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後日章 サーシェ、無量の命と光へ
172話 アミュテュス・サーシェ
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まばらな雨季の合間に晴れた秋の日、サダナムから届いた書簡は……すぐ体の脇に雑に放り投げて、僕は盤上で木駒を打っていた。
王宮の中庭に面した廊下に道具を広げて……今は、謁見の休憩時間だ。
「ほら、王手」
「ちょっと、ちょっと待てよ。まだ可能性はある」
「本当に?」
「うーん……」
盤上遊戯の相手をしてくれている御仁はティガル・キルーグだ。
トレンティア戦で武功を上げてすっかりラズミル貴族へと成り上がった彼は、しかしいつまで経っても頭脳戦に弱いようである。
「もう一回やってくれ。まだレフィア様は諦められない」
そんなことを言うのに呆れたため息を返す。どうせ勝てないからいいものの、勝てば王女をよこせなんて悪い冗談を持ちかけてくるものだ。
しかし彼の長男と僕の長女は同い年だし、父親同士もこの仲なものだから、成り行き本人達の仲も良い。案外勝負になど賭けなくても現実になるような気もするが。
「結婚と言えばアザルにもそろそろな……」
「ああ、もう十五になるのか」
「うん。身寄りがないから僕が世話をしてやらないとと思うんだけど、なかなか決めきらないらしい」
「そりゃあ国王陛下自ら世話をすると言うんだから……何件ぐらいあるの、縁談」
「今のところ十二? 三ぐらい」
「それは決めきらないな」
大人同士でだらりと話している、噂の本人は今日も元気に庭で木剣を振っている。
もう秋も深まるというのに、上半身を裸にして汗を散らしている様は、いやはや若々しい。自分も昔はあんな感じだったんだろうか、なんて変に年寄りじみた感慨を抱いていしまう。
ティガルに呼ばれて、アザルも汗を拭いながら茶を飲みに来た。
「ええ、結婚の話ですか? うーん……、俺はそんな焦らなくていいかなあって思ってるんですけど、陛下がうるさくて」
人が親切で世話を焼いているというのに、育つごとに生意気になっていく従者である。
「俺は陛下みたいに一人の女性と出会って恋に落ちて……みたいなのに憧れるんですよね。どこかに運命的な出会い、落ちてませんかねえ? やっぱり冒険に出ないとだめですかね?」
そんなのんきな冗談を言っている。
「冒険ねえ……。去年の巡視でズミ国内はだいぶ巡っただろうけど、今度はトレンティアにでも行くか?」
「ああ、それも面白そうですね。金髪の美少女と恋がしたい」
「トレンティアでは魔法が使えないとモテないぞ。ちゃんと練習してから行け」
「マジですか? いやそれは頑張らないと……。っていうのは冗談ですけど、確かに魔法の練習はもうちょっとやりたいですね。ラズミルの学校じゃ戦闘魔術の先生が今いないらしくて……エレアノール様のとこに個人で師事しにいくぐらいしか……」
そうぼやくので、僕はふっと笑みを浮かべてやった。
「それなら朗報だ。先ほどサダナムから連絡が来たんだが……、もう数日中にイグノールがこちらに到着するってさ」
「おお、イグノール様が!? 確か、今度の滞在は長いって話でしたよね」
「ああ、家も構えて……何年か分からないけど当分住むらしい。どうせ研究所に入り浸るつもりだろうから教師をしてもらおう」
アザルはその報せを聞いて余計うきうきとして、また元気に剣を振り始めた。その姿を見て、僕も久しぶりに戦闘魔術の練習でもするか、なんて思い出す。
当たり前だが戦争が終わってしまうと戦う機会なんて全くなくて、しかも国王の仕事と生活の中では、練習しようと思う機会さえない。もうこの五年ですっかり鈍ってしまっている……。
それでも弓は意味もなく練習をしてしまうし、暇があれば狩りにも出かけたくなる。幼い頃からの習慣が一番馴染む。やっぱり血門があってもズミ人なんだな、なんて自分で思ったりする。
それと比べればアザルはまだ十歳の頃から魔法を触っていたのだ、きっと僕などよりよっぽど優秀な魔道士になっていくことだろう……。
イグノールが到着する予定の日は、謁見も中止して一日を休日にした。大広間に接待の準備を広げて、せっかくだからと、イグノールと縁のあった五年前の仲間や軍人達を招いて彼の到着を出迎える。
ちょうど近くにいたものだから、エレアノールも呼び出した。彼女は王族のくせにイグノール以上に自由で、いつの間にかラズミルにいたりいなくなっていたりする。
ズミの各地だけでなく時々トレンティアに戻ったり、トレンティアの方でも地方辺境を旅から旅へと移動して冒険家の生活を満喫しているらしい。
「朝から狩りに行ってたのよ。仕留めたウサギの毛皮がこれが結構良くて。売ってもいいけどせっかくだから兄様への贈り物にしようかなって。革細工はやり方がわからないからメラに聞いて……」
近況を聞いても、トレンティアの王女と言うには随分と荒々しい。
どうやら戦争中からの縁でメラ――かつてルヴァークと呼ばれた女戦士とはまだ仲良くしているらしく、彼女の家に住み込んで狩猟を教わったとかいう話だ。
一緒に王宮に来たメラは、こちらは戦時中の面影がほとんど無いと言っていいほど変わっている。服はゆったりとした女物を着て、武器を握らなくなった体はすぐに緩み、もう五十も過ぎた顔にはただ穏やかな老母の表情がある。
「革細工は私も若い頃しかやっていませんから、もうやり方も忘れてますよ。ちゃんと職人の方に聞いた方がいいと思いますけど」
「またまたご謙遜を。母上だってまだ現役じゃないですか。こないだも俺の小刀の鞘を直してくれましてね……」
