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No.1
03 漂流する教室ってのは漫画で見た事があるが、貨物タンカーが漂流ってどうよ
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俺の乗っている船の名称は『大黒丸』船の種類はいわゆる『コンテナ船』と呼ばれるもので、船倉を幾つかに区切ってあり、液体、バラ荷、コンテナなどを収納できる分載型と呼ばれるタイプ。サイズ的には4500TEUという規格になるらしい。なんかでっかいコンテナ4500個ぐらい積めるらしいぞ。
寸法的には長さ200m幅が30mぐらいで積載重量が5万トンぐらい。エンジン出力1万2千馬力ぐらいって言ってたか。
そして、そこそこお婆ちゃんなこのコンテナ船は来年か再来年あたりで一回環境関連の改修作業が入るって言ってたけど…
「こんな意味不明な世界で改修作業とか必要ないよなぁ…」
俺の視界にはさっきからずっと空に浮かんでいるクラゲというか傘というかキノコと言うか・・・なんかそんな何かが漂っている。大きさはなんとなく傘の広さが直径1mぐらいあってキノコの軸の部分が50cmぐらい。数はざっと数千匹。千とか二千なんて数じゃない。もっと多い方の数千って感じで遥か彼方までそこそこの密度でふわふわしてる。
もしかしたら反対の窓を見たらそんな何かが同じぐらい居るのかもしれないが、怖くて見られない。
「こいつらってなんで浮けるんだ?」
現実世界では重力の発生原理は未解明で引力の発生原理もほとんど解明されていない。
地球の重力が平均で9.8m/s²ぐらいってのはいろんな国で確認されているのでそうなんだろうが、ここは違うのだろうか?もしそうなら俺も飛べる気がする。
ちょっとジャンプしてみたけど特に変わった感じはなさそう。
「じゃああいつらはどうやって浮いてるのか…気合いか?それか落ちるって事を知らないから浮けているなんてクマンバチ理論じゃないよな?」
とりあえず俺は船倉の待機室から持ってきたショットガンと弾が入った箱をテーブルに置いて先輩船員達が扱っていたのを見た記憶を元に一個ずつ弾を込めていつでも撃てる様に準備をした。
ポンプアクション型のショットガンって言ってたが種類まではよく分からない。左手で持った部分を引いて次の弾を装填するとかなんとか聞いた覚えがある。
「とりあえずなんかよく分からん浮いてる連中は船の中には入って来ないみたいだが…」
窓越しに見ている甲板に何かよく分からない生物が居る。
「あいつは入ってきそうな気がするんだよなぁ…」
大きさは俺より少し大きそうで、なんならジョーさんとかのガタイの良い船員と似たサイズ。少し猫背になった姿で頭のてっぺんまで2m弱ぐらいで重さは…なんとなくだけど150kgぐらいありそう。肌の色が黒っぽい茶色で目が2個鼻らしき部分もあり口がそこそこ大きく開きそうな感じに見える。ちょっと距離があるので細かい所までは見えないが、爪が長かったりする様な見た目に攻撃力の高そうな部位は見当たらない。
「あれはこの辺りに生息する生物なのか?」
コンテナに片手を当てながらゆっくり歩く姿は少しばかり不気味に感じる。
2足歩行ってだけでなんとなく人っぽいんだよなぁ…とりあえず人型の奴はやるのに躊躇しそうなのでできれば入って来ないで欲しいけど…そんな事を考えていたら厨房のカウンターの奥の方から音がした。
そういえばあいつが一匹だけとは限らない。って言うか他の連中はどこにいるんだ?
一応自分の部屋と船倉の待機室の間にある個人の部屋はざっと見たが、誰も居なかった。それと船長室とか機関室辺りもざっと見て回ったが誰も見つけられなかった。
俺は何がおきているのかさっぱり分からなかったので、とりあえず狭い自室にいるよりも、船に乗っている間一番長く居る食堂に移動してきて、ここでまんじりとも出来ずに窓から漏れる虹色の光を横目に震えていたんだが。
眠れなかった間にスマートフォンが繋がるか確認したが、Wi-Fiもデジタル回線も何も届いてなかった。
足音をさせない様に気を付けながらショットガンを構えてゆっくり音のした方に近づいて行くとどうも厨房の談話室(ほぼおやっさんの私室)の辺りに何かがいる様な音がする。
ドアの覗き窓からそっと中を見ると、ここにはさっき外を歩いていた人型の生物の上半身だけが居た。
下半身はどこかに置いて来たのだろうか?
特に体液をまき散らす様な感じは無く、人で言う腹の辺りからピンク色の肉が脈打つような感じに見えている。
こいつおやっさんの部屋を勝手に漁ってやがるな。
下半身の無い体でソファーによじ登りながら何か探している感じだが…あっ、こっち見た。
急いで覗き窓から距離を取ったがバッチリ目が合った気がする。
やばい…何かから落ちた何かの音とかイスを押しのけて倒れた様な音が段々と近付いてくる。
…やるしかないのか?見た目に気持ち悪いからできれば近づかれる前に撃ち殺したいが…
ドアから少し距離を取りショットガンを構えてドアを注視しているとドアノブが押し下げられる様に動きドアが少し開いた。
顔怖っ!初めて正面から見たその生物は禿げ頭にギョロッとした目が見開き、口を大きく開けて何か音を漏らしつつ、よだれか何かも漏らしつつ這って近づいてくる。
俺はその生物を見ると本能的恐怖感が湧き上がってきてしまい思わずショットガンを全弾ぶっ放した。
…一応弾丸が当たるとその生物は、頭とか腕とか胴体部分も見知った動物の体と同じ様に破壊されて動きを止めた。
「血液の色も赤いんだ」
とりあえず何が原因か分からないが恐怖心を覚える生物に関しては銃で倒せることが分かったのはありがたい。
近づいてさっきまでピクピク痙攣していた体をそっと靴先でツンツンするが反応はない。恐らく死んだ。
顔はショットガンの弾を3発ぐらい撃ち込んだのでグチャグチャだが、体の方はそれなりにキレイなまま。
「けっこう筋肉質な感じだけど…でもこいつらって本当にどこから湧いて出たんだ?まさか荷物の中から出てきたのか?そう言えばジョーさんがイレギュラーな荷物がどうとかって言ってたが…」
俺は厨房の近くに汚れた状態を放置して何度も説教を食らった覚えがある為、とりあえず死んだ生物の体を厨房で使っている台車に乗せて、ゴミ捨て場に運ぶ事にした。
船のゴミ処理事情もそこらの街とそう変わらず、何なら寄港する街の条例なんかによってはかなりめんどくさい事もある為一応資源ごみなどはある程度分別する必要があるが、生モノに関しては処理する機械があるのでそれに入れてボタン押すだけ。
かなり大きな肉塊なので一回で処理できるか不安になりつつ分割して処理するならどこを切り取る必要があるのかなんてのを考えつつドアを出てゴミ処理エリアに向かうと空を飛んでいたキノコかクラゲかよく分からない生物がフワフワと近付いてきた。
「コッワッ!窓の中から見てる時はまったく近づいてこなかったのになんで急に!?」
台車を放置してさっき出てきたドアに走って戻り、ドアを閉めて背を預けて荒い息を吐く。
「ハァハァ…」
そっと丸窓から外を見ると、運んでいた死体にキノコかクラゲ…動くならクラゲでいいか。そいつがすごい数集っていた。
「このクラゲって死んだ生物に寄ってきた?でもさっき生きてる似た様な奴には全く反応してなかった気がするが…」
仮称クラゲは触手を伸ばして死体にそれを突き刺し、何かを吸い上げる様な感じにして全部食い尽くして、またそこら辺にフワフワと漂い始めた。なんとなく等間隔に距離を取って一定範囲に同じ程度の数になる様に動いているかんじがする。
とりあえず台車を回収する為にそっとドアを開けて外に出るが仮称クラゲは俺には反応しない。
ドキドキしつつ壁沿いに移動して台車に近づくと、骨と皮だけになった死体が台車に乗っていた。
「体液なんかを吸ったのか?」
仮称クラゲを見るが、肉に集っていた奴とそうじゃない奴の違いが全く分からない。窓越しには気づかなかったが、傘の部分は少し透けて見えていた。
とりあえず俺は骨の表面に皮が張り付いた死体をゴミ処理エリアに持って行って、一回の作業で処理できてほっとして食堂に戻る。
少しの間掃除をしてなんとなくいつもの仕事をした感じで落ち着いてきた俺は少し眠気に誘われてしまい、気づいたら食堂のテーブルに突っ伏して寝ていたらしい。
まどろむ意識の中に強い警鐘が鳴り響いた。
…何かが近づいてくる気配。
俺は机に突っ伏したまま右腕に触れているショットガンをそっと握り、聞こえてきた足音に意識を向ける。
…あの生物では無さそうな気がする。一匹は下半身が無かったが、外を歩いていた奴の足は人のそれらしき形で何も履いてなかった。他の奴もそうか分からないが、今近づいてくる足音は足に合わないサイズの安いサンダルか何かを履いている様な音が聞こえる。
そこまで思考が進んだ状態でやっと意識がはっきりした俺は勢いよく立ち上がり、ショットガンを足音のする方に向けて…固まった。
「お前…誰?」
「はあぁあっ!ちょっとまって!!撃たないで!!!」
今俺の目の前3mぐらいの所に両手を限界まで上げて何なら足をつま先立ちにした小さな少女が居た。
あれっ?今この子…口の動きが聞こえた声と違っていなかったか?
「昨日から誰もご飯持って来てくれなかったから…おなかがすいて…」
小さな声でしゃべる少女の体からそこそこ大きな音でおなかが減ったサインが聞こえた。
そして顔を真っ赤にする少女。
「なぁもしかしてお前がジョーさんの言ってたこのあいだ乗せた荷物の中身なのか?」
俺の作った海鮮丼を口いっぱいに詰め込みながらうなずく少女。
あーあー…あんなに一気に口の中に入れるから喉を詰まらせてるし…
必死な顔で口に海鮮丼を詰め込んでいた少女の動きがいきなり止まり急にテーブルの上を手でバタバタ叩きながら俺を凝視したのでウォーターサーバーから水を注いで出してやると土気色の顔でそれを一気に飲み干し大きく息を吐く少女。
「気づいたら箱に入れられていて1日に2回ご飯を持って来てくれる人が居たの。たぶん…10日ぐらいあの中に居たと思うんだけど…ここってどこなの?」
うん。たぶんこの少女は英語らしき言葉をしゃべっている様な気がする。顔立ちは北欧系とアジア系のハーフって感じで体のサイズ的にティーンになったばかりって感じだろうか。
「ここがどこなのか俺も知ってる奴に聞きたいと常々思っていたんだが、お前が色々知ってて俺に教えてくれるキーマンじゃなねぇの?」
「入れ物に入れられてたあたしが何で知ってると思ったの?バカなの?」
海鮮丼を口に含みながら米粒を飛ばしながら悪態をつくこの少女は何も知らない様だ。
「まぁいい。それ食ったら自分の部屋にでも戻ってろ」
「へっ?」
少女は保護されるとでも思っていたのか知らんが、意外な事を言われた人がしそうな顔で俺を見た。
「あのなぁ、俺もここがどこかなんて分からねぇの。なんで浮いてるクラゲなんてのが居る場所に迷い込んだのか全く分からなくて困惑してんの。それに禿げたなんか妙なのがそこらを徘徊してるし船は止まってるし、もういっぱいいっぱいでお前を保護する余裕なんて無いの。分かったら行け」
俺は少女の食べ終わった器を回収して洗い場に移動する。
水は出る。船の電源は動いている様だ。電灯などは普通に点いた。他にも調理用の蒸気式調理器も普通に動いていたので主エンジンはどんな状態か分からんが、サブの電力ジェネレーター用エンジンの方は動いていると思うのだが…
「…なぁ、帰れよ。そこに居られても俺は何もできないんだから」
洗い終わった器を乾燥機に入れてタイマーをかけ、振り返ったらまだ少女がテーブルの所で俺を見ていた。
「でも…ご飯無いから…」
メシねぇ…
こんな13歳ぐらいの少女と同居とか困るんだがなぁ…
俺は少しの間どうしたものか考えながら少女と見つめ合っていた。
寸法的には長さ200m幅が30mぐらいで積載重量が5万トンぐらい。エンジン出力1万2千馬力ぐらいって言ってたか。
そして、そこそこお婆ちゃんなこのコンテナ船は来年か再来年あたりで一回環境関連の改修作業が入るって言ってたけど…
「こんな意味不明な世界で改修作業とか必要ないよなぁ…」
俺の視界にはさっきからずっと空に浮かんでいるクラゲというか傘というかキノコと言うか・・・なんかそんな何かが漂っている。大きさはなんとなく傘の広さが直径1mぐらいあってキノコの軸の部分が50cmぐらい。数はざっと数千匹。千とか二千なんて数じゃない。もっと多い方の数千って感じで遥か彼方までそこそこの密度でふわふわしてる。
もしかしたら反対の窓を見たらそんな何かが同じぐらい居るのかもしれないが、怖くて見られない。
「こいつらってなんで浮けるんだ?」
現実世界では重力の発生原理は未解明で引力の発生原理もほとんど解明されていない。
地球の重力が平均で9.8m/s²ぐらいってのはいろんな国で確認されているのでそうなんだろうが、ここは違うのだろうか?もしそうなら俺も飛べる気がする。
ちょっとジャンプしてみたけど特に変わった感じはなさそう。
「じゃああいつらはどうやって浮いてるのか…気合いか?それか落ちるって事を知らないから浮けているなんてクマンバチ理論じゃないよな?」
とりあえず俺は船倉の待機室から持ってきたショットガンと弾が入った箱をテーブルに置いて先輩船員達が扱っていたのを見た記憶を元に一個ずつ弾を込めていつでも撃てる様に準備をした。
ポンプアクション型のショットガンって言ってたが種類まではよく分からない。左手で持った部分を引いて次の弾を装填するとかなんとか聞いた覚えがある。
「とりあえずなんかよく分からん浮いてる連中は船の中には入って来ないみたいだが…」
窓越しに見ている甲板に何かよく分からない生物が居る。
「あいつは入ってきそうな気がするんだよなぁ…」
大きさは俺より少し大きそうで、なんならジョーさんとかのガタイの良い船員と似たサイズ。少し猫背になった姿で頭のてっぺんまで2m弱ぐらいで重さは…なんとなくだけど150kgぐらいありそう。肌の色が黒っぽい茶色で目が2個鼻らしき部分もあり口がそこそこ大きく開きそうな感じに見える。ちょっと距離があるので細かい所までは見えないが、爪が長かったりする様な見た目に攻撃力の高そうな部位は見当たらない。
「あれはこの辺りに生息する生物なのか?」
コンテナに片手を当てながらゆっくり歩く姿は少しばかり不気味に感じる。
2足歩行ってだけでなんとなく人っぽいんだよなぁ…とりあえず人型の奴はやるのに躊躇しそうなのでできれば入って来ないで欲しいけど…そんな事を考えていたら厨房のカウンターの奥の方から音がした。
そういえばあいつが一匹だけとは限らない。って言うか他の連中はどこにいるんだ?
一応自分の部屋と船倉の待機室の間にある個人の部屋はざっと見たが、誰も居なかった。それと船長室とか機関室辺りもざっと見て回ったが誰も見つけられなかった。
俺は何がおきているのかさっぱり分からなかったので、とりあえず狭い自室にいるよりも、船に乗っている間一番長く居る食堂に移動してきて、ここでまんじりとも出来ずに窓から漏れる虹色の光を横目に震えていたんだが。
眠れなかった間にスマートフォンが繋がるか確認したが、Wi-Fiもデジタル回線も何も届いてなかった。
足音をさせない様に気を付けながらショットガンを構えてゆっくり音のした方に近づいて行くとどうも厨房の談話室(ほぼおやっさんの私室)の辺りに何かがいる様な音がする。
ドアの覗き窓からそっと中を見ると、ここにはさっき外を歩いていた人型の生物の上半身だけが居た。
下半身はどこかに置いて来たのだろうか?
