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No.1
04 人かしら
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「それで?お前の名前と年は?」
「女に年齢を聞くとか童貞なのかしら?信じられない…ごめんなさい!もう変な事言わないから外に出さないで!!」
俺が少女の体を押して部屋から出そうとしたら、俺の本気度を雰囲気で察した少女が焦った感じに謝ってきた。
「で?」
「で??」
「お前は鳥頭か?聞かれた事に答える気が無いならもう出て行けよ。ここはおやっさんが居ない場合は俺が管理しないといけない場所なの。だからおまえみたいな食べ散らかすしか能の無い奴とか居続けさせられねぇの。分かったら行け」
シッシッって感じにそっぽを向いて手で追い払う様な動作をしたらさすがに我を張っていても意味が無い事に気付いたらしい少女がやっと自己紹介をしてくれた。
「マリア・レーヴェン。今年の6月で14歳になったの」
「どこ出身?ちなみに俺は新堂 将28歳。彼女は二人いるんで悪しからず」
「住んでいたのはポルトガルであたしが小さい頃にウクライナから移住したって母さんが言ってた。っていうかぁ、別にステディな関係の人が居ても居なくても関係無いじゃない。なんで今そんな事を言ったの?」
そう言えば俺はなんで彼女が2人いる事をわざわざ…あぁそうだ。
「この船の船員はみんな彼女が居るかどうかで危険度を確認する習慣があったから一応言っただけだ。お前には関係なかったな。聞き流してくれ」
「危険度?…まぁいいけど」
こんな子供と何を話せばいいんだ?しかも外国の子供とか接点なさ過ぎて困るんだが。
「ねぇこれってあたしにも使えるのって無い?」
俺が苦悩している事を全く気にもしてない感じに俺が抱く様に持っているショットガンをツンツンしながら聞いてきた。
「子供に銃とか持たせられる訳ないだろ?お前バカなのか?」
「だって…さっき守ってくれないみたいな事言ってたから…」
そう言えばそんな事言ったな…でも子供に銃は…銃の所持が可能な国でもほとんどの場合子供に所持する権利はなかった。未開の地や内戦の激しい国などはその限りでもないが、普通に学校に通わせられる国内事情の国であれば子供は保護される対象であり…
俺がこいつを守ってやるしか無いのか。
「武器に関してはさすがにお前に好きにさせるのは危ないから、ここに居ろ。飯も作ってやる」
イスから立ち上がり腰に手を当てて見下ろすと、マリアの顔は花が咲いたような笑顔になった。
「ホント!?」
「待て!ちょっと待て!近い!近い!!」
マリアが飛び掛かる様に抱き着いて来た。
肩を押して引き離そうとするが、マリアが俺の胴体に回した両腕で絶対に離さないって強い意思を感じる強さで抱き付いている。
そして数秒そのままで立ち尽くしていたら小さな嗚咽が聞こえてきた。
こいつもギリギリだったのか。…怖かったんだな。
そういえばこいつが閉じ込められていたコンテナってどこにあったんだ?
っていうかトイレとかどうしてたんだ?飯を食ったら人の体であれば出るモノが溜まる訳で…
今はどうでも良さそうな事をつらつらと考えながら、たまに、こいつマジでペッタンコ、なんて感想を覚えつつマリアが気が済むまで立ち尽くす俺だった。
「少しは落ち着いたか?」
「うん。…スン…ヒック…」
視線が合うと涙が溢れだすマリア。
相当心細かったみたいだな。
「とりあえずお前の荷物をここに運ばないか?もうコンテナに戻れとか言わないから必要なものがあるなら取りに行こう」
食堂の丸椅子に座った俺に正面から抱き着いて脚の上に跨る様に座ってるマリアの背中をポンポン叩きながら声をかけたら少しの間反応が無かった。
「あーえー……そうだ!あのハコには何もなかったから取りに行っても何もないから大丈夫!」
何か必死な感情が見え隠れする顔で俺を見上げながら早口でそんな事を言うマリア。
なんだろう…なんか嘘くさい。
今日さっき初めて会ったばかりの少女ではあるが、なぜか嘘をついているのがよく分かるのはマリアが嘘を吐くのがヘタなのか、聞こえる言葉が彼女のしゃべっている言葉と俺に聞こえる言葉が違っている辺りになにかからくりがあるのか…
「まぁそれならいいが…でも寝る所は何とかしておきたいな。俺の部屋からマットレスぐらいは運んでおくか、それかおやっさんの部屋からソファだけこっちに運ぶか…」
俺の部屋から運ぶならそこそこ距離があり階段を移動する必要がある。重さは10kgあるかないかぐらいで、おやっさんの部屋からソファを運ぶなら距離は20m程度でたぶん重さは50kg以上って所か。
「そう言えばマリアってどこを通ってこの場所にたどり着いたんだ?妙な筋肉質な化け物とか他の何かみたいなの見てない?」
「ココに来るまでの道?…どこを通ったのかよく分からないけど、階段を何度か上がってドアがいっぱいある所の前を通って…ここに着いた?」
聞いた感じの間取りだと船倉の待機室の辺りから俺が通ってここまで来た道によく似た感じだった。
「外に出てないんだな。変な奴も見てないのか?」
「マサルしか見てない。あ、でもご飯を持って来てくれる人とトイレに連れて行ってくれる人は分かる」
イマイチ聞いた事とその答えにズレを感じるけど、翻訳がうまく出来てないのだろうか?