ジルがそう言って、得意げに小刀の鞘をエレアノールに見せて笑っている。それを皆で見てへえーなんて声を上げる。その面々の中には、まだ乳飲み子の息子を抱きかかえたジュリもいた。
「ジルさんはまだお母さまと一緒に住んでいるんですっけ」
「ええ、今は母とエレアノール殿と三人で住んでますよ。母も歳を取りましたから、エレアノール殿が家のことをいろいろ手伝ってくださって助かりますよ」
ジュリのやや後ろには、僕の娘二人を連れてくれているカトラもいる。彼女はそのままのところからニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべた。
「噂では、エレアノール様とジル様がご夫婦になっているなんて言われてるんですよ! ねえ実際どうなんです?」
「やめてくださいよ、そんな事実はありません。そんな噂流れただけでも、クラウス殿に絞め殺されます、ご勘弁を」
はるか遠く、黒い森の向こうから飛んでくる殺意に怯えてジルは身震いする。
「いつまでも独り身でいるからそんな噂を流されるのよ。そうだジルさん、あなた生涯未婚を貫くつもりなら神殿に入って青声になるといいわ」
冗談なのか本気なのか分からないが、そう楽しそうに言うのは……元娼婦のティファだ。
呼んだわけでもないのに噂を聞きつけて勝手に来たので、せっかくだからと招き入れることになった。仕事の関係でカトラと仲が良いらしい。まったく相変わらず神出鬼没の女だが、まあこの際はいいだろう。
彼女は娼婦という生き方から一転……いや、たまたま求人があったからというだけの理由だが、ラズミル市街の神殿で下働きの職を得た。
僕が結婚式を挙げたイディナ神殿は、それによって余計に縁結びや子宝にご利益があるなんて噂が流れてしまい、どうにも女性の礼拝者が多い。今はそこで、ただの下働きから数少ない神女官に成り上がって、活躍してるのだとかなんだとか。
「ティファさん、イディナの神官の力で縁を結んであげてよ」
「んー、ジルさんは……ちょっと神力が足りないから無理そうねー」
そんな馬鹿らしい冗談に花を咲かせているうちに、イグノール一行を乗せた馬車が王宮へとやってきたらしい。使用人がその報告を届けると、皆いよいよかと盛り上がって各々身を整える。
ちょうど仕事を切り上げて合流しようとした大将軍と一緒だったらしく、やがてイグノールは、気さくにモルズと喋りながらやってきた。
「モルズ、お前とは戴冠式以来か。四年で随分と老けたなあ。まだ現役なのか」
「貴殿こそやっと貫禄がでてきたではないか。さっさと退役したいのはやまやまだが、元からこの腕なものだから、体の衰えというのが口実にできなくてなあ……」
そんな皮肉を言い合う四十路の男二人と共に、パウルの従者であるグリスと、トレンティアでパウルと共に暮らしていたらしいリョドルもついてきている。
それを見届けて、僕は一番奥の座に座っていたところから我慢できずに立ち上がり、それを出迎えた。すぐにパウルの力強い笑みがこちらを向く。
いつの間にかパウルとの背丈の差も縮まった。ほとんど同じ高さから、同じ色の目で見つめ合って、僕達はやんわりと背中を抱き合った。
「ミュロス・サーシェ、再会を喜ぼう」
「サーシェ、神々の加護が汝を守りたもうたことに心より感謝を」
そうはっきりと祈りの言葉を交わし、父の背中の感触を確かめる。顔のすぐ横にある長い金髪は……少し、白い毛が増えただろうか。
挨拶はそれだけだった。謁見の間に連れ込むことも、重役の家臣達に顔を合わせることもない。あとはただ皆で、好きなだけ飲んで食って騒ぐだけだ。
パウルは僕と体を離したあと、そこに集まった面々に一人ずつ握手をしながら挨拶を交わしていく。やや後ろについているリョドルとグリスも、それぞれめいめいに挨拶を交わす。客人たちを出迎えて、広間はすでに祭日のような賑やかさに包まれていた。
リョドルは四年前、僕の戴冠式を終えるやいなや突然教官長を退任してトレンティアへと渡った。そこで本場の魔道を学びつつ、ズミ魔道の知識をトレンティアでも広める活動に勤しんだそうだが……。
トレンティアに渡っている四年間ですっかりそちらの文化に馴染んだのか、パウル以上に髪を長く伸ばして、ゆったりと纏めている。元から線の細い顔立ちだということもあって、本当に女みたいな風貌だ。
王宮の面々と挨拶を交わしながらも、視線はどこか遠く、四年ぶりに見る故郷の景色を目に入れてうっとりとしているようだった。同じく数年ぶりに来るであろうグリスとは思い入れも違うだろうが、そんな二人で気の抜けた声を交わし合っている。
「ラズミルの街も見ないうちにすごく復興したねえ」
「そうですねえ。俺がいた頃なんか、廃墟の道に風呂敷広げて露店出してましたもん。いやあ懐かしい」
「そうそう。あの廃墟の中でヨハンとジュリの結婚式をやって……。あの頃は何もかもが……切なかったね」
「切ない、ですか? 今は?」
「今はそうだなあ……、今は、温かいね」
パウルが僕の隣の席につくと、皆がそれぞれ懇意の者同士で好きに喋り出した。僕はともかく、新しい家族の顔をパウルに見せる。
「三人目は男が生まれた。名前はジュドル。目の色はジュリ譲りだな。でもほら、目元の線がお前によく似てる」
僕の腕の中でふにゃふにゃと声を上げている息子を見て、パウルは呆けたような顔をした。
「うん、生まれたばっかの時のお前ともそっくりだ。きっと立派な魔道士になる」
「それはどうかな。ラズミルじゃまだ魔法を勉強する環境が……。あ、そうだ。お前ここにいる間は研究所で教師やってくれよ」
「ああ、それはそのつもりだ。聞けば研究所も随分立派になったらしいじゃないか」
そう話を振られて、こちらは娘の相手にかかりきりだったジュリが振り向いて得意げに笑った。
