サーシェ

天山敬法

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第七章 かけがえのないもの

69話 ただ一人のあなたへ

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 ティファや、ガロンの部下から聞いた話によると……ガロンの一味は戦闘員のほとんどを人形で補っているため人間の構成員は少なく、纏まって行動することもあまりないようだ。飲まず食わずで動き、報酬を欲することもない人形を使えるのなら当然そうもなるだろう。
 しかし彼らはオーデルの南部で、魔術師と交戦し、その結果人形を多数失っている。そこで見捨てられた人間の仲間達も離散していったようだ。
 合流をするなら恐らくオーデルでするのだろうが……ガロンも、手元に人形兵がいない状態ではそう素早くも動けないだろう。
 恐らくだが、今現状のガロンが持っている戦力は唯一ウィルのみである。……しかしそれはたった一体で恐ろしい脅威を持つ戦力でもある。
 あの強力な魔術を使いこなす人形を相手にどう対抗するのか、それを考えるのは、僕よりもよっぽど人形の仕組みに詳しいパウルの役目である。
 僕はただ、とにかく敵の動きに合わせる形でオーデルに戻るという判断をしたパウルに付いて……、あの家に戻るのかと、その思いが次第に思考を占め始めた。
 父と、そしてジュリの元から離れたのは、時間にしてみればたった一週間程度のことだった。だけどその間にも何か変化はあっただろうか、何も言わずに旅立った僕達をジュリは恨めしく思っているだろうか。こんなにも早く戻ることになった僕達を見て何を言うだろうか。そんなことをその道中でぐるぐると思考してしまう。
 もともとオーデルを出たのは、パウルの元に押し寄せるだろう刺客から逃れるためだった。彼を追っている者がいるとすれば、それは最後に彼がいたオーデルの町にまずやってくるだろうことは想像に難くない。
 帰路への期待のようなものを膨らます僕の気持ちとは裏腹に、そこで人形とも全く違う脅威がパウルを待ち受けている可能性だって高い。
 父達の元に帰れるという期待、しかしどこから来るか分からない不確定な脅威の数々、その不安や緊張に落ち着かない思いをしながら、ただ僕達は確実にオーデルへと近付いていった。

 やがて登山口のような町の入口が見えた頃、緊張が高まるあまりドクドクと打つ鼓動の音を強く感じる。
 今までと同じように、刺客を警戒してパウルは離れた場所に控えさせ、ひっそりと僕はそこへ近付いた。遠目から見た限り、変わった様子はない。
 変わらずそこでは黒髪の警備兵が目を光らせ、町を出入りする者達の顔を検めている。僕の青い目を見るやいなや、その警備兵は気の抜けたような声を上げた。
「ん? ああ、お前か。どこへ行っていたのか知らんが、何も言わずに出ていたのか? モルズ殿が探していたぞ。魔術師は」
 そう平然とした様子で聞いてくるのを見るに、僕達をめぐって大騒ぎが起きているということは、少なくともなさそうだった。
 僕は怪訝にさえなって思わず眉を寄せたが、目の前のレジスタンス兵士は素知らぬ様子である。
「一緒に戻ってきている。魔術師も探されていたか?」
 念を押すように尋ねると、警備兵はフンと鼻を鳴らしたが、その力強い眼差しで真っ直ぐ僕を見つめた。
「トレンティアの血が入っているのは気に入らんが、お前達はもはやレジスタンスにとって貴重な戦力だ、当然だろう。元々お前達は流れの単独兵だ、俺達に協力し続ける義理はないのだろうが……、俺達はお前達の腕を必要としている。ズミ人として侵略に抗う意志があるのなら、応えてくれるだろうと期待しているぞ」
 その重たい言葉には、当然のごとくアルティヴァ・サーシェと返したい、ところだが……、いや、今はそうじゃない。今僕が心配しているのはパウルへの刺客と魔道人形なのだ。
 僕は何を言うでもなくそれを聞き流し、遠くから様子を窺っているパウルに手招きの合図をした。
 彼はフードを被ったままこわごわとした足取りでこちらへ来た。同じように警備兵の様子を見て、僕達は少しだけ真剣な表情を浮かべて顔を見合わせた。
 まるで何事もなかったかのように、いたって平然と帰宅するような風に僕達は町の中へと入った。戦争の復興作業は当然まだ続いているようで、街路のあちこちに修理中の建物の姿が目に見える。
 少なくともそんな街中を歩いている間に、殺気立った気配や武器が飛んでくる様子は感じない。奇妙なほどに穏やかな道中に、かえって不安になるような思いさえするが……しかし、現れない敵をどうこうすることもできない。
 ただ僕達は当たり前のようにアルドの病院へ……、家への道を歩いていた。モルズも探していたということだからそちらにも顔を出すべきだろうが、ひとまずは家である。
 高めた緊張の中、示し合わせたわけもなく僕もパウルも、そしてフェリアも皆無言だ。だけどやっぱり襲撃は訪れないまま、呆気なくも僕達はその家の姿を視界に迎える。
 当然だろうか、特段変わった様子はない。少しだけ庭の片付けが進んでいるようには見えた。
 正面の玄関から入ると、中にはいつの間にか家具類が増えている。広間に大きな長机や棚が置かれ、扉のない棚の中には既に書類や冊子がいくつか入れられている。その様子はだんだんと病院へと近付いているようだ。
 しかし待合室になるその広間も、奥の部屋のいくつかを覗いてみてもその主の姿はない。まだ戦争での怪我人も残っていることだろう、施療所へ詰めているのだろうか。
 パウルはキョロキョロと周囲を見回してから僕を振り向いた。
「俺は先生を探しに施療所まで行ってみよう。お前荷物片付けといてくれよ」
 そんなふうに言った言葉は軽かった。「ええ?」なんて僕はぼやいて振り向いたが、パウルは構わない。
 護身のためかフェリアを連れて行くつもりらしく、フェリアが背負っていた荷物を僕に片付けろと言って下ろさせて、せかせかとすぐに外出の構えに入った。
 仕方がなく、僕は言われた通りにする。床に下ろされたフェリアの荷物を担ぎ直し、扉を挟んだ渡り廊下を伝って住居の方へと歩いた。その僕を置いてパウルとフェリアはさっさと家の外へ出ていってしまう。
 いつ刺客による襲撃があるかも分からないのに離れても大丈夫だろうか……なんて不安は当然あったが、まあフェリアがついているなら、と判断して見送る。

 住居に入ってその廊下を歩いていると、脇を通った食卓に人がいるのに気付いた。
「先生? おかえりなさ……」
 荷物を持って歩く僕の足音を、彼女も当然聞き取っていたようだ。
 食卓の脇で何かごそごそと動いていた様子のその人物は、僕の方をぱっと振り向いて……、そして、そこにあった顔が思っていたものと違ったことに驚いて、ぴしりと固まった。
 離れていた時間は短かったが、なんだかその顔を見ると懐かしい心地がする。僕は立ち止まり、手に持っていた荷物をその場に下ろしてまで彼女に……ジュリに向き直った。
 ジュリはすぐに目を大きく見開いて、そしてその狭い家の中、二人の間の距離を一飛びに詰めるようにして走ってきたではないか。
 驚いて咄嗟に身構えた僕の体に、その温かく柔らかい彼女のものがぶつかってくる。呆気にとられて僕は声さえもすぐに出せなかった。
 ジュリは僕の体に体当たりをするような勢いで飛びつき、その背中に両腕を回してまで体をくっつけていた。緊張のあまり息さえも詰まる。ジュリが……僕に、抱きついてきている。
 なんで、どうして、なんて慌てるほどのことではないのかもしれない。僕は当然拒みもせず、何を考えるよりも早く、半ば衝動のままに、自分よりも背の低い少女の体を抱き竦めた。手に持っていた荷物はその場に放り投げるようにして……。
 ぐっと、胸に何か熱いものが込み上げてくる。その熱に全身を絡め取られていくような感覚に陥りながらも……ぽつりぽつりと、ここから出かける前のことを思い出していた。
 ……そういえばそうだ、僕はここを出る時にアルドに何と言ったか。今更それを思い出して、胸の熱いものが、急に顔面に上がってくるのを感じた。
 ああ、それも今となってはどうでもいい、今はただこの少女の温かさを噛みしめる。ウィルに破かれた服の隙間、その素肌に確かに彼女の鼓動を感じている。
 離れていたのは短い時間だったと言うのに……。何の言葉を交わすでもなく僕の胸に顔を埋めるジュリは、一体この時間をどんな思いで過ごしていたのだろうか。
 それは彼女を心配したり、何も言わずに置いてきたことに引け目を感じるような感情ですら、なかった。……ほかでもなく僕との再会をこんなにも喜んでくれている、その現実が指し示すことへの、耐え難い期待。勝手に置いて出かけておいて、こんなことを思うのは悪いだろうか。
「ジュリ」
 僕は思わず、彼女の名前を呼んだ。自分でも意識しないうちに、その声は熱っぽい湿気を帯びている。
 名前を呼ばれて、ジュリはゆっくりと僕の胸の上から顔を離した。
 まだ腕はお互いの背に緩く回したままで、まるで恋人みたいに僕達は見つめ合った。いや、まるでではなくて事実として近いのかもしれない。
 ……だって、「他の男を近付けさせるな」なんて言い捨てた僕の言葉を、彼女だってアルドから聞いているだろうから。だからこうして躊躇いもなく僕の体に触れている……つまりそれは、そういうことじゃないのか? いちいち言葉に出して確かめるのは、なんだか野暮ったい気さえした。
 僕の顔を見つめるジュリの目は少しだけ潤んでいる。不安なような切ないようなそんな表情で、しかしその頬を赤く染めている様は、それだけで暴力的なまでに愛らしい。
 ずっと気になってはいた。僕はこの女性のことが好きなんだろうか、そんな自分の中でさえ整理のついていなかった感情は、現実の状況が否応もなく動かしていく。
 恋だの愛だの、経験のない僕に難しいことは分からない。ただ目の前にいる少女が愛おしい、それ以上の何も。
 そして彼女の目が僕を見ている、その腕が僕を抱いている、それは全ての理屈を飛び越えていく、ただ単なる喜び以外の何でもなかった。……僕はもっと彼女に触れたい。
 その衝動に突き動かされるままに、僕は彼女の背中から片手を動かして、ゆっくりとその耳の後ろあたりの髪を撫でた。無意識のままに体を少しだけ前屈みにして、手で彼女の頭を引き寄せるように力を入れて、そうすると顔同士がぐっと近付く、息がかかるほどに近く。
「ヨ、ン」
 たじろぐように僕を呼んだその声が、何を訴えているのかは分からなかった。熱されて思考さえも止まってしまった僕は、ただその衝動に身を任せている。
 緊張しているのだろうか……だけど拒む様子はない。それだけを確かめて、僕は目を閉じて、彼女の唇を奪った。
 さすがに驚いたのだろうか、びくりとその肩が跳ねたのが分かった。だけど逃げ出す素振りはなく、僕は許されるままにその熱っぽく柔らかい感触をじっくりと味わう。
 自分の背中に回っていた彼女の手が、きゅっと縋るようにその服を握ったのが分かった。重なった胸でお互いの鼓動が強く打っているのを感じる。じわじわと全身を焦がしていくこの感覚を……言葉ではなんと言うのだろうか。
 ジュリの唇の感触を楽しんで、それを啄むように重ねた自分の口を少しだけ動かした。息をすることも忘れていたのか、驚いて漏れた吐息が僕の頬を掠めていく。
 その風で我に返ったように、ジュリは小さく身じろぎをして僕の唇から逃げてしまった。
 ゆっくりと瞼を持ち上げると、見事なまでに真っ赤に茹で上がった顔が間近にあった。わなわなと唇を震わせながら、消え入りそうなか細い声を上げる。
「……そ、そういうことは……」
 その拒むような調子の言葉に、思わず僕もびくりとする。途端にひやりとした空気が頭の中に流れ込んできたようだった。……さすがに口付けまでしてしまうのは早まったか?
「そういうことは、まず言葉にしてからするものだと思いますけど!?」
 やがてジュリは小さくも叫ぶような調子でそう言った。僕は自分がどんな顔をしているのかも分からないまま、「え」なんて小さく戸惑いの声を漏らしてしまう。
「ほんとにあなたって人はいつも言葉が足りないんですから……。私は、もう、ああ、もう!」
 何かこみ上げた感情はどうやら言葉にもならないらしく、そうもどかしそうに言ってその場にへたりこんでしまった。僕は力無くその頭を見下ろす。
「それは……すまない。えっと……」
 言葉が足りないと言われればそれはもっともだろう、もともと僕は喋るのが得意ではない。
 この状況で、まず言うべき言葉はなんだっただろうか。自省して、僕は幸福のあまりに痺れていた思考をようやく動かし始めた。
「その……ただいま?」
 まず第一にはそうだろう。そう思って僕は言った。
 ジュリの赤い顔がこちらを恨めしげに向いて、しかしやがてまたため息をつきながら俯いてしまった。……何か間違っただろうか。
 僕はまた思考を巡らした。いや今重大なのは彼女の唇を奪ってしまったことの方だっただろうか。抱きついてきたのは向こうからとは言え、何を言うわけでもなくしてしまったのだ、女性にとってはとても重大なことだったに違いない。
 そう思い直してかけるべきだった言葉を探すが、それはどうにも上手く思いつかない。
「……急にして、ごめん。その、キス。嫌だった……?」
 結局何の捻りもない、拙い言葉が出た。
 口に出すには恥ずかしい言葉だが、だけどしてしまったものはせめて、後からでも責任をとらねばなるまい。その恥ずかしさに耐えて、僕はジュリを見つめた。
 ジュリは驚いたように顔を上げて、小さく首を振った。
「あ、いえ、嫌とかじゃなくて。……ちょっと、力が抜けちゃったというか……。ちょっと、待って、ください。私も何がなんだか……」
 そしてしどろもどろに言う言葉から察するに、彼女にもまだ整理がついていないようだ。
 へたりこんだ状態から縋るように片手を伸ばしてくるのを見て、僕はその手を取った。まるで掬い上げるようにしてそれを引くと、ジュリはよろめきながら立ち上がる。
 また顔同士が近付いて、ジュリの顔の赤みがよく分かった。きっと僕も似たような顔をしているのだろう。
「……嫌じゃないです。えっと……、その、おかえりなさい」
 そう呟くように言って、ジュリは僕の首の後ろに緩く両腕を回してきた。応えるように僕はジュリの背に手を回す。
 もう一度してもいいかな、なんてことも言葉に出すべきなのだろうか。恥ずかしくてそれはなかなか口には出ない。
 確かめるようにまたゆっくりと顔を近づけると、ジュリは恥ずかしそうに目を逸らして、しかし顔の向きは逸らさないままにやがて目を瞑った。
 首の後ろに回っていた彼女の手がほんの少し強くなる。それに引き寄せられるように再び唇を重ね……
 ようとした矢先、背後の扉の奥、病院の本棟の方からどたばたと足音がした。僕達は弾けるように体を離してしまった。
 すぐにその扉が無遠慮に開かれて、その奥から現れた陽気な顔は僕達を見て目を丸くしたようだった。
「あれ、何やってんだお前、荷物片付けとけって……。ああ嬢ちゃんがここにいたのか。なんか邪魔したようだな? すまんすまん」
 廊下の真ん中で抱き合っていた僕達は咄嗟に体を離すも、逃げる場所はなく、不自然に壁に頭を擦り付けるようにしてその場に留まっていた。
 平静を装って、僕は何も言わずにため息をついてやる。ジュリはどんな顔をしているのか、それを振り向く勇気もなかった。
「ちょうど先生が戻ってきたところだったんだ、途中で会ったから一緒に帰ってきた。まだ仕事があるらしいからこっちにいる。お前も落ち着いたら挨拶ぐらいしにこいよ。荷物はフェリアにやらせるから」
 そう言い残して、パウルは再び本棟に引っ込んで扉を閉めた。
 数秒してからおそるおそるジュリを振り向くと、彼女は唖然とした顔で扉の向こうを見つめていた。
「……パウルさんも帰ってきたんですか。あの、よく分からないんですけど一体どういう状況で……というかそもそも、何も言わずに急に出ていくなんて!」
 ジュリはぽつりぽつりと言葉を零し、やがて僕達が出かける前のことを今更のように思い出したらしく、そう慌てた様子で騒ぎ出した。僕はただその叱責を甘んじるほかない。
「ごめん。パウルは勝手に出ていくし、時間なくて。でもまあいろいろあって戻って来ることに」
 端的に説明をすると、ジュリはげんなりとして項垂れた。
「パウルへの刺客というのが意外と来なくて。それからガロンとウィルに会って戦闘したんだけど逃げられて、奴らにオーデルの子どもを攫う計画があったらしいことが分かって……」
 続けて言った僕の言葉に、ジュリは目を白黒させながら、言葉も出ないという様子だった。
 ウィルとは彼女も顔見知りだったはずだが……聞かされた話があまりに突飛で上手く飲み込めない、というところだろうか。僕にだって今いち何が起こっていたのかよく分かっていない。
 ともかくパウルに言われる通り、僕はアルドにも挨拶をしにいくことにした。
 まだ住み慣れたとは言えない家の中には、しかし父がいて、当たり前のように仲間がいる。兵士として共に過ごした仲間との生活に、日常的だなんて言葉を浮かべるのもおかしなものだろうか。
 だけど言いようのない安心をどうしても感じてしまう。ひとつも血の繋がっていない彼らのことを、家族だと言ってしまってもいいのかなと、そんな思いが浮かぶほど。
 当然不安の種はいつにも尽きないし、戦争が終わる気配もまだない。だけどその温かささえ感じる日常は呆気なくも僕を受け入れていた。

 夕刻、僕達は再会を記念してささやかに食事会を開いていた。戦闘の直後はジュリやアルドが忙しくてなかなか全員で時間を合わせることもできず、考えてみれば皆で食事をとるのは随分と久しぶりだ。
 ……しかし、全員の内に入れるべきか果たして分からないが、フェリアの姿はない。パウル曰く、ウィルの話をすればまた不具合を起こす可能性があるとかで、部屋の中で眠らされているのだ。
 そしてそんな面々の中、既に挨拶は各々で済ませているところもあるが、その場で改めて情報の共有がなされた。
「俺はもともとトレンティアではお尋ね者でな、今まで身分を偽って生き延びてきたが、オーデルの戦いで敵に正体が知られちまった。それで命を狙われちゃかなわんと思って一旦町を離れたわけだが……」
 パウルは自分の身の上をそう説明した。自身がトレンティアの王子であることまでは、わざわざ明かすつもりもないらしい。僕もそれはあえて暴露すまいと思って、黙って聞いていた。
 ジュリなどはパウルについては何も聞かされていなかったのだ。怪訝な顔をそれを聞いていた。
「命を狙われるって……そんなに? そんな酷いお尋ね者だったんですか」
 混乱したような言葉の端には、一体何をやらかしたんだ、という問いが隠れているように感じたが……、パウルはあっけらかんとした調子でため息をついた。
「そう俺は思ったんだがな。どうも現状確認した限りでは、この町にすら俺を探しに来ている敵はいない。この一週間、ここと街道の間をぐるりと回る感じで動いたんだが、俺を狙ってくるような奴には会わなかった。……ちょっと拍子抜けを通り越して不気味ですらある。奴らは一体何を考えて……」
 気だるげに料理をつつきながらのパウルの言葉は、次第に独り言のようになっていく。
 ジュリはじっとりと疑うような目でパウルを見つめていた。それだけを聞けば、嘘なんじゃないかと勘ぐられたっておかしくはないだろう。
 そこでアルドが、躊躇いがちながらに穏やかに声を出した。
「当然まだ気を抜くわけにもいかないだろうが、杞憂に済むのならそれに越したことはない。……こうしてヨハンも一緒に戻ってきてくれて良かったよ……」
 彼も恐らくパウルの素性までは知らされていないのだろう。実はここへ戻って来る途中に、ガロン達に捕まってあわや僕が死ぬところだった……なんて話もしない方がよさそうだ。
 僕はその時のことを思い出してより一層強く、日常的なパンの味を噛み締めた。飲み込んでから、口を開く。
「だけどガロン達がこの町を狙っていると言うなら……、下手なトレンティア兵よりよっぽど脅威だ。部下を失って奴らがどう出てくるか……」
 そう言った僕の言葉を聞いて、ジュリとアルドがまた不安そうな表情を浮かべる。
 パウルの顔は途端に真剣になった。
「言っただろ。ガロンと、それからウィル……。あいつらは俺が絶対に片を付ける。ここへ来ようが来まいが、俺が追い立ててでも始末してやるさ」
 その言葉の端には、まだ安穏と暮らすには早い、というような戒めが込められているようだった。僕もそれを聞いて気を引き締める。
 ……まだ、安穏と暮らすには早い。ジュリと想いを打ち明けあったと浮かれている場合では、もちろんない。
 そのジュリも不安な顔で、おそるおそるとパウルの目を見つめていた。
「始末……って、あの、ウィルも? 殺すってこと、ですか……?」
 少女の怯えるような眼差しを受けて、パウルはハッと我に返るように息を呑んだ。すぐに目を伏せて、言葉に迷うようにしながら返事をする。
「あいつらは子どもを攫ってきては人形を作り、それで盗賊行為を働いている……紛れもない悪党だ。友好的にはできないだろう」
「でも、それはガロンがそう命令しているからですよ……! ウィルは人形です、善も悪も分からないし、命令があれば敵にも味方にもなります。ガロンさえ倒せば……、いえ、ガロンから彼を引き離すことさえできれば、ウィルと戦う理由なんかないはず……」
 すかさず、というようにジュリは声色を強めてそう言った。
 彼女にとってみればウィルも、フェリアと同じように幼い頃を共に過ごした“友人”なのだろうか。……あのおぞましい存在が。
 パウルもウィルのことを思い出しているのだろうか。眉間の皺を深めて、難しそうな顔で考え込んでしまった。……ジュリの問いに即答は、しない。
「仮にあの人形を殺さずに済んだとして……、だが、あんな危なっかしいものを生かしてどうするか……」
 パウルは独り言のように言った。ジュリはなおも悲痛な様子だ。
「どうするって、魔道人形ですよ? 今までだってフェリアを連れてきたじゃないですか、ウィルだって同じように味方として……一緒に連れて行くことはできないんですか? フェリアよりも幼い子どもの体なので難しい……ことはあるかもしれませんけど、でも何も殺さなくても……」
 味方として連れて行くだって? 思わず僕まで驚いて顔を上げた。
 ……それはそうだ、フェリアは今までそうして連れてきた。それならウィルだって同じようにすればいい、という話は筋が通っている。
 だけど愕然としてしまうのは、僕に彼と直接交戦をした経験があるからだろうか。あの少年が味方になっているようなところを想像して、僕は背筋が凍るような思いがした。
 なぜだろうか……あの少年は振るう魔術の脅威というだけではない、何かもっと違った言い知れない恐ろしさを抱えているような、そんな気がするのだ。
 脳裏をよぎったのは彼の言葉。トレントの名前を呼んだあの叫び。トレントは僕だ、僕がトレントの子だ……などと叫んだあの言葉は、ただ錯乱した中での不具合の発露だったのだろうか? なぜズミで生まれた人形が、そこまでトレントの名前を叫ぶのか……。
 そんな胸騒ぎにも似た疑問は、当然考えたところで何も分からないが……。パウルは変わらず難しそうな顔をしている。
「味方に、ね……。そりゃあそれができるならあれほど強力な戦力はないだろうが……。なにせ危険だ……いや、嬢ちゃんにも思う所はあるだろう、できるだけは俺も努力するが……」
 そんな歯切れの悪い答えを言った。ジュリは不安な表情を消しはしないが、それ以上は追求することもなく、ただぐっと目を伏せた。
 実際ウィルとガロンを“始末する”などと言うパウルが、どんな手に出るつもりなのかは分からない。パウルがどういうつもりだったとしても、その戦いの結果がどうなるかも分からない。
 無責任なことは何も言えないが……、できることなら僕も、ジュリの気持ちを汲み取ってやるべき、なのだろう。
 だけどあの人形を前に一体どれほどのことができるか……、確かに想像してみれば難しいところだ。
 僕達のやりとりを聞いて、アルドは困ったような、少し悲しそうな顔で呟く。
「私には分からないし、無力で何もできないが……何か、難しい事情があるのだな。サーシェ、どうか皆様に加護があらんことを……」
 神への祈りを度々口にする彼の言葉を聞いて、その度に僕もふっと神を思う。祈ったところで、何かが変わるわけではないけど……。

