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閑話3 メアリー編 桜の木の下での出会い
春の桜が満開を迎えた頃、学院の中庭は淡い薄紅色に包まれていた。
長い冬が終わり、冷たい風がぬるむと、まるで世界が一斉に目を覚ますようだった。
私はその光景を見ながら、どこか胸がそわそわしていた。桜の花びらが舞うと、なぜかリースの笑顔を思い出してしまうのだ。
彼女が春の中に立っていたら、どんなに美しいだろうと、想像してしまう自分がいた。
学院の生徒たちは皆、春の訪れを喜んで外へ出ていた。桜の下でお弁当を広げる子たち、記念に絵を描く子たち、にぎやかな笑い声が広がる。そんな中、私はふと、人混みの中に見覚えのある背中を見つけた。
「……あれ?」
あの落ち着いた雰囲気、丸い肩のライン。
私は思わず駆け寄っていた。
花びらの下に立っていたのは――以前、学院で事務をしていたアトラスさんだったのだ。
すでに退職されて久しいはずの彼が、こうして桜を眺めているなんて思ってもみなかった。
「アトラスさん!」
思わず声が弾んだ。アトラスさんがこちらを振り返り、驚いたように目を丸くした。
「おや……メアリー嬢か。久しぶりだねぇ。もう学院も新しい年度かい?」
「はい。お久しぶりです。こんなところで会えるなんて……!」
私は胸が高鳴るのを抑えきれなかった。
アトラスさんは学院の中で、数少ない優しい大人の一人だった。
仕事の合間に笑って話しかけてくれたり、困っている生徒をそっと助けたり。
リースのことでも、何か知っているかもしれない――そんな希望が一気に広がっていった。
「アトラスさん……あの、リースのこと、ご存知ありませんか?」
桜の花びらがひらひらと舞い落ちる中で、私は勇気を振り絞って訊いた。
ずっと探していた名前を、ようやく口にできた気がした。
胸がぎゅっと締め付けられ、声が震えそうになった。
アトラスさんの表情が、一瞬だけ曇った。
やはり何か知っているのだ――そう直感した。
「リース……あの子か。あの冬の夜、突然追い出された子だな」
「はい! ずっと探しているんです。わたし……あの子がまだ生きていると信じていて」
私が必死に言葉をつなげると、アトラスさんは腕を組み、ゆっくりとうなずいた。
目の奥に複雑な光が宿っていた。
「実はな、退職したあと、仕事を紹介してくれたのがリース嬢なのだよ。だから、今はリース嬢と一緒にそこで働いているよ」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
希望が一気に広がり、涙が込み上げそうになった。
「あ、会いたいです……リ、リースに会いたいです! ど、どこにいるのですか?!」
思わず身を乗り出す。
アトラスさんは少し驚いた顔をしたが、すぐに静かに答えてくれた。
「騎士団の寮だよ。ただ、訳ありでね、リース嬢は今、18歳ということで、そこで仕事をしている。もし会うのならば、話を合わせて貰わないとリース嬢が困ることになる。分かるだろう?」
私はその場で立ち尽くし、桜の花びらの中で空を見上げた。リースが……生きている。こんな近くで息をして、働いている。そう思うだけで、胸の奥が熱くなる。
「ありがとうございます、アトラスさん。本当に……!」
深々と頭を下げた私を見て、アトラスさんは優しく笑った。
「それで、リースに会えないでしょうか?わたし心配で」
「そうじゃな、多分、大丈夫だ思うが、一度、リース嬢に訊いてみよう。こちらから学院に連絡するように伝えておくよ。メアリー嬢、あなたの……友を思う気持ちは素晴らしいね」
その言葉は、春の光のように私の胸に沁みた。
リースが生きていた。
そして、リースに会えるかもしれない。
わたしは学院に戻り、リースからの連絡が来るのを待つことに決めた。
長い冬が終わり、冷たい風がぬるむと、まるで世界が一斉に目を覚ますようだった。
私はその光景を見ながら、どこか胸がそわそわしていた。桜の花びらが舞うと、なぜかリースの笑顔を思い出してしまうのだ。
彼女が春の中に立っていたら、どんなに美しいだろうと、想像してしまう自分がいた。
学院の生徒たちは皆、春の訪れを喜んで外へ出ていた。桜の下でお弁当を広げる子たち、記念に絵を描く子たち、にぎやかな笑い声が広がる。そんな中、私はふと、人混みの中に見覚えのある背中を見つけた。
「……あれ?」
あの落ち着いた雰囲気、丸い肩のライン。
私は思わず駆け寄っていた。
花びらの下に立っていたのは――以前、学院で事務をしていたアトラスさんだったのだ。
すでに退職されて久しいはずの彼が、こうして桜を眺めているなんて思ってもみなかった。
「アトラスさん!」
思わず声が弾んだ。アトラスさんがこちらを振り返り、驚いたように目を丸くした。
「おや……メアリー嬢か。久しぶりだねぇ。もう学院も新しい年度かい?」
「はい。お久しぶりです。こんなところで会えるなんて……!」
私は胸が高鳴るのを抑えきれなかった。
アトラスさんは学院の中で、数少ない優しい大人の一人だった。
仕事の合間に笑って話しかけてくれたり、困っている生徒をそっと助けたり。
リースのことでも、何か知っているかもしれない――そんな希望が一気に広がっていった。
「アトラスさん……あの、リースのこと、ご存知ありませんか?」
桜の花びらがひらひらと舞い落ちる中で、私は勇気を振り絞って訊いた。
ずっと探していた名前を、ようやく口にできた気がした。
胸がぎゅっと締め付けられ、声が震えそうになった。
アトラスさんの表情が、一瞬だけ曇った。
やはり何か知っているのだ――そう直感した。
「リース……あの子か。あの冬の夜、突然追い出された子だな」
「はい! ずっと探しているんです。わたし……あの子がまだ生きていると信じていて」
私が必死に言葉をつなげると、アトラスさんは腕を組み、ゆっくりとうなずいた。
目の奥に複雑な光が宿っていた。
「実はな、退職したあと、仕事を紹介してくれたのがリース嬢なのだよ。だから、今はリース嬢と一緒にそこで働いているよ」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
希望が一気に広がり、涙が込み上げそうになった。
「あ、会いたいです……リ、リースに会いたいです! ど、どこにいるのですか?!」
思わず身を乗り出す。
アトラスさんは少し驚いた顔をしたが、すぐに静かに答えてくれた。
「騎士団の寮だよ。ただ、訳ありでね、リース嬢は今、18歳ということで、そこで仕事をしている。もし会うのならば、話を合わせて貰わないとリース嬢が困ることになる。分かるだろう?」
私はその場で立ち尽くし、桜の花びらの中で空を見上げた。リースが……生きている。こんな近くで息をして、働いている。そう思うだけで、胸の奥が熱くなる。
「ありがとうございます、アトラスさん。本当に……!」
深々と頭を下げた私を見て、アトラスさんは優しく笑った。
「それで、リースに会えないでしょうか?わたし心配で」
「そうじゃな、多分、大丈夫だ思うが、一度、リース嬢に訊いてみよう。こちらから学院に連絡するように伝えておくよ。メアリー嬢、あなたの……友を思う気持ちは素晴らしいね」
その言葉は、春の光のように私の胸に沁みた。
リースが生きていた。
そして、リースに会えるかもしれない。
わたしは学院に戻り、リースからの連絡が来るのを待つことに決めた。
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