「ええ、私が頑張って立て直したんですよ! トレンティアの魔法学の体系をざっくりとですけど導入して、でもやっぱりズミ魔道の専門研究室の方に力を入れたくてですね、従来のトレンティア魔法学の方はどうしても担い手が少なくて、今後はトレンティアから研究者を派遣してもらうような体制を模索して……あいた! ちょっとレフィア、今お話中だから大人しくして!」
つらつらと語ろうとした話は、やんちゃ盛りの長女に髪を引っ張られて阻まれてしまった。パウルは頬を緩ませてそんな光景を眺めている。
「王家の家族って言ってもトレンティアとは随分趣が違って……いいなあ。レフィアもまた大きくなってさ……、ほらおいで、おじいちゃんだよ!」
そう言って長女に近寄ろうとするも、四歳のレフィアは数年に一度しか現れない祖父の顔など憶えていない。きりと青い目を釣り上げてその怪しいトレンティア人を睨んだ。
「だれですか? レフィアはひめさまなのです、かるがるしくくちをきいてはいけません!」
「これは失礼いたしました、姫様。わたくしはパウル・イグノールと申します。はるか東方、聖樹の国よりやってまいりまして」
「ぱうる、ぱうる? い? わかりましたわ。わたしはレフィア・リューノ・アルティーヴァです。おとうさま、これは新しいぶかですか?」
幼いながらにはきはきと名乗って見せる、さすが王家の娘だ。そしてすぐに僕を振り向いてくるので、何と答えたものか迷いながらも頷いた。
「トレンティアという隣の国の、前の王様だ。大切な人だから丁寧に話しなさい」
そう諭すと、きっと理解はできていないのだろうが、首を傾げながらも頷いている。……うん、やっぱり可愛いな、僕の娘は。
そんな僕達を、パウルは呆れた顔で眺めていた。
「人のこと言えんがひどい子煩悩だな。王家の娘なんだからもうちょっと厳しく礼節を教えろよ」
「そんなこと言ったって……僕自身王家で育ったわけじゃないんだしよく分からん」
「はあ……まあ、それも新興王家ならではの良さってやつなのかね。ああそれで、魔法研究所の話なんだが、トレンティアから研究員を輸入するのもいいと思うが、こっちの学生を向こうに留学させる体制も作ったほうがいいだろう。レフィア達もベルタスまで来れば本格的な魔法の勉強ができるぞ。可愛い孫たちと勉強ができるなら俺も楽しみだ」
「それこそ孫煩悩が過ぎるだろう。学生として行くのなら祖父なんかにべったりしてないでちゃんとした環境で勉強をだな」
「もちろんそれはそのつもりだって。例えばの話だろうが」
そんなことを言い合うが、結局子煩悩はお互い様なのだろう。
まあ、魔法研究所の事業に関してはほとんどジュリが預かっていることだし、子どもの魔法教育についてもひっくるめて彼女に任せることにはなりそうだ……。
「そういえばアルド先生には孫の顔見せてるのか?」
それぞれ料理をつまみながら、パウルはそう話を変えてきた。うん、と僕は曇った返事をする。
「サリアまでは見に来てくれたけど、ジュドルはまだ。一応手紙はやったんだけど、最近体力が落ちてきて、なかなかオーデルから来るのも大変らしい」
「ありゃ、じゃあまだずっとオーデルにいるのか」
「うん。もう歳なんだしそろそろ引退してラズミルに来いとは前から言ってたんだけど、相変わらず移動したくなかったみたいで……。体調が悪いと言うからそろそろこちらから見舞いに行かないとと思ってる」
「それがいいな。俺もちょうど来たことだし、近々一緒に行こう」
出会いと再会を喜ぶ宴は、ここからまた新しい時間を紡いでいく。
ゆったりと移り変わっていく季節の中で……、僕達自身もひとつひとつ、移り変わっていく。
幼い子ども達は王宮の女官たちに世話を預け、アルド先生のお見舞いなら、とついてきたジュリも伴って……僕達はオーデルへと向かうことになった。
国王の移動となると大袈裟になるのだから、自分で動けるうちにラズミルに来てほしかったが……なんて文句を今更言っても仕方がない。
なるべく騒ぎにならないようにと、妻と最低限の従者――ジルとアザルだけを連れて街道を東へ進む。
同行しているイグノールの方も、連れているのは来た時と同じ、リョドルとグリスだけだった。その馬車の中でもまた、僕達は思い出と、そして会えなかった数年の間の土産話に花を咲かせる。
「……そうか。アルバートは頑張っているか」
「ああ、いつかズミに行きたいと言っていたから、また会えるかもしれないな」
「じゃあ魔法研究所の講師に呼ぼう」
「いやあ……あいつ実践魔法はてんで駄目だから微妙だぞ。トレンティアの古代語学とか神学の研究科はさすがにラズミルにはないだろ……」
まったく、トレンティアの学問というのはいやに複雑で分かりづらい。僕は何年経ってもアルバートの論文を理解できないでいた。
「私もまたトレンティア行きたいですねえ……。次の子どもを授かる前にちょっとした旅行ぐらいなら……。うーんでも、留学っていうのができるようになったら私も行きたいですねえ」
ジュリが東の方角を見てぼんやりと言う。僕はそれを見てしゅんと肩を落とした。
「ちゃんと勉強するなら何ヶ月とか何年とかいなきゃいけないだろ。そんなに離れるのは……」
「そうですよねえ……。子どももどんどん生まれるし、留学に行けるとしたらずっとおばあちゃんになってからかもしれません。ヨンが王様をやめてから二人で、なんてどうですか」
「何十年後になるんだそれ……」
「それはわかんないですけど、いつかですよ、いつか」
小さく微笑んでジュリは言う。
何十年後か……子ども達も大きくなって、王位を譲るような話になって……僕もジュリもじいさんばあさんになって……。
その頃には僕も、アルバートの論文を理解できるようになっているだろうか?
オーデルの町長には事前に連絡を入れたものの、あくまでこれは私的な訪問だから表沙汰にしないようにと依頼をしている。特に熱い歓待があるわけでもなく、まるで素知らぬ旅人一行の顔で街の中へと入った。
五年前に戦いに来た時とは違って、パウル達も金髪を隠す必要はない。しかしラズミルには時々トレンティアの外交官や魔法技師も出入りしているものの、まだ地方の町となるとその姿はない……どうしても目立つ。
じろじろと向けられる好奇の眼差しに耐えながら、僕達は懐かしいオーデルの町並みを進んだ。
五年前の戦いの痕跡はさすがにほとんど見つけられない。だけどラズミルのように数年で大発展を遂げているということもない。
まるで僕達とは切り離されて時間が止まったような、当たり前で、素朴なズミの町の景色がそこにあった。
オーデルは、僕が生まれ育ったルベル村から一番近い場所にある町だ。幼い頃からアルドに連れられて何度も訪ねることがあった……幼いうちに村を出たからその記憶も曖昧だが。
それでも、思い出せない深いところの記憶が残っているのだろうか、その町並みを眺めているとそれだけで、締め付けられるように胸に深いものが落ちてくる。
齢は今年で二十一だ、まだ……言わせれば半人前の年齢なのかもしれない。だけどここに立つと、生まれ育った場所と今暮らしている生活の遠さを思って途方もない気持ちになる。……本当に、いろんなことがあったな、と。
いろんなことがあった、その話を、まだパウルやジュリと交わしていた。
グリスともここで再会したんだった。あの頃が懐かしい、と言って笑いあった。リョドルはここにいた頃はまだ出会っていなかった。そんなことがあったのか、なんて話を聞きながら頷いていた。オーデルの神殿を魔剣で破壊したくだりを聞いた時は青ざめていた。
アザルの出身の村もオーデルに近いし、ジルも母親と一緒にオーデルから軍に伴っていた。それぞれ親しくなった時は違うが、妙に思い出話が弾んだ。
しかしそうしながら皆で向かった先のアルドの病院では、彼に縁があるらしい町民がそわそわと出入りしている様子があった。どうにも病院が開いている様子もない。
「ああ、先生は先月から急に弱ってしまって……、何か病気なのかな、分からないけど、とにかく立って歩くのもやっとなものだから、近くの者で世話を……」
そんな話を聞いて、僕は旅の荷物の片付けを従者に任せてる間から、とにかくアルドの部屋へと入った。最初に伴ったのはパウルだけだった。
部屋の中にある椅子に深く腰掛けているアルドは、どうやらやっぱり病気をしているらしく、一年ほど前に見た時から人が違ったように痩せていた。
「ああ……、ヨハンか? パウルさんまで」
僕の顔を見てぼんやりと言って、痩せたせいで皺も深く見える顔でくしゃりと笑った。
「父さん、見ないうちにひどく弱ったな。薬は飲んでるの?」
そう尋ねたが、アルドは痩せた首を少し傾げるだけだった。
「手紙を……くれていたんだろうな。目も耳も遠くなって、もう字も読めなくてなあ。ああ、今お茶を入れよう。まあ座ってくれ。久しぶりだなあ、ああ、懐かしい……。神様に感謝しよう、サーシェ、サーシェ」
そう独白するように語る父に、僕はかける言葉も分からなくなっていた。もう、聞こえていないのだろう。
よろよろと立ち上がる彼をパウルは黙って支えて、僕をちらりと振り向いた。
「ヨハン、お前がお茶入れてくれ」
パウルにそう言われて、僕は台所に向かい、五年ぶりに自分で茶を入れた。
三人分の茶碗を持って部屋に戻ると、アルドはまた同じ椅子に座って、しきりにパウルに話をしているようだった。
僕が入れてきた茶碗を見ても、特別驚きもしない。平然ととってそれを口に運んだ。
「そう……、あの時もな、ヨハンが自分でやると言って聞かなくて、案の定やかんをひっくり返して、やけどをしたんだ。痛かっただろうなあ、ばかみたいにびーびー泣いて、ごめんなさいごめんなさいって、ずっと私に謝るんだよ。代わりのお茶っ葉ぼくがとってくる、とか言ってまた外に飛び出そうとするものだから、ほんとうに大変で……」
いつの話をしているのやら、懐かしそうに語るその言葉を、パウルは黙って頷いて聞いていた。
僕もただ聞いていた。僕にとってはずっと遠い昔の話だ。いつか、いつかの遠い話……。
「外に飛び出せば、そう……ヨハンは虫が好きで。虫が多い季節は一緒に歩くだけですぐにそれを追いかけていってなかなか戻ってこなくて。羽の青い綺麗な蝶が飛んでいてな、それがひどく気に入ったらしくて、絶対捕まえて帰るって言って駄々をこねるから、仕方なく捕まえて、標本にしてやったらこれまたひどく喜んで、毎日眺めていた。綺麗な……宝石みたいな青色の羽の蝶だった。ヨハンの瞳の色とおんなじで……。お揃いだなって言ったら喜んでた。ぼくの目の色はこんなにきれいなの? ってさ……」
口を開けばヨハンヨハンだ、いい加減むずかゆくなってくるが、口を出しても彼はもう聞かない。ただ、ただパウルと二人で聞いていた。
それから僕達は一週間ほどオーデルに留まっていた。
早くラズミルに帰らなければならないとは思うものの、立って歩くのもやっとだというアルドの体が心配で、なかなかに離れがたかった。
しかしそのたった一週間の間にもアルドはみるみる衰弱していった。食事も喉を通さなくなった。立って歩くこともできなくなった。やがて彼はずっと喋り続けることもなくなった。
弱っているならラズミルに移動させようとも考えていたが、こうまで弱っていては町を移動することもままならないだろう。その場で弱っていくのを見守るほかに術はなかった。
しかしいい加減に政務に戻らなくてはいけない。今日が最後と決めた日の夜、僕達はアルドの病院に泊まり込んで、寝たきりになってしまった彼の隣に座り込んでいた。
「私は医者ではないからはっきりしたことは分からないけど、たぶん臓器のどこかに病気があるんだろうな。薬でどうこうなるものでもないと思う……残念だけど、このまま衰弱して……長くはないだろう」
そう静かに言ったパウルの言葉を、もう聞こえてはないだろう……そう思っていた矢先、アルドはふっと目を開けて微笑んだ。
「……大丈夫、また会えるよ。死んだらアミュテュス様の国へ往くんだ。みんなみんな、同じところに往くんだ。だからまた会えるよ。アミュテュス・サーシェ、限りなき慈しみの光が私達を慰めてくださいますように」
僕はその乾いた手を握りしめて、ただ、「サーシェ」と、祈りを返した。
ラズミルに戻ってから程なくして、アルドの訃報は届いた。僕はその日の夕方、王宮の庭に座ってレフィアとささやかな紅葉狩りをしていた。
庭園の木々は鮮やかな赤や黄色に色づき、やがて一枚、また一枚とはらはらと散り落ちては大地の上を彩っていく。
「ねえおとうさま、おじいさまが死んじゃったってほんとう?」
「うん、アミュテュス様の国にいったんだよ」
「それってどんなとこ」
「……すごく綺麗で、あったかくて、涼しくて、幸せなところだって、本に書いてた」
「へえー、いいなあ、レフィアも行ける?」
「うん、いつか……いつかね。それまでは僕も、レフィアも、大地の上で頑張って生きていかないとね……」
「レフィア、がんばっていい子にしてるよ。おかあさまに、おうたをおしえてもらったの。がんばっておぼえたの。ねえきいておとうさま、ミュロスさまのうたよ……」
ミュロス・サーシェ。今日も太陽が昇ったよ。
サーシェ、サーシェ、温かいおひさまに感謝しよう。
ミュロス・サーシェ。今日もきっと、いいことあるよ。
サーシェ、サーシェ、みんなと一緒に踊ろうよ。
王宮の中庭に面した廊下に道具を広げて……今は、謁見の休憩時間だ。
「ほら、王手」
「ちょっと、ちょっと待てよ。まだ可能性はある」
「本当に?」
「うーん……」
盤上遊戯の相手をしてくれている御仁はティガル・キルーグだ。
トレンティア戦で武功を上げてすっかりラズミル貴族へと成り上がった彼は、しかしいつまで経っても頭脳戦に弱いようである。
「もう一回やってくれ。まだレフィア様は諦められない」
そんなことを言うのに呆れたため息を返す。どうせ勝てないからいいものの、勝てば王女をよこせなんて悪い冗談を持ちかけてくるものだ。
しかし彼の長男と僕の長女は同い年だし、父親同士もこの仲なものだから、成り行き本人達の仲も良い。案外勝負になど賭けなくても現実になるような気もするが。
「結婚と言えばアザルにもそろそろな……」
「ああ、もう十五になるのか」
「うん。身寄りがないから僕が世話をしてやらないとと思うんだけど、なかなか決めきらないらしい」
「そりゃあ国王陛下自ら世話をすると言うんだから……何件ぐらいあるの、縁談」
「今のところ十二? 三ぐらい」
「それは決めきらないな」
大人同士でだらりと話している、噂の本人は今日も元気に庭で木剣を振っている。
もう秋も深まるというのに、上半身を裸にして汗を散らしている様は、いやはや若々しい。自分も昔はあんな感じだったんだろうか、なんて変に年寄りじみた感慨を抱いていしまう。
ティガルに呼ばれて、アザルも汗を拭いながら茶を飲みに来た。
「ええ、結婚の話ですか? うーん……、俺はそんな焦らなくていいかなあって思ってるんですけど、陛下がうるさくて」
人が親切で世話を焼いているというのに、育つごとに生意気になっていく従者である。
「俺は陛下みたいに一人の女性と出会って恋に落ちて……みたいなのに憧れるんですよね。どこかに運命的な出会い、落ちてませんかねえ? やっぱり冒険に出ないとだめですかね?」
そんなのんきな冗談を言っている。
「冒険ねえ……。去年の巡視でズミ国内はだいぶ巡っただろうけど、今度はトレンティアにでも行くか?」
「ああ、それも面白そうですね。金髪の美少女と恋がしたい」
「トレンティアでは魔法が使えないとモテないぞ。ちゃんと練習してから行け」
「マジですか? いやそれは頑張らないと……。っていうのは冗談ですけど、確かに魔法の練習はもうちょっとやりたいですね。ラズミルの学校じゃ戦闘魔術の先生が今いないらしくて……エレアノール様のとこに個人で師事しにいくぐらいしか……」
そうぼやくので、僕はふっと笑みを浮かべてやった。
「それなら朗報だ。先ほどサダナムから連絡が来たんだが……、もう数日中にイグノールがこちらに到着するってさ」
「おお、イグノール様が!? 確か、今度の滞在は長いって話でしたよね」
「ああ、家も構えて……何年か分からないけど当分住むらしい。どうせ研究所に入り浸るつもりだろうから教師をしてもらおう」
アザルはその報せを聞いて余計うきうきとして、また元気に剣を振り始めた。その姿を見て、僕も久しぶりに戦闘魔術の練習でもするか、なんて思い出す。
当たり前だが戦争が終わってしまうと戦う機会なんて全くなくて、しかも国王の仕事と生活の中では、練習しようと思う機会さえない。もうこの五年ですっかり鈍ってしまっている……。
それでも弓は意味もなく練習をしてしまうし、暇があれば狩りにも出かけたくなる。幼い頃からの習慣が一番馴染む。やっぱり血門があってもズミ人なんだな、なんて自分で思ったりする。
それと比べればアザルはまだ十歳の頃から魔法を触っていたのだ、きっと僕などよりよっぽど優秀な魔道士になっていくことだろう……。
イグノールが到着する予定の日は、謁見も中止して一日を休日にした。大広間に接待の準備を広げて、せっかくだからと、イグノールと縁のあった五年前の仲間や軍人達を招いて彼の到着を出迎える。
ちょうど近くにいたものだから、エレアノールも呼び出した。彼女は王族のくせにイグノール以上に自由で、いつの間にかラズミルにいたりいなくなっていたりする。
ズミの各地だけでなく時々トレンティアに戻ったり、トレンティアの方でも地方辺境を旅から旅へと移動して冒険家の生活を満喫しているらしい。
「朝から狩りに行ってたのよ。仕留めたウサギの毛皮がこれが結構良くて。売ってもいいけどせっかくだから兄様への贈り物にしようかなって。革細工はやり方がわからないからメラに聞いて……」
近況を聞いても、トレンティアの王女と言うには随分と荒々しい。
