魂術師(ソウルテイカー)は産廃最強職!

トリカブト

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嫉妬の章

第23話 絶望の二乗

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 満月の夜、雲1つなく満天の星空が広がっている。そして、周囲から逸脱したような大きさの建物…その屋根に昔話の化け物、伝説上の生き物が僕たちの前に立ちふさがる。まるで本物の勇者になったみたいで嬉しい!となるほど頭お花畑な訳ではないので普通に怯えていた。

「さて…どうするか」

「あの昔話じゃどうだったんだっけ?」

「たしかとんでもなく強い旅人が首を一刀両断だったか?」

「そんな適当な落ちだったのか?!真似しようとしたのに…」

「じゃああのデカブツの首を叩ききってくれ、サミエム」

「俺にふるなよ!そんなこと言ってる師匠がやってくれよ!」

「冗談だ、柄じゃないがな」

 そう言って彼は、高い位置から見下ろしてくる強敵を睨みつける。よく見れば剣を持っている手が震えている。歴戦のヘリオでも…いや、歴戦の彼だからこそ相手の力量が分かってしまうのだろう。しかし、気掛かりなことがある。嫉妬帝はあの状態で精神を保っていられるのかどうかだ。暴食帝ゼクスの時は正気ではなく、無差別に攻撃していた。だからこそ、奴1人…いや、奴1体に集中出来た。それにここまでずっとにらみ合いしかしていない。さっきのカトルならなりふり構わず襲ってきそうなものなんだが…

「もしかしてあれってはったりなんじゃ?」

「流石にそれはないだろ」

「だって、未だに襲ってこないじゃないか」

「…それも一理あるな、よし…シャドウパペット、行け!」

「うわぁ、教えられてないやつだ!」

「後で教えてやる」

 拗ねているサミエムを無視して、人形が真っ直ぐに飛んでいく。カタカタと音を立てて無機物特有の生命感がない不気味な動きで突進しているそれが九尾の前に来た時だった。思わず耳を塞ぎたくなる音を発しながら、人形が激しく燃えた。

「人間共…わらわに歯向かうのなら相応の罰を与えてやろう」

「なんだあいつ、喋ったぞ!」

「伝承ではあいつの知能は優に超えているらしいからな」

「来ますよ!」

 踏まなくてもいい虎の尾を踏まされるのは本当に気が気でない。こうして僕たちの最終決戦は始まったのだ!



「炎獄!」

「くそ、エンチャントアイス…氷狼撃!」

「中々やるではないか、ならば…夜天霹靂やてんへきれき!」

「あれは防げねぇ!任せた、師匠!」

「エンチャントロック…岩流壁撃がんりゅうへきげき!」

「これじゃ埒が明かないぜ!何とかしないと!」

「僕がやってみます!」

「行けるのか?」

「はい、それには皆さんの協力が必要です!」

「どうするってんだ?」

「まず……して僕が…」

「了解だ、何もせずに死ぬよりましだな」

 ヘリオが賛成すると、誰が合図することもなく僕が立てた計画に向けて行動する。これまでの奴の行動と昔話のあれを参考にして分かったことがある。それはしっぽの先端から魔法が出ているということ…魔獣の魔力の源であるあそこからしか出ていない。つまり先端だけを抑えれば奴の攻撃手段を奪うことが出来る。

「灰崎!!こっちは全員抑えたぞ!」

「く、くそ!離せ、馬鹿者共!」

「分かりました!ソウルアーマー!……これでとどめだ!ソウルブレイク!!」

「グワァァァ!!」

 これまでの甲高い声ではない野太い声が深夜のラベンストに響き渡る。これは確実に効いている!魂術の光が徐々に収まってきて、九尾の憎らしそうな顔を見てそれが分かった。

「よっし!」

「ははは、ガッツポーズなんて柄じゃないな!」

「だって、勝どきだよ?そりゃはしゃいじゃうよ…」

「ククク…」

「誰だよ、クククって笑うのは」

「俺だ…後ろを見てみろよ」

「え…?」

「魂術であのクソババア、もとい化け狐が居なくなった今…俺はこの身体を自由に扱える!」

「マジかよ…」

「ど、どうしましょうかヘリオさん…ヘリオさん?」

 結論から言うと彼はいなかった。いや、さっきまではいたのだ。これは…まさかの敵前逃亡?!
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