度口を噤んだ。
「いや……、ここまで来たら引き返すわけにもいかんな。こいつの望む通りに……、恋をさせてみろ」
こちらをまっすぐと見て、真剣な顔で言い切った。
私は言葉も出ず、呆気にとられてパウルの顔を見つめることしかできなかった。
……落ち着いて整理しよう。“人間の完全な再現が目的”、“人形自身の経験と学習が自ら鍵を外す”、“恋をしてみたい”……、なるほど、一連の言葉が繋がりそうで……、繋がるのか……?
まあ、仮にそうだとしよう。だとすれば、フェリアは“恋”を経験することによって次の階層の扉を開き、そこで新たな行動規定を発現させる。その段階的な過程そのものが、経験によって“成長”していく人間の生き方を模倣しているのだ。
鍵を外すために、フェリアに恋をさせよう。そういうことだ。フェリアに、恋……。
その言葉を頭の中で繰り返して、口から出たのは情けない弱音だった。
「そんなの、どうやって……?」
パウルは疲れた顔でため息をついた。
「知るかよ……」
同時に、諦めたようにフェリアの陣を閉じた。フェリアはまたぱっと目を覚まして体を起こす。にこにことしている彼女をよそに、私とパウルは言い合いを始めた。
「だいたいさせてみろ、なんて言っても、私じゃ無理ですよ。女同士なんですから……」
「いや何もお前が恋人になれってことじゃない。恋ができるようにほら根回しとか助言とか……、そういうのは女同士の方がいいだろう」
「なんでそんな回りくどい……、あなたは男性なんですからもっと直接的にできるじゃないですか」
そうまで言って、しかし唐突に想像した。この男にフェリアが恋をしているところを……。嫌だ、なんだかすごく嫌だ!
しかし私が言葉を撤回するまでもなく、パウルは顔を引きつらせて首を振った。
「嫌だよ! 何が悲しくて人形相手に恋愛ごっこなんぞしなきゃならんのだ!」
それを宥めるのは当の本人、フェリアだった。
「まあまあ二人とも、落ち着いて。わたしだって恋をしたいって言ってそんなにすぐできるほど簡単なことじゃないって分かってるわ。まずは恋っていうのがどんなのものなのか、そこから勉強しないと。ねえ、あなた達は恋をしている?」
うっとりとした表情……、美しいフェリアの顔はまっすぐ問うてくる。私とパウルは固まって、顔を見合わせて、言葉を選びあぐねた。
「……後は任せたぞ、ジュリ」
困っているうちに、パウルは早々に撤退を決意したらしい。一方的にそう言って、その場から逃げ出してしまったではないか。
残された私を、フェリアは変わらずの表情で見つめている。
「やっぱり恋って、そんなに難しいもの?」
まるで屈託のない様子で聞いてくる。私はがっくりと項垂れた。
「知らないわよ……。恋なんて、私だってしたこともないのに」
「そうなの? ジュリは好きな男の人とか今までいなかったのね」
フェリアは不思議そうに言う。……そんなの当たり前だ。私が思春期を迎える頃には、すでにトレンティアとズミの戦争状態は熾烈を極めていた。
もしかすると父の元には縁談のひとつやふたつ持ちかけられていたかはしれないが、私自身は何も知らないまま……、故郷である王都を焼かれたのはたった十三歳の頃のことだ。
そこから命からがら逃げ出して、国軍に付き従って交戦から交戦を繰り返す日々……、衛生兵として働いていた私が見た男達の姿は、血と泥にまみれた負傷者ばかりだった。
「……生きていくだけで精一杯だったんだもの、とてもそんな余裕は……」
私はそう呟くように言った。意図せずため息も出る。
「そっかあ……。でも、じゃあ、今は?」
フェリアは明るく言う。今? と私は疲れた声で聞き返した。
「今は国軍と一緒にいた時ほど、戦闘ばっかりってわけじゃないでしょ? ベッドでゆっくり休んで、ご飯もちゃんと食べられてる。今なら恋、できるんじゃない?」
そう言ったって、今はそもそも、恋をするような相手が……、と考えると、近くにいる男性は二人しかいない。同じことをフェリアも理解しているらしい。
「パウルやヨンと恋しないの?」
はっきりと名前を出されて、私は余計に項垂れた。
そんなの考えたこともない……、彼らとは確かに成り行きで同行しているが、もともと友好的な関係というわけでもないのだから。
彼らとの関係の始まりを思い起こすと……パウル・イグノールという謎の魔術師、彼の元に向かおうと言い出したのはフェリアである。
一体彼女の中のどんな命令文がそうさせたのかはまだ分からないが……、どうやらパウルはフェリアの親と縁がある。恐らくその繋がりなのだろう。
フェリアの親である、ミョーネという女性はズミの王族だった。子どもだった私は詳しい事情を知らないままでいたが、確かトレンティアとズミの戦争が始まる前に、彼女はトレンティアに渡っていた時期がある。その時に知り合ったのか、何なのかはさだかではないが……。
ともかく、フェリアがパウルという男に会いに行くと言い出した時は、その男が一体どこの何者であるかは全く分からなかった。フェリアは、それについては尋ねても口を噤んでいた。
実際に会ってみれば、彼はトレンティア人ながらにズミで戦っている兵士だった。国の正規軍が壊滅した後もなお、命をかけてトレンティアの侵攻に抗い、戦い続けるレジスタンス。
