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第46話 スプレーマム、街に帰還する
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夕暮れが迫るギルドの街リグレットは、いつになく騒がしかった。
冒険者たちの声が飛び交い、ギルド本部の掲示板には次々と新たな依頼が貼り出されている。
その中央に、スプレーマムの4人が足を踏み入れた。
「……ああ、やっと戻った……拙者、あの神殿には二度と行きたくないでござるよ……」
ダリルが肩を落とし、壁にもたれかかる。青い髪は汗でしっとりと張り付き、眼鏡がずれかけていた。
「でも、ちゃんとラフィーナ嬢を助け出せたんだ。立派な手柄さ」
アリスターが髪をかきあげ、鏡のように磨かれたスプーンで自分の顔をチェックしている。
「よくやったじゃねぇか、俺たち。魔族相手に引かずに戦えたってのは、自信にしていいぜ」
マスキュラーが満足げに胸を張り、筋肉がピクリと動いた。
エリーゼは、隣に立つ少女――ラフィーナに微笑みかけた。
「大丈夫? 無理しなくていいからね」
「はい……本当に、助かりました。私……死を覚悟していたんです……」
ラフィーナはまだやや青ざめた顔で、スプレーマムの4人に何度も頭を下げた。
彼女はラフィーナ=メルテンス。王国東方を治めるメルテンス伯爵家の令嬢で、貴族にしては珍しく考古学を専門にしている学者肌の女性だった。
「私……あのダンジョンの三階層に、古代神話に出てくる“空の祭壇”が残されている可能性があると聞いて……単独で調査に向かってしまったんです」
「一人で……?」
「正確には護衛の冒険者を連れていたのですが……“銀の牙”の皆さんです。けれど、魔族が現れて、私だけが囚われてしまって……」
「魔族が……古代の祭壇に?」
エリーゼは視線を落とし、考え込むようにつぶやいた。
「あの空間……明らかに他と違ってた。あれ、何か封印されてるとか、そんな感じしなかった?」
「おお、エリーゼ鋭いな。確かに祭壇の床、文様が妙に光ってた」
マスキュラーの言葉に、アリスターも頷いた。
「ボクも感じたよ。あれは魔族が作った構造じゃない。むしろ、奴らが何かを利用していたんだ。おそらく……“何かを封じるための神域”だった」
「拙者の直感が警告しているでござるよ。あれは……ろくなものではござらん……」
そこへ、ギルドの扉が開き、ギルドマスターのエルシア・グランベルクが姿を現した。
「おお、お前たちがスプレーマムだな。ちょうどいい、話がある」
ゴツゴツとした手で手招きし、奥の応接室へと4人を案内する。ラフィーナも同席を願い出たが、彼女は療養のため別室へと通された。後で改めて話をすることになった。
応接室は、地図と報告書の山で埋まっていた。ギルドマスターのエルシアの顔は険しい。
「まずは、任務ご苦労だった。魔族との交戦、そして貴族令嬢の救出……よくやってくれた」
「ありがとうございます。でも……なぜ、あんな任務を自分たちに?」
エリーゼの問いに、マスターエルシアはため息をついた。
「本来なら、あのダンジョンの調査と警護は、もっと上級のパーティが対応する予定だった。しかし、状況が変わった」
マスターエルシアは壁の地図を指差す。
「街の東、国境との境界付近で――ドラゴンが現れた。しかも、2体だ」
一瞬、室内の空気が凍りつく。
「ドラゴン……」
「そいつらはただの獣じゃねぇぞ……!」
「討伐隊を急遽編成し、S級パーティも何組か投入したが……被害が出た。何人かが重傷を負い、昨日ギルドに戻ってきた」
マスターエルシアの目は鋭くなる。
「その結果、人手が不足した。任務の再編成を行う必要が出てな……あの時、お前たちがたまたま空いていた。それが、ラフィーナ嬢救出任務に回された理由だ」
「偶然、か……」
アリスターが小さく笑う。
「いや、それでも、お前たちがいなければ、彼女はあのまま……そして、三階層にある“何か”が、魔族の手に落ちていたかもしれない」
マスターエルシアは苦々しげに拳を握る。
「魔族が動いている……それも、何かを探して。ドラゴンの出現も偶然とは思えん。おそらく、裏でつながっている」
「拙者、思うのですが……あの三階層にあった祭壇。あれは、封印を施された場所ではありませぬか?」
「その可能性が高い。だからこそ、ラフィーナ嬢の証言は貴重だ。彼女は伯爵家の力を使い、調査隊を再編しようとしている。お前たちにも、協力を依頼する可能性があるだろう」
「……なるほど。だったら、オレたちの出番だな。もう一度、あの場所に行く覚悟はあるぜ」
マスキュラーが立ち上がる。
「わたしも。魔族があそこにいた理由……放っておけない」
