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暴食の章
第18話 最後の関門
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重厚な鎧が軋む音の中心に僕たちは今いる。傍から見たら要人の護衛なのか罪人の護送なのか分からないだろう。実際僕もどっちか分からない。しかし、サミエムは横で嬉しそうに隊列の真似をしている。よっぽど騎士気分になれるのが楽しいのだろう。
「全体!止まれ!」
食都壱番街に踏み鳴らす音が鳴り響き、静寂が訪れた。騎士たちの間から前を覗くと、ひときわ大きな塔、いや…城と言った方がいいか?ともかく見上げる程の巨大な壁とどんな敵も通すつもりが無いような重厚な扉が行く手を阻んでいる。
「騎士団長アルバーノ、客人を連れて参った!」
ゴゴゴ…という音を立てて扉がはるか上空へと上がっていく。先頭で僕たちを客人と呼んでいた彼が、にこやかにこちらを向くと同時に、圧迫感を感じる両側の騎士たちがザッと道を開ける。
「客人のお2方、どうぞ中へ…この騎士団長が案内いたします」
「何かずいぶんと丁寧ですね」
「ははは!TPOくらい弁えるよ、それなりに礼儀は知っているつもりだからね…さぁ、暴食帝様がお待ちだ」
「はい、行きましょう」
身構えて入った中の造りはいたって普通でそれこそありふれた貴族の家を想像すればだれでも把握出来るような単純なものだった…ただ1つを除いて。違和感と言われればそうなのだがどう納得すればいいか分からない。
「お、大きいというか…巨大ですね」
「…まぁそれについてはすぐ分かることだから」
その言葉では片付けられない程には、僕は焦っていた。何しろ自身と同じくらいの歯ブラシが食都壱番街のタワーくらいの高さがあるテーブルからはみ出しているのだから。それだけじゃなく椅子に鏡…扉さえも不自然に大きい。これじゃまるで僕たちがおとぎ話にでも入り込んだようじゃないか…
「着いたよ、ここが玉座だ」
ひときわ豪華な扉が轟音を鳴らしながら開いていく。遂にご対面だ、僕たちが乗り越えなければならない最後の関門…暴食帝ゼクスその取り巻きになること!それが出来なきゃこの鉄壁の居城を崩す算段も立てられない…意を決し、完全に開ききった扉に目を向けると、そこには壁があった。あ、あれ?確かに玉座って聞いたんだけど…1種のジョークなのだろうか?
「は、灰崎…」
「どうしたんですか?」
「う、上見ろよ…」
震えながら指を上に指す彼に困惑しながら、言われた通りに見上げると、確かに何かもごもごしている。目を凝らせば何か分かるのか?ぼやけたピントが徐々に合ってくる時、動いているものがこちらに向かって動いた。いや、振り向いたという方が正しいか、だってそれは巨大な顔の一部だったのだから。
「余は食事中だぞ…」
「陛下、それはいつものことなのでは?」
「ふん、余に軽口をたたく愚か者はお前くらいだぞ、アルバーノ…まぁいい、客人が来るというのはあらかじめ知っていたからな」
山のような化け物がゆっくりと立ち上がり、地響きを起こしながら部屋の奥にある巨大な玉座に腰かける。彼が食べていたであろう怪物の骨が散乱した部屋を僕たちは進む。暴食帝の両脇にはヒトサイズの人間が…いや、普通なことなのだが、この城に入ってから人間サイズを見たのは彼らが初めてだったので少し安心感が生まれた。
「それで客人、余に要件があるとな?」
「はい、実は難攻不落のアルシャルノ山を攻略いたしましてその地図を献上しに参りました」
「ほう…そんな山あったのか?」
「え?」
「まぁよい…それは手土産程度に置いておこう、本題は貴殿の職業だ」
「申し訳ございません、話が見えないのですが…」
「知っての通り、我が帝国の専属魂術師のクラウソラスが謀反をした挙句死んだのだが…単刀直入に言おう…灰崎零よ、その後を継いで三賢になってもらいたい」
「は、はい!願ってもいませんでしたので…」
「謙遜はいらん、アルバーノから報告は受けている」
「陛下…承諾も受けたことですし、契約をされては…」
「あぁ、それは任せる…余はこれでも忙しいのだ」
「了解致しました、では」
ローブを着た男が指を鳴らすと風景がガラリと変わった。何が起こったのか分からず戸惑っている僕らに彼らは
「では、賢者としての素質があるかないか…我々が見定めさせてもらおう」
そう…関門はまだ始まっていなかったのだった。
「全体!止まれ!」
食都壱番街に踏み鳴らす音が鳴り響き、静寂が訪れた。騎士たちの間から前を覗くと、ひときわ大きな塔、いや…城と言った方がいいか?ともかく見上げる程の巨大な壁とどんな敵も通すつもりが無いような重厚な扉が行く手を阻んでいる。
「騎士団長アルバーノ、客人を連れて参った!」
ゴゴゴ…という音を立てて扉がはるか上空へと上がっていく。先頭で僕たちを客人と呼んでいた彼が、にこやかにこちらを向くと同時に、圧迫感を感じる両側の騎士たちがザッと道を開ける。
「客人のお2方、どうぞ中へ…この騎士団長が案内いたします」
「何かずいぶんと丁寧ですね」
「ははは!TPOくらい弁えるよ、それなりに礼儀は知っているつもりだからね…さぁ、暴食帝様がお待ちだ」
「はい、行きましょう」
身構えて入った中の造りはいたって普通でそれこそありふれた貴族の家を想像すればだれでも把握出来るような単純なものだった…ただ1つを除いて。違和感と言われればそうなのだがどう納得すればいいか分からない。
「お、大きいというか…巨大ですね」
「…まぁそれについてはすぐ分かることだから」
その言葉では片付けられない程には、僕は焦っていた。何しろ自身と同じくらいの歯ブラシが食都壱番街のタワーくらいの高さがあるテーブルからはみ出しているのだから。それだけじゃなく椅子に鏡…扉さえも不自然に大きい。これじゃまるで僕たちがおとぎ話にでも入り込んだようじゃないか…
「着いたよ、ここが玉座だ」
ひときわ豪華な扉が轟音を鳴らしながら開いていく。遂にご対面だ、僕たちが乗り越えなければならない最後の関門…暴食帝ゼクスその取り巻きになること!それが出来なきゃこの鉄壁の居城を崩す算段も立てられない…意を決し、完全に開ききった扉に目を向けると、そこには壁があった。あ、あれ?確かに玉座って聞いたんだけど…1種のジョークなのだろうか?
「は、灰崎…」
「どうしたんですか?」
「う、上見ろよ…」
震えながら指を上に指す彼に困惑しながら、言われた通りに見上げると、確かに何かもごもごしている。目を凝らせば何か分かるのか?ぼやけたピントが徐々に合ってくる時、動いているものがこちらに向かって動いた。いや、振り向いたという方が正しいか、だってそれは巨大な顔の一部だったのだから。
「余は食事中だぞ…」
「陛下、それはいつものことなのでは?」
「ふん、余に軽口をたたく愚か者はお前くらいだぞ、アルバーノ…まぁいい、客人が来るというのはあらかじめ知っていたからな」
山のような化け物がゆっくりと立ち上がり、地響きを起こしながら部屋の奥にある巨大な玉座に腰かける。彼が食べていたであろう怪物の骨が散乱した部屋を僕たちは進む。暴食帝の両脇にはヒトサイズの人間が…いや、普通なことなのだが、この城に入ってから人間サイズを見たのは彼らが初めてだったので少し安心感が生まれた。
「それで客人、余に要件があるとな?」
「はい、実は難攻不落のアルシャルノ山を攻略いたしましてその地図を献上しに参りました」
「ほう…そんな山あったのか?」
「え?」
「まぁよい…それは手土産程度に置いておこう、本題は貴殿の職業だ」
「申し訳ございません、話が見えないのですが…」
「知っての通り、我が帝国の専属魂術師のクラウソラスが謀反をした挙句死んだのだが…単刀直入に言おう…灰崎零よ、その後を継いで三賢になってもらいたい」
「は、はい!願ってもいませんでしたので…」
「謙遜はいらん、アルバーノから報告は受けている」
「陛下…承諾も受けたことですし、契約をされては…」
「あぁ、それは任せる…余はこれでも忙しいのだ」
「了解致しました、では」
ローブを着た男が指を鳴らすと風景がガラリと変わった。何が起こったのか分からず戸惑っている僕らに彼らは
「では、賢者としての素質があるかないか…我々が見定めさせてもらおう」
そう…関門はまだ始まっていなかったのだった。
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