どうやら戦争中からの縁でメラ――かつてルヴァークと呼ばれた女戦士とはまだ仲良くしているらしく、彼女の家に住み込んで狩猟を教わったとかいう話だ。
一緒に王宮に来たメラは、こちらは戦時中の面影がほとんど無いと言っていいほど変わっている。服はゆったりとした女物を着て、武器を握らなくなった体はすぐに緩み、もう五十も過ぎた顔にはただ穏やかな老母の表情がある。
「革細工は私も若い頃しかやっていませんから、もうやり方も忘れてますよ。ちゃんと職人の方に聞いた方がいいと思いますけど」
「またまたご謙遜を。母上だってまだ現役じゃないですか。こないだも俺の小刀の鞘を直してくれましてね……」
ジルがそう言って、得意げに小刀の鞘をエレアノールに見せて笑っている。それを皆で見てへえーなんて声を上げる。その面々の中には、まだ乳飲み子の息子を抱きかかえたジュリもいた。
「ジルさんはまだお母さまと一緒に住んでいるんですっけ」
「ええ、今は母とエレアノール殿と三人で住んでますよ。母も歳を取りましたから、エレアノール殿が家のことをいろいろ手伝ってくださって助かりますよ」
ジュリのやや後ろには、僕の娘二人を連れてくれているカトラもいる。彼女はそのままのところからニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべた。
「噂では、エレアノール様とジル様がご夫婦になっているなんて言われてるんですよ! ねえ実際どうなんです?」
「やめてくださいよ、そんな事実はありません。そんな噂流れただけでも、クラウス殿に絞め殺されます、ご勘弁を」
はるか遠く、黒い森の向こうから飛んでくる殺意に怯えてジルは身震いする。
「いつまでも独り身でいるからそんな噂を流されるのよ。そうだジルさん、あなた生涯未婚を貫くつもりなら神殿に入って青声になるといいわ」
冗談なのか本気なのか分からないが、そう楽しそうに言うのは……元娼婦のティファだ。
呼んだわけでもないのに噂を聞きつけて勝手に来たので、せっかくだからと招き入れることになった。仕事の関係でカトラと仲が良いらしい。まったく相変わらず神出鬼没の女だが、まあこの際はいいだろう。
彼女は娼婦という生き方から一転……いや、たまたま求人があったからというだけの理由だが、ラズミル市街の神殿で下働きの職を得た。
僕が結婚式を挙げたイディナ神殿は、それによって余計に縁結びや子宝にご利益があるなんて噂が流れてしまい、どうにも女性の礼拝者が多い。今はそこで、ただの下働きから数少ない神女官に成り上がって、活躍してるのだとかなんだとか。
「ティファさん、イディナの神官の力で縁を結んであげてよ」
「んー、ジルさんは……ちょっと神力が足りないから無理そうねー」
そんな馬鹿らしい冗談に花を咲かせているうちに、イグノール一行を乗せた馬車が王宮へとやってきたらしい。使用人がその報告を届けると、皆いよいよかと盛り上がって各々身を整える。
ちょうど仕事を切り上げて合流しようとした大将軍と一緒だったらしく、やがてイグノールは、気さくにモルズと喋りながらやってきた。
「モルズ、お前とは戴冠式以来か。四年で随分と老けたなあ。まだ現役なのか」
「貴殿こそやっと貫禄がでてきたではないか。さっさと退役したいのはやまやまだが、元からこの腕なものだから、体の衰えというのが口実にできなくてなあ……」
そんな皮肉を言い合う四十路の男二人と共に、パウルの従者であるグリスと、トレンティアでパウルと共に暮らしていたらしいリョドルもついてきている。
それを見届けて、僕は一番奥の座に座っていたところから我慢できずに立ち上がり、それを出迎えた。すぐにパウルの力強い笑みがこちらを向く。
いつの間にかパウルとの背丈の差も縮まった。ほとんど同じ高さから、同じ色の目で見つめ合って、僕達はやんわりと背中を抱き合った。
「ミュロス・サーシェ、再会を喜ぼう」
「サーシェ、神々の加護が汝を守りたもうたことに心より感謝を」
そうはっきりと祈りの言葉を交わし、父の背中の感触を確かめる。顔のすぐ横にある長い金髪は……少し、白い毛が増えただろうか。
挨拶はそれだけだった。謁見の間に連れ込むことも、重役の家臣達に顔を合わせることもない。あとはただ皆で、好きなだけ飲んで食って騒ぐだけだ。
パウルは僕と体を離したあと、そこに集まった面々に一人ずつ握手をしながら挨拶を交わしていく。やや後ろについているリョドルとグリスも、それぞれめいめいに挨拶を交わす。客人たちを出迎えて、広間はすでに祭日のような賑やかさに包まれていた。
リョドルは四年前、僕の戴冠式を終えるやいなや突然教官長を退任してトレンティアへと渡った。そこで本場の魔道を学びつつ、ズミ魔道の知識をトレンティアでも広める活動に勤しんだそうだが……。
トレンティアに渡っている四年間ですっかりそちらの文化に馴染んだのか、パウル以上に髪を長く伸ばして、ゆったりと纏めている。元から線の細い顔立ちだということもあって、本当に女みたいな風貌だ。
王宮の面々と挨拶を交わしながらも、視線はどこか遠く、四年ぶりに見る故郷の景色を目に入れてうっとりとしているようだった。同じく数年ぶりに来るであろうグリスとは思い入れも違うだろうが、そんな二人で気の抜けた声を交わし合っている。
「ラズミルの街も見ないうちにすごく復興したねえ」
「そうですねえ。俺がいた頃なんか、廃墟の道に風呂敷広げて露店出してましたもん。いやあ懐かしい」
「そうそう。あの廃墟の中でヨハンとジュリの結婚式をやって……。あの頃は何もかもが……切なかったね」
「切ない、ですか? 今は?」
「今はそうだなあ……、今は、温かいね」
パウルが僕の隣の席につくと、皆がそれぞれ懇意の者同士で好きに喋り出した。僕はともかく、新しい家族の顔をパウルに見せる。
「三人目は男が生まれた。名前はジュドル。目の色はジュリ譲りだな。でもほら、目元の線がお前によく似てる」
僕の腕の中でふにゃふにゃと声を上げている息子を見て、パウルは呆けたような顔をした。
「うん、生まれたばっかの時のお前ともそっくりだ。きっと立派な魔道士になる」
