モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。

霜月零

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フラグは安全とは限らないのね(3)

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「あ、あのっ、クリスさまっ」
「どうしたの、ミュリエル? どこか、痛い?」

 ミュリエルが、とても辛そうな表情で私を見上げている。
 まさか、殴られたりはしていないわよね?

 私はキッとコスイを睨みつける。
「ひっ!」とコスイは涙目で後ずさった。
 
「ち、違います。えぇっと、彼、案内してくれようとしていただけなんです。わたし、迷ってしまっていて……」
「ミュリエル、貴方……」

 まさか、こんな奴庇ってる?!
 唖然とする私の横に、一歩進み出るミュリエル。

「ね? コスイさん、案内してくれた、だけ、ですよね?」

 ミュリエルの言葉に、必死に首を縦に振るコスイ。
 いや、あんた、間違いなくミュリエルを襲っていたわよね?!
 
「ミュリエル、貴方、解っていて? わたくしが来なかったら、どうなっていたと思うの」

 お嫁にいかれないような事になる事態だったのよ?
 夜会で貴族の令嬢が貴族の子息に……なんてことだって普通にある世界だ。
 ゲームではそんな描写はなかったけれど、それはきっとR指定がなかったからだと思う。
 平民や下級貴族は、表に出ないだけで、泣き寝入りしていることだってあるはず。
 それなのに、学園で起こるとは思っていなかった私の頭がお花畑だったことは認める。
 油断した私にも非はある。
 でも、こんな男、そのままにしておきたくない。

「で、でも! クリスさまは来てくださいました。わたし、なんともないです。
 コスイさんだって、きっと、そんなつもりなかったですよね? 
 案内してくれようと、していましたもん。
 だから、だから……」

 涙目で、不安そうに私を見上げるミュリエル。
 あぁ、解っているのね。
 私がお父様に言うってことの意味が。
 退学や廃嫡になったら、コスイの未来は無いものね。
 私はそうしてやりたいと思っているけれど、これ、実行したらミュリエルが気に止んでしまうわね。

「コスイ」
「は、はいっ!」
 
 バネのように飛び跳ねて、ビシッと直立不動するコスイ。

「ミュリエルを案内してくれていた、というのは本当かしら」
「は、はいっ、ご案内していました」
「そう。ならわたくしの早とちりだったようね。親友を案内していただいたことに、お礼を申し上げますわ」
「い、いえ、そんな……」
「ですが。もし、万が一、ミュリエルが泣くような事態があったらその時は……わかっていますわね?」
 
 逃げれると、安堵したコスイの首に、扇子をピシリと当てる。
 きっちり、釘を刺しておかないとね?

「は、はいっ! ミュリエル様を誠心誠意、絶対に泣く事が無いように勤めさせていただきます!!!」
「それを聞いて安心しましたわ。わたくし達、これから入学式ですの。そろそろお時間ですから、失礼しますわね」

 ニコリ。
 目を細めて微笑むと、コスイは震え上がって走り去った。
 
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