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♡『モミモミ』 「うん、お乳の張りも良い』♡

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 風が強い曇り日に、義彦は冬になって急に元気がなくなった観葉植物を連れて花屋を訪れた。

「毎日世話はちゃんとしてるですけど…」

 義彦が店員のお姉さんに言った。

「あー、ちょっと元気なくなってますねー」

 お姉さんが葉っぱや茎を見ながら言った。

「元気になるでしょうか?」

「ええ、人間で言えば冬の寒さにちょっとびっくりしてるぐらいで、暖かい栄養を送れば、すぐ回復すると思いますよ」

「あー良かった」

「じゃあ、店の奥に栄養剤を並べてありますので、どうぞ」

 店の奥へ進むと、ズラリと栄養剤が並んでいた。

「オススメはこの子ですかねー」

 店員のお姉さんはそう言うと、蜜子と名札がぶら下がった女性を指差した。

「蜜の温度も、味も、申し分なく、1ヶ月は持ちますので、取り替える手間も少なく済みますよ~」

「じゃあ、それで」

「お買い上げありがとうございます」

「ちなみに」

「はい」

「お姉さんは販売されてないんですか?」

 義彦は店員のお姉さんに向かって言った。

「ごめんなさい、もうそんなに若くないので…でも嬉しいわ」

 観葉植物と栄養剤の蜜子を連れて暖房が効いた自宅へと帰ってきた義彦は、蜜子の服を脱がし、状態を確認した。

『モミモミ』

「うん、お乳の張りも良い』

『クチュクチュ』

「うん、良い蜜壺だ」

 義彦はそう言うと蜜子を部屋の隅で仰向けに寝かせ、膝の裏を両腕で抱えるように命じた。蜜壺が天を仰いでいる。義彦は蜜壺をペロリと舐めた。

「味もよし!」

 それから義彦はベランダへ出た。

「うう、寒っ」

 木枯らしが吹き荒んでいる。義彦は観葉植物を鉢から綺麗に取り出し、土を払った。

「寒い寒い」

 部屋に入り、ドアを閉める。そしてキッチンで根っこを水洗いをした後、天を仰ぐ蜜子の蜜壺へブッ刺した。

「これでよし、早く元気になれよ」

 義彦はそう言って窓の外を見た。灰色の雲が、美しく蠢いていた。
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