モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。

霜月零

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一緒にご飯? 遠慮なく辞退いたしますわ(3)

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 びしっ!
 ロイスの隣に立つ攻略対象ビター=ブラウニーに扇子を突きつける。
 
「はいっ?!」
「貴方、今までどこにいらしたの」
「え、えっと、どこにって、さっきまでは校舎にいたんだけど?」
「そういう事を言っているわけではございませんわ。毎日学食に来ないで昼食をどこで取っていらしたというの」
「そりゃもちろん、サロンのほうだろ」
「ロイス様には聞いていませんのよ。わたくしはビターに聞いていますの。貴方はここの学食で昼食を美味しく食べるのではなくて?」
「いや、俺がサロンのほうへ誘ったんだ。ここの学食に入りずらそうにしていたから」
「入り辛い? 何故ですの。ここはこんなにも開放的で食事もとても美味しいでしょう」

 貴族のみが入れるサロンに比べればランクは少し落ちるかもしれない。
 でも由緒正しきティアレット王立学園なのだから、柱の細かな彫刻や周囲に飾られた絵画、重厚なマホガニーのテーブル。
 どれをとっても、準男爵の子息が入るのを躊躇うような造りではないはず。
 侯爵令嬢の私だって十分満足できるのだから。

 首を傾げる私に、ビターは「あー」とか「うー……」とか、いかにも困っていますといった態で視線を宙に彷徨わす。
 一体、なんなのか。
 
「そう、責めてやるなよ。侯爵令嬢が居座っている学食に気軽に入れる貴族は早々いないだろう?」

 ロイスが本当に、しみじみと言う。

 え。
 それって。
 あの。
 その。
 ……。
 …………。
 ……………………。
 フラグが立たなかったのは、またしても私が原因かーーーーーーーーーーーーー?!

 ばっと周囲を振り向くと、平民出身の学生達がさっと視線を逸らした。 
 あぁ、これ、窓際の席が空いていたのも、私が侯爵令嬢だからだぁ……っ。

「おい、大丈夫か?」

 軽い眩暈に襲われてふらついた私の手を、ロイスが掴んだ。

「だ、大丈夫ですわっ。ちょっと、立ち眩みがしただけですから」

 支えてもらったけれど、私はさっと手を振りほどく。

 ……ミュリエル、そんな頬を染めて私達を見ないで。
 そんなんじゃありませんからね?

「あっ、シフォンケーキ! こっちの学食でもデザートがあるんだねっ」

 ビターが、ミュリエルのトレーにちょこんと乗っているシフォンケーキに目を輝かせる。
 
「はい、とっても美味しいんですよ。あ、でも……」
「でも?」
「シフォンケーキはこれが最後の一つなんです!」
「うわっ、ほんと? ショックだぁ……」
「大丈夫です、わたしの分を差し上げますから」
「わっ、それほんと? 名前なんていうの?」
「ミュリエルです」
「ミュリエルちゃんかぁ。僕はビター。ビター=ブラウニー。甘いものが大好きなんだ。よろしくね!」
「よろしくですっ」

 トレーをテーブルに置いて、ミュリエルとビターが握手を交わす。
 あぁ、イベントとちょっと違う展開だけれど、フラグはこれで回収できたかしら。
 正解の選択肢を選んだ時と同じ状況になった事にほっと息をつきつつ。

 ロイス。
 貴方は何で私の木苺のタルトを奪ってるんですかね?

「まぁ、俺とクリスの仲でしょ」

 どんな仲なのか。
 
「えいっ!」
「うぉっ?!」

 ロイスが持っていた木苺のタルトをパキッと半分折って奪い取った。
 侯爵令嬢にあるまじき?
 大丈夫、この学園では身分は皆平等です。
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