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301 選手交代

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〖森の主、先代。そろそろ代わるわ〗
優しいギンに、いつまでもかつての身内を攻撃させるのもね…

『分かりました。よろしくお願い致します』
『よろしくお願い致します』
礼儀正しく、頭を垂れてから、こちらへ戻ってくるギンと吹雪。お疲れ様。


『お二人とも大丈夫ですか?こちらで少し休んでくださいませ』
アイナがギンと吹雪を心配そうに迎える。

『ありがとうございます』
『ありがとうございます。地の精霊王様、孫たちは?』

お二人とも、今になって心配になったみたいですね。安全は疑っていないようですけれど、自分たちが見せてしまったことで、ショックを受けていないか心配しているのでしょう。ですが、実際は…

アイナは苦笑いを浮かべながら
『大丈夫ですわ。何も心配ありませんわ。それどころか、大興奮してましたわよ』
しかも、とても楽しそうですわよね。

『は?』
『大興奮、ですか?』

お二人とも、びっくりされてますわ。そうですわよね。普通は不思議に思いますわよね?

『魔神様とお母様のご配慮のお陰ですわ。氷の龍がしたことは見ていませんの。その後は見てはいますが、音は伝わらないようにしてくださいまして、かっこいいと大興奮でしたわ。まあ、大きい子達は流石に引きつったお顔をしてましたけれど…』
まあ、仕方ないですわよね?


アイナ様の話に、流石に二人ともポカンと聞いていたが、次第にこちらも苦笑いに変わっていた。
『そうですか』
『あれがかっこいいとは…』
くくくっと笑っている。

『少し後ろを見てくださいませ。今はあんな感じですわ。安心しますわよ』

そうアイナ様に促され、二人が子供たちの方を見ると

『『ぶっ』』
二人揃って吹き出した。
白雪がサーヤを咥えてぷらぷら。結葉様がニャーニャの首根っこを掴んでぷらぷら。

『あなたの真似みたいですわよ?』くすくす
アイナ様も笑っている。ぷらぷらしているニャーニャの足元で、ココロがぴょんぴょんしている。

『私の真似ですか…』
ハクも笑っている。

『良かった。大丈夫そうですね』
『ああ。彼女も、もうしっかりと迎え入れられていますね』
二人ともようやく安心できたようだ。

『安心されたようですわね。それでは、そろそろ魔神様たちがどうなさるのか、見守りましょう』
アイナ様の顔が引き締まる。
二人も頷き
『そうですね。気を抜かずにいないといけませんな』
『そうだな。いつでも動けるようにして控えていよう』
二人も改めて、気を引き締めた。


〖さて、シアに医神。どうしてやりましょうか?〗
ジーニ様が聞く。その表情は…ぶるっ。

〖そうですわね。自分たちが攻撃した者たちが何者なのか、まずは、わからせた方が良いかと…〗
シアも何気に怒ってるものね。
〖分からせるには、まず目を覚ましてもらわないといけませんよ。また治しますか?不本意ですが〗
医神もそうとう嫌そうな顔をしている。
〖冷水でも浴びせたら、起きないかしらね?〗パチンッ
バシャーッと滝のような水を二匹の上に浴びせる?ジーニ様。

〖魔神…あなたは浴びせると言いませんでしたか?あんな大量の水、落とすとしか言えませんよ。もはや凶器です。それにあんな水浸しにして…〗
〖悪かったわね〗
確かに辺り一面ちょっとした池みたいになっている。その中で呻く二匹。意識を取り戻してきたか?
〖まったく〗
トンっと医神が足先で地面を叩くと
ぼこぼこぼこっ  じゅっ

〖〖…………〗〗

今の…思わずシアと一緒に絶句した。
〖医神、あんた、今…〗
〖わざわざ煮えたぎらせてから…〗
蒸発させたわね…

〖はい?あぁ。すいません。つい、いつもの癖で煮沸消毒をしてしまいました〗
しれっと言い切る医神

〖〖………………〗〗

つい?そんなわけ…
〖何か?〗にっこり
〖〖…いいえ〗〗
さすが、バートの親友…
敵に回しちゃダメね
〖あれ、生きてます?〗
そうよね…
じーっとシアと二人で医神を見ると、
〖はーっ〗
医神は、わざとらしくため息を着くと
〖仕方ありませんねぇ〗トンっ
〖少しだけですよ〗
そう言って回復させる。

いやいや、私の水までだったら、ここまでにはなっていなかったと…
〖何か?〗ニタリッ
〖…いいえ〗
怖いわよ…バート二号
〖心外です。私の方が先です〗
〖ごめんなさい〗
つっこむところ、そこなの?

〖お二人とも、その辺で。起きますわよ〗
シアが教えてくれる。見てみると二匹はふらつきながら立ち上がるところだった。

『なんなんだ。なんだと言うんだ』
『あんたたち、何者よ…!』

ピクッ。ジーニ様たち三人の口元や目元がひきつるように動く。  
ふーん。起きて第一声がそれなのね。
〖愚か者が。まだ分からぬとは、不敬にも程があります〗
〖森の主と繋がりのある者とは思えませんね〗
医神とシアがこれだけ言っても、考えることすらしないのか、唸りを上げてこちらを睨む二匹。だったら、考えてもらいましょうか?

〖ヒントをあげるわ。森の主や精霊王達でさえ、私達を『あんた』や『貴様』などとは決して呼ばないわ〗
〖ふっ。まして攻撃など、考えもしないでしょうね〗
〖そうですね。普通でしたら天罰を恐れますものね〗
さあ、考えなさい。
あら?でも、昔、我を忘れた誰かさんが、鎮圧に当たった私たちに抵抗して、この辺りを更地にしたことがあったわね?チラリ
『うっ』
うん。いたわね。目を逸らしたヤツが。

ぴゅい?『なんだろ?』
きゅい?『かんじたよね?』
双子が見つめあってます。
「すい、もも?」
『何を感じたの~?』
みんな不思議に思って聞きます。
ぴゅい『なんかね?』
きゅい『ひさちぶりにね?』
ぴゅいきゅい『『おとうしゃん、だめだめ~』』

『うっ』何故か胸を押えるヤツが一人…


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