彼らの信念は、ただ戦火に揉まれて這うばかりの無力な人間にとっては、ただ遠くて……。
「……あの人達は、怖い……」
フェリアにぽつりと零した返事には、そんな言葉が出た。
それが兵士の本分であることは百も承知だけど、彼らは敵兵の……人間の命を奪う者たちだ。兵だけじゃない、敵国人だというだけの理由で、力のない市民だって手にかける……。
「怖い、かあ。じゃあ怖くない人ってどんな……?」
フェリアは続けて聞いてくる。
「……兵士じゃない人?」
私はぼんやりと答えた。理解しているのかいないのか、なるほど、と言ってフェリアは頷いた。
「じゃあジュリ、あなたも恋をしたことがないのなら、わたしもあなたも同じ初心者よ。一緒に恋を探しに行きましょう!」
フェリアは明るく、勢いよく言った。え、と戸惑いの声を漏らして私は顔を上げる。
「今は町にいるのだから、兵士じゃない普通の人がたくさんいるわ! 選び放題じゃない! 出会いを探しに行くのよ!」
そう意気揚々と私の手を引く。そんな無茶苦茶な、と言って振り払いたくなったが、しかしフェリアに恋をさせろなどという任務を受けた私はどうするべきなのか分からなかった。
確かに兵士ではない人と出会うなら町にいる間しかできない。でもそんな、いきなりどうするんだ。
戸惑うばかりでどうとも決めかねる私は、その時はただフェリアに引かれるままになってしまった。
男達は寡黙で、詳しい話をしないし、あえて聞きたいとも思わないが……、ちらりと聞いた限りでは彼らはガダンの町にいるトレンティア兵と交戦し、敵を殲滅したらしい。
たった二人であんなにたくさんいた兵士達にどう打ち勝ったのか……、想像はしづらいが、それはきっと事実なのだろう。
翌日から町中にトレンティア兵の姿はなく、大量に積まれた兵士の遺体を目撃した者から不穏な噂がどっと広がり、ガダンの街は色めき立っていた。
ただ道を歩いているだけでも住民らの会話から聞こえてくるのは、正体不明のレジスタンスがトレンティア兵を殲滅したという噂話ばかりだ。パウルやヨンがその主犯であることはどうやら明るみに出ていないらしい。
当の実行犯達はそんな町中で、何事もなかったかのような素知らぬ顔で今日も生活している。フェリアと共に何気なしに商店街を歩いていると、その姿が目に止まった。果物屋の店頭に立って、商品を物色している。
彼はトレンティア人とズミ人の混血児だ。ズミでは忌み嫌われる青い瞳を持つゆえに、普段から前髪を長く伸ばしてその視線を隠した、暗い印象の少年だった。その印象に違わず、口元だけの表情も冷たく、口数も少ない。
彼が感情らしいものを露わにするのは……、トレンティアへの憎しみを語る時だけだ。話を聞く限り年齢は私とほとんど変わらない。だというのに、あの暗い前髪の奥の瞳は、今までどれほどの血を見てきたのだろう……。
その姿を眺めている、こちらの視線に気付かない彼ではない。わずかに首の角度がこちらを向いたようだ。視線は見えないが。
「何してるの」
そう、いつもの淡白な声色で聞いてきた。
「えっとね」
隣のフェリアが意気込んで何かを答えようとする。咄嗟に私はフェリアに制止の合図をかけた。
「待って、フェリア。よ、余計なこと言わなくていいの」
きっとフェリアのことだ、恋人にする男を探しているの、なんてド直球な回答をするだろうと思ったから。
フェリアは私に止められて、きょとんと不思議そうな表情を浮かべ、言われた通りに口を噤んだ。
しかしそんな様子を、疑い深いゲリラ兵が見逃してくれるはずもなかった。
「……何を考えてる?」
ヨンがそう凄んで追求してくる。前髪の奥から、ぎらりとした青い光が少しだけ見えた。
もともと、フェリアが魔道人形であることが万一トレンティア兵に悟られてはいけない、と危惧して私達は外出を控えていた。敵兵がいなくなった今やその危険は少ないとはいえ、あまり身勝手にうろついていると、彼にとっては不安の種にもなるのだろう。
こうも鋭く追求されるのであれば、誤魔化し切ろうという判断はまずそうだ。そう諦めて、私は疲れた調子で言った。
「いや、その……。詳しくはパウルさんに聞いてもらったらいいんですけど……、フェリアが、こ、恋をしたいって言い出してですね」
私の口から出た言葉には、さすがのヨンも呆気にとられて言葉を失ったらしい。フェリアは楽しそうに相槌を打った。
「うんうん。だからね、ジュリと一緒に恋できそうな人を探しにきてるのよ」
ヨンはきっと、私達の言葉の理解に追いついていないだろう。私だってわけが分からない。
結局彼は早々に諦めて、パウルに聞けという私の提案に従うことにしたらしい。それ以上何も言わず、何事もなかったかのようにこちらに背を向けて歩き出した。
買い物の続きをするのだろうが、それにしたって一言ぐらい返事してもいいだろうに。自分の関心のないことは全部無視である、つくづく、なんと無愛想な少年だろうか。仮に彼が兵士でなかったとしても、あれに恋はさすがに難しそうだ……。
去っていくヨンの背中を呆れた顔で見送っていると、傍らからくすくすと、楽しそうな笑いをこぼす声が聞こえた。
