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過過労人の苦悩
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「杉山係長。また製造の連中が納期延長を申し出てきました。」
部下の松尾蓮がイライラしながら報告してきた。
松尾がイライラするのももっともだ。なぜなら製造メーカーであるわが社で製品の開発を取引先のお客様から依頼されたのだが、過去2回も納期の延長を製造の不手際で起こしており、当然その影響で、企画部の我々や営業部が各所に調整の為、謝罪を行っていたのだ。
「それだけじゃなくて、品質を担保するために十分な時間を確保したスケジュールを組まなかった企画部に問題があるとまで言ってきて……。俺、我慢できませんよ。」
今にも製造部に怒鳴り込みに行きそうな気配だった松尾に
「お前の怒りはもっともだが、ここで感情的になっても問題は解決しないだろ。この件は私に任せて他の仕事をやってくれ」
と言って松尾をなだめた。
しかし、杉山も他の仕事が忙しく、松尾の報告してきた件は全く解決しないまま、その日は帰宅することになってしまった。
"松尾にはそう言ったものの、前にも同じように製造が遅れて、納期までに契約した個数の製品が用意できなくて、契約の半分の製品だけを納期までに納品して、残りの半分を納期の一週間後に納品することでお客様に納得してもらったことがあったけど今回もそうしていただくようお客様を説得するしかないのか……"
そんなことを考えながら、いつもの帰り道の商店街を通り過ぎようとしたところ普段は見かけない屋台があることに気付いた。
「"時(人生)買います"だって…」
屋台に張ってある札を読んで、怪しいなとは思ったが寄ってみることにした。
「いらっしゃい。この店はあなたの時間(人生)・健康を売ってそれと同等のモノ、経験、契約が手に入る店だよ。売ってしまった人生の思い出は残らないことに注意しなくてはならないけど、売ってみるかい?」
と店員が尋ねたので、
「うちの会社の製品をお客様が納得する期間までに納品したいのですができますか?」
と杉山が店員に言った。
すると
「その契約だと製品がお客様のところに全て納品される迄の人生を売ってもらうことになるけどそれでもいいならこの契約書にサインして契約成立です。」
と言って店員が契約書を出してきたので、間髪入れず杉山はその契約書にサインをした。サインするや否や、杉山は自身が会社で松尾からの報告を聞いていることに気付いた。
「やりましたね。大変だったけどお客様も納得されていたしよかったですね」
と松尾にニヤニヤ笑いながら話しかけられ
「あぁ。納期に間に合ってよかったわな」
と杉山が答えると
「えぇ。お客様に三度目の納期の調整をお願いに行ったところ、お客様ご自身が
"製造部署に直接行って、本当に納期に間に合わないかどうか製造状況を確認させて欲しい"
と強い口調で言われ、会社まで出向いてこられたから、わが社の社長含め役員クラスも "納期に絶対間に合わせなくては" と本腰をいれて製造に取り組んで、納期までに本当に間に合わせちゃうんですからねぇ」
と松尾が言ったのを聞いて
"今回はうまくいったけど、急いで作って品質に問題が起きたらどうするんだろうか?そもそも、そんなことになって契約自体がなくなってしまうことを考えなかったのだろうか?それに、松尾は今回の件に味をしめてしまっているだろうから、また納期に間に合わなそうなとき、松尾がお客様を会社に怒鳴り込ませたら大変だぞ"
と思った杉山係長は頭を抱えてしまったのでした。
部下の松尾蓮がイライラしながら報告してきた。
松尾がイライラするのももっともだ。なぜなら製造メーカーであるわが社で製品の開発を取引先のお客様から依頼されたのだが、過去2回も納期の延長を製造の不手際で起こしており、当然その影響で、企画部の我々や営業部が各所に調整の為、謝罪を行っていたのだ。
「それだけじゃなくて、品質を担保するために十分な時間を確保したスケジュールを組まなかった企画部に問題があるとまで言ってきて……。俺、我慢できませんよ。」
今にも製造部に怒鳴り込みに行きそうな気配だった松尾に
「お前の怒りはもっともだが、ここで感情的になっても問題は解決しないだろ。この件は私に任せて他の仕事をやってくれ」
と言って松尾をなだめた。
しかし、杉山も他の仕事が忙しく、松尾の報告してきた件は全く解決しないまま、その日は帰宅することになってしまった。
"松尾にはそう言ったものの、前にも同じように製造が遅れて、納期までに契約した個数の製品が用意できなくて、契約の半分の製品だけを納期までに納品して、残りの半分を納期の一週間後に納品することでお客様に納得してもらったことがあったけど今回もそうしていただくようお客様を説得するしかないのか……"
そんなことを考えながら、いつもの帰り道の商店街を通り過ぎようとしたところ普段は見かけない屋台があることに気付いた。
「"時(人生)買います"だって…」
屋台に張ってある札を読んで、怪しいなとは思ったが寄ってみることにした。
「いらっしゃい。この店はあなたの時間(人生)・健康を売ってそれと同等のモノ、経験、契約が手に入る店だよ。売ってしまった人生の思い出は残らないことに注意しなくてはならないけど、売ってみるかい?」
と店員が尋ねたので、
「うちの会社の製品をお客様が納得する期間までに納品したいのですができますか?」
と杉山が店員に言った。
すると
「その契約だと製品がお客様のところに全て納品される迄の人生を売ってもらうことになるけどそれでもいいならこの契約書にサインして契約成立です。」
と言って店員が契約書を出してきたので、間髪入れず杉山はその契約書にサインをした。サインするや否や、杉山は自身が会社で松尾からの報告を聞いていることに気付いた。
「やりましたね。大変だったけどお客様も納得されていたしよかったですね」
と松尾にニヤニヤ笑いながら話しかけられ
「あぁ。納期に間に合ってよかったわな」
と杉山が答えると
「えぇ。お客様に三度目の納期の調整をお願いに行ったところ、お客様ご自身が
"製造部署に直接行って、本当に納期に間に合わないかどうか製造状況を確認させて欲しい"
と強い口調で言われ、会社まで出向いてこられたから、わが社の社長含め役員クラスも "納期に絶対間に合わせなくては" と本腰をいれて製造に取り組んで、納期までに本当に間に合わせちゃうんですからねぇ」
と松尾が言ったのを聞いて
"今回はうまくいったけど、急いで作って品質に問題が起きたらどうするんだろうか?そもそも、そんなことになって契約自体がなくなってしまうことを考えなかったのだろうか?それに、松尾は今回の件に味をしめてしまっているだろうから、また納期に間に合わなそうなとき、松尾がお客様を会社に怒鳴り込ませたら大変だぞ"
と思った杉山係長は頭を抱えてしまったのでした。
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