82 / 83
嫉妬の章
第27話 衝撃の幕引き
しおりを挟む
「な…なんで!!」
思わず叫んでしまった。確かに九尾カトルは消し炭になり、僕らが勝利した。なのに…なのにどうしてヘリオが刺されているんだ!!しかも、奴に…嫉妬帝に刺されているではないか!!これはどういうことなんだ…思考ばかりが動いて、身体は全く動かない。ヘリオの顔が痛みで歪んでいく。
「ぐぅ…ここで死んでたまるか!!」
「おっと、危ない危ない」
「なんで…お前が生きているんだ!!カトル!!」
「お前たちが倒したあれは影武者だからな、しかし予想外だった…いくら不完全とはいえあいつを倒すとはな」
「影武者…だと?嘘をつくな、あいつはアーティファクトを使えたじゃないか」
「勘違いしているようだな、ガメイラロッドの効果は奪うだけではない!与えることも出来るのだ!」
「つまり…ゴホッゴホッ、影武者に能力を渡したって言うのか?」
「惜しいな、与えたのは俺の全てだ…身体を除いた全てを与え、操っていた」
「…ふざけるな」
「おやぁ?怒ったのか」
「お前は既にむき身、何もない状態だ!今ここでやってやる!!」
「MPもない魔法職など毛ほども恐ろしくない、それに残念ながらタイムリミットだ」
辺りに陽光が射し、敵兵が続々と向かってきているのが見える。しかし、敵将は目の前だ。あいつらが僕に辿り着く前には済む話だ!
「灰崎!退け!」
「何でですか!!」
「奴は万全の状態でこちらは満身創痍、それに数でも負けている」
「…」
「俺たちは…負けたんだよ、所定の場所まで逃げ切れ!」
「ヘリオさんはどうするんですか!その傷じゃ…」
「俺はしんがりだ」
「そんなことしたら死んでしまう!」
「サミエム!!こいつを連れていけ!!」
「……分かった、師匠」
「ま、待ってくれよ!」
「黙ってろ、灰崎!!俺だって一緒だ…」
涙を堪えながらサミエムは僕に一喝する。そうだ、僕よりも彼の方がヘリオと一緒にいた時間は長い。それだけ辛いはずなのに…血が滴り落ちる僕らのしんがりは鬼神のように戦い続けていた。その姿に僕は担がれながら涙を流すことしか出来なかった。
作戦は無事に帰還するまでである。どれだけ精密な計画だとしても撤退がずさんなものは優れたものとは言えない。今回の作戦ではある地点でテレポートするという方法だ。しかし、ラベンストからラクスウェルまでという超長距離を安全に正確に転移するにはいつも使っているテレポート石では不十分だ。そこで大規模な転移装置を作成し、動力を大幅に上げ、制度を上げるという試作品が開発された。実験では正常に起動していたから大丈夫だろう……思えばこれも彼が提案したものだった。
「見えてきたぞ!」
「…あぁ、そうだね」
「必ず来る、俺は信じてる」
決意にも似た声色は彼の切なる願いを表現するには余りあるものだと感じた。僕は深く…強くうなづいた。たとえそれが叶わないと分かっていても実現して欲しいと本気で思っていた。
「おっ、ちゃんと来たじゃないかぁ」
「すみません、遅れてしまって」
「本当に遅かったな!それでヘリオは?」
「実は……」
「…そうか、じゃあ行くぞ」
「え?」
「なんだよ、まだあるのか?」
「意外に少ないなと」
「それだけか、さっさと行くぞ」
「ちょっと冷たいんじゃな…」
「うるせぇな!!お前の話じゃあいつが死に物狂いで時間を稼いでんだろ、俺たちのために!」
「…そうですね」
イライラしながら口の悪い諜報員がボタンを叩く。すると、光の渦が漂い出した。これに触れれば転移される。息を呑み込み、僕はそれに触れた。
思わず叫んでしまった。確かに九尾カトルは消し炭になり、僕らが勝利した。なのに…なのにどうしてヘリオが刺されているんだ!!しかも、奴に…嫉妬帝に刺されているではないか!!これはどういうことなんだ…思考ばかりが動いて、身体は全く動かない。ヘリオの顔が痛みで歪んでいく。
「ぐぅ…ここで死んでたまるか!!」
「おっと、危ない危ない」
「なんで…お前が生きているんだ!!カトル!!」
「お前たちが倒したあれは影武者だからな、しかし予想外だった…いくら不完全とはいえあいつを倒すとはな」
「影武者…だと?嘘をつくな、あいつはアーティファクトを使えたじゃないか」
「勘違いしているようだな、ガメイラロッドの効果は奪うだけではない!与えることも出来るのだ!」
「つまり…ゴホッゴホッ、影武者に能力を渡したって言うのか?」
「惜しいな、与えたのは俺の全てだ…身体を除いた全てを与え、操っていた」
「…ふざけるな」
「おやぁ?怒ったのか」
「お前は既にむき身、何もない状態だ!今ここでやってやる!!」
「MPもない魔法職など毛ほども恐ろしくない、それに残念ながらタイムリミットだ」
辺りに陽光が射し、敵兵が続々と向かってきているのが見える。しかし、敵将は目の前だ。あいつらが僕に辿り着く前には済む話だ!
「灰崎!退け!」
「何でですか!!」
「奴は万全の状態でこちらは満身創痍、それに数でも負けている」
「…」
「俺たちは…負けたんだよ、所定の場所まで逃げ切れ!」
「ヘリオさんはどうするんですか!その傷じゃ…」
「俺はしんがりだ」
「そんなことしたら死んでしまう!」
「サミエム!!こいつを連れていけ!!」
「……分かった、師匠」
「ま、待ってくれよ!」
「黙ってろ、灰崎!!俺だって一緒だ…」
涙を堪えながらサミエムは僕に一喝する。そうだ、僕よりも彼の方がヘリオと一緒にいた時間は長い。それだけ辛いはずなのに…血が滴り落ちる僕らのしんがりは鬼神のように戦い続けていた。その姿に僕は担がれながら涙を流すことしか出来なかった。
作戦は無事に帰還するまでである。どれだけ精密な計画だとしても撤退がずさんなものは優れたものとは言えない。今回の作戦ではある地点でテレポートするという方法だ。しかし、ラベンストからラクスウェルまでという超長距離を安全に正確に転移するにはいつも使っているテレポート石では不十分だ。そこで大規模な転移装置を作成し、動力を大幅に上げ、制度を上げるという試作品が開発された。実験では正常に起動していたから大丈夫だろう……思えばこれも彼が提案したものだった。
「見えてきたぞ!」
「…あぁ、そうだね」
「必ず来る、俺は信じてる」
決意にも似た声色は彼の切なる願いを表現するには余りあるものだと感じた。僕は深く…強くうなづいた。たとえそれが叶わないと分かっていても実現して欲しいと本気で思っていた。
「おっ、ちゃんと来たじゃないかぁ」
「すみません、遅れてしまって」
「本当に遅かったな!それでヘリオは?」
「実は……」
「…そうか、じゃあ行くぞ」
「え?」
「なんだよ、まだあるのか?」
「意外に少ないなと」
「それだけか、さっさと行くぞ」
「ちょっと冷たいんじゃな…」
「うるせぇな!!お前の話じゃあいつが死に物狂いで時間を稼いでんだろ、俺たちのために!」
「…そうですね」
イライラしながら口の悪い諜報員がボタンを叩く。すると、光の渦が漂い出した。これに触れれば転移される。息を呑み込み、僕はそれに触れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる