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第37話 パーティー名は、スプレーマム
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ラグナス帝国・冒険者ギルド
高い天井に木の梁が走り、ステンドグラスの光が床に模様を描いている。
広々としたギルドホールには、革の鎧を着た屈強な男たちと、鋭い眼光を持つ女戦士たちがひしめき合い、酒と汗と獣皮のにおいが入り混じる。
交わされる笑い声や罵声、武具の金属音は、ここが命を懸けた者たちの溜まり場であることを否応なく印象づけていた。
その喧騒のなか、四人の若者がカウンターへと歩みを進めていく。
先頭を行くのは、金髪に青い瞳、品のある笑みを浮かべた魔法使いアリスター。
彼の後ろには剣聖のエリーゼが軽快な足取りでついてきており、筋骨隆々の戦士マスキュラ―が堂々と肩を揺らしながら続いていた。
最後尾では忍び装束の青年、ダリルが静かに周囲を観察している。
「思ったよりも活気があるな。まさに帝国最大のギルドというべきか」アリスターが感嘆の声を漏らすと、マスキュラ―が満足そうに頷いた。
「筋肉の密度もなかなかだ。良い刺激になるぜ」
「またそれ?」とエリーゼが呆れ気味に笑う。
彼らがカウンターに辿り着くと、そこにいたのは赤髪を高く結んだ女性だった。
鋭い琥珀色の目、引き締まった体つき。一目で只者ではないと分かる雰囲気を漂わせている。
「ふむ、パーティー登録ね。君たちみたいな……妙にキャラが立った連中を見るのは久しぶり」
女性は帳簿を取り出し、面白そうに彼らを見つめた。
「オレたちは“筋肉以外”もあるぜ、多分な!」
とマスキュラ―が自信満々に言えば、
「うむ、筋肉は一部にすぎぬでござる……たぶん……」
とダリルが不安げに続ける。
「ちょっと、やめてよ……不安になる発言はイメージダウンだってば」
とエリーゼが口を尖らせる。
受付の女性はくすっと笑い、
「にぎやかでいいわね」
と言って、帳簿と羽ペンを差し出した。
「じゃあ順に名前を書いて。あと、所属パーティー名も決めてちょうだい」
アリスターたちは次々と名前を記入していくが、問題はパーティー名だった。
「ここはやっぱり『金髪イケメンと従者たち』でいいんじゃないか?」
とアリスターが当然のように言い放つ。
「却下だ」
エリーゼが即答し、マスキュラ―も
「意味が分からねえ」
と眉をひそめる。
「なら『マッスル肉』はどうだ?」
とマスキュラ―が提案すれば、
「却下その2」
とまたしてもエリーゼが冷たく言い放った。
「えー、じゃあ『剣道三段』とかどう?」
と今度はエリーゼが言ってみるが、
「お主だけじゃないか、それ……」
とダリルが静かに突っ込んだ。
しばしの沈黙ののち、ダリルがぽつりと呟く。
「“スプレーマム”……というのはどうだ?」
「は? 何それ?」
とマスキュラ―が怪訝そうな顔をする。
「“高潔なる者たち”という意味。真っ直ぐな道を歩む者たち……というような、少し気障ではあるが、我らの志を表すにはふさわしいと思ってな」
意外にもエリーゼが
「……悪くないかも」
と呟き、アリスターも満足げに頷いた。
「ふむ、ではそれでいこう。“スプレーマム”……悪くない名前だ」
「決まりね」
と受付の女性が名簿にさらさらとパーティー名を書き記し、次の帳簿を取り出す。
「さて、次は階級だけど……通常はD級からのスタートよ。だけど、一つだけ例外があるわ」
「例外?」
アリスターが眉を上げる。
「ギルドマスターからの特別依頼。それをこなせば、一気にB級スタートも可能。もちろん、失敗すればD級からやり直しだけどね」
「おうおう、そりゃ面白いじゃねえか」
マスキュラ―が嬉しそうに言った。
「オレは前のギルドじゃC級だったしな、わざわざD級からやるのは気が進まねえ」
「でも、帝国の基準はまた別でしょ」
とエリーゼが言うも、アリスターが彼女を制した。
「いいじゃないか。挑戦する価値はある。……僕たちは、もっと強いんだ。それを証明するためにも、やるべきだよ」
「んー、まあ……やる気だけはあるみたいね」
受付の女性は小さく肩を竦め、笑みを浮かべた。
「では、ギルドマスターに会いに行って。名前はエルシア。部屋はあの奥の扉の先よ」
女性が指さした先にある重厚な扉を見つめ、四人は頷き合った。
「ギルドマスター……ただの事務方ってわけじゃなさそうだな」
「“様”って呼び方が気になるな」
マスキュラ―が呟き、ダリルは静かに頷く。
「どんな人物か、見ものでござる」
そう言って、彼らはゆっくりと扉へと向かっていく。
背後には、再び冒険者たちの喧騒が満ちていた。
酒場の笑い声、武器がぶつかる音、怒声、そして勝利の咆哮——その全てが、このギルドが現実と危険に満ちた世界の最前線であることを物語っている。
アリスターが扉の前でノックをした。
しばしの静寂ののち、低く、芯のある女の声が響く。
「入れ」
その一言に、四人は目を合わせる。