驚いて振り向くと、果物屋の店頭にいた若い女性がこちらのやりとりを見ていたらしい。
「ごめんなさい、なんだか見てると微笑ましくて。恋をしたいだなんてあなた、大胆に人前で言うものじゃないわよ、ねえ」
女性は可笑しくてたまらない、という様子で口元で笑いを堪えている。そう言われると急に恥ずかしくなって、顔が熱くなるのを感じた。
……フェリアは当然要領を得ず、不思議そうな顔をしていた。私が知る限り、彼女には恥ずかしいという感情を理解する能力はない。
何も言えずに赤くなっている私に、その女性は楽しそうな笑顔を向けてきた。
「でも、素敵だと思うわ。ねえ、今の彼は家族なの?」
そう言って女性が振り向いたのは、足早に去っていったヨンの背中の方だ。はあ、と私は気の抜けた返事をする。
「家族ではないですけど、一応親戚……」
確かこの町に来た時の設定ではそうなっていたはずだ。……レーヴァーの元に潜入するときはこともあろうに夫婦のふりなどさせられたが……、今となってはそんな設定はいらないはず。
「あらそう? なんだか拗ねてるように見えたから、もしかして彼、あなた達のこと好きで、やきもちを妬いてるのかなあ、なんて」
そう笑う女性はすっかり他人の恋を見て楽しんでいる乙女の様子だ。
「……さすがにそれはないと思いますけど……」
私はげんなりとして言った。なんだあ、残念、なんて言って女性はまた笑う。
全く見ず知らずの初対面同士だが……、女性は楽しそうに、すっかり自然に打ち解けた様子でこちらの輪に入ってきた。
「あの、前髪の長い子、ちょっと前から見るようになったから旅行の人かなって思ってたんだけど、親戚がいたのね。あなた達はずっとこの町に?」
店番をしていた様子もないから店員というわけでもないのだろう。同じように買い物か散歩に出てきた市民だろうか。見知らぬ私達の会話にぐいぐいと入ってくるのは、よほど退屈していたからかもしれない。
何気なくその顔を見ると、少し歳上だろうか。ぱっちりとした目に健康的な頬の色をした明るい印象の、可憐な女性だった。髪も町娘らしく下ろし、腰の後ろで毛先だけを編み込んでいる。
「え、いえ。私達も彼と一緒に……、親戚で旅してきたんです。その……、故郷は戦争で焼けて……」
そうたどたどしくも答えると、女性はまあ、と声をあげて口元を押さえた。
「ごめんなさい、大変な思いをしてきたでしょうに、無神経な言い方で。あ、わたしティファっていうの。私も実は……、あなた達と同じような境遇でね」
ティファと名乗った女性は寂しそうな声になって喋り出した。
「家族はみんな……死んじゃった。たまたま優しくしてくれる人がいて……、その人の厚意でこの町で働かせてもらってるんだけど……、わたしもここにきたのはつい最近でね」
途端に明るい女性の顔に翳りがさした。思わず私は息を詰まらせる。
「えへ、ごめんなさい。急にこんな話しても困っちゃうわよね。あなた達が同じ境遇って聞いたら、つい」
ティファはすぐに頬を掻きながらはにかんだ。いえ、と私は小さく言って首を振った。
平然と生活して見えるこの町の市民の中にも、戦火に追われて悲惨な思いをした人間はありふれている。
「あなた達は生き残った親戚の人たちと一緒にいれるんだから……、助け合いを大事にしないとね」
ティファはそう続けて、もう見えなくなったヨンの姿を目で追った。本当は親戚でもなんでもないのだが……、彼らの助けなしには私達が立ち行かないのは確かである。
「それに、そんな時でも、いえ、そんな時だからこそ、やっぱり恋って大事よ」
ぱっとこちらに向き直って、ティファはまた明るく笑顔を浮かべた。思わず私は呻くような戸惑いの声を上げた。つられるように頷いたのはフェリアだ。
「そうよね! ねえティファ、あなたは恋をしているの?」
しかしそう聞かれたティファは、ぴしりと表情を固まらせたかと思えば、難しそうに眉を寄せて考え込み始めた。
「うーん……、恋ねえ……」
どうやら、それは彼女にとっても御しがたい課題であるようだ。
「わたし、自分で言うのもなんだけど、理想が高い方なのよねえ。仲良くなっても、なんか、もっといい人がいるかもーなんて思っちゃうと、さあ」
そう悩ましげに組まれた彼女の腕の上には、布越しの目視でも私の二倍はあるだろうと推して測れる、豊かな脂肪が乗っている。
快活で朗らかな笑顔からも、きっと男性に好かれるだろう魅力が溢れている……こんな女性でも恋に悩むことはあるのだな、とどこか遠い感慨を抱いた。
しかし自分とは違って、戦争で悲痛な思いをしながらもなお恋を求める前向きな姿がある。その様はなんだか見ていて眩しくて、いやに自分が小さく感じられた。
ティファは腕を組んだままの姿勢で、目を細めて、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
「ねえ、恋をできる人を探してるって言ってたでしょ? せっかくだから若い盛りの男の人がたくさんいる場所、一緒に行ってみる?」
その怪しげな誘いに即答する勇気はなかった。代わりに、フェリアが目を輝かせて頷いた。
「行ってみましょ、ジュリ!」
