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怠惰の章
第13話 感情の悪循環
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「…まずは救出ありがとうございます…申し訳ない、僕は囚われていたから日にちの感覚が狂っているから分からないですが、ここはいつ建てたんですか?」
「これくらいの小屋なら1日も経たずに建てられるぞ、ボス」
「……うん、そうなんだ」
思わず苦笑いを浮かべてしまう。まぁこれでも自分をほめてやりたいと思える。何でもありってレベルじゃないだろ、召喚士!と口から出てしまう所だった。今からでも変えてみようかな…なんてらしくない冗談がよぎる中、議題は最悪と言っていい現実の状況に引き戻される。
「それでどうするんだ、灰崎?」
「現状は最悪と言っていいと思うよ、誤解を解くには時間が解決してくれることもあるけど…そんなに悠長に出来ない」
「おいおい、元はと言えばこいつが派手に迎撃しなきゃ済んだ話じゃねぇのかよ!」
「相手の攻撃と武器を効率的に無力化しただけだ、判断としては間違っていない」
「判断じゃなくて力加減の話をしてんだよ、没落貴族」
「…今なら許してやる、取り消せ」
「まぁまぁ!不幸中の幸いとして相手の怠惰帝は友好的です、主導者が歩み寄ろうとしてくれているのは交渉の余地ありです」
「…チッ、相棒のミスが命取りになってるのにお咎めなしかよ!やってらんねぇな、俺は寝る」
「会議はまだ終わってないぞ」
「そんなもんしてもしなくてもあっちのお偉いさんがどれだけ統率出来るかだろう?そうだよな、ボス」
「……不甲斐ないけど」
「ほらな、お前らも疲れを癒しといた方がいいぜ?気が変わって俺たちを襲撃しに来るかもしれねぇからよ」
「待て、まだ侮辱の謝罪をしてないだろ……おい」
サミエムの言葉を遮るように荒々しく扉を閉める音が木の壁に反響する。それを合図に諜報員たちは部屋へと入っていく。あぁ、そうだった。最悪の状況はどんどんと悪化していく…交渉も統率もどんどんと悪くなってしまう。それでも…
「それでもやるしかないんだ」
落下の感覚で気を戻す。あの後こちら側で動ける策を練ろうとしたが、結局何もしないのが一番だということが改めて分かった。しかし、久しぶりに作業中に寝落ちたものだ。少し前までこれが当たり前のような生活をしていたような…まぁ、その頃の記憶が無いから不安になるような既視感に襲われているのだが。
「はぁ…今どれくらいなんだ?」
体感では徹夜したくらいには時間が経っている。しかし、窓からは助けられた時と同じように煌々と陽が射している。そういえば捕らえられていた時に日の出は見たが、日没は見たことがなかったな。最もあの時は窓なんてものが無かったから掘っ立て小屋の木漏れ日で把握していただけだが。
「大変だ、ボス!」
「どうしました?」
「怠惰帝の使者が…」
「失礼する、私は伝介…代表者からの言葉と案内を任された者だ」
やけに冷静だ。敵対心剥き出しの彼しか知らない僕だが、これほどまでに心を落ち着かせて話せるように出来るのか。彼は一体何をした?全面戦争なんていう最悪の事態は免れたのだろうか?
「代表者は対話をご所望だ、席は用意してある…来てもらおう」
「罠に違いない」
「…どう思ってもらっても構わない、決めるのはあんただ、強欲帝の使者」
「分かりました、案内してください」
「ボス!」
「彼の変わりようを見れば分かるだろう?」
「仮に民衆を説得して交渉の席を整えられるカリスマ性があったとして…それを罠に使った方が合理的に動けるじゃないか?」
「じゃあ君が僕を守ってくれ、サミエム」
「それはもちろんだが」
「じゃあ僕たち2人で行こうか」
「2人だけ?」
「みんなにはその間に拠点を強化してもらいたい」
「……分かった」
もしもの時、あちらとこちらでは圧倒的に継続戦闘能力が違いすぎる。だからこそ、人員をそちらに割きたい。しかし、自分のリーダーシップの無さに苛立ちを覚える。そして、それ以上に怠惰帝のカリスマ性に…言い知れない何か粘着質な感情がくすぶっている。
「準備はいいか?……よし、では行くとしようか」
「これくらいの小屋なら1日も経たずに建てられるぞ、ボス」
「……うん、そうなんだ」
思わず苦笑いを浮かべてしまう。まぁこれでも自分をほめてやりたいと思える。何でもありってレベルじゃないだろ、召喚士!と口から出てしまう所だった。今からでも変えてみようかな…なんてらしくない冗談がよぎる中、議題は最悪と言っていい現実の状況に引き戻される。
「それでどうするんだ、灰崎?」
「現状は最悪と言っていいと思うよ、誤解を解くには時間が解決してくれることもあるけど…そんなに悠長に出来ない」
「おいおい、元はと言えばこいつが派手に迎撃しなきゃ済んだ話じゃねぇのかよ!」
「相手の攻撃と武器を効率的に無力化しただけだ、判断としては間違っていない」
「判断じゃなくて力加減の話をしてんだよ、没落貴族」
「…今なら許してやる、取り消せ」
「まぁまぁ!不幸中の幸いとして相手の怠惰帝は友好的です、主導者が歩み寄ろうとしてくれているのは交渉の余地ありです」
「…チッ、相棒のミスが命取りになってるのにお咎めなしかよ!やってらんねぇな、俺は寝る」
「会議はまだ終わってないぞ」
「そんなもんしてもしなくてもあっちのお偉いさんがどれだけ統率出来るかだろう?そうだよな、ボス」
「……不甲斐ないけど」
「ほらな、お前らも疲れを癒しといた方がいいぜ?気が変わって俺たちを襲撃しに来るかもしれねぇからよ」
「待て、まだ侮辱の謝罪をしてないだろ……おい」
サミエムの言葉を遮るように荒々しく扉を閉める音が木の壁に反響する。それを合図に諜報員たちは部屋へと入っていく。あぁ、そうだった。最悪の状況はどんどんと悪化していく…交渉も統率もどんどんと悪くなってしまう。それでも…
「それでもやるしかないんだ」
落下の感覚で気を戻す。あの後こちら側で動ける策を練ろうとしたが、結局何もしないのが一番だということが改めて分かった。しかし、久しぶりに作業中に寝落ちたものだ。少し前までこれが当たり前のような生活をしていたような…まぁ、その頃の記憶が無いから不安になるような既視感に襲われているのだが。
「はぁ…今どれくらいなんだ?」
体感では徹夜したくらいには時間が経っている。しかし、窓からは助けられた時と同じように煌々と陽が射している。そういえば捕らえられていた時に日の出は見たが、日没は見たことがなかったな。最もあの時は窓なんてものが無かったから掘っ立て小屋の木漏れ日で把握していただけだが。
「大変だ、ボス!」
「どうしました?」
「怠惰帝の使者が…」
「失礼する、私は伝介…代表者からの言葉と案内を任された者だ」
やけに冷静だ。敵対心剥き出しの彼しか知らない僕だが、これほどまでに心を落ち着かせて話せるように出来るのか。彼は一体何をした?全面戦争なんていう最悪の事態は免れたのだろうか?
「代表者は対話をご所望だ、席は用意してある…来てもらおう」
「罠に違いない」
「…どう思ってもらっても構わない、決めるのはあんただ、強欲帝の使者」
「分かりました、案内してください」
「ボス!」
「彼の変わりようを見れば分かるだろう?」
「仮に民衆を説得して交渉の席を整えられるカリスマ性があったとして…それを罠に使った方が合理的に動けるじゃないか?」
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「……分かった」
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「準備はいいか?……よし、では行くとしようか」
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