っていうか自動翻訳ってなんだ?ここはファンタジーな世界なのか?
とりあえずマリアが知ってる人の特徴を聞いたらマリアの閉じ込められていたコンテナに関わっていたのがジョーさんとほとんど話したことのないゲーリッヒって奴だと分かった。
なんにしてもマリアが何のためにコンテナで運ばれていたのか気になった俺はマリアを食堂に残してドアをすぐに閉められる様にバリケードを作るよう指示してからジョーさんとゲーリッヒの部屋を見に行く事にした。
「俺が戻って来るまでは確実にこのドアを塞いでおいてくれ。たぶん30分もかからないと思うが武器は一応これを渡しておくから何かあったら自分の身は自分で守るんだぞ」
そう言って厨房から少し刃渡りの長い刺身包丁を持って来てマリアに手渡しておいた。
食堂を出て妙な音がしないか抜き足差し足静かに移動して個人の部屋のある辺りに来た。まずはジョーさんの部屋に行くと鍵が開いていた。
って言うかほとんどの奴の部屋の鍵が開いたままだった。
恐らくだが、誰も鍵をかけられない状態でいなくなったみたいだな。それか部屋の中に居て居なくなった…なんて事はさすがにないか。それだと鍵がかかったままの部屋があっていいはずだ。全部の部屋のカギが開いてるっていう事は、全員が自分の意志で部屋から出て…逃げるためか何かをする為か分からないが、とにかく自分から部屋を出てそのまま鍵をかけに戻ることなく居なくなったって事なんだろう。
何かから逃げる為に部屋を出たのか?ジョーさんの部屋の中を物色してみるが、特に妙な物は無かった。
恐らく昨日腹を下した原因の生ものに関しては自分で処理したんだろう。とりあえずハンドガンが一丁見つかったので一緒に置いてあった弾ごと回収してゲーリッヒの部屋に行く。
ゲーリッヒの部屋には何かの宗教らしき祭壇の様なモノがベッドの頭の上の辺りに棚を作って置いてあり、写真が添えられていた。
「息子か?」
写真にはゲーリッヒが子供を抱いて幸せそうな顔で映っていた。
どこかに預けている子供の為に危険な荷物の世話を引き受けたのかなぁ…中身がマリアだったので人身売買系の仕事だったのか…
俺は2人の部屋でマリアに何か関係ありそうなものを見つける事が出来ずに戻る事になった。
収穫物はジョーさんのハンドガンと弾だけ。でも何も無いよりましだろう。
食堂に戻る前に一回船倉の待機室に行き、マリアが入っていたコンテナがありそうな辺りを少しだけ見て回ったら、扉の開いたままのコンテナが一個だけあった。次の寄港地で降ろす荷物がまとめられている辺りに置いてあった。
恐らく次の寄港地はアメリカの西海岸の辺りだったはず。
…この程度の情報ではマリアを買った奴とか拉致した奴を特定できる訳が無い。
コンテナの側面に大きく丸い紋章の様なものが描いてあり、それ以外にも幾つかのプレートや規格をあらわす文字が描かれているが、俺は厨房の人員として雇われているのでこの辺りの細かいことは分からないが…
「UNITED STATES OF AMERICA WAR OFFICE」と紋章の縁取り部分に書かれている文字だけは何となく意味が分かる。
アメリカの軍関係の紋章。
マリアって軍事機密に関わる奴なのか?
ちなみにマリアが俺をここに来させたくなかった理由は分かった。そりゃぁお花摘みの現場は見られたくないだろう。
俺はコンテナのドアを閉めて臭いが外に漏れない様にしてから食堂に戻った。
食堂に戻った時に少しだけ押し問答があったが、マリアが俺に少しだけ心を許し始めた結果お茶目な一面を見せ始めたのだろうと思いお尻ペンペンを軽く10回ぐらいして許してやった。
マリアの少しはしゃぐ声を聞きつつ俺は特に何かを感じたわけではなかったが、何気なく窓の方に視線を向けたら外に居る奴と目が合ってしまった。
「あっ…」
俺の声と視線に反応してマリアも俺の膝にうつ伏せに寝そべったまま俺の見ている方を見て同じ様な反応をした。
「あっ…」
たぶん俺とマリアにはちょっと鳥っぽい羽根が後ろでバッサバサ動いている人っぽい顔が丸い窓の先に小刻みに上下しているのが見えていると思う。
ちなみにその窓の外は甲板も何も無い完全な海で、高さが大体満載喫水線の辺りまでで20mぐらいある。もちろん足を着けられそうなキャットウォークとか都合の良さそうな配管なんてモノは何も無い。そしてその窓はハメ殺しになっていてそもそも開かない。
「なぁあいつって何かを伝えようとしてる感じだけどマリアわかるか?」
「声が聞こえないから何言ってるのかわからないけど…あのジェスチャーは『今からこの窓をぶち割って突っ込む』って意味かしら?」
「俺には『できればそこに入れてくれ』って言ってる様に見えるが…」
ポルトガルって過激な行動がよく見られる地域だったかな?フーリガンとかが居たのってどこだっけ?
「えーそう?まぁそんな感じもする様な気もしない様な?」
マリアの言ってる事はよく分からないが、窓の外で小刻みに上下している飛んでそうな奴とのコミュニケーションを取ってみることにした。
窓の外の奴に指で指示を出し、歩いて移動するとそいつは理解したらしく俺の行く方向に向かって移動して丸窓から消えた。
食堂の入り口のドアのバリケードを少し動かして少しだけドアを開けるようにしたらどこかから回ってきたらしい羽根を持つ奴が顔を覗かせた。
「やぁ!ここはどこの国なんだい?僕はおなかが減っていてね!何か食べ物を持ってたら少しだけでも良いので恵んでくれないか?」
とても陽気な感じに聞いてきた羽根つき人間だった。でも、こいつも口の動きと聞こえてくる声にずれがある。
「食い物は一応あるが…お前は…なぁマリア、こんな時ってどう聞いたらいいんだ?お前の高レベルファンタジースキルで何とかできない?」
「ファンタジースキルって何?そもそもあたしはニッポンのアニメは好きでよく見てたけど最近の異世界転生モノってなんかあまり好きになれなかったからよく分からないのよね。だからマサルがどうにかしてちょうだい」
俺の背中にぴったりと付いてきたのに何の助けにもならないマリアだった。
「とりあえず何か妙な事をしたらこいつが火を吹くからよく考えて行動しろよ?ちょっと食い物取ってくるから待ってろ」
俺は一応忠告だけしてバリケードはそのままにして厨房に行き、簡単に渡せそうなゼリーのパッケージを一つ持って戻ってきた。
「栄養補助ゼリーだけどお前食えるか?」
「…それ何?食えるのか?」
どうもアルミ蒸着型のレトルトパウチはこの辺りにはなさそうだな。
「あーそうか…じゃぁもう一回待ってろ」
俺は食糧庫に入って脇に置かれたかごに放り込まれていた芽の出たジャガイモと少し日が当たって育成の進んだ玉ねぎと誰かの食べ残しのカッチカチになっている小ぶりの丸パンを持ってきて渡した。
「なんかよく分からんが…この生のこいつらは食えるのか?」
丸パンを食いながら聞き返してきた。
「そっちの手に持ってる小さな芽が出てる奴は俺らなら蒸かして食うけどもう一個の方は皮を剥いて薄く切って水にさらして生でも食えるが、お前の住んでいた所にはそんな植物は無いのか?」
「ふかして食う?それどうやるんだ?焼いたら食えないのか?それに水にさらすとか言われても…海の水でもいいのか?」
羽根つき人間はいきなり右手に持ったジャガイモをじっと見ていきなり火を発生させた。
「なぁマリア、あれって火傷しねぇの?」
「あたしに聞かれても…ニッポン人なら水の中で生活したり火の中でも寝られたりするんじゃないの?」
こいつの頭の中には忍者が現実世界に居るなんて書いてある辞書が存在しているようだ。
