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第一章 青葉

15 部外者は黙ってな!

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朝学校に着て自分の教室に足を一歩踏み入れた時、僕は少しばかり全身に冷や汗が流れる様な感覚を覚えた。
イヤ、言葉は正確に使わないといけないね。


言い直そう。
僕は全身にバケツで冷や汗をぶっかけられた様な気がした。


「なぁ小晴?お前何で僕の席に座ってんの?」
しかもなんでこいつが南さんとにらみ合ってんの?

「あっ♡新之助おはよう♡…ねぇ、こいつマジでムカつくんだけど、何なの?」
小晴が僕の方にトコトコって効果音でも発生させてそうな足取りで近づいて来て、腰に腕を回す様に抱き着き、僕を盾にしながら南さんを指さして見上げてくるのはどうしたものか。

そして僕と小晴を静かに高みから見下ろす南さん…圧が高くてそう見えているだけかもしれないが。
更にそんな僕と小晴と南さんを静かに取り巻いて囁き合っているオーディエンス達クラスメイト

「フン!ムカついてるのはこっちよ!ちょっと新之助君、いい加減そいつ外に出して来なさいよ!話があるって言っておいたでしょ!」
エーさすがに理不尽すぎん?午前中話しかけるなって、南さん最後のメッセージで言ってきたのに、なんでそういう事になってるの?

「あら~まだ君付けでお呼びなのね~♡フフフフッ♡新之助、こんな生理でイライラしてそうな女は無視して外で話しましょう♡」
「んなっせっ…!?ちょっと新之助!あんたまさかこいつと付き合ってる訳じゃないでしょうね!?って言うかまだ生理も来てなさそうなこんな子供と付き合うなんて捕まるわよ!」

こいつら生理生理連発する様な言い合いは止めてくれないかなぁ。僕男だから居たたまれないんだが。
周りの連中のすっごく楽しそうな目に気付いて無いの?

「新之助、言ってやってよ。もう私と新之助はそこらのお子様とは付き合うレベルが違うって!生死をかけるドキドキモンのすっごい経験をいーっぱいしてきたんだから♡」
「はぁ!?精子をかけっ、すっごい経験…新之助あんたこんな子供に何してんの!?警察呼ばれるわよ!児童福祉法違反で懲役よ!」
「南さんなんか絶対勘違いしてるよ!間違ってるって!僕は無実!冤罪だから!」
「残念でした~私はもう18歳です~大人なの~♪自分の意志で交際も結婚もできるんですぅ~お子様ざまぁ~~♡」
「~~~!!って言うか私の方が新之助の体に詳しいんだから!あんたの体じゃぁ新之助のアレは絶対に入らないわ!?そもそも見た事も無いくせに!何が大人よ!」
「私はもうお姫様抱っこからお前を守ってやるって言葉までもうもらってんの!体の方もすぐにそこらでちょちょっと全部済ませてゴールインしてやるわ!ってそこ!『あの体で大人とか詐欺じゃね?』って今言ったよな!?出てこい!」
騒動を見て楽しんでいたオッパイ星人の3人が、小晴に睨まれて手と顔を勢いよくブンブン振って否定してる。

なんか僕、この2人に二股掛けてるクズって思われてないか?あと周りの連中が『セイシかけるって今…』なんて言ってるのが聞こえるけど、絶対誤字ってるよね!生き死にの方の生死だからね?

って言うかなんで南さんが僕のアレのサイズを知ってんの?

っと、周囲の人たちの視線が、『オモシロー♪楽しい♡もっとやれ♪』って感じから、『こいつマジ女の敵!』『地獄を見せないと気が治まらないクソ野郎!』みたいに変わってきてる気がする。

「2人ともちょっと落ち着いてくれないかな?」
「ひゃっ!新之助ちょっ!そんなとこ素手で握るのはまだダメ~!」
「やぁ~ん♡また新之助にさらわれるぅ~♡」
「だから2人とも変な事言わないでってば!幸之助ナイスタイミング!」
「どわっ!なにごとぉ!?」
僕は右腕で小春を抱え、左腕で南さんの腰を抱き上げてちょうど入ってきた幸之助を突き飛ばして教室から出た。

「ちょっ…あの、重いからその…」
「知らないんだ~新之助はこれぐらいならまったく重たいなんて思わない事~♪」
「君らチョット静かにしててくれって言ったよね?」
僕は教室棟の非常階段の一番上に2人を連れて行く気で担いだまま走って来たら、最上階から上がる辺りにドアの様なモノが増設されていて入れなくなっていた。

「ここは上がれないの。だから昨日あっちに案内したのよ」
南さんがなぜか小晴に勝ち誇った感じに説明してるけど、それは僕に言うべき言葉ではないでしょうか?

