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ラルフ様編5
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目の前には、春の花園を思わせるようなドレスの数々が並びました。淡い水色、深みのあるボルドー、優しいクリームイエロー、そして新緑のようなグリーン。どれもそれぞれの個性を引き立てるように思えます。
「どれも素敵ですね……」
ランゼ様が、少し驚いたように小さく呟かれました。普段は黒、落ち着いた色をお召しの彼女にとって、これほどカラフルな衣装が目の前に並ぶことは久しくなかったのでしょう。
「こちらのミントグリーン、ランゼ様のお肌に映えるのではなくて?」
お姉さまが、そっと一着のドレスを手に取られました。
「明るい色も、意外とお似合いになりそうですわ。」
「……そうかしら。試すだけなら。」
言葉は控えめでも、その指先が少しだけ心を許しているように見えました。
「お姉さまには、こちらのラベンダー色はいかがでしょう。上品で優美な色……まさに、お姉さまにぴったりですわ。」
「まあ、ありがとう。では、それを試してみようかしら。」
わたくしは、自分には思いきって普段は避けていたターコイズブルーを選びました。
「これはちょっと冒険ですが、皆様とご一緒なら、きっと楽しくなりますわ。」
3人は順に侍女たちの手を借りて着替えを済ませ、応接間の奥に設けられた姿見の前に並びます。
「わ……」
思わず声が漏れてしまいました。3人が並んだ姿見の前――そこには、それぞれ異なる色のドレスと、それを引き立てる個性が映し出されていました。
わたくしは、ピンクの髪にターコイズブルーのドレスをまとい、少し大胆に感じていたその配色が、鏡の中でまるで宝石のような輝きを放っていることに驚いていました。青とピンク、対照的な色が互いを引き立て、ふわりと華やかな印象を与えてくれています。
お姉さまはラベンダーのドレスに身を包まれ、深みのある黒色の髪にやさしく溶け合い、まるで高貴な花のよう。
そして――
ランゼ様。
真紅の髪は、光を受けるたびにルビーのようにきらめき、そこにミントグリーンのドレスが重なると、なんとも言えぬ爽やかさと強さを感じさせました。
ふつうなら相反しそうな色が、不思議なほど調和していて、まるで春の若葉の中に咲く紅花のような美しさ。
「お互いに、思っていた以上に似合う色があるのですね……」
お姉さまが微笑まれました。
「……ランゼ様、とてもお似合いですわ。」
「たまには、黒以外も悪くないわね。」
ランゼ様もほんの少しだけ、口元をゆるめました。
「うれしいですわ。今日は、こうしてお二人とおしゃれの話ができて……とっても楽しい。」
すると、ランゼ様がふいに鏡越しにわたくしを見つめ、静かに言葉を継ぎました。
「アンリ嬢、あなたが何を考えて私を誘ったのか、今はもう分かる気がする。」
「まあ……どんな風に、でしょうか?」
「選ばれるのを待つだけではなく、自分で選ぶこと。そのためにはまず、試してみることが必要……そういうことなのね。」
「はい。その通りですわ。」
ランゼ様の眼差しに、わずかに宿った熱を感じ、わたくしは胸の奥が温かくなるのを覚えました。
「さあ、お茶にいたしましょう。今日は特別なお菓子を用意してありますの。」
わたくしの合図に、侍女たちが優雅なティーセットと、花の形をした砂糖菓子を運んでまいりました。香り高い紅茶の湯気が、ドレスの彩りとともに、空間を柔らかく包み込みます。
こうして始まったささやかな午後のお茶会は、きっとわたくしたちにとって、色とりどりの思い出の一つになることでしょう。
「どれも素敵ですね……」
ランゼ様が、少し驚いたように小さく呟かれました。普段は黒、落ち着いた色をお召しの彼女にとって、これほどカラフルな衣装が目の前に並ぶことは久しくなかったのでしょう。
「こちらのミントグリーン、ランゼ様のお肌に映えるのではなくて?」
お姉さまが、そっと一着のドレスを手に取られました。
「明るい色も、意外とお似合いになりそうですわ。」
「……そうかしら。試すだけなら。」
言葉は控えめでも、その指先が少しだけ心を許しているように見えました。
「お姉さまには、こちらのラベンダー色はいかがでしょう。上品で優美な色……まさに、お姉さまにぴったりですわ。」
「まあ、ありがとう。では、それを試してみようかしら。」
わたくしは、自分には思いきって普段は避けていたターコイズブルーを選びました。
「これはちょっと冒険ですが、皆様とご一緒なら、きっと楽しくなりますわ。」
3人は順に侍女たちの手を借りて着替えを済ませ、応接間の奥に設けられた姿見の前に並びます。
「わ……」
思わず声が漏れてしまいました。3人が並んだ姿見の前――そこには、それぞれ異なる色のドレスと、それを引き立てる個性が映し出されていました。
わたくしは、ピンクの髪にターコイズブルーのドレスをまとい、少し大胆に感じていたその配色が、鏡の中でまるで宝石のような輝きを放っていることに驚いていました。青とピンク、対照的な色が互いを引き立て、ふわりと華やかな印象を与えてくれています。
お姉さまはラベンダーのドレスに身を包まれ、深みのある黒色の髪にやさしく溶け合い、まるで高貴な花のよう。
そして――
ランゼ様。
真紅の髪は、光を受けるたびにルビーのようにきらめき、そこにミントグリーンのドレスが重なると、なんとも言えぬ爽やかさと強さを感じさせました。
ふつうなら相反しそうな色が、不思議なほど調和していて、まるで春の若葉の中に咲く紅花のような美しさ。
「お互いに、思っていた以上に似合う色があるのですね……」
お姉さまが微笑まれました。
「……ランゼ様、とてもお似合いですわ。」
「たまには、黒以外も悪くないわね。」
ランゼ様もほんの少しだけ、口元をゆるめました。
「うれしいですわ。今日は、こうしてお二人とおしゃれの話ができて……とっても楽しい。」
すると、ランゼ様がふいに鏡越しにわたくしを見つめ、静かに言葉を継ぎました。
「アンリ嬢、あなたが何を考えて私を誘ったのか、今はもう分かる気がする。」
「まあ……どんな風に、でしょうか?」
「選ばれるのを待つだけではなく、自分で選ぶこと。そのためにはまず、試してみることが必要……そういうことなのね。」
「はい。その通りですわ。」
ランゼ様の眼差しに、わずかに宿った熱を感じ、わたくしは胸の奥が温かくなるのを覚えました。
「さあ、お茶にいたしましょう。今日は特別なお菓子を用意してありますの。」
わたくしの合図に、侍女たちが優雅なティーセットと、花の形をした砂糖菓子を運んでまいりました。香り高い紅茶の湯気が、ドレスの彩りとともに、空間を柔らかく包み込みます。
こうして始まったささやかな午後のお茶会は、きっとわたくしたちにとって、色とりどりの思い出の一つになることでしょう。
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