火に包まれていたジャガイモから小さく蒸気が噴き出し始め、毒素を含んでいた芽の周囲が真っ黒に焦げ落ちたら火が消えた。
「なんか食えない所がけっこうあったみたいだけど本当にこんなのをお前ら食ってるの?未開の地から出てきたのか?」
周囲をチラチラ見つつそんな事を言う羽根つき人間。
「ねぇ、あんなパンツしか穿いてない様な原住民にあんなこと言わせていいの?ねぇ」
マリアは煽られ耐性低め…と。
「どっちが未開の原住民かなんてどうでもいいだろ。今大切なのは羽根つき人間と俺達が仲良くなれるかどうかなんだぞ」
いきなり何も無い所で火を出せる様な奴とはドアを挟んでいてもちょっと近づきたくないなぁ。
そうだ。
「なぁお前っていつもどんなものを食ってんの?俺らはこんなものをよく食ってるけど」
スマートフォンの画面をタップしてこれまでいろんな国で気になる料理とかを撮っていた写真を表示して見せながら聞いてみると羽根つき人間が驚愕の顔でスマートフォンを凝視した。
「なっ!?えっ?絵?絵が変わるのは…お前遠見の魔法が使えるのか?でもちっちぇぇなぁ…もう少し近くで見せてくれねぇ?」
バリケードで押さえられているドアに顔を押し込む様にしながら手を伸ばしてスマートフォンを取ろうとしたので少し距離を取ったら残念そうな顔になる羽根つき人間。
やっぱり今俺達って魔法が使える様な所にいるんだな。
ちょっとしたワクワク感と焦りに似た感情を覚えつつ、ため息を吐きながらこれからどう交渉したものか考えるマサルだった。
「女に年齢を聞くとか童貞なのかしら?信じられない…ごめんなさい!もう変な事言わないから外に出さないで!!」
俺が少女の体を押して部屋から出そうとしたら、俺の本気度を雰囲気で察した少女が焦った感じに謝ってきた。
「で?」
「で??」
「お前は鳥頭か?聞かれた事に答える気が無いならもう出て行けよ。ここはおやっさんが居ない場合は俺が管理しないといけない場所なの。だからおまえみたいな食べ散らかすしか能の無い奴とか居続けさせられねぇの。分かったら行け」
シッシッって感じにそっぽを向いて手で追い払う様な動作をしたらさすがに我を張っていても意味が無い事に気付いたらしい少女がやっと自己紹介をしてくれた。
「マリア・レーヴェン。今年の6月で14歳になったの」
「どこ出身?ちなみに俺は新堂 将28歳。彼女は二人いるんで悪しからず」
「住んでいたのはポルトガルであたしが小さい頃にウクライナから移住したって母さんが言ってた。っていうかぁ、別にステディな関係の人が居ても居なくても関係無いじゃない。なんで今そんな事を言ったの?」
そう言えば俺はなんで彼女が2人いる事をわざわざ…あぁそうだ。
「この船の船員はみんな彼女が居るかどうかで危険度を確認する習慣があったから一応言っただけだ。お前には関係なかったな。聞き流してくれ」
「危険度?…まぁいいけど」
こんな子供と何を話せばいいんだ?しかも外国の子供とか接点なさ過ぎて困るんだが。
「ねぇこれってあたしにも使えるのって無い?」
俺が苦悩している事を全く気にもしてない感じに俺が抱く様に持っているショットガンをツンツンしながら聞いてきた。
「子供に銃とか持たせられる訳ないだろ?お前バカなのか?」
「だって…さっき守ってくれないみたいな事言ってたから…」
そう言えばそんな事言ったな…でも子供に銃は…銃の所持が可能な国でもほとんどの場合子供に所持する権利はなかった。未開の地や内戦の激しい国などはその限りでもないが、普通に学校に通わせられる国内事情の国であれば子供は保護される対象であり…
俺がこいつを守ってやるしか無いのか。
「武器に関してはさすがにお前に好きにさせるのは危ないから、ここに居ろ。飯も作ってやる」
イスから立ち上がり腰に手を当てて見下ろすと、マリアの顔は花が咲いたような笑顔になった。
「ホント!?」
「待て!ちょっと待て!近い!近い!!」
マリアが飛び掛かる様に抱き着いて来た。
肩を押して引き離そうとするが、マリアが俺の胴体に回した両腕で絶対に離さないって強い意思を感じる強さで抱き付いている。
そして数秒そのままで立ち尽くしていたら小さな嗚咽が聞こえてきた。
こいつもギリギリだったのか。…怖かったんだな。
そういえばこいつが閉じ込められていたコンテナってどこにあったんだ?
っていうかトイレとかどうしてたんだ?飯を食ったら人の体であれば出るモノが溜まる訳で…
今はどうでも良さそうな事をつらつらと考えながら、たまに、こいつマジでペッタンコ、なんて感想を覚えつつマリアが気が済むまで立ち尽くす俺だった。
「少しは落ち着いたか?」
「うん。…スン…ヒック…」
視線が合うと涙が溢れだすマリア。
相当心細かったみたいだな。
「とりあえずお前の荷物をここに運ばないか?もうコンテナに戻れとか言わないから必要なものがあるなら取りに行こう」
食堂の丸椅子に座った俺に正面から抱き着いて脚の上に跨る様に座ってるマリアの背中をポンポン叩きながら声をかけたら少しの間反応が無かった。
「あーえー……そうだ!あのハコには何もなかったから取りに行っても何もないから大丈夫!」
何か必死な感情が見え隠れする顔で俺を見上げながら早口でそんな事を言うマリア。
なんだろう…なんか嘘くさい。
今日さっき初めて会ったばかりの少女ではあるが、なぜか嘘をついているのがよく分かるのはマリアが嘘を吐くのがヘタなのか、聞こえる言葉が彼女のしゃべっている言葉と俺に聞こえる言葉が違っている辺りになにかからくりがあるのか…
「まぁそれならいいが…でも寝る所は何とかしておきたいな。俺の部屋からマットレスぐらいは運んでおくか、それかおやっさんの部屋からソファだけこっちに運ぶか…」
俺の部屋から運ぶならそこそこ距離があり階段を移動する必要がある。重さは10kgあるかないかぐらいで、おやっさんの部屋からソファを運ぶなら距離は20m程度でたぶん重さは50kg以上って所か。
「そう言えばマリアってどこを通ってこの場所にたどり着いたんだ?妙な筋肉質な化け物とか他の何かみたいなの見てない?」
「ココに来るまでの道?…どこを通ったのかよく分からないけど、階段を何度か上がってドアがいっぱいある所の前を通って…ここに着いた?」
聞いた感じの間取りだと船倉の待機室の辺りから俺が通ってここまで来た道によく似た感じだった。
「外に出てないんだな。変な奴も見てないのか?」
「マサルしか見てない。あ、でもご飯を持って来てくれる人とトイレに連れて行ってくれる人は分かる」
イマイチ聞いた事とその答えにズレを感じるけど、翻訳がうまく出来てないのだろうか?
っていうか自動翻訳ってなんだ?ここはファンタジーな世界なのか?
とりあえずマリアが知ってる人の特徴を聞いたらマリアの閉じ込められていたコンテナに関わっていたのがジョーさんとほとんど話したことのないゲーリッヒって奴だと分かった。
なんにしてもマリアが何のためにコンテナで運ばれていたのか気になった俺はマリアを食堂に残してドアをすぐに閉められる様にバリケードを作るよう指示してからジョーさんとゲーリッヒの部屋を見に行く事にした。
「俺が戻って来るまでは確実にこのドアを塞いでおいてくれ。たぶん30分もかからないと思うが武器は一応これを渡しておくから何かあったら自分の身は自分で守るんだぞ」
そう言って厨房から少し刃渡りの長い刺身包丁を持って来てマリアに手渡しておいた。
食堂を出て妙な音がしないか抜き足差し足静かに移動して個人の部屋のある辺りに来た。まずはジョーさんの部屋に行くと鍵が開いていた。
って言うかほとんどの奴の部屋の鍵が開いたままだった。
恐らくだが、誰も鍵をかけられない状態でいなくなったみたいだな。それか部屋の中に居て居なくなった…なんて事はさすがにないか。それだと鍵がかかったままの部屋があっていいはずだ。全部の部屋のカギが開いてるっていう事は、全員が自分の意志で部屋から出て…逃げるためか何かをする為か分からないが、とにかく自分から部屋を出てそのまま鍵をかけに戻ることなく居なくなったって事なんだろう。
何かから逃げる為に部屋を出たのか?ジョーさんの部屋の中を物色してみるが、特に妙な物は無かった。
恐らく昨日腹を下した原因の生ものに関しては自分で処理したんだろう。とりあえずハンドガンが一丁見つかったので一緒に置いてあった弾ごと回収してゲーリッヒの部屋に行く。
ゲーリッヒの部屋には何かの宗教らしき祭壇の様なモノがベッドの頭の上の辺りに棚を作って置いてあり、写真が添えられていた。
「息子か?」
写真にはゲーリッヒが子供を抱いて幸せそうな顔で映っていた。
どこかに預けている子供の為に危険な荷物の世話を引き受けたのかなぁ…中身がマリアだったので人身売買系の仕事だったのか…
俺は2人の部屋でマリアに何か関係ありそうなものを見つける事が出来ずに戻る事になった。
収穫物はジョーさんのハンドガンと弾だけ。でも何も無いよりましだろう。
食堂に戻る前に一回船倉の待機室に行き、マリアが入っていたコンテナがありそうな辺りを少しだけ見て回ったら、扉の開いたままのコンテナが一個だけあった。次の寄港地で降ろす荷物がまとめられている辺りに置いてあった。
恐らく次の寄港地はアメリカの西海岸の辺りだったはず。
…この程度の情報ではマリアを買った奴とか拉致した奴を特定できる訳が無い。
コンテナの側面に大きく丸い紋章の様なものが描いてあり、それ以外にも幾つかのプレートや規格をあらわす文字が描かれているが、俺は厨房の人員として雇われているのでこの辺りの細かいことは分からないが…
「UNITED STATES OF AMERICA WAR OFFICE」と紋章の縁取り部分に書かれている文字だけは何となく意味が分かる。
アメリカの軍関係の紋章。
マリアって軍事機密に関わる奴なのか?
ちなみにマリアが俺をここに来させたくなかった理由は分かった。そりゃぁお花摘みの現場は見られたくないだろう。
俺はコンテナのドアを閉めて臭いが外に漏れない様にしてから食堂に戻った。
食堂に戻った時に少しだけ押し問答があったが、マリアが俺に少しだけ心を許し始めた結果お茶目な一面を見せ始めたのだろうと思いお尻ペンペンを軽く10回ぐらいして許してやった。
マリアの少しはしゃぐ声を聞きつつ俺は特に何かを感じたわけではなかったが、何気なく窓の方に視線を向けたら外に居る奴と目が合ってしまった。
「あっ…」
俺の声と視線に反応してマリアも俺の膝にうつ伏せに寝そべったまま俺の見ている方を見て同じ様な反応をした。
「あっ…」
たぶん俺とマリアにはちょっと鳥っぽい羽根が後ろでバッサバサ動いている人っぽい顔が丸い窓の先に小刻みに上下しているのが見えていると思う。
ちなみにその窓の外は甲板も何も無い完全な海で、高さが大体満載喫水線の辺りまでで20mぐらいある。もちろん足を着けられそうなキャットウォークとか都合の良さそうな配管なんてモノは何も無い。そしてその窓はハメ殺しになっていてそもそも開かない。
「なぁあいつって何かを伝えようとしてる感じだけどマリアわかるか?」
「声が聞こえないから何言ってるのかわからないけど…あのジェスチャーは『今からこの窓をぶち割って突っ込む』って意味かしら?」
「俺には『できればそこに入れてくれ』って言ってる様に見えるが…」
ポルトガルって過激な行動がよく見られる地域だったかな?フーリガンとかが居たのってどこだっけ?