そして、意を決したように重厚な扉を開き、ギルドマスター・エルシアのもとへと足を踏み入れた——。
高い天井に木の梁が走り、ステンドグラスの光が床に模様を描いている。
広々としたギルドホールには、革の鎧を着た屈強な男たちと、鋭い眼光を持つ女戦士たちがひしめき合い、酒と汗と獣皮のにおいが入り混じる。
交わされる笑い声や罵声、武具の金属音は、ここが命を懸けた者たちの溜まり場であることを否応なく印象づけていた。
その喧騒のなか、四人の若者がカウンターへと歩みを進めていく。
先頭を行くのは、金髪に青い瞳、品のある笑みを浮かべた魔法使いアリスター。
彼の後ろには剣聖のエリーゼが軽快な足取りでついてきており、筋骨隆々の戦士マスキュラ―が堂々と肩を揺らしながら続いていた。
最後尾では忍び装束の青年、ダリルが静かに周囲を観察している。
「思ったよりも活気があるな。まさに帝国最大のギルドというべきか」アリスターが感嘆の声を漏らすと、マスキュラ―が満足そうに頷いた。
「筋肉の密度もなかなかだ。良い刺激になるぜ」
「またそれ?」とエリーゼが呆れ気味に笑う。
彼らがカウンターに辿り着くと、そこにいたのは赤髪を高く結んだ女性だった。
鋭い琥珀色の目、引き締まった体つき。一目で只者ではないと分かる雰囲気を漂わせている。
「ふむ、パーティー登録ね。君たちみたいな……妙にキャラが立った連中を見るのは久しぶり」
女性は帳簿を取り出し、面白そうに彼らを見つめた。
「オレたちは“筋肉以外”もあるぜ、多分な!」
とマスキュラ―が自信満々に言えば、
「うむ、筋肉は一部にすぎぬでござる……たぶん……」
とダリルが不安げに続ける。
「ちょっと、やめてよ……不安になる発言はイメージダウンだってば」
とエリーゼが口を尖らせる。
受付の女性はくすっと笑い、
「にぎやかでいいわね」
と言って、帳簿と羽ペンを差し出した。
「じゃあ順に名前を書いて。あと、所属パーティー名も決めてちょうだい」
アリスターたちは次々と名前を記入していくが、問題はパーティー名だった。
「ここはやっぱり『金髪イケメンと従者たち』でいいんじゃないか?」
とアリスターが当然のように言い放つ。
「却下だ」
エリーゼが即答し、マスキュラ―も
「意味が分からねえ」
と眉をひそめる。
「なら『マッスル肉』はどうだ?」
とマスキュラ―が提案すれば、
「却下その2」
とまたしてもエリーゼが冷たく言い放った。
「えー、じゃあ『剣道三段』とかどう?」
と今度はエリーゼが言ってみるが、
「お主だけじゃないか、それ……」
とダリルが静かに突っ込んだ。
しばしの沈黙ののち、ダリルがぽつりと呟く。
「“スプレーマム”……というのはどうだ?」
「は? 何それ?」
とマスキュラ―が怪訝そうな顔をする。
「“高潔なる者たち”という意味。真っ直ぐな道を歩む者たち……というような、少し気障ではあるが、我らの志を表すにはふさわしいと思ってな」
意外にもエリーゼが
「……悪くないかも」
と呟き、アリスターも満足げに頷いた。
「ふむ、ではそれでいこう。“スプレーマム”……悪くない名前だ」
「決まりね」
と受付の女性が名簿にさらさらとパーティー名を書き記し、次の帳簿を取り出す。
「さて、次は階級だけど……通常はD級からのスタートよ。だけど、一つだけ例外があるわ」
「例外?」
アリスターが眉を上げる。
「ギルドマスターからの特別依頼。それをこなせば、一気にB級スタートも可能。もちろん、失敗すればD級からやり直しだけどね」
「おうおう、そりゃ面白いじゃねえか」
マスキュラ―が嬉しそうに言った。
「オレは前のギルドじゃC級だったしな、わざわざD級からやるのは気が進まねえ」
「でも、帝国の基準はまた別でしょ」
とエリーゼが言うも、アリスターが彼女を制した。
「いいじゃないか。挑戦する価値はある。……僕たちは、もっと強いんだ。それを証明するためにも、やるべきだよ」
「んー、まあ……やる気だけはあるみたいね」
受付の女性は小さく肩を竦め、笑みを浮かべた。
「では、ギルドマスターに会いに行って。名前はエルシア。部屋はあの奥の扉の先よ」
女性が指さした先にある重厚な扉を見つめ、四人は頷き合った。
「ギルドマスター……ただの事務方ってわけじゃなさそうだな」
「“様”って呼び方が気になるな」
マスキュラ―が呟き、ダリルは静かに頷く。
「どんな人物か、見ものでござる」
そう言って、彼らはゆっくりと扉へと向かっていく。
背後には、再び冒険者たちの喧騒が満ちていた。
酒場の笑い声、武器がぶつかる音、怒声、そして勝利の咆哮——その全てが、このギルドが現実と危険に満ちた世界の最前線であることを物語っている。
アリスターが扉の前でノックをした。
しばしの静寂ののち、低く、芯のある女の声が響く。
「入れ」
その一言に、四人は目を合わせる。
そして、意を決したように重厚な扉を開き、ギルドマスター・エルシアのもとへと足を踏み入れた——。
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