男性に慣れていない私からすれば、“若い盛りの男がたくさん”は恐怖の光景にしか思えなかったが……、いや、仮に危険があったとしてもフェリアがいれば大丈夫……。
そう自分に言い聞かせ、勇気ある一歩を踏み出すことにした。
「あ、そういえばきちんと名乗ってませんでしたよね。私はジュリで、こちらはフェリアと言います。ティファさん、よろしくお願いします」
私は居直って、そう恭しくティファに礼をした。ティファは目を丸くしてから、やがてからりと笑った。
「あら、大げさねえ。さてはあなた貴族の出身ね?」
そう言われればそれは事実だが……、私がまだ幼いうちに、既にこの国で貴族という身分はすっかり落ちぶれている。今はせいぜい、礼の仕方の違いを笑い話の種にするだけだ。
いつの間にか彼女は私の隣にいた。私は成長とともに彼女……、そして彼女たちのことを多く学んだ。あの日、空から降る炎の矢が私達の故郷を焼いた、あの時も……。
うねる熱気の中、視界を包むのはどこまでも炎、炎、炎の海。宮殿の梁が焼け落ちる音、次から次へと襲い来る爆発の音、その轟音の中に人々の悲鳴さえ掻き消されていた。空は黒い煙で包まれ、崩落する建物から外へ飛び出してもなお、息をすることすら苦しかった。
死にたくないと、そう心の中で叫びながら、私はただ彼女の腕にしがみつくばかりだった。彼女は私の体を抱きかかえてただ走っていた。
襲い来る炎に怖気づくこともなく、崩れてくる石塀を片手で弾き飛ばし、瓦礫の山を裸足で踏み越え、まるで空を駆けるように。
「大丈夫よ、ジュリ。あなたのことはわたしが絶対に死なせない」
彼女の言葉は力強く、私の心に熱を与えた。……人形に意思などあるはずがない。そう分かっていてもなお。
……魔道人形を扱う術を、最低限は教わっていた。それでも必要以上に彼女の“中”を開かなかったのは、まるで彼女が人間と同じ心を持っているように動く、その幻想が壊れるような気がしたからだ。
しかし今、私は自らフェリアのコードを展開し、その奥に隠された謎を暴こうとまでしていた。
厳重にかけられた“鍵”、そのいくつかを、奇妙なトレンティア人の魔術師パウルは容易く突破してしまった。それによって私は否応もなくフェリアの深部へと近付いたのだ。
長い間彼女と一緒にいて、見たこともないその“中身”。次から次へと立ち現れる解読不能のコードは、トレンティアの文字とズミの文字とが混ざりあった複雑な術式。
それを見た私は、あろうことか胸が高鳴るのを感じてしまった。……そこに浮かび上がった魔法陣の数々は美しくさえあって、私の胸を打つのだ。
私は臆病な自分を乗り越えるような気持ちで探求を始めた。いつも彼女に守られるばかりだった、そんな弱い自分のままでいないために……。
ガダンの町で出会ったトレンティアの魔法学者、エルド・レーヴァーは死んだ。
私達ズミ人に対しても優しく接してくれた……、魔法を親身に教えてくれた。侵略を目的にきたわけでもない、戦う力を持っているわけでもない一市民だ。
その彼を殺して、男達は「敵国人なのだから仕方がない」と割り切る。
罪のない人間の命が戦争のなかで奪われていく、その不条理な痛みに国家の別があるだろうか。何より腹立たしいのは、そんなやるせなさを感じながらも何もできないでいる無力な自分だ。
あの男達の庇護に縋らねば生きていくことも難しい。ずっと頼りにしていたフェリアも、パウルの魔術の前には瞬時に無力化されてしまう。自分にできることは何もない……、無力、ただ無力!
男達は殺したレーヴァーの研究所から魔力物資や金品を盗んできたらしい。そこに居合わせた私は、やりようのない感情を噛み締めて、せめてもの勇気を振り絞って……、同じことをした。
この無力な自分から一歩でも前に進むために。レーヴァーの研究所を捜索するうちに棚の奥で眠っているのを見つけたのは、ズミの古代文字を扱う辞書だった。
これがあれば、解読不能だったフェリアのコードの奥に進める可能性が出てくる……。
宿屋で二部屋とったうちの女部屋の方で、フェリアを寝かせ、そのコードを開く。ずしりと重たい辞書を床の上に開き、浮かび上がる文字のひとつひとつを入念に見ていく。
魔道人形の展開を維持している間、その魔力の暴発や漏れが起こらないようにこちらが術を加え続けて安定させなければならない。ただ展開を維持しているだけでも消耗する、人形のメンテナンスは重労働だ。
そんな中で読めない文字を辞書で引きながら文法を紐解いていくのは思った以上に神経のすり減る作業だった。
今までは展開の術者はパウルだった。私は横からそれを眺めているだけで済んだが、今はそうはいかない。途端に難航する作業に、私はすぐに疲労を感じ始めた。
だが、ここで弱音をはいてパウルを頼りたくはない。彼は人形を扱う魔術にも、そして戦闘魔術にも信じられないぐらいに長けた人物だ。しかしあのような男に、大事なフェリアの中身を弄られるのは怖かった。彼女のコードを暴ききったあかつきには一体何をされるか分かったものではない。
……この古代文字が表すのは桃の花。なぜ花? 流れる川。塩の味。愛する人よ、愛する人よと繰り返す詩文。なぜ術式の中に詩が!?
読むほどに深まっていく謎に目が回る。しかし幼い頃から刻み込まれるようにそなえた知識の中から、その閃きが出てくるのは簡単だった。この詩文は古代の神ジーゴールを慰めるものだ。
しかし続く文字はトレンティア語だ、読めない。だがその中にたびたび出てくる文字には見覚えがある。これは参照を意味する助詞……、繰り返し、繰り返し参照……、詩文を参照して、何かを……、
意味を掴みかけたその瞬間、頭の中にざっとノイズが入った。魔力が途切れた。
まずい、文字にとらわれるあまりに維持の集中が乱れた。立て直し……、できない。息が切れる。
思わずその場に私は両手をついて項垂れた。暴発だけは避けなければならなかった。半ば無理やりに陣を閉じた……、その途端にぱちりとフェリアは目を覚ます。
不具合が出ないだろうかと不安に思って見ていると、フェリアはうっとりとした顔をして、何も無い場所を見つめた。
「ねえ、ジュリ。わたし……」
唐突に喋り出した。
「わたし、恋がしたい……」
その言葉を聞いた途端、ああ、不具合が出ている、と胸の内で叫んで脱力した。しかし生憎、すぐさまメンテナンスを続けるだけの魔力が私には残っていない!
疲れ切った頭で、どうしようもなく、結局わたしは情けなくも隣の部屋を訪ねることになった。
パウルは私から事情の説明を受けて、不機嫌そうに顔をしかめた。
「ジジイの研究所から辞書をくすねてきたと……。勝手にやる前に俺に言え、バカ!」
そう罵られるのも当然だ。私は力なく肩を竦めることしかできなかった。
様子をパウルに見せるためにフェリアを連れてくる。男部屋の方に移ると、ヨンの姿はない。買い物か情報集めかにでも出かけているのだろう。
今見るとフェリアの表情はいつも通りだ。穏やかな微笑を緩めて、心配そうに私の顔を見てきた。
「どうしたの? ジュリ。なんだか顔色が悪いように見えるわ」
「ん、ちょっと疲れただけ。フェリア、さっき言ってたのって……」
曖昧に頷きながら聞き直すと、フェリアはころりと明るい笑顔を浮かべた。
「ああ、急に言ってごめんなさい。驚いちゃったわよね。でもわたしだってもうとっくに年頃じゃない? やっぱりしてみたくって……、恋を」
うっとりとした表情になって同じ言葉を言った。それを見て、パウルはぎょっとしたようだ。
ほら、おかしいでしょ、と無言の言葉を浮かべて私はパウルの顔を見やる。
「どういうミスをすればこんなおかしなことになるんだ?」
「わ、分かりませんよ……。私だって別に新しい術式を書き加えたわけじゃありません。もともとあった条文が、何かのはずみで想定外の作用をしているんじゃ……」
弱々しい私の言葉を聞きながら、パウルはてきぱきとフェリアを寝かせてすぐに陣を展開していた。私もそれを横から見て、指さしながら件の術式までの道を案内する。
「なるほど、ここか。この古代文字が……なんだって?」
「ジーゴールの詩文です」
「何だよジーゴールって」
パウルはむすっとして聞いた。トレンティア人である彼にとっては馴染みもないだろう。
「ズミの神話に出てくる神様の一人ですね。ミュロスの部下で、地上の乙女に恋をしたせいでミュロスに破門されたんですよ」
聞いているパウルは仏頂面だ。魔術式の中に神話にまつわる詩文が出てくるなんて、彼だって思わなかっただろう。
「ここのトレンティア語は純粋な規定式ですよね? 読めますか?」
私には読めなかった部分を指さして聞いてみる。
パウルは黙ってその式を読み込んでいるようだが、すぐには答えない。次第に難しそうな顔になっていくのを見るに、パウルにも読み難いらしい。
「なんとなくの方向性は分かるが……、ダメだな、肝心の指し示す命令内容はやっぱりもっと奥の鍵を開けないことには分からん。しかもなんだ、この鍵のかけ方は……、大人しく真っ当な封印術をかければいいものを……、ミョーネ……?」
次第に独り言のように細くなっていく声色は、やがてぽつりとその名前を零した。それは既に亡くなった、フェリアの親の名前。
「……はっきりしたことは分からんが……、恋をしたいなどと抜かしたのは、もしかすると想定外の作用ではないのかもしれん」
ふいにパウルは、フェリアに向かってかがみ込んでいた姿勢から背筋を伸ばした。釣られるようにその顔を見る。パウルの視線はまだフェリアの術式を見ていたが、それ以上触ろうとはしない。
「恐らくだが……、この人形が目的にしていることは“人間”の完全な再現だ」
そう言った表情はどこか真剣だった。ぎょっとして私は彼の顔を見つめ直す。その言葉の意味を……理解はできたが、あまりにも突拍子がなかった。
同じことを思っているのだろう、パウルはやや苦そうな顔になった。
「お世辞にも趣味がいいとは思えんがな。人形自身の経験と学習、それがこいつ自ら“鍵”を外すトリガーになっている可能性が高い。ジュリ、もしお前がこの人形の秘密を知りたいと望むのなら……」
そう言いかけて、しかしそこでパウルは一度口を噤んだ。
「いや……、ここまで来たら引き返すわけにもいかんな。こいつの望む通りに……、恋をさせてみろ」
こちらをまっすぐと見て、真剣な顔で言い切った。
私は言葉も出ず、呆気にとられてパウルの顔を見つめることしかできなかった。
……落ち着いて整理しよう。“人間の完全な再現が目的”、“人形自身の経験と学習が自ら鍵を外す”、“恋をしてみたい”……、なるほど、一連の言葉が繋がりそうで……、繋がるのか……?
