時を買う人

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明日の朝刊

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「終わりに為替と株の値動きです。御覧の通り、本日の日経平均株価は昨日の終値から800円程値下がりし、為替は1円50銭の円高となっております。」


NHKのお昼のニュースで日経平均株価の値動きが伝えられたとき、中小企業に勤める30歳独身サラリーマンの植木竜也の顔色は青くなった。


"株価がまた下がってしまった。日経平均だから確定ではないけど、持っている会社の株価も高い確率で値下がりしてるだろうなぁ。"


と思ったからだ。


"いま勤めている会社の安月給じゃあ暮らし向きのよい生活なんてどだい無理だから株を始めたのにうまくいかないなぁ"


そんな憂鬱な気分で、午後からの仕事を終わらせて、重い足取りで最寄駅まで歩いて帰る道の途中で、出社時にはなかった


"時(人生)買います。"


という札の付いた屋台があることに気が付いた。


"不気味ではあるが、寄ってみるか。" 


と思った竜也は屋台に寄ってみることにした。


「いらっしゃい。この店はあなたの時(人生)・健康を売ってそれと同等レベルのモノ、経験、契約が手に入る店だよ。」


と店員が言ったので、


「(平日の水曜日である)明日の朝の郵便受けにその日の朝刊でなく、(平日の木曜日である)次の日の朝刊をいれてもらうことは可能ですか?」


と竜也が尋ねたところ


「可能だけど、今から明日の朝までの人生の売却だけではご希望のモノを手に入れることはできないから、その分の健康を売ってもらうことになるけど、それでもいいならこの契約書にサインして契約成立です。」


と店員が言ったのを聞いた竜也は


"明日の朝刊さえ手に入れば、その日の株価の動きを知ることができるのだから大金持ちになれる。多少健康を害しても大金持ちになってしまえば生活には困らないだろう。"


と考え契約書にサインをした。


サインし終わったその刹那、竜也は自身が自分の住んでいるアパートの郵便受けの前にいることに気付き、入っている新聞の日付とスマホの日付を比べてみた。


"やったぜ❗️本日の朝刊でなく、明日の朝刊が入っていた❗️"


竜也は小躍りして自分の部屋に戻り、新聞を確認し、パソコンから株式の売買注文の設定を行った。


株式市場が始まる3時間前、会社に出勤する時間より1時間30分前までに、売買注文の設定が完了した。


その取引による利益は10億円にもなっていた。


"これで俺も大金持ちだ。今週中に会社に退職願いを出して悠々自適な人生を過ごそう。"


と思いながら、出勤までまだずいぶん時間があったので、新聞の株価のページでなく、一面を読んでみることにした。


"はぁ? 近所で "無差別殺傷事件" が起こるみたいじゃぁねぇか。なになに、犯人は早朝に公園にいた小学生を殺したあと、近くのアパートの部屋に向かい、部屋に侵入して中にいた男性を刃物で切付けたのか。そのとき切付けられた  "植木竜也" が今、意識不明の重体……"



「ピンポーン」



普段は、絶対鳴らない時間帯にアパートのベルが鳴ったみたいですよ。







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