「えーそう?まぁそんな感じもする様な気もしない様な?」
マリアの言ってる事はよく分からないが、窓の外で小刻みに上下している飛んでそうな奴とのコミュニケーションを取ってみることにした。
窓の外の奴に指で指示を出し、歩いて移動するとそいつは理解したらしく俺の行く方向に向かって移動して丸窓から消えた。
食堂の入り口のドアのバリケードを少し動かして少しだけドアを開けるようにしたらどこかから回ってきたらしい羽根を持つ奴が顔を覗かせた。
「やぁ!ここはどこの国なんだい?僕はおなかが減っていてね!何か食べ物を持ってたら少しだけでも良いので恵んでくれないか?」
とても陽気な感じに聞いてきた羽根つき人間だった。でも、こいつも口の動きと聞こえてくる声にずれがある。
「食い物は一応あるが…お前は…なぁマリア、こんな時ってどう聞いたらいいんだ?お前の高レベルファンタジースキルで何とかできない?」
「ファンタジースキルって何?そもそもあたしはニッポンのアニメは好きでよく見てたけど最近の異世界転生モノってなんかあまり好きになれなかったからよく分からないのよね。だからマサルがどうにかしてちょうだい」
俺の背中にぴったりと付いてきたのに何の助けにもならないマリアだった。
「とりあえず何か妙な事をしたらこいつが火を吹くからよく考えて行動しろよ?ちょっと食い物取ってくるから待ってろ」
俺は一応忠告だけしてバリケードはそのままにして厨房に行き、簡単に渡せそうなゼリーのパッケージを一つ持って戻ってきた。
「栄養補助ゼリーだけどお前食えるか?」
「…それ何?食えるのか?」
どうもアルミ蒸着型のレトルトパウチはこの辺りにはなさそうだな。
「あーそうか…じゃぁもう一回待ってろ」
俺は食糧庫に入って脇に置かれたかごに放り込まれていた芽の出たジャガイモと少し日が当たって育成の進んだ玉ねぎと誰かの食べ残しのカッチカチになっている小ぶりの丸パンを持ってきて渡した。
「なんかよく分からんが…この生のこいつらは食えるのか?」
丸パンを食いながら聞き返してきた。
「そっちの手に持ってる小さな芽が出てる奴は俺らなら蒸かして食うけどもう一個の方は皮を剥いて薄く切って水にさらして生でも食えるが、お前の住んでいた所にはそんな植物は無いのか?」
「ふかして食う?それどうやるんだ?焼いたら食えないのか?それに水にさらすとか言われても…海の水でもいいのか?」
羽根つき人間はいきなり右手に持ったジャガイモをじっと見ていきなり火を発生させた。
「なぁマリア、あれって火傷しねぇの?」
「あたしに聞かれても…ニッポン人なら水の中で生活したり火の中でも寝られたりするんじゃないの?」
こいつの頭の中には忍者が現実世界に居るなんて書いてある辞書が存在しているようだ。
火に包まれていたジャガイモから小さく蒸気が噴き出し始め、毒素を含んでいた芽の周囲が真っ黒に焦げ落ちたら火が消えた。
「なんか食えない所がけっこうあったみたいだけど本当にこんなのをお前ら食ってるの?未開の地から出てきたのか?」
周囲をチラチラ見つつそんな事を言う羽根つき人間。
「ねぇ、あんなパンツしか穿いてない様な原住民にあんなこと言わせていいの?ねぇ」
マリアは煽られ耐性低め…と。
「どっちが未開の原住民かなんてどうでもいいだろ。今大切なのは羽根つき人間と俺達が仲良くなれるかどうかなんだぞ」
いきなり何も無い所で火を出せる様な奴とはドアを挟んでいてもちょっと近づきたくないなぁ。
そうだ。
「なぁお前っていつもどんなものを食ってんの?俺らはこんなものをよく食ってるけど」
スマートフォンの画面をタップしてこれまでいろんな国で気になる料理とかを撮っていた写真を表示して見せながら聞いてみると羽根つき人間が驚愕の顔でスマートフォンを凝視した。
「なっ!?えっ?絵?絵が変わるのは…お前遠見の魔法が使えるのか?でもちっちぇぇなぁ…もう少し近くで見せてくれねぇ?」
バリケードで押さえられているドアに顔を押し込む様にしながら手を伸ばしてスマートフォンを取ろうとしたので少し距離を取ったら残念そうな顔になる羽根つき人間。
やっぱり今俺達って魔法が使える様な所にいるんだな。
ちょっとしたワクワク感と焦りに似た感情を覚えつつ、ため息を吐きながらこれからどう交渉したものか考えるマサルだった。
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「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
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