まあ、仮にそうだとしよう。だとすれば、フェリアは“恋”を経験することによって次の階層の扉を開き、そこで新たな行動規定を発現させる。その段階的な過程そのものが、経験によって“成長”していく人間の生き方を模倣しているのだ。
鍵を外すために、フェリアに恋をさせよう。そういうことだ。フェリアに、恋……。
その言葉を頭の中で繰り返して、口から出たのは情けない弱音だった。
「そんなの、どうやって……?」
パウルは疲れた顔でため息をついた。
「知るかよ……」
同時に、諦めたようにフェリアの陣を閉じた。フェリアはまたぱっと目を覚まして体を起こす。にこにことしている彼女をよそに、私とパウルは言い合いを始めた。
「だいたいさせてみろ、なんて言っても、私じゃ無理ですよ。女同士なんですから……」
「いや何もお前が恋人になれってことじゃない。恋ができるようにほら根回しとか助言とか……、そういうのは女同士の方がいいだろう」
「なんでそんな回りくどい……、あなたは男性なんですからもっと直接的にできるじゃないですか」
そうまで言って、しかし唐突に想像した。この男にフェリアが恋をしているところを……。嫌だ、なんだかすごく嫌だ!
しかし私が言葉を撤回するまでもなく、パウルは顔を引きつらせて首を振った。
「嫌だよ! 何が悲しくて人形相手に恋愛ごっこなんぞしなきゃならんのだ!」
それを宥めるのは当の本人、フェリアだった。
「まあまあ二人とも、落ち着いて。わたしだって恋をしたいって言ってそんなにすぐできるほど簡単なことじゃないって分かってるわ。まずは恋っていうのがどんなのものなのか、そこから勉強しないと。ねえ、あなた達は恋をしている?」
うっとりとした表情……、美しいフェリアの顔はまっすぐ問うてくる。私とパウルは固まって、顔を見合わせて、言葉を選びあぐねた。
「……後は任せたぞ、ジュリ」
困っているうちに、パウルは早々に撤退を決意したらしい。一方的にそう言って、その場から逃げ出してしまったではないか。
残された私を、フェリアは変わらずの表情で見つめている。
「やっぱり恋って、そんなに難しいもの?」
まるで屈託のない様子で聞いてくる。私はがっくりと項垂れた。
「知らないわよ……。恋なんて、私だってしたこともないのに」
「そうなの? ジュリは好きな男の人とか今までいなかったのね」
フェリアは不思議そうに言う。……そんなの当たり前だ。私が思春期を迎える頃には、すでにトレンティアとズミの戦争状態は熾烈を極めていた。
もしかすると父の元には縁談のひとつやふたつ持ちかけられていたかはしれないが、私自身は何も知らないまま……、故郷である王都を焼かれたのはたった十三歳の頃のことだ。
そこから命からがら逃げ出して、国軍に付き従って交戦から交戦を繰り返す日々……、衛生兵として働いていた私が見た男達の姿は、血と泥にまみれた負傷者ばかりだった。
「……生きていくだけで精一杯だったんだもの、とてもそんな余裕は……」
私はそう呟くように言った。意図せずため息も出る。
「そっかあ……。でも、じゃあ、今は?」
フェリアは明るく言う。今? と私は疲れた声で聞き返した。
「今は国軍と一緒にいた時ほど、戦闘ばっかりってわけじゃないでしょ? ベッドでゆっくり休んで、ご飯もちゃんと食べられてる。今なら恋、できるんじゃない?」
そう言ったって、今はそもそも、恋をするような相手が……、と考えると、近くにいる男性は二人しかいない。同じことをフェリアも理解しているらしい。
「パウルやヨンと恋しないの?」
はっきりと名前を出されて、私は余計に項垂れた。
そんなの考えたこともない……、彼らとは確かに成り行きで同行しているが、もともと友好的な関係というわけでもないのだから。
彼らとの関係の始まりを思い起こすと……パウル・イグノールという謎の魔術師、彼の元に向かおうと言い出したのはフェリアである。
一体彼女の中のどんな命令文がそうさせたのかはまだ分からないが……、どうやらパウルはフェリアの親と縁がある。恐らくその繋がりなのだろう。
フェリアの親である、ミョーネという女性はズミの王族だった。子どもだった私は詳しい事情を知らないままでいたが、確かトレンティアとズミの戦争が始まる前に、彼女はトレンティアに渡っていた時期がある。その時に知り合ったのか、何なのかはさだかではないが……。
ともかく、フェリアがパウルという男に会いに行くと言い出した時は、その男が一体どこの何者であるかは全く分からなかった。フェリアは、それについては尋ねても口を噤んでいた。
実際に会ってみれば、彼はトレンティア人ながらにズミで戦っている兵士だった。国の正規軍が壊滅した後もなお、命をかけてトレンティアの侵攻に抗い、戦い続けるレジスタンス。
彼らの信念は、ただ戦火に揉まれて這うばかりの無力な人間にとっては、ただ遠くて……。
「……あの人達は、怖い……」
フェリアにぽつりと零した返事には、そんな言葉が出た。
それが兵士の本分であることは百も承知だけど、彼らは敵兵の……人間の命を奪う者たちだ。兵だけじゃない、敵国人だというだけの理由で、力のない市民だって手にかける……。
「怖い、かあ。じゃあ怖くない人ってどんな……?」
フェリアは続けて聞いてくる。
「……兵士じゃない人?」