「それはどうかな。ラズミルじゃまだ魔法を勉強する環境が……。あ、そうだ。お前ここにいる間は研究所で教師やってくれよ」
「ああ、それはそのつもりだ。聞けば研究所も随分立派になったらしいじゃないか」
そう話を振られて、こちらは娘の相手にかかりきりだったジュリが振り向いて得意げに笑った。
「ええ、私が頑張って立て直したんですよ! トレンティアの魔法学の体系をざっくりとですけど導入して、でもやっぱりズミ魔道の専門研究室の方に力を入れたくてですね、従来のトレンティア魔法学の方はどうしても担い手が少なくて、今後はトレンティアから研究者を派遣してもらうような体制を模索して……あいた! ちょっとレフィア、今お話中だから大人しくして!」
つらつらと語ろうとした話は、やんちゃ盛りの長女に髪を引っ張られて阻まれてしまった。パウルは頬を緩ませてそんな光景を眺めている。
「王家の家族って言ってもトレンティアとは随分趣が違って……いいなあ。レフィアもまた大きくなってさ……、ほらおいで、おじいちゃんだよ!」
そう言って長女に近寄ろうとするも、四歳のレフィアは数年に一度しか現れない祖父の顔など憶えていない。きりと青い目を釣り上げてその怪しいトレンティア人を睨んだ。
「だれですか? レフィアはひめさまなのです、かるがるしくくちをきいてはいけません!」
「これは失礼いたしました、姫様。わたくしはパウル・イグノールと申します。はるか東方、聖樹の国よりやってまいりまして」
「ぱうる、ぱうる? い? わかりましたわ。わたしはレフィア・リューノ・アルティーヴァです。おとうさま、これは新しいぶかですか?」
幼いながらにはきはきと名乗って見せる、さすが王家の娘だ。そしてすぐに僕を振り向いてくるので、何と答えたものか迷いながらも頷いた。
「トレンティアという隣の国の、前の王様だ。大切な人だから丁寧に話しなさい」
そう諭すと、きっと理解はできていないのだろうが、首を傾げながらも頷いている。……うん、やっぱり可愛いな、僕の娘は。
そんな僕達を、パウルは呆れた顔で眺めていた。
「人のこと言えんがひどい子煩悩だな。王家の娘なんだからもうちょっと厳しく礼節を教えろよ」
「そんなこと言ったって……僕自身王家で育ったわけじゃないんだしよく分からん」
「はあ……まあ、それも新興王家ならではの良さってやつなのかね。ああそれで、魔法研究所の話なんだが、トレンティアから研究員を輸入するのもいいと思うが、こっちの学生を向こうに留学させる体制も作ったほうがいいだろう。レフィア達もベルタスまで来れば本格的な魔法の勉強ができるぞ。可愛い孫たちと勉強ができるなら俺も楽しみだ」
「それこそ孫煩悩が過ぎるだろう。学生として行くのなら祖父なんかにべったりしてないでちゃんとした環境で勉強をだな」
「もちろんそれはそのつもりだって。例えばの話だろうが」
そんなことを言い合うが、結局子煩悩はお互い様なのだろう。
まあ、魔法研究所の事業に関してはほとんどジュリが預かっていることだし、子どもの魔法教育についてもひっくるめて彼女に任せることにはなりそうだ……。
「そういえばアルド先生には孫の顔見せてるのか?」
それぞれ料理をつまみながら、パウルはそう話を変えてきた。うん、と僕は曇った返事をする。
「サリアまでは見に来てくれたけど、ジュドルはまだ。一応手紙はやったんだけど、最近体力が落ちてきて、なかなかオーデルから来るのも大変らしい」
「ありゃ、じゃあまだずっとオーデルにいるのか」
「うん。もう歳なんだしそろそろ引退してラズミルに来いとは前から言ってたんだけど、相変わらず移動したくなかったみたいで……。体調が悪いと言うからそろそろこちらから見舞いに行かないとと思ってる」
「それがいいな。俺もちょうど来たことだし、近々一緒に行こう」
出会いと再会を喜ぶ宴は、ここからまた新しい時間を紡いでいく。
ゆったりと移り変わっていく季節の中で……、僕達自身もひとつひとつ、移り変わっていく。
幼い子ども達は王宮の女官たちに世話を預け、アルド先生のお見舞いなら、とついてきたジュリも伴って……僕達はオーデルへと向かうことになった。
国王の移動となると大袈裟になるのだから、自分で動けるうちにラズミルに来てほしかったが……なんて文句を今更言っても仕方がない。
なるべく騒ぎにならないようにと、妻と最低限の従者――ジルとアザルだけを連れて街道を東へ進む。
同行しているイグノールの方も、連れているのは来た時と同じ、リョドルとグリスだけだった。その馬車の中でもまた、僕達は思い出と、そして会えなかった数年の間の土産話に花を咲かせる。
「……そうか。アルバートは頑張っているか」
「ああ、いつかズミに行きたいと言っていたから、また会えるかもしれないな」
「じゃあ魔法研究所の講師に呼ぼう」
「いやあ……あいつ実践魔法はてんで駄目だから微妙だぞ。トレンティアの古代語学とか神学の研究科はさすがにラズミルにはないだろ……」
まったく、トレンティアの学問というのはいやに複雑で分かりづらい。僕は何年経ってもアルバートの論文を理解できないでいた。
「私もまたトレンティア行きたいですねえ……。次の子どもを授かる前にちょっとした旅行ぐらいなら……。うーんでも、留学っていうのができるようになったら私も行きたいですねえ」
ジュリが東の方角を見てぼんやりと言う。僕はそれを見てしゅんと肩を落とした。
「ちゃんと勉強するなら何ヶ月とか何年とかいなきゃいけないだろ。そんなに離れるのは……」
「そうですよねえ……。子どももどんどん生まれるし、留学に行けるとしたらずっとおばあちゃんになってからかもしれません。ヨンが王様をやめてから二人で、なんてどうですか」
「何十年後になるんだそれ……」
「それはわかんないですけど、いつかですよ、いつか」
小さく微笑んでジュリは言う。
何十年後か……子ども達も大きくなって、王位を譲るような話になって……僕もジュリもじいさんばあさんになって……。
その頃には僕も、アルバートの論文を理解できるようになっているだろうか?