エリーゼの瞳は、静かな炎を宿していた。
スプレーマムの新たな冒険は、すでに次の扉を開けようとしていた――。
冒険者たちの声が飛び交い、ギルド本部の掲示板には次々と新たな依頼が貼り出されている。
その中央に、スプレーマムの4人が足を踏み入れた。
「……ああ、やっと戻った……拙者、あの神殿には二度と行きたくないでござるよ……」
ダリルが肩を落とし、壁にもたれかかる。青い髪は汗でしっとりと張り付き、眼鏡がずれかけていた。
「でも、ちゃんとラフィーナ嬢を助け出せたんだ。立派な手柄さ」
アリスターが髪をかきあげ、鏡のように磨かれたスプーンで自分の顔をチェックしている。
「よくやったじゃねぇか、俺たち。魔族相手に引かずに戦えたってのは、自信にしていいぜ」
マスキュラーが満足げに胸を張り、筋肉がピクリと動いた。
エリーゼは、隣に立つ少女――ラフィーナに微笑みかけた。
「大丈夫? 無理しなくていいからね」
「はい……本当に、助かりました。私……死を覚悟していたんです……」
ラフィーナはまだやや青ざめた顔で、スプレーマムの4人に何度も頭を下げた。
彼女はラフィーナ=メルテンス。王国東方を治めるメルテンス伯爵家の令嬢で、貴族にしては珍しく考古学を専門にしている学者肌の女性だった。
「私……あのダンジョンの三階層に、古代神話に出てくる“空の祭壇”が残されている可能性があると聞いて……単独で調査に向かってしまったんです」
「一人で……?」
「正確には護衛の冒険者を連れていたのですが……“銀の牙”の皆さんです。けれど、魔族が現れて、私だけが囚われてしまって……」
「魔族が……古代の祭壇に?」
エリーゼは視線を落とし、考え込むようにつぶやいた。
「あの空間……明らかに他と違ってた。あれ、何か封印されてるとか、そんな感じしなかった?」
「おお、エリーゼ鋭いな。確かに祭壇の床、文様が妙に光ってた」
マスキュラーの言葉に、アリスターも頷いた。
「ボクも感じたよ。あれは魔族が作った構造じゃない。むしろ、奴らが何かを利用していたんだ。おそらく……“何かを封じるための神域”だった」
「拙者の直感が警告しているでござるよ。あれは……ろくなものではござらん……」
そこへ、ギルドの扉が開き、ギルドマスターのエルシア・グランベルクが姿を現した。
「おお、お前たちがスプレーマムだな。ちょうどいい、話がある」
ゴツゴツとした手で手招きし、奥の応接室へと4人を案内する。ラフィーナも同席を願い出たが、彼女は療養のため別室へと通された。後で改めて話をすることになった。
応接室は、地図と報告書の山で埋まっていた。ギルドマスターのエルシアの顔は険しい。
「まずは、任務ご苦労だった。魔族との交戦、そして貴族令嬢の救出……よくやってくれた」
「ありがとうございます。でも……なぜ、あんな任務を自分たちに?」
エリーゼの問いに、マスターエルシアはため息をついた。
「本来なら、あのダンジョンの調査と警護は、もっと上級のパーティが対応する予定だった。しかし、状況が変わった」
マスターエルシアは壁の地図を指差す。
「街の東、国境との境界付近で――ドラゴンが現れた。しかも、2体だ」
一瞬、室内の空気が凍りつく。
「ドラゴン……」
「そいつらはただの獣じゃねぇぞ……!」
「討伐隊を急遽編成し、S級パーティも何組か投入したが……被害が出た。何人かが重傷を負い、昨日ギルドに戻ってきた」
マスターエルシアの目は鋭くなる。
「その結果、人手が不足した。任務の再編成を行う必要が出てな……あの時、お前たちがたまたま空いていた。それが、ラフィーナ嬢救出任務に回された理由だ」
「偶然、か……」
アリスターが小さく笑う。
「いや、それでも、お前たちがいなければ、彼女はあのまま……そして、三階層にある“何か”が、魔族の手に落ちていたかもしれない」
マスターエルシアは苦々しげに拳を握る。
「魔族が動いている……それも、何かを探して。ドラゴンの出現も偶然とは思えん。おそらく、裏でつながっている」
「拙者、思うのですが……あの三階層にあった祭壇。あれは、封印を施された場所ではありませぬか?」
「その可能性が高い。だからこそ、ラフィーナ嬢の証言は貴重だ。彼女は伯爵家の力を使い、調査隊を再編しようとしている。お前たちにも、協力を依頼する可能性があるだろう」
「……なるほど。だったら、オレたちの出番だな。もう一度、あの場所に行く覚悟はあるぜ」
マスキュラーが立ち上がる。
「わたしも。魔族があそこにいた理由……放っておけない」
エリーゼの瞳は、静かな炎を宿していた。
スプレーマムの新たな冒険は、すでに次の扉を開けようとしていた――。
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