私はぼんやりと答えた。理解しているのかいないのか、なるほど、と言ってフェリアは頷いた。
「じゃあジュリ、あなたも恋をしたことがないのなら、わたしもあなたも同じ初心者よ。一緒に恋を探しに行きましょう!」
フェリアは明るく、勢いよく言った。え、と戸惑いの声を漏らして私は顔を上げる。
「今は町にいるのだから、兵士じゃない普通の人がたくさんいるわ! 選び放題じゃない! 出会いを探しに行くのよ!」
そう意気揚々と私の手を引く。そんな無茶苦茶な、と言って振り払いたくなったが、しかしフェリアに恋をさせろなどという任務を受けた私はどうするべきなのか分からなかった。
確かに兵士ではない人と出会うなら町にいる間しかできない。でもそんな、いきなりどうするんだ。
戸惑うばかりでどうとも決めかねる私は、その時はただフェリアに引かれるままになってしまった。
男達は寡黙で、詳しい話をしないし、あえて聞きたいとも思わないが……、ちらりと聞いた限りでは彼らはガダンの町にいるトレンティア兵と交戦し、敵を殲滅したらしい。
たった二人であんなにたくさんいた兵士達にどう打ち勝ったのか……、想像はしづらいが、それはきっと事実なのだろう。
翌日から町中にトレンティア兵の姿はなく、大量に積まれた兵士の遺体を目撃した者から不穏な噂がどっと広がり、ガダンの街は色めき立っていた。
ただ道を歩いているだけでも住民らの会話から聞こえてくるのは、正体不明のレジスタンスがトレンティア兵を殲滅したという噂話ばかりだ。パウルやヨンがその主犯であることはどうやら明るみに出ていないらしい。
当の実行犯達はそんな町中で、何事もなかったかのような素知らぬ顔で今日も生活している。フェリアと共に何気なしに商店街を歩いていると、その姿が目に止まった。果物屋の店頭に立って、商品を物色している。
彼はトレンティア人とズミ人の混血児だ。ズミでは忌み嫌われる青い瞳を持つゆえに、普段から前髪を長く伸ばしてその視線を隠した、暗い印象の少年だった。その印象に違わず、口元だけの表情も冷たく、口数も少ない。
彼が感情らしいものを露わにするのは……、トレンティアへの憎しみを語る時だけだ。話を聞く限り年齢は私とほとんど変わらない。だというのに、あの暗い前髪の奥の瞳は、今までどれほどの血を見てきたのだろう……。
その姿を眺めている、こちらの視線に気付かない彼ではない。わずかに首の角度がこちらを向いたようだ。視線は見えないが。
「何してるの」
そう、いつもの淡白な声色で聞いてきた。
「えっとね」
隣のフェリアが意気込んで何かを答えようとする。咄嗟に私はフェリアに制止の合図をかけた。
「待って、フェリア。よ、余計なこと言わなくていいの」
きっとフェリアのことだ、恋人にする男を探しているの、なんてド直球な回答をするだろうと思ったから。
フェリアは私に止められて、きょとんと不思議そうな表情を浮かべ、言われた通りに口を噤んだ。
しかしそんな様子を、疑い深いゲリラ兵が見逃してくれるはずもなかった。
「……何を考えてる?」
ヨンがそう凄んで追求してくる。前髪の奥から、ぎらりとした青い光が少しだけ見えた。
もともと、フェリアが魔道人形であることが万一トレンティア兵に悟られてはいけない、と危惧して私達は外出を控えていた。敵兵がいなくなった今やその危険は少ないとはいえ、あまり身勝手にうろついていると、彼にとっては不安の種にもなるのだろう。
こうも鋭く追求されるのであれば、誤魔化し切ろうという判断はまずそうだ。そう諦めて、私は疲れた調子で言った。
「いや、その……。詳しくはパウルさんに聞いてもらったらいいんですけど……、フェリアが、こ、恋をしたいって言い出してですね」
私の口から出た言葉には、さすがのヨンも呆気にとられて言葉を失ったらしい。フェリアは楽しそうに相槌を打った。
「うんうん。だからね、ジュリと一緒に恋できそうな人を探しにきてるのよ」
ヨンはきっと、私達の言葉の理解に追いついていないだろう。私だってわけが分からない。
結局彼は早々に諦めて、パウルに聞けという私の提案に従うことにしたらしい。それ以上何も言わず、何事もなかったかのようにこちらに背を向けて歩き出した。
買い物の続きをするのだろうが、それにしたって一言ぐらい返事してもいいだろうに。自分の関心のないことは全部無視である、つくづく、なんと無愛想な少年だろうか。仮に彼が兵士でなかったとしても、あれに恋はさすがに難しそうだ……。
去っていくヨンの背中を呆れた顔で見送っていると、傍らからくすくすと、楽しそうな笑いをこぼす声が聞こえた。
驚いて振り向くと、果物屋の店頭にいた若い女性がこちらのやりとりを見ていたらしい。
「ごめんなさい、なんだか見てると微笑ましくて。恋をしたいだなんてあなた、大胆に人前で言うものじゃないわよ、ねえ」
女性は可笑しくてたまらない、という様子で口元で笑いを堪えている。そう言われると急に恥ずかしくなって、顔が熱くなるのを感じた。
……フェリアは当然要領を得ず、不思議そうな顔をしていた。私が知る限り、彼女には恥ずかしいという感情を理解する能力はない。
何も言えずに赤くなっている私に、その女性は楽しそうな笑顔を向けてきた。
「でも、素敵だと思うわ。ねえ、今の彼は家族なの?」
そう言って女性が振り向いたのは、足早に去っていったヨンの背中の方だ。はあ、と私は気の抜けた返事をする。
「家族ではないですけど、一応親戚……」
確かこの町に来た時の設定ではそうなっていたはずだ。……レーヴァーの元に潜入するときはこともあろうに夫婦のふりなどさせられたが……、今となってはそんな設定はいらないはず。
「あらそう? なんだか拗ねてるように見えたから、もしかして彼、あなた達のこと好きで、やきもちを妬いてるのかなあ、なんて」
そう笑う女性はすっかり他人の恋を見て楽しんでいる乙女の様子だ。
「……さすがにそれはないと思いますけど……」
私はげんなりとして言った。なんだあ、残念、なんて言って女性はまた笑う。
全く見ず知らずの初対面同士だが……、女性は楽しそうに、すっかり自然に打ち解けた様子でこちらの輪に入ってきた。
「あの、前髪の長い子、ちょっと前から見るようになったから旅行の人かなって思ってたんだけど、親戚がいたのね。あなた達はずっとこの町に?」
店番をしていた様子もないから店員というわけでもないのだろう。同じように買い物か散歩に出てきた市民だろうか。見知らぬ私達の会話にぐいぐいと入ってくるのは、よほど退屈していたからかもしれない。
何気なくその顔を見ると、少し歳上だろうか。ぱっちりとした目に健康的な頬の色をした明るい印象の、可憐な女性だった。髪も町娘らしく下ろし、腰の後ろで毛先だけを編み込んでいる。
「え、いえ。私達も彼と一緒に……、親戚で旅してきたんです。その……、故郷は戦争で焼けて……」
そうたどたどしくも答えると、女性はまあ、と声をあげて口元を押さえた。
「ごめんなさい、大変な思いをしてきたでしょうに、無神経な言い方で。あ、わたしティファっていうの。私も実は……、あなた達と同じような境遇でね」
ティファと名乗った女性は寂しそうな声になって喋り出した。
「家族はみんな……死んじゃった。たまたま優しくしてくれる人がいて……、その人の厚意でこの町で働かせてもらってるんだけど……、わたしもここにきたのはつい最近でね」
途端に明るい女性の顔に翳りがさした。思わず私は息を詰まらせる。
「えへ、ごめんなさい。急にこんな話しても困っちゃうわよね。あなた達が同じ境遇って聞いたら、つい」
ティファはすぐに頬を掻きながらはにかんだ。いえ、と私は小さく言って首を振った。
平然と生活して見えるこの町の市民の中にも、戦火に追われて悲惨な思いをした人間はありふれている。
「あなた達は生き残った親戚の人たちと一緒にいれるんだから……、助け合いを大事にしないとね」
ティファはそう続けて、もう見えなくなったヨンの姿を目で追った。本当は親戚でもなんでもないのだが……、彼らの助けなしには私達が立ち行かないのは確かである。
「それに、そんな時でも、いえ、そんな時だからこそ、やっぱり恋って大事よ」
ぱっとこちらに向き直って、ティファはまた明るく笑顔を浮かべた。思わず私は呻くような戸惑いの声を上げた。つられるように頷いたのはフェリアだ。
「そうよね! ねえティファ、あなたは恋をしているの?」
しかしそう聞かれたティファは、ぴしりと表情を固まらせたかと思えば、難しそうに眉を寄せて考え込み始めた。
「うーん……、恋ねえ……」
どうやら、それは彼女にとっても御しがたい課題であるようだ。
「わたし、自分で言うのもなんだけど、理想が高い方なのよねえ。仲良くなっても、なんか、もっといい人がいるかもーなんて思っちゃうと、さあ」
そう悩ましげに組まれた彼女の腕の上には、布越しの目視でも私の二倍はあるだろうと推して測れる、豊かな脂肪が乗っている。
快活で朗らかな笑顔からも、きっと男性に好かれるだろう魅力が溢れている……こんな女性でも恋に悩むことはあるのだな、とどこか遠い感慨を抱いた。
しかし自分とは違って、戦争で悲痛な思いをしながらもなお恋を求める前向きな姿がある。その様はなんだか見ていて眩しくて、いやに自分が小さく感じられた。
ティファは腕を組んだままの姿勢で、目を細めて、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
「ねえ、恋をできる人を探してるって言ってたでしょ? せっかくだから若い盛りの男の人がたくさんいる場所、一緒に行ってみる?」
その怪しげな誘いに即答する勇気はなかった。代わりに、フェリアが目を輝かせて頷いた。
「行ってみましょ、ジュリ!」
男性に慣れていない私からすれば、“若い盛りの男がたくさん”は恐怖の光景にしか思えなかったが……、いや、仮に危険があったとしてもフェリアがいれば大丈夫……。
そう自分に言い聞かせ、勇気ある一歩を踏み出すことにした。
「あ、そういえばきちんと名乗ってませんでしたよね。私はジュリで、こちらはフェリアと言います。ティファさん、よろしくお願いします」
私は居直って、そう恭しくティファに礼をした。ティファは目を丸くしてから、やがてからりと笑った。
「あら、大げさねえ。さてはあなた貴族の出身ね?」
そう言われればそれは事実だが……、私がまだ幼いうちに、既にこの国で貴族という身分はすっかり落ちぶれている。今はせいぜい、礼の仕方の違いを笑い話の種にするだけだ。
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