オーデルの町長には事前に連絡を入れたものの、あくまでこれは私的な訪問だから表沙汰にしないようにと依頼をしている。特に熱い歓待があるわけでもなく、まるで素知らぬ旅人一行の顔で街の中へと入った。
五年前に戦いに来た時とは違って、パウル達も金髪を隠す必要はない。しかしラズミルには時々トレンティアの外交官や魔法技師も出入りしているものの、まだ地方の町となるとその姿はない……どうしても目立つ。
じろじろと向けられる好奇の眼差しに耐えながら、僕達は懐かしいオーデルの町並みを進んだ。
五年前の戦いの痕跡はさすがにほとんど見つけられない。だけどラズミルのように数年で大発展を遂げているということもない。
まるで僕達とは切り離されて時間が止まったような、当たり前で、素朴なズミの町の景色がそこにあった。
オーデルは、僕が生まれ育ったルベル村から一番近い場所にある町だ。幼い頃からアルドに連れられて何度も訪ねることがあった……幼いうちに村を出たからその記憶も曖昧だが。
それでも、思い出せない深いところの記憶が残っているのだろうか、その町並みを眺めているとそれだけで、締め付けられるように胸に深いものが落ちてくる。
齢は今年で二十一だ、まだ……言わせれば半人前の年齢なのかもしれない。だけどここに立つと、生まれ育った場所と今暮らしている生活の遠さを思って途方もない気持ちになる。……本当に、いろんなことがあったな、と。
いろんなことがあった、その話を、まだパウルやジュリと交わしていた。
グリスともここで再会したんだった。あの頃が懐かしい、と言って笑いあった。リョドルはここにいた頃はまだ出会っていなかった。そんなことがあったのか、なんて話を聞きながら頷いていた。オーデルの神殿を魔剣で破壊したくだりを聞いた時は青ざめていた。
アザルの出身の村もオーデルに近いし、ジルも母親と一緒にオーデルから軍に伴っていた。それぞれ親しくなった時は違うが、妙に思い出話が弾んだ。
しかしそうしながら皆で向かった先のアルドの病院では、彼に縁があるらしい町民がそわそわと出入りしている様子があった。どうにも病院が開いている様子もない。
「ああ、先生は先月から急に弱ってしまって……、何か病気なのかな、分からないけど、とにかく立って歩くのもやっとなものだから、近くの者で世話を……」
そんな話を聞いて、僕は旅の荷物の片付けを従者に任せてる間から、とにかくアルドの部屋へと入った。最初に伴ったのはパウルだけだった。
部屋の中にある椅子に深く腰掛けているアルドは、どうやらやっぱり病気をしているらしく、一年ほど前に見た時から人が違ったように痩せていた。
「ああ……、ヨハンか? パウルさんまで」
僕の顔を見てぼんやりと言って、痩せたせいで皺も深く見える顔でくしゃりと笑った。
「父さん、見ないうちにひどく弱ったな。薬は飲んでるの?」
そう尋ねたが、アルドは痩せた首を少し傾げるだけだった。
「手紙を……くれていたんだろうな。目も耳も遠くなって、もう字も読めなくてなあ。ああ、今お茶を入れよう。まあ座ってくれ。久しぶりだなあ、ああ、懐かしい……。神様に感謝しよう、サーシェ、サーシェ」
そう独白するように語る父に、僕はかける言葉も分からなくなっていた。もう、聞こえていないのだろう。
よろよろと立ち上がる彼をパウルは黙って支えて、僕をちらりと振り向いた。
「ヨハン、お前がお茶入れてくれ」
パウルにそう言われて、僕は台所に向かい、五年ぶりに自分で茶を入れた。
三人分の茶碗を持って部屋に戻ると、アルドはまた同じ椅子に座って、しきりにパウルに話をしているようだった。
僕が入れてきた茶碗を見ても、特別驚きもしない。平然ととってそれを口に運んだ。
「そう……、あの時もな、ヨハンが自分でやると言って聞かなくて、案の定やかんをひっくり返して、やけどをしたんだ。痛かっただろうなあ、ばかみたいにびーびー泣いて、ごめんなさいごめんなさいって、ずっと私に謝るんだよ。代わりのお茶っ葉ぼくがとってくる、とか言ってまた外に飛び出そうとするものだから、ほんとうに大変で……」
いつの話をしているのやら、懐かしそうに語るその言葉を、パウルは黙って頷いて聞いていた。
僕もただ聞いていた。僕にとってはずっと遠い昔の話だ。いつか、いつかの遠い話……。
「外に飛び出せば、そう……ヨハンは虫が好きで。虫が多い季節は一緒に歩くだけですぐにそれを追いかけていってなかなか戻ってこなくて。羽の青い綺麗な蝶が飛んでいてな、それがひどく気に入ったらしくて、絶対捕まえて帰るって言って駄々をこねるから、仕方なく捕まえて、標本にしてやったらこれまたひどく喜んで、毎日眺めていた。綺麗な……宝石みたいな青色の羽の蝶だった。ヨハンの瞳の色とおんなじで……。お揃いだなって言ったら喜んでた。ぼくの目の色はこんなにきれいなの? ってさ……」
口を開けばヨハンヨハンだ、いい加減むずかゆくなってくるが、口を出しても彼はもう聞かない。ただ、ただパウルと二人で聞いていた。
それから僕達は一週間ほどオーデルに留まっていた。
早くラズミルに帰らなければならないとは思うものの、立って歩くのもやっとだというアルドの体が心配で、なかなかに離れがたかった。
しかしそのたった一週間の間にもアルドはみるみる衰弱していった。食事も喉を通さなくなった。立って歩くこともできなくなった。やがて彼はずっと喋り続けることもなくなった。
弱っているならラズミルに移動させようとも考えていたが、こうまで弱っていては町を移動することもままならないだろう。その場で弱っていくのを見守るほかに術はなかった。
しかしいい加減に政務に戻らなくてはいけない。今日が最後と決めた日の夜、僕達はアルドの病院に泊まり込んで、寝たきりになってしまった彼の隣に座り込んでいた。
「私は医者ではないからはっきりしたことは分からないけど、たぶん臓器のどこかに病気があるんだろうな。薬でどうこうなるものでもないと思う……残念だけど、このまま衰弱して……長くはないだろう」
そう静かに言ったパウルの言葉を、もう聞こえてはないだろう……そう思っていた矢先、アルドはふっと目を開けて微笑んだ。
「……大丈夫、また会えるよ。死んだらアミュテュス様の国へ往くんだ。みんなみんな、同じところに往くんだ。だからまた会えるよ。アミュテュス・サーシェ、限りなき慈しみの光が私達を慰めてくださいますように」
僕はその乾いた手を握りしめて、ただ、「サーシェ」と、祈りを返した。
ラズミルに戻ってから程なくして、アルドの訃報は届いた。僕はその日の夕方、王宮の庭に座ってレフィアとささやかな紅葉狩りをしていた。
庭園の木々は鮮やかな赤や黄色に色づき、やがて一枚、また一枚とはらはらと散り落ちては大地の上を彩っていく。
「ねえおとうさま、おじいさまが死んじゃったってほんとう?」
「うん、アミュテュス様の国にいったんだよ」
「それってどんなとこ」
「……すごく綺麗で、あったかくて、涼しくて、幸せなところだって、本に書いてた」
「へえー、いいなあ、レフィアも行ける?」
「うん、いつか……いつかね。それまでは僕も、レフィアも、大地の上で頑張って生きていかないとね……」
「レフィア、がんばっていい子にしてるよ。おかあさまに、おうたをおしえてもらったの。がんばっておぼえたの。ねえきいておとうさま、ミュロスさまのうたよ……」
ミュロス・サーシェ。今日も太陽が昇ったよ。
サーシェ、サーシェ、温かいおひさまに感謝しよう。
ミュロス・サーシェ。今日もきっと、いいことあるよ。
サーシェ、サーシェ、みんなと一緒に踊ろうよ。
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