【この魔力量は貴族の血筋では?】婚約破棄された孤児のアテネは、魔道具屋の息子と結婚しなくなったので魔法学院に進学することにした。

山田 バルス

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閑話3 国王リチャード視点 ――十九年越しの再会

国王リチャード視点 ――十九年越しの再会

 ――王城・大広間。
 高い天井に吊るされたシャンデリアの光が、今ほど眩しく感じられたことはない。
 だがその光よりも強烈に、私の心を照らしたのは――あの瞬間だった。

 十九年。
 我が胸を締め付け続けた苦痛と悔恨が、たった一つの名の出現で音を立てて崩れ去った。

 「父、リチャード=ファン=フリューゲル……母、エリザベート=ファン=フリューゲル」

 金色の魔道具が告げた真実。
 それは、目の前の少女――アテネ=グレイが、失われた第一子、ダイアナであることを示していた。

 私は息を呑んだ。
 この十九年間、エリザベートは「ダイアナは生きている」と信じ続けてきた。
 しかし、私は違った。
 いや、違わざるを得なかったのだ。

 十九年という歳月は、あまりにも長い。
 赤子が川へと捨てられ、生き延びる可能性など――そう考える方が自然だった。
 希望を抱いたままでは、王としての務めを果たせない。国を治める私が、夢と幻想に縋るわけにはいかなかった。

 だから私は、娘を諦めた。
 自らを守るために、そして国を守るために。
 エリザベートが夜毎に祈りを捧げる姿を見ても、慰めの言葉をかけることしかできなかった。
 本心では「無駄なことを」と思っていた。
 だが、今――。

 「ダ、ダイアナ……っ!」
 妻が叫び、駆け寄る。
 私はそれを呆然と見ていた。

 十九年前の赤子が、今こうして十九歳の娘となり、私たちの前に立っている。
 エリザベートの直感は正しかったのだ。
 私はなんと愚かな男だったのか。信じ続けた妻に寄り添うこともできず、ただ現実から逃げていたのだ。

 だが、そんな悔いすらも今は喜びにかき消されていく。
 嗚呼、これ以上に嬉しいことがあるだろうか。
 王妃の腕に抱かれる娘の姿を見て、私の胸は熱くなった。

「ここにいる娘は――十九年前、我が王家から誘拐された第一子、ダイアナ=ファン=フリューゲル王女に間違いない!」

 私は宣言した。
 それは王としての責務であると同時に、父としての叫びだった。
 この瞬間を、どれほど待ち望んでいたことか。
 心の奥底では、私だって願い続けていたのだ。

 大広間を揺らす歓声。
 「万歳」の声が幾重にも重なり、祝福の拍手が鳴り響く。
 しかし私の耳には、そのすべてが遠く感じられた。
 ただ娘の瞳、戸惑いと涙を浮かべた表情、それだけが鮮烈に映っていた。

 ――十九年。
 私は彼女に父として何一つしてやれなかった。
 成長を見守ることも、誕生日を祝うことも、病に伏した時に傍にいることも。
 すべてを失ったと思っていた。

 だが、これからだ。
 娘の人生はまだ始まったばかり。
 私は父として、その道を助けていこう。

 王女としての務めを果たすことを強いるつもりはない。
 この十九年、彼女は「アテネ=グレイ」として生きてきたのだ。
 ならばまず、その人生を尊重しよう。
 けれど、同時に伝えたい。――私はお前の父であり、家族である、と。

 エリザベートの涙に濡れた笑顔を見て、胸が締め付けられる。
 十九年もの間、彼女は孤独な信仰心で娘を信じ抜いた。
 その姿を、私は理解しながらも受け入れられず、ただ見守るしかなかった。
 だが今日、妻は報われた。
 そして私もまた、父として救われたのだ。

 ……ありがとう、ダイアナ。
 生きていてくれて。
 この国に戻ってきてくれて。

 十九年分の空白は、すぐには埋まらぬだろう。
 それでも、これからの日々を重ねていけばいい。
 家族として、国として、共に歩んでいけばいい。

 私はゆっくりと娘に歩み寄り、震える手でその肩に触れた。
 小さなぬくもり。だが確かに、我が血を継ぐ娘の温もり。

「ダイアナ――おかえり」

 そう告げた時、私の頬を熱いものが伝った。
 王としての威厳など、今はどうでもよかった。
 私はただ、一人の父として、十九年ぶりに娘と再会したのだ。

 大広間を満たす祝福の音の中、私は心に誓った。
 これからは共に歩もう。
 たとえどんな困難が待ち受けていようとも、もう二度と手放しはしない。

 十九年を超えて取り戻した奇跡を、この先は私が守り抜くのだ。
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