特に体液をまき散らす様な感じは無く、人で言う腹の辺りからピンク色の肉が脈打つような感じに見えている。
こいつおやっさんの部屋を勝手に漁ってやがるな。
下半身の無い体でソファーによじ登りながら何か探している感じだが…あっ、こっち見た。
急いで覗き窓から距離を取ったがバッチリ目が合った気がする。
やばい…何かから落ちた何かの音とかイスを押しのけて倒れた様な音が段々と近付いてくる。
…やるしかないのか?見た目に気持ち悪いからできれば近づかれる前に撃ち殺したいが…
ドアから少し距離を取りショットガンを構えてドアを注視しているとドアノブが押し下げられる様に動きドアが少し開いた。
顔怖っ!初めて正面から見たその生物は禿げ頭にギョロッとした目が見開き、口を大きく開けて何か音を漏らしつつ、よだれか何かも漏らしつつ這って近づいてくる。
俺はその生物を見ると本能的恐怖感が湧き上がってきてしまい思わずショットガンを全弾ぶっ放した。
…一応弾丸が当たるとその生物は、頭とか腕とか胴体部分も見知った動物の体と同じ様に破壊されて動きを止めた。
「血液の色も赤いんだ」
とりあえず何が原因か分からないが恐怖心を覚える生物に関しては銃で倒せることが分かったのはありがたい。
近づいてさっきまでピクピク痙攣していた体をそっと靴先でツンツンするが反応はない。恐らく死んだ。
顔はショットガンの弾を3発ぐらい撃ち込んだのでグチャグチャだが、体の方はそれなりにキレイなまま。
「けっこう筋肉質な感じだけど…でもこいつらって本当にどこから湧いて出たんだ?まさか荷物の中から出てきたのか?そう言えばジョーさんがイレギュラーな荷物がどうとかって言ってたが…」
俺は厨房の近くに汚れた状態を放置して何度も説教を食らった覚えがある為、とりあえず死んだ生物の体を厨房で使っている台車に乗せて、ゴミ捨て場に運ぶ事にした。
船のゴミ処理事情もそこらの街とそう変わらず、何なら寄港する街の条例なんかによってはかなりめんどくさい事もある為一応資源ごみなどはある程度分別する必要があるが、生モノに関しては処理する機械があるのでそれに入れてボタン押すだけ。
かなり大きな肉塊なので一回で処理できるか不安になりつつ分割して処理するならどこを切り取る必要があるのかなんてのを考えつつドアを出てゴミ処理エリアに向かうと空を飛んでいたキノコかクラゲかよく分からない生物がフワフワと近付いてきた。
「コッワッ!窓の中から見てる時はまったく近づいてこなかったのになんで急に!?」
台車を放置してさっき出てきたドアに走って戻り、ドアを閉めて背を預けて荒い息を吐く。
「ハァハァ…」
そっと丸窓から外を見ると、運んでいた死体にキノコかクラゲ…動くならクラゲでいいか。そいつがすごい数集っていた。
「このクラゲって死んだ生物に寄ってきた?でもさっき生きてる似た様な奴には全く反応してなかった気がするが…」
仮称クラゲは触手を伸ばして死体にそれを突き刺し、何かを吸い上げる様な感じにして全部食い尽くして、またそこら辺にフワフワと漂い始めた。なんとなく等間隔に距離を取って一定範囲に同じ程度の数になる様に動いているかんじがする。
とりあえず台車を回収する為にそっとドアを開けて外に出るが仮称クラゲは俺には反応しない。
ドキドキしつつ壁沿いに移動して台車に近づくと、骨と皮だけになった死体が台車に乗っていた。
「体液なんかを吸ったのか?」
仮称クラゲを見るが、肉に集っていた奴とそうじゃない奴の違いが全く分からない。窓越しには気づかなかったが、傘の部分は少し透けて見えていた。
とりあえず俺は骨の表面に皮が張り付いた死体をゴミ処理エリアに持って行って、一回の作業で処理できてほっとして食堂に戻る。
少しの間掃除をしてなんとなくいつもの仕事をした感じで落ち着いてきた俺は少し眠気に誘われてしまい、気づいたら食堂のテーブルに突っ伏して寝ていたらしい。
まどろむ意識の中に強い警鐘が鳴り響いた。
…何かが近づいてくる気配。
俺は机に突っ伏したまま右腕に触れているショットガンをそっと握り、聞こえてきた足音に意識を向ける。
…あの生物では無さそうな気がする。一匹は下半身が無かったが、外を歩いていた奴の足は人のそれらしき形で何も履いてなかった。他の奴もそうか分からないが、今近づいてくる足音は足に合わないサイズの安いサンダルか何かを履いている様な音が聞こえる。
そこまで思考が進んだ状態でやっと意識がはっきりした俺は勢いよく立ち上がり、ショットガンを足音のする方に向けて…固まった。
「お前…誰?」
「はあぁあっ!ちょっとまって!!撃たないで!!!」
今俺の目の前3mぐらいの所に両手を限界まで上げて何なら足をつま先立ちにした小さな少女が居た。
あれっ?今この子…口の動きが聞こえた声と違っていなかったか?
「昨日から誰もご飯持って来てくれなかったから…おなかがすいて…」
小さな声でしゃべる少女の体からそこそこ大きな音でおなかが減ったサインが聞こえた。
そして顔を真っ赤にする少女。
「なぁもしかしてお前がジョーさんの言ってたこのあいだ乗せた荷物の中身なのか?」
俺の作った海鮮丼を口いっぱいに詰め込みながらうなずく少女。
あーあー…あんなに一気に口の中に入れるから喉を詰まらせてるし…
必死な顔で口に海鮮丼を詰め込んでいた少女の動きがいきなり止まり急にテーブルの上を手でバタバタ叩きながら俺を凝視したのでウォーターサーバーから水を注いで出してやると土気色の顔でそれを一気に飲み干し大きく息を吐く少女。
「気づいたら箱に入れられていて1日に2回ご飯を持って来てくれる人が居たの。たぶん…10日ぐらいあの中に居たと思うんだけど…ここってどこなの?」
うん。たぶんこの少女は英語らしき言葉をしゃべっている様な気がする。顔立ちは北欧系とアジア系のハーフって感じで体のサイズ的にティーンになったばかりって感じだろうか。
「ここがどこなのか俺も知ってる奴に聞きたいと常々思っていたんだが、お前が色々知ってて俺に教えてくれるキーマンじゃなねぇの?」
「入れ物に入れられてたあたしが何で知ってると思ったの?バカなの?」
海鮮丼を口に含みながら米粒を飛ばしながら悪態をつくこの少女は何も知らない様だ。
「まぁいい。それ食ったら自分の部屋にでも戻ってろ」
「へっ?」
少女は保護されるとでも思っていたのか知らんが、意外な事を言われた人がしそうな顔で俺を見た。
「あのなぁ、俺もここがどこかなんて分からねぇの。なんで浮いてるクラゲなんてのが居る場所に迷い込んだのか全く分からなくて困惑してんの。それに禿げたなんか妙なのがそこらを徘徊してるし船は止まってるし、もういっぱいいっぱいでお前を保護する余裕なんて無いの。分かったら行け」
俺は少女の食べ終わった器を回収して洗い場に移動する。
水は出る。船の電源は動いている様だ。電灯などは普通に点いた。他にも調理用の蒸気式調理器も普通に動いていたので主エンジンはどんな状態か分からんが、サブの電力ジェネレーター用エンジンの方は動いていると思うのだが…
「…なぁ、帰れよ。そこに居られても俺は何もできないんだから」
洗い終わった器を乾燥機に入れてタイマーをかけ、振り返ったらまだ少女がテーブルの所で俺を見ていた。
「でも…ご飯無いから…」
メシねぇ…
こんな13歳ぐらいの少女と同居とか困るんだがなぁ…
俺は少しの間どうしたものか考えながら少女と見つめ合っていた。
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