「くっ…新之助あんたあの場所にこの女と一緒に行ったの?」
「あの場所ってのが目の前に見えてる所ならまぁ…」
「…運びなさい。私を抱っこしてあそこまで運んで」
なぜか専門教科棟の非常階段の上まで運ばせようとする小晴。

「運んだらいいのか?」
「そう。ちゃんとお姫様抱っこでよ?」
なんか小晴ってお姫様抱っこにこだわるよね?
「ちょっと南さん待ってて。あーそれか、歩いて行ってくれてもいいけどどうする?」
「待ってたら新之助が私を運ぶ気?ここからあの場所まで?」
「あぁ。すぐ戻って来るけどどうする?」
「ふっ…まぁそうね。じゃぁ待ってるわ」
また勝ち誇ってる様な顔の南さんと気に入らなそうな顔の小晴。

マジでどんな意味があるんだろ?

僕は小晴をお姫様抱っこしてそのまま手すりに跳び乗り20mぐらい離れた非常階段の最上階の空間まで跳んだ。
「~~~~!!!」
「小晴、大丈夫か?」
「だっ…ダイジョブゥに決まってるでしょ?コワ…」
小晴を床に下ろして足の感じを確かめたらそこまで痛みを感じない。
昨日少し無茶したおかげで耐久力が上がったのかな?
とりあえずそのまま戻れそうなので、迎えに行くか。

「小晴、少し待っててくれな」
「まぁいいけど。フゥ…」
腰に手を当てて仁王立ちで見上げる小晴に少し面白ろさを感じて笑ったら蹴られた。
「さっさと行ってきなさい!まったく…♡」

「はいよっ♪」
ジャンプして南さんの元に戻ったらすっごく大きな口を開けて南さんが固まっていた。
「乙女がそんな顔して大丈夫なのか?」
僕みたいな奴にそんな顔見せたらそのサイズの何かを毎日口に入れて楽しんでんじゃねぇの?って思われるぞ?

「…今…飛んだ?」
芽瑠が僕と今小晴が立ってる辺りを交互に何度も見て呟く様に聞いてきた。
「跳んだ…まぁ少し?」
「人って飛べるんだ…知らなかった…」
南さんなんかよく分からない事を言ってるなぁ…

とりあえず運ぶ為に南さんをお姫様抱っこしたらビクッてなってそのまま全身がカッチコチになった。

「行くよ?」
「ちょちょっ!待って!まだ心の準備が…ヒッヒッフー…ヒッヒッフー…」
これってラマーズ法って言ったか?これで心が落ち着くのか?
陣痛の痛みが少し弱まるって話は何かで聞いた事があったと思うが?

「んっ…痛くしないでね」
南さんって場の空気を和ませる為にラマーズ法使ったり痛くするなとか言ってるのかな?

「任せて。僕はお姫様抱っこに関しては厳しい教育を受けてるプロだから」
「フフッ何それ。そんな教育とか聞いた事無いんだけど?」
「どうも世の中にはそんなウソみたいな教育プログラムがあるらしいよ。僕も昨日初めて知ったけど」
「…じゃぁ運ばれるね。信じてるからね?」
南さんそう言って僕の首に腕を回してすっごく大きなおっぱいを押し付けてくれた♡

あ~♡…この柔らかさは♡…何かの魔法が勝手に駄々洩れてる感じがする~~♡
チョットした快感を感じつつ僕は小晴が待ってる場所に南さんを運んだ。


「とりあえず朝のホームルームまでそんなに時間が無いので、さっそく話をしたいんだけど…小晴?」
南さんを運んで降ろしながら小晴を見たら、昨日使ってたのと違う最新式のスマートフォンを使ってどこかに連絡を取ってるみたい…?
「保険の村雨先生に話をつけてるからちょっと待って」
「ソラ先生に…?知り合いなの?」
「知り合いって言うかあの病院に入り浸る為に色々町田に情報でっち上げさせてるからホームルームぐらいなら抜けられる様に話をつける事ぐらいは出来るの…これでいいわ。1時間目が始まるまで1時間ぐらいかな?」
「なぁ南さん、小晴ってなんかヤバイ感じだけど…ナニ?」
「芽瑠って呼んでって昨日言ったのに…」
涙を浮かべて口を少し尖らせて僕の袖口を掴む南さん…

たぶんだけど、このパフォーマンスは僕に宛てたものじゃなくて、小晴をターゲットにして行われている。
南さん僕を見てるけど意識が完全に小晴に向いてるもん。

「ハァ…オーケー芽瑠。今日からお前は芽瑠って呼ぶからもう文句言うなよ。いいな?」
「…うん♡」

呼び捨てにされてなんだかうれしい♡みたいな姿を見せてる南さんだけど、それを見せてる相手は小晴なんだよなぁ。小晴に自分の顔が見えない角度に位置調整して、僕に見えてるのに全くそれを気にせずゲス顔を晒してる芽瑠を見たらそうとしか思えない。


僕なんだか女の子の事が少し怖くなってきたよ…


とりあえずガルルルrキャン!キャン!レベルの威嚇が行われていた二人をそっと離して階段の踊り場と階段途中とその間に3人落ち着き、話が始まった。

「それで?僕が教室に入った時、なんで2人があんなににらみ合ってたの?」
「聞いてよ!こいつ私が教室に来たら新之助の席に座ってたのよ!」
「こいつが汚い尻でそこに座るなとか言ってきたのが原因よ!」
「その前にあんたが『私の新之助の席に座って何が悪いの?』とか嘘言うからでしょ!」
「嘘じゃないし!っていうかあんた新之助の何なのよ!」
「何…トモダチ…だけど…」
「ふっ…トモダチね~そ~なんだ~へ~♪」
「マジムカツク!あぁ!?やんのか!?」
「あぁ!?やってやんよぉ!?」
「ちょっと待ってってば!」
「ひゃぁ~ん♡おっぱいそんなに強く掴んじゃダメェ~♡あら?無い人は恥ずかしくなくって羨ましいわ~新之助のエッチ♡」
「グギギガゲゴグキャ…」
「芽瑠も小晴も落ち着けって言っただろ!」

こいつらなんでここまで好戦的なんだ?
まさか前世で天敵だったりするのか?

「って言うか芽瑠!?おっぱいは揉んでないだろ?少し押しただけじゃないか!変な事言わないで!!」
「…まぁ新之助が私のおっぱい押しただけっていうならそう思っててもいいんだけどね?」
だから勝ち誇った顔すんなってば。
「新之助…あんたお尻揉みたいって言ってたよね?触る?」
「だから小晴も落ちつけ」

小晴が僕に近づいて来て、階段に座ってる僕の太ももに座って、僕の片手を自分のお尻に押し当てる様に引っ張ってくれた♡

「残念でした~新之助はオッパイ星人なんですぅ~さっき押し付けたらお尻にアレを押し付けてきたから間違いないんですぅ~♡」
「えっ!?ウソ!」
「ウソジャアリマセ~ン♡もう私の体は新之助の性処理に使われる関係になってるんで~す♡」
それ誇って言ってイイ事なのか?

って…そう言えば芽瑠の体を押し付けられた時に魔法が発動した感じがあったけど…まさか…
僕の体には特にそんな興奮した感じはないけど…

とりあえず芽瑠の顔をじっと見てみると、すごく上気した感じになってる様に見える。最初抱っこして跳んだ事で驚いて興奮した事で赤い顔してるのかと思ったけど…これもしかしたら、精力活性化スキルの効果が芽瑠に移ってる?
って言うかさっきから小晴も僕の手を自分のお尻に押し当てて揉ませるような事をずっとしてるけど…


今まで使える様になった魔法って全部人にも伝えられたもんね。だから精力活性化スキルも他の魔法と一緒で移るんだ。
これってうまくやればテロとか個人攻撃に使えちゃうんじゃないか?


近づいて来て新之助の顔を抱いておっぱいを押し付けはじめた芽瑠と、新之助の股間にお尻を移動させてむにゅんむにゅん押し付け始めた小晴が正気に戻るまで、少しの間楽しい時間を過ごした新之助だった。

「とっても気持ちイイ事をしてもらえて僕はとっても嬉しかったよ。ねっ芽瑠?小晴?」
「あっハイ…」「んっ…ソレナラヨカッタワ…」
立ってる僕の前に並んで階段の段差に座って火を吹きそうな顔で下を向いてる二人。

「まさか芽瑠が生のおっぱいを顔に押し付けてくれるとか思っても無かったよ。ありがとう」
「えっと…喜んでもらえて…オネガイダカラ…イッソ…コロシテ…」
顔を両手で押さえて頭から湯気を昇らせてる芽瑠。

「そして僕の股間のファスナーを開けて自らパンツまで脱いでこすりこすりしてくれた小晴もとっても気持ち良かったよ。ありがとう」
「ワカゲノイタリッテコトデ、ナガシテモラエタラウレシイデス…」
小晴も顔を両手で隠して頭から湯気を噴き出してる。

なんとなくだけど、魔法が発動した時に僕の首の辺りに両手が当たってた芽瑠に勢いよく精力活性化スキルの効果が移ったみたい。だって僕の体に興奮した感じがまったく残ってなかったから。
だとすれば、小晴にスキルの効果があんなに出た理由が分からない。

今日の2人に関しては魔法に関わる何かっていうのは今さっき勝手に発動した精力活性化スキル1回が関係してるぐらいで他には…いや、自己暗示スキルがもしかしたら伝わってるかもしれないか。

自己暗示スキル…リミットを外す効果だよな。もしかして2人が好戦的になったのってその効果か?
このスキルは長時間効果が続く感じだから、昨日も今日も連発した訳じゃない。今日は2人を担いで一回使っただけだ。
芽瑠は…そうか、腰を抱いてるあいだ手がわき腹辺りの肌にずっと当たってたな。小晴も担いでる間腹を手の平で支えてたから…

なるほど。好戦的になってたのと性的にノリノリだったのって二つの効果が混ざってたからなのかもしれないな。

でもじゃぁなぜ小晴には、精力活性化スキルの効果があんなに大きく出たのかって話だが…
芽瑠と小晴の違いって魔法関係だけで言うなら、小晴だけ回復魔法をなんども浴びてるって事ぐらいだと思うんだけど、魔法って効果が強く出る様になる何かがあるのかな?

プラシーボ効果みたいな。

もしかしたらだけど、魔法の効果って何度も使ってると効果が強く出る様になったりするなら…それならば、うっすら残ってた精力活性化スキルの効果だけで小晴があれだけ興奮したのも一応説明が付く気がするけど…

まぁいっか。そこらが詳しく分かった所で、これ以降二人にそう何度も魔法を使う事も無いはずだし。
今回の事は残ってた魔法の効果が小晴に強く出やすくなる何かのロジックがあったってことでいいだろ。

「そう言えば…もう1時間目が始まってる頃だけど、2人ともどうする?僕と芽瑠は今から教室に入ったら次の休憩時間辺りですごい質問攻めにあいそうだから、出来れば別々に入るか、僕はこのままバックレるかしたい所なんだけど」
「…さすがに今は教室には入りたくないなぁ」
芽瑠も僕と同じ考えの様だ。
「小晴はどうする?」
「…そうね。なんならみんなで保健室で昼まで休む?村雨先生には話してあげてもいいわよ?」
保健室かぁ…

「なぁに?保健室に何か嫌な思い出でもあるの?」
小晴が僕の顔を見て聞いてきたが…言えないよなぁ…あの幸之助と一緒に実験された事とか…
「あまり保健室って行く必要が無かったからちょっとね」
「私もそんなに行った事は無いけど、昼ぐらいまで教室に行かなくていいなら助かるな」

とりあえず多数決で保健室に行って昼まで休むことになった。


ハァ…
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