モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。

霜月零

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お姉様のフラグも回収しないといけません(2)

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 翌日。
 お姉様に言った通り、私はミュリエルと、ミュリエルの側にいたビターを誘って、四人で王都の菓子店に向かっている。
 街路樹が規則正しく並ぶ石畳を軽やかに歩くミュリエルは、学園を出るときからご機嫌だった。

「クリスさま、王都の菓子店は、マカロンもありますか?」
「もちろんよミュリエル。この間のお茶会のような、色取り取りのマカロンがあると思うわ」
「うわぁ、すっごく楽しみです!」
「ミュリエルはマカロンが好きだったのか。シフォンケーキが好きなわけじゃなかったんだな~」
「ビターさん、わたしはシフォンケーキも大好きです! 甘くて柔らかくて、幸せですよねっ」
「あの独特のやわらかさはすてがたいよな~。マカロンは中に挟まれた生クリームが味を左右するんだよ。
 甘すぎずくどくない食感は最高だ」
「ね~♪」

 ミュリエルとビターは、これから食べれるはずのお菓子に、ハイタッチまでして笑顔満面。
 でも私は、お姉様が気になって仕方がない。
 お姉様、さっきからずっと無言なの。
 怒っているわけじゃない。
 お姉様は、ミュリエルを可愛いと思っているし、明るいビターの事も嫌ってはいない。
 だから二人がいる事は無関係だと思う。
 でもそうすると、何故こんなにも憂鬱そうなのかがわからない。
 ちなみにお姉様は常に無表情だから、ミュリエルとビターにはお姉様の憂鬱さが伝わっていないのが救い。

「お姉様、もしかして、体調を崩されました?」

 こそっと、お姉様の耳元に声をかける。

「いいえ。ただ……」
「ただ?」
「とても、嫌な予感がするの」

 お姉様は、キュッと扇子を握り締める。
 嫌な予感……変な夢でも見たのかな。

 空は日が落ち始めて、オレンジ色に染まり始めている。
 学園から近かったから、歩いてきてしまったけれど。
 馬車のほうが良かったかしら。

 王都の菓子店はもうすぐそこだ。
 鍛鉄製の看板が、店の二階から道に向かって掲げられているのが見える。
 店の名前が飾り文字で周囲を彩り、中央にショートケーキが描かれている。
 近付くにつれて、甘い香りが漂い始めた。

「良い香りですねっ」
「蜂蜜の甘い香りがするわね。今日は蜂蜜のマドレーヌが焼き立てかもしれないわ」

 バニラエッセンスの香りと共に、蜂蜜の香りがする。
 ここのお店は、定番商品と日替わり商品があるから、毎日来ても飽きないと評判なのよね。

 店に辿りつくと、丁度、私達の後ろから追い越すように一台の馬車が目の前に止まった。
 
「……冗談でしょう」

 お姉様が、小さな声で呟いた。
 私も言いたい。
 冗談でしょう。 
 
 金と見紛うたてがみを持つ二頭の馬に引かれた漆黒の馬車。
 馬車の上部には、細かな装飾と女神の像が飾られている。
 窓の部分には、赤いベルベットのカーテンが引かれていて中は見えない。
 そして見たくないけれど、馬車のドアには、二匹の鷹が向き合う金の紋章。
 これって……。
 
「あらぁ、どうしてこんな所にルシアンティーヌ様がいるのかしらぁ?」

 馬車から使用人にエスコートされて降りてきた少女。
 マリーゴールド=バイエルン公爵令嬢が、挑戦敵な瞳でお姉様を睨んでいた。

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