36 / 61
第4章 冷酷王子の愛
4-4 闇夜
しおりを挟む
まだリアナーレ=アストレイが戦女神として生きていた頃のこと。
その日、セヴィリオは月に一度行われる国議会に出席しており、溜まった稟議書の始末をするため、夜更けまで執務室に残っていた。
大臣どもの言い争いで会議が長引き、疲れ果てているところへ、軍の人間にしては珍しい控え目なノックが響く。
こんな夜更けに訪れてくるとは、余程無作法な奴か、緊急の要件に違いないと思って扉を開けた。
「今晩は」
そこに立っていたのは意外な人物で、セヴィリオは視線を彼女の背丈に合わせて落とす。
「一人?」
「ええ」
彼女は上品に、ゆっくりと頷く。リアナ=キュアイス、星詠みの聖女。国王の勝手な決め事でセヴィリオが結婚させられた相手である。
リアナーレの愛称と、名前が一緒なので紛らわしいが、セヴィリオにとってのリアナは、永遠にリアナーレである。これはどうしても譲れないことだ。
「僕を殺しにでも来たの」
予想だにしない突然の来訪者に、セヴィリオは身構える。
娶ったにも拘わらず、全く愛すことのない夫への恨みが募った、ということくらいしか思いあたる節がない。
聖女はセヴィリオの言葉を聞くと、口元に手をあて小さく笑った。
「そんなこと、する理由がないですわ」
「王宮に縛り付けている癖に、放置をしていることは、十分恨む理由になると思うけど」
「退屈といえば、退屈ですが。王子様に愛されたいなど微塵も思っていないので、求められないことは私にとっての幸せです」
彼女の紫の目は暗い廊下でも光り輝いて見えた。澄んだ眼差しからして、彼女は嘘偽りなく事実を述べたのだろう。
「それでは何をしに」
「少しお話をしたいことがありまして。通していただけますか?」
「分かった。お茶を持ってこさせよう」
セヴィリオは聖女を来客用の椅子へと案内し、衛兵にメイドを呼ぶよう声をかける。
主人が夜遅くまで仕事を続けているのはいつものことなので、彼女らも対応に馴れてしまっている。夜食になるようなツマミと共に、すぐにやって来た。
部屋に聖女がいることに驚いたようだったが、無駄口は叩かず、テキパキと紅茶を淹れて去っていく。
メイドが出ていくのを見届けて、セヴィリオは執務机から、彼女の対面の椅子へと移動した。
「セヴィリオ様、そのままだと遠くない未来、身を滅ぼします」
先に口を開いたのは、聖女の方だった。彼女は忠告をすると、淹れたての紅茶に口をつける。
貴族の出だと勘違いしそうなほど、洗練された仕草だった。
「占いの結果か? くだらない」
「何のことか、貴方が一番良くご存知のはず」
「……何故知っている」
彼女の不思議な目は、はっきりとセヴィリオの片腕を見ていた。
衣服の下に絡まる蛇の呪いを、セヴィリオは一度も彼女に見せたことがない。話したことすらない。
「これでも私、一応聖女なので、正反対の性質を持つものには敏感なのです」
そうか、と言う他なかった。彼女が普通の人間でないことは雰囲気から察してとれるので、セヴィリオは彼女の言い分に対して然程違和感を抱かなかった。
「このことは他言無用で頼む」
「ええ。それと、もう一つ、貴方にお話しておきたいことがあります」
「なんだ」
「こちらが本題です」
――私の命はもう、ひと月と持たないでしょう。
彼女は自分は死ぬと言いながら、穏やかに笑っていた。
「それも聖女の能力で分かるものなのか?」
「はい。ですから今日は、お別れのご挨拶に参りました」
聖女は笑みを絶やさず、セヴィリオに軽く会釈をして見せる。
彼女は死に怯えるどころか、死を喜んでいるようだった。どこか素敵な場所へ旅立つ前日の高揚を彼女から感じ、セヴィリオは困惑する。
「何か、望まれる奇跡はございますか?」
「何の話だ」
「私は一度だけ。正確には死の直前に、神の奇跡を使うことができます」
「自分のために使えば良い」
「私はあまり、私欲がないのです。神様にお会いしてみたいとは思いますが、それは間もなく叶うでしょう」
奇跡。そのようなものが存在するのだとして、他人に等しい夫の願いを叶えようとする理由は何だ。セヴィリオは全く理解できなかった。
それでも、もし奇跡を起こせるのだとしたら、願うことはただ一つ。
「僕は……」
