今から国を滅ぼしてみせましょう

山田さん

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「お父様、お母様。まず一刻も早くこの国を出ようと思います。お話は伝わっていると思いますが、今日中に出ていくと宣言致しましたので、今すぐにでも荷物を纏め、夜が明ける前に隣国に入れたらと思っています」

「ああ、その話が伝わった時点で使用人達が完璧に荷物を纏めてある」

「ひとまずその後の話は馬車でしましょうか。早速出発するわよ」


 いつの間にか外には使用人達も全員乗り込める馬車が用意されていた。
 一台しかないが、これは私が空間拡張の魔法がかけられているので、その気になれば百人でも乗れる。

 聖女は基本的に国の結界の維持だけで相当な魔力を使用するので、他属性には手を出せない。
 だが、歴代聖女トップレベルの魔力を持つ私は、結界の維持を続けても尚余ってしまうので、空間属性と風属性も極めてみた。
 事が済んだら他の水属性や火属性なども極めてみようと思う。

 それはさておき、出発した馬車の中で私が考えた作戦をみんなと共有する。


「まず結界を解くだけで魔獣達は喜んで国に侵入します。それに加え、今まで抑えられてきた大規模な災害も起こるでしょう。ですが、それだけでは国が滅ぶとは思いません。今後災害がいつ起こるかなどは運ですし、魔獣に関しては、辺境の領地が退治に長けていますから。
 ですので、トレント王国に侵入する魔獣だけを強化する結界を張ろうと思います」


 災害を起こせるほどの魔法を習得していないのでそれは自然に任せるとして、他に私が出来ることといえば魔獣関係だけだ。
 本来一から結界を張るのには多くの魔力を使用するが、初代聖女が張った結界を維持するより、魔獣強化の結界の方を張ることの方が魔力は使用しない。
 それだけ自然に逆らうのは難しいという事だ。


「確かにそれならアリアにもあまり負担がかからないし、いいと思うわ。でもそれだけでは王都へのダメージは少ないんじゃないかしら?」

「いいや、王都に魔獣が攻め込んでもあまりダメージはない。仮にも王族が住む場所。軍事は相当のものだ。
 ……アリアの狙いは王族が処刑されることだろう」


 お父様の言う通り。
 王族の周りは一流の騎士が揃っているので、魔獣を直接仕向けるよりも民に反乱させ、首を落とされる方が確実だと予想した。
 何故聖女を追放した、と明日にでも苦情が王城に届くことでしょう。
 そうなってしまえばあとは時間の問題。


「王族の無能さが露見し、私が手を出さなくても勝手に自滅してくれますわ」
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