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閑話5 クローリー視点 リースの終わり
倉庫街の午後 ― クローリー視点
午後三時。
運命の鐘が胸の奥で鳴り響く。
リースは、まるで迷いを知らないように真っ直ぐ歩いてきて、小屋の前に立った。
その姿を、わたしは廃材置き場の影から息を殺して見つめていた。
――本当に来たのね。
信じられない気持ちと同時に、心の奥底から湧き上がる快感に、頬がじんわりと熱くなる。
リースは扉の前で少し立ち止まり、あたりを見渡した。
警戒しているのだろう。金色の髪が夕日に照らされ、柔らかな光をまとって輝いて見える。
それは学院時代から変わらない、あの気高い姿。
だけど、今からその輝きが汚されていくのだと思うと……胸の鼓動がどんどん速くなっていった。
お願いだから、早く入って。
わたしの心の声に応えるかのように、リースは小さく息を吐き、扉に手をかける。
きぃ、と錆びた音を立てて扉が開いた。
そして、彼女は中へと消えていった。
その瞬間――わたしの視界は暗闇に閉ざされたように感じた。
リースの姿が見えなくなってしまったからだ。
けれどすぐに、小屋の中から声が漏れてきて、わたしの耳を支配した。
◇
「あ、あなた……誰ですか?」
リースの声だ。
困惑と戸惑いが入り混じった、必死の問いかけ。
その響きは、わたしの心臓を直接掴んで揺さぶった。
「メ、メアリーはどこですか?」
さらに震えた声。
裏切られたことにまだ気づけていない、愚かで純粋な声。
ああ、これだ。
わたしがずっと夢見ていた光景が、今ここで現実になっている。
すぐに、荒々しい男の声が返ってきた。
「うるせえ。そんな奴は来ねえよ」
低く、冷たく突き放すような響き。
エックスの声だった。
その言葉を聞いた瞬間、わたしは口元を押さえ、笑いをこらえた。
――最高。これ以上の舞台はない。
「え……な、なに……何をするつもりなの……?」
リースの声が震えている。
恐怖に押しつぶされそうになりながら、それでも何とか問い返す。
今まで見たこともないような弱々しい声。
あの気高いリースが、恐怖に縛られている。
その事実が、甘い蜜のようにわたしの心を満たしていく。
「うるせえな、静かにしろ!」
エックスの怒鳴り声が小屋の中に響いた。
直後、何かが床に落ちるような音がして、リースの小さな悲鳴が重なる。
「やめて……!」
必死の声。
かすかに嗚咽混じりで、涙が混ざっているようにさえ感じられる。
◇
わたしは物陰で体を震わせた。
怖さじゃない。興奮の震えだ。
――これで、終わる。
どれだけ努力しても、どれだけ真っ直ぐ生きても、結局リースは汚れてしまう。
あの女は二度と輝きを取り戻せない。
そしてレスター様は、もうリースを振り返らない。
代わりに隣に立つのは――このわたし。
想像するだけで、胸の奥から笑いが込み上げてくる。
けれど、声を出してはいけない。
だから、口の中でそっと囁いた。
「ざまあ……」
小屋の中からは、まだリースの声とエックスの荒い声が断続的に聞こえてくる。
その全てが、わたしにとって最高の音楽だった。
◇
やがて、夕日の色が少しずつ赤みを帯びていく。
小屋の中では、運命を決める出来事が進んでいる。
わたしはただ、物陰に潜んだまま耳を澄ませ続けた。
この瞬間を、一秒たりとも聞き逃すわけにはいかない。
――午後三時。
世界は静かに、しかし確実にリースの運命を書き換えていく。
午後三時。
運命の鐘が胸の奥で鳴り響く。
リースは、まるで迷いを知らないように真っ直ぐ歩いてきて、小屋の前に立った。
その姿を、わたしは廃材置き場の影から息を殺して見つめていた。
――本当に来たのね。
信じられない気持ちと同時に、心の奥底から湧き上がる快感に、頬がじんわりと熱くなる。
リースは扉の前で少し立ち止まり、あたりを見渡した。
警戒しているのだろう。金色の髪が夕日に照らされ、柔らかな光をまとって輝いて見える。
それは学院時代から変わらない、あの気高い姿。
だけど、今からその輝きが汚されていくのだと思うと……胸の鼓動がどんどん速くなっていった。
お願いだから、早く入って。
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きぃ、と錆びた音を立てて扉が開いた。
そして、彼女は中へと消えていった。
その瞬間――わたしの視界は暗闇に閉ざされたように感じた。
リースの姿が見えなくなってしまったからだ。
けれどすぐに、小屋の中から声が漏れてきて、わたしの耳を支配した。
◇
「あ、あなた……誰ですか?」
リースの声だ。
困惑と戸惑いが入り混じった、必死の問いかけ。
その響きは、わたしの心臓を直接掴んで揺さぶった。
「メ、メアリーはどこですか?」
さらに震えた声。
裏切られたことにまだ気づけていない、愚かで純粋な声。
ああ、これだ。
わたしがずっと夢見ていた光景が、今ここで現実になっている。
すぐに、荒々しい男の声が返ってきた。
「うるせえ。そんな奴は来ねえよ」
低く、冷たく突き放すような響き。
エックスの声だった。
その言葉を聞いた瞬間、わたしは口元を押さえ、笑いをこらえた。
――最高。これ以上の舞台はない。
「え……な、なに……何をするつもりなの……?」
リースの声が震えている。
恐怖に押しつぶされそうになりながら、それでも何とか問い返す。
今まで見たこともないような弱々しい声。
あの気高いリースが、恐怖に縛られている。
その事実が、甘い蜜のようにわたしの心を満たしていく。
「うるせえな、静かにしろ!」
エックスの怒鳴り声が小屋の中に響いた。
直後、何かが床に落ちるような音がして、リースの小さな悲鳴が重なる。
「やめて……!」
必死の声。
かすかに嗚咽混じりで、涙が混ざっているようにさえ感じられる。
◇
わたしは物陰で体を震わせた。
怖さじゃない。興奮の震えだ。
――これで、終わる。
どれだけ努力しても、どれだけ真っ直ぐ生きても、結局リースは汚れてしまう。
あの女は二度と輝きを取り戻せない。
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想像するだけで、胸の奥から笑いが込み上げてくる。
けれど、声を出してはいけない。
だから、口の中でそっと囁いた。
「ざまあ……」
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その全てが、わたしにとって最高の音楽だった。
◇
やがて、夕日の色が少しずつ赤みを帯びていく。
小屋の中では、運命を決める出来事が進んでいる。
わたしはただ、物陰に潜んだまま耳を澄ませ続けた。
この瞬間を、一秒たりとも聞き逃すわけにはいかない。
――午後三時。
世界は静かに、しかし確実にリースの運命を書き換えていく。
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