「はい」
「やはり、止めておく」
別の女と結ばれたいなど、仮にも妻である女性に向かって言える願いではない。
セヴィリオは思い留まったが、聖女は目を細めて思考を読むような素振りをする。
そして、彼女は笑顔のまま告げた。
「リアナーレ=アストレイ様と一緒になりたい。そうですね?」
「……そうだ」
「ふふ、私のことは気になさらないで。誰か一人を愛するという感覚が、そもそも抜け落ちていますから」
ところで、と聖女は話を続ける。
「大切なのは体と魂、どちらだと思いますか? つまり、貴方は戦女神様の外見と中身、どちらを愛しているのですか?」
「両方だ。どちらかを取るのなら、魂」
聖女は慈愛に満ちた表情で、両の指先を重ね合わせた。それほど深く誰かを愛せることが羨ましいと、彼女はうっとり言葉を紡ぐ。
「一番良い奇跡の使い方を考えてみます」
聖女はそう言い残すと、真っ暗な夜の廊下へと吸い込まれていった。
立ち去る間際、セヴィリオは何がしてほしいことはあるかと彼女に尋ねたが、十分恵まれていますと首を横に振るだけだった。
リアナ=キュアイスとまともに会話をしたのは、これが最初で最後だ。
彼女と砕けた口調で話したことなど一度もない。セヴィリオの前では口が悪かったというのは、入れ替わったリアナのためについた嘘である。
その日、セヴィリオは月に一度行われる国議会に出席しており、溜まった稟議書の始末をするため、夜更けまで執務室に残っていた。
大臣どもの言い争いで会議が長引き、疲れ果てているところへ、軍の人間にしては珍しい控え目なノックが響く。
こんな夜更けに訪れてくるとは、余程無作法な奴か、緊急の要件に違いないと思って扉を開けた。
「今晩は」
そこに立っていたのは意外な人物で、セヴィリオは視線を彼女の背丈に合わせて落とす。
「一人?」
「ええ」
彼女は上品に、ゆっくりと頷く。リアナ=キュアイス、星詠みの聖女。国王の勝手な決め事でセヴィリオが結婚させられた相手である。
リアナーレの愛称と、名前が一緒なので紛らわしいが、セヴィリオにとってのリアナは、永遠にリアナーレである。これはどうしても譲れないことだ。
「僕を殺しにでも来たの」
予想だにしない突然の来訪者に、セヴィリオは身構える。
娶ったにも拘わらず、全く愛すことのない夫への恨みが募った、ということくらいしか思いあたる節がない。
聖女はセヴィリオの言葉を聞くと、口元に手をあて小さく笑った。
「そんなこと、する理由がないですわ」
「王宮に縛り付けている癖に、放置をしていることは、十分恨む理由になると思うけど」
「退屈といえば、退屈ですが。王子様に愛されたいなど微塵も思っていないので、求められないことは私にとっての幸せです」
彼女の紫の目は暗い廊下でも光り輝いて見えた。澄んだ眼差しからして、彼女は嘘偽りなく事実を述べたのだろう。
「それでは何をしに」
「少しお話をしたいことがありまして。通していただけますか?」
「分かった。お茶を持ってこさせよう」
セヴィリオは聖女を来客用の椅子へと案内し、衛兵にメイドを呼ぶよう声をかける。
主人が夜遅くまで仕事を続けているのはいつものことなので、彼女らも対応に馴れてしまっている。夜食になるようなツマミと共に、すぐにやって来た。
部屋に聖女がいることに驚いたようだったが、無駄口は叩かず、テキパキと紅茶を淹れて去っていく。
メイドが出ていくのを見届けて、セヴィリオは執務机から、彼女の対面の椅子へと移動した。
「セヴィリオ様、そのままだと遠くない未来、身を滅ぼします」
先に口を開いたのは、聖女の方だった。彼女は忠告をすると、淹れたての紅茶に口をつける。
貴族の出だと勘違いしそうなほど、洗練された仕草だった。
「占いの結果か? くだらない」
「何のことか、貴方が一番良くご存知のはず」
「……何故知っている」
彼女の不思議な目は、はっきりとセヴィリオの片腕を見ていた。
衣服の下に絡まる蛇の呪いを、セヴィリオは一度も彼女に見せたことがない。話したことすらない。
「これでも私、一応聖女なので、正反対の性質を持つものには敏感なのです」
そうか、と言う他なかった。彼女が普通の人間でないことは雰囲気から察してとれるので、セヴィリオは彼女の言い分に対して然程違和感を抱かなかった。