 どこか沈んだ空気の中、それでも僕達は食事を共にしていた。そんな夕食の時間に、割り込むように非日常の音がした。
 それは本棟の方から……ここからは少し距離がある玄関から、それでもはっきりと聞こえてくる大きな物音。扉を開ける音、それに続いて何かを叫ぶような人の声。
 驚いて僕達は一斉に視線を上げた。
「何だろう、急患かな」
 アルドはそう言ってのっそりと席を立った。僕などは咄嗟に、ついに刺客がきたか、などと警戒してしまう。今は家の中と安心して武器を外してしまっていることを後悔した。
 パウルも同じく危険と捉えたのか、きりと表情を引き締めて立ち上がった。彼は僕と違って丸腰でも魔法という武器があるから、今はそれを当てにするしかないだろう。
 のんきに出迎えようとするアルドを手だけで制止し、パウルは先頭を歩き出した。
 やがて病院へと立ち入ってきた何者かは慌ただしく足音を上げて、どうやらこちらへ真っ直ぐ近付いてくるようだ。
「パウル! パウル、いるのか!?」
 叫んでいる言葉が聞こえてきた。それは少なくとも、攻撃的な感情を伴ったものではないように聞こえた。
 ぎょっとしてパウルは思わず足を止める、その廊下の中に立ったまま、来訪者は無遠慮に住居へ続く廊下の扉を開いてきた。すぐにその顔が僕達の眼前に現れる。
 そこにあったのは、金髪の男の顔……、ヘルマン・グリスだった。意外な訪問者の顔に、パウルは眉を寄せて気の抜けた表情を浮かべる。
「パウル! ああ、いたんだな! お前が戻ってきたっていう噂を聞いて……」
 グリスは何やら慌てふためいた様子で、ずかずかとこちらに歩み寄ってきた。
「何だよ、そんな血相抱えて……何の用だ一体」
 パウルはため息まじりに言った。確かグリスは唯一の同胞であるパウルにいやに懐いていたように思うが、それでもこんな夕刻に大慌てで押しかけてくるなど普通ではない。ただ会いたいなんて話ではなくて、よほど急ぎの用事があるのだろう。
 グリスはおどおどとした仕草で、懐をまさぐったかと思うと、そこから丸めた紙を取り出した。
「えっと……、たぶんお前に手紙。オーデルレジスタンスにいるトレンティア人に、って宛先で送られてきたらしい。俺のとこに間違って届いて……」
 そう言いながら差し出したその紙を、パウルは思わずと言った風に息を呑んでから、グリスの手から乱暴に奪い取った。すぐにその紙を広げて、かっと目を見開いてその文面を睨んだようだ。
 僕も斜め後ろからちらりとそれを見たが、どうやら書かれているのはトレンティアの文字だ、なにひとつ読めない。
 その字面を目でなぞったパウルは、次第に苦しげに眉を寄せ始めた。それを前にして、グリスはどこか青ざめた表情になっていく。
「……なあ、すまん。俺、自分宛てだと思って……読んじまった。なあその手紙……本当にお前宛てなのか……? なあ嘘だよな? 何かの間違いだよな? それって……」
「うるさい黙れ」
 わなわなとしたグリスの声を、パウルは苛ついたような声で遮った。僕は眉を寄せてパウルを睨んだ。一体何だと言うのだ、と。
 パウルは僕の方にちらりと視線を向けて、やがて小さくため息をついた。
「グロリアからだ。あいつ、俺に手紙を寄越すなんて危ない真似をしてくれるな……。ここに書かれていることが本当なら……、どうやらトレンティア軍は俺の存在に気付いてすらいない」
 そうぽつりと零すように言った。僕も思わず目を見開く。
 グロリア、というとつまりパウルの妹、グロリア・エレアノールだ。オーデルでの戦闘のさなかに対峙した……。
「どういうことだ? クラウスは……」
 僕が問い詰めると、パウルは苦そうな顔になった。その目は何も無い空中を睨んでいる。
「“彼は軍に報告をしていない”と。……いや、にわかには信じられん。正規軍人、しかもそこらの雑兵じゃない、カディアル家の騎士だぞ? そいつが報告をあえて怠るなんて……。確かにオーデルでの決闘では俺が勝った。グロリアに……女に守られて生き延びたなんて奴の性格なら屈辱だったろうが……、だがそんな理由で……? 馬鹿かあいつは!?」
 ぶつぶつと独り言のように言って、やがてそんな声を上げて空を仰いだ。どうにも混乱しているらしい。
 彼からすると信じられない、というような様子だが、それが本当であれば、これまで不気味なほどに刺客が来ないことにも納得が行く。素直に喜べばいいものを、なんて思ってしまうのは他人事だからだろうか。
 そんな彼に震える視線を向けていたのはグリスだった。
「……え、ホントなの? マジでお前……、いやあなた様……!?」
 グロリア・エレアノールから、兄パウル・イグノールへ宛てた手紙……、その内容を読んでしまった彼は、当然パウルの正体が何であるかに思い至るだろう。パウルは否定もせず、ただ苦々しい顔で舌打ちをした。
 途端、グリスはまるで殴り倒されたみたいな勢いでその場の床に膝をつけて蹲った。
「ひい! す、すみません! ま、まさか生きておられるなんて思ってもなくて……。知らなかったんです! 今までのご無礼はどうかお許しを、殿下……!」
「うるせえ! 俺が素性を隠さなきゃならん身だってことぐらいわかるだろ、その呼び方はやめろ! あとぜっったいに人に言うなよ、言ったら殺すからな!?」
 悲鳴を上げるようにして跪いた彼を見下ろし、パウルは苛立った声で怒鳴った。
「は、はい! すみませ……」
 グリスはおどおどとしながらも頷いたが、しかし跪いた姿勢から起き上がろうとはしない。
 ……相手が王族と分かればそういうものだろうか。クラウスとは違って、グリスなどに「この場で処刑を執行せねばなりません」と言ってパウルに挑む度胸も力も無いだろう。
 彼は既に軍人ですらなく、それに前に聞いた話では、イグノールが重罪を犯したという話を信じてもいなかった。
「で、でも、では何とお呼びすれば……」
「その気持ち悪い敬語もやめろよ……。俺は既に何の身分もない、傭兵くずれの兵士だ。今まで通りにしてくれ、頼むから」
 パウルは呆れたようにため息をついて言った。
「た、確かに俺が急に丁寧になったらおかしいですよね、そんなことで怪しまれて、もし殿下の素性が知られてしまっては御身に危険が……。わ、わかりまし、いえ、分かった。今まで通りに……、ええと、まあ、あの、できるだけは……」
 混乱しきったような様子で言うグリスを見下ろし、パウルは手で顔を押さえながらまた深くため息をついた。
 誤って手紙が届いたせいとはいえ、よりによってこんな者に素性を知られたのだ。心配事がひとつ増えた、というところだろうか。この際はいい加減な手紙の出し方をしたエレアノールが悪いだろう。
 しかしそのエレアノールも、同胞であるはずのトレンティア人から密かに命を狙われながら、その軍に身を寄せているという複雑な立場だ。そこからパウルへ手紙を出すなどということに相当な困難があったことは想像に難くない。彼女がそこまでして兄に伝えた内容は、確かにパウルにとって重要なものだったはずだ。
 ……オーデルの決闘のさなかに見た、兄妹のやりとりからはっきりと分かる……彼女は少なくとも、パウルの敵ではない。
 それを踏まえてこれからの判断と動きをどうするべきかと、またパウルは悩むことになるのだろう。
 しかしそう考え込んでいるような余裕は、今はない。慌てふためくグリスだけじゃなく、近くには唖然とした顔で取り残されているジュリとアルドの姿もあった。
 パウルは気まずそうな顔でそちらを振り向いた。
「ああ……えっと、まあ、詳しい話は追々……。とりあえず飯の続きを……」
 そして誤魔化すように言った。アルドもジュリもすぐに何か追求してくる様子はなかったが、釈然としない顔のままパウルを見ていた。
「グリス、ご苦労だったな。お前はもう帰れ」
 そんな素っ気ない言葉で追い払われ、グリスはぎくしゃくとした動きで立ち去っていく。そのまま微妙な気まずさを帯びた中、パウルは素知らぬふりをして食卓に戻ってしまった。
「まあ、きっと重大なことなんだ、彼自身が話そうと思うまで、無理には聞き出さないでおこう」
 そんな気遣うような言葉を小声で僕とジュリに言って、アルドも食卓へと戻った。はあ、と気の抜けた相槌を打ってジュリも、そして僕もその後に続いた。
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