「このことは他言無用で頼む」
「ええ。それと、もう一つ、貴方にお話しておきたいことがあります」
「なんだ」
「こちらが本題です」
――私の命はもう、ひと月と持たないでしょう。
彼女は自分は死ぬと言いながら、穏やかに笑っていた。
「それも聖女の能力で分かるものなのか?」
「はい。ですから今日は、お別れのご挨拶に参りました」
聖女は笑みを絶やさず、セヴィリオに軽く会釈をして見せる。
彼女は死に怯えるどころか、死を喜んでいるようだった。どこか素敵な場所へ旅立つ前日の高揚を彼女から感じ、セヴィリオは困惑する。
「何か、望まれる奇跡はございますか?」
「何の話だ」
「私は一度だけ。正確には死の直前に、神の奇跡を使うことができます」
「自分のために使えば良い」
「私はあまり、私欲がないのです。神様にお会いしてみたいとは思いますが、それは間もなく叶うでしょう」
奇跡。そのようなものが存在するのだとして、他人に等しい夫の願いを叶えようとする理由は何だ。セヴィリオは全く理解できなかった。
それでも、もし奇跡を起こせるのだとしたら、願うことはただ一つ。
「僕は……」
「はい」
「やはり、止めておく」
別の女と結ばれたいなど、仮にも妻である女性に向かって言える願いではない。
セヴィリオは思い留まったが、聖女は目を細めて思考を読むような素振りをする。
そして、彼女は笑顔のまま告げた。
「リアナーレ=アストレイ様と一緒になりたい。そうですね?」
「……そうだ」
「ふふ、私のことは気になさらないで。誰か一人を愛するという感覚が、そもそも抜け落ちていますから」
ところで、と聖女は話を続ける。
「大切なのは体と魂、どちらだと思いますか? つまり、貴方は戦女神様の外見と中身、どちらを愛しているのですか?」
「両方だ。どちらかを取るのなら、魂」
聖女は慈愛に満ちた表情で、両の指先を重ね合わせた。それほど深く誰かを愛せることが羨ましいと、彼女はうっとり言葉を紡ぐ。
「一番良い奇跡の使い方を考えてみます」
聖女はそう言い残すと、真っ暗な夜の廊下へと吸い込まれていった。
立ち去る間際、セヴィリオは何がしてほしいことはあるかと彼女に尋ねたが、十分恵まれていますと首を横に振るだけだった。
リアナ=キュアイスとまともに会話をしたのは、これが最初で最後だ。
彼女と砕けた口調で話したことなど一度もない。セヴィリオの前では口が悪かったというのは、入れ替わったリアナのためについた嘘である。
0
あなたにおすすめの小説
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
望まぬ結婚をさせられた私のもとに、死んだはずの護衛騎士が帰ってきました~不遇令嬢が世界一幸せな花嫁になるまで
越智屋ノマ
恋愛
「君を愛することはない」で始まった不遇な結婚――。
国王の命令でクラーヴァル公爵家へと嫁いだ伯爵令嬢ヴィオラ。しかし夫のルシウスに愛されることはなく、毎日つらい仕打ちを受けていた。
孤独に耐えるヴィオラにとって唯一の救いは、護衛騎士エデン・アーヴィスと過ごした日々の思い出だった。エデンは強くて誠実で、いつもヴィオラを守ってくれた……でも、彼はもういない。この国を襲った『災禍の竜』と相打ちになって、3年前に戦死してしまったのだから。
ある日、参加した夜会の席でヴィオラは窮地に立たされる。その夜会は夫の愛人が主催するもので、夫と結託してヴィオラを陥れようとしていたのだ。誰に救いを求めることもできず、絶体絶命の彼女を救ったのは――?
(……私の体が、勝手に動いている!?)
「地獄で悔いろ、下郎が。このエデン・アーヴィスの目の黒いうちは、ヴィオラ様に指一本触れさせはしない!」
死んだはずのエデンの魂が、ヴィオラの体に乗り移っていた!?
――これは、望まぬ結婚をさせられた伯爵令嬢ヴィオラと、死んだはずの護衛騎士エデンのふしぎな恋の物語。理不尽な夫になんて、もう絶対に負けません!!
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙冬可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる