船と共に

marks

文字の大きさ
13 / 35
No.1

10 女の子の事情

しおりを挟む
「ではここの準備が整った事を伝えてくるな!」
「あぁ、気をつけてな」
「いってらっしゃーい」
「「道中気をつけて!」」
道中?
翌朝そこそこ早い時間帯に移動速度の速いハバキが単身街に連絡に向かった。
ちなみに朝ごはんはパンとマーガリンとピーナッツバターとジャム数種類にコーンポタージュ辺りを自由に取って食べる感じ。俺はスクランブルエッグを少し多めに作ったのとベーコンを炒めた程度。毎日30人近い人数の食事を作っていた俺としては何とも物足りない感じだった。

「ひとまず我々はここで待機だな」
「そうですね」
ラルクアとセルビスはハバキからここで待機を命じられているが、今は特に何もする事が無い。全く何もする事が無い訳では無いが、食事をする場所を整える仕事がある程度で人数が決まってないので待機するしかないって感じだった。
「一応応接室なんてモノはここには無いから食事を取らせるならこの部屋になるが、そう言えば詳しく聞いてなかったがお偉いさん達ってのは全部で何人ぐらい来るんだ?」
洗い物をしつつ手持ち無沙汰な感じでドアの近くに立ってる二人に声を掛ける。

2人は少しだけ視線を合わしセルビスが答えてくれた。
「一応今回最初にここに来ると思われる人数は全部で5名ほどになります」
「そしてその後数回にわたって食事会が行われると思われますが、領主とその家族は3回目辺りの食事会でここに来ると思います」
「その分割して来るのって何理由?」
「街に政務に関わる者達が誰も居ない状況を作らないのが主な理由になりますが、実際の問題はここまで安全に大量の人員を移動させられる船の確保が出来ないからです」
「マサルの動かしたキューメーボートほどの速度を出せる乗り物があるならば一回で食事会を済ませる事も出来るが領主と政務にかかる者達というのは基本的に数人の付き人を連れて来る事になる為、5人だけを乗せてこれるわけではないのです」
「恐らく一人の参加者毎に船を用意してここまで来ることになる為にその辺りの人数が限界になるとの見積もりになります」

なるほどね。尊き人が1人だけ気軽に船に乗ってここまで来る訳にはいかないって事か。
「なぁ、そのお食事会の参加者の付き人達は食い物とか大丈夫なのか?」
2人はまた一瞬見合った。
「そうですね…ここまで来るのに船を操る者達が5名程度と櫂を漕ぐ者達が恐らく20名程度乗っていると思われます。それ以外にも数人の付き人が同乗してくると思われますので、そちらの食事に関しては各船で用意されていると思います」
「じゃあ俺はその5人程度の食事を用意すればいいって事なんだな?」
「食事会に関してはその通りだ。それと、一応俺達2人はここに常駐するって話もあるのだが、飯の算段をどうするかでまだ揉めてて答えが出てないんだ」

何を揉める必要があるんだ?

「あー、そのですね。ここに常駐する者達っていうのはマサルさんとマリアさんの護衛の意味もあってそれなりに親しいものが適任じゃないかって話が最初出ていたのですが…」
「ハバキ隊長があの食べた経験をみんなに公開したのが原因でな?」
「なるほど。希望者が殺到したと?」
洗い物を終えてエプロンを取りコーヒーサーバーから一杯分をカップに取って食堂に向かう。
「お前らもマリアも好きに飲めよ。マリア、2人にコーヒー出してやってくれ」
「あたしコーヒーちょっと苦手なんだけど」
「そうか…カフェオレなら飲めるか?」
「うん。それなら大丈夫」
ちょっと遠慮がちなマリアだが、昨日の俺の言った事でどう反応したらいいのか少し迷ってそうだな。
「ちょっと待ってろ」
俺はマリアの頭に手を軽く載せてから、よく使う調味料や冷蔵しておいた方が良い使う量の少ない食材を入れておく業務用の冷蔵庫の中から、そこそこお高い牛乳を引っ張り出してきてやった。
「砂糖とかハチミツを使うなら昨日教えた所にまとめてあるから好きなのを取っておいで」

一応業務用の冷蔵庫と食材庫の辺りはまだマリアには好きにさせていない。
マリアが入って良いのは今の段階では、俺が一緒に居る場合を除けば厨房の中まで。立ち入りを規制するのは昨日話をした事でマリアは理解してくれたらしく、素直に受け入れてくれた。
まだ距離感を把握できてない感じのマリアにもう少し子供で居られる時間を与えてやるのが俺の仕事だからこれから少しの間は色々指示を出していくつもりだ。
たぶんお客様待遇で何もさせないよりは安心できると思うのだが、男の感覚と女の感覚は違うはずなのでこれから手探りでマリアと一緒に反応を見ながら生きて行くしかないんだろうな。
少しの間、俺はコーヒーをすすりながら、マリアが2人にコーヒーサーバーの使い方を教えながらたまに俺の方に視線を向けて、自分の説明があっているかどうかの確認をするのでそれに頷いていた。

ハバキが船から街に向かって移動を開始してそろそろ2時間ぐらい経とうとした頃に、ハバキが1人で帰ってきた。
「一応これから5名の政務に関わる連中がここに移動してくるが、恐らく昼を少し過ぎた頃に到着する予定だ。それまでに準備をしてもらえるか?」
「料理に関しては問題ないが…昼過ぎてから到着するのか?」
救命ボートならここから街まで大体40分ぐらいだった。ハバキに方向を聞きながら戻ってきた時は大体30分ぐらいで戻れた。行きは少し方向がずれていたのが原因だったが、ハバキが街から出た頃に準備を終えて出港した船がここまで来るのに5時間…6時間以上かかるのか?
「手漕ぎの船ならば速度はそんなものだぞ?しかもこの辺りは海流がけっこう複雑に流れているのとほとんど風が吹かない辺りなんで帆船が使えないからな」
そう言えば外に出てもほとんど風を感じなかったな。波も外海みたいに高くなかった。
「ちなみに食事会は全部で何回ぐらいになるんだ?」
「そうだなぁ…今の段階では4回って事になっているが、もう少し増える気がする」
「それって食った奴らがハバキみたいに自慢するのが原因か?」
「まぁそんな感じだな!」
いい笑顔で答えるな。まったく。
マリアがハバキにコーヒーを注いで出してやってるのを見ながらうなずいてやった。

マリアがちょっとずつ俺に依存しだしてる感じだが、今はこれで良いだろう。
自分で責任を取る状態は極力減らしてやらないとマリアが気疲れしてしまうし心からの笑顔が見られなくなるのは寂しいから。
まぁでもこの年代の少女が何を求めるのかなんて育てた事も妹がいた事も無い俺には正直分からないのだが…
14歳の少女ってその年代の男みたいに赤剥けするぐらいにオナったりするのだろうか?
そこらも少しは…あっ、今気づいた。女性特有の月のものの事を完全に忘れてた…

「なぁマリア、チョイこっちに」
手招きをしてマリアを呼ぶ。
「なぁに?」
特に不審がったりしてない感じに近づいてくるマリア。
「これはおまえの反応を見て楽しむなんて理由で聞く訳じゃない事をまず理解してから聞いて欲しいのだが、お前の体の事だ。あれってもう来てる頃なのか?年齢的には始まってる子も居るって聞いた事があったんだが」
俺の問いかけに少し顔を赤くしたマリアだったが妙な勘繰りはせずにちょっとだけ恥ずかしそうに答えてくれた。
「あー…うん。もう始まってる。いつもならナプキンとか家に準備してたんだけど気づいたらあの箱に入れられてたから何も無いの…」
「正直に言ってくれて助かった。恥ずかしいのに答えてくれてありがとう」
マリアの頭に手を置きポンポン。
「船には男の船員しか乗ってなかったからそれほど多く常備している訳では無いと思うが、確か医療室に女性用のその手の物とかがあったはずだから今からでも行って確認してみないか?」
その時になって慌てるよりも先に準備できている方がマリアも安心できるはず。
「…そうだ…ね。うん」
やっぱり恥ずかしそうではあるが、ちゃんと俺の目を見て頷くマリア。

「ハバキ、ちょっとマリアと探し物をしてくるな」
「あぁ、分かった。ラルクア、付いて行ってやれ」
「はい」
「護衛として一緒に行くのか?」
「えぇ。一応人型のネームレスはすべて退治しましたが、小型の動物タイプがどこかに居る可能性がまだあるので。それに人のほとんどいない真っ暗な場所っていうのはモンスターが湧く可能性があるので、あまり気軽に歩き回らない方がいいです」
ラルクアがなぜ護衛が必要なのかを教えてくれた。
どうも人が多く居る場所ではモンスターが湧く事はほとんど無いらしいが、人気のない場所で暗い所には破壊衝動に駆られる異形の生物がたまに湧き出てくるらしい。
ファウストの街の近くに自然由来の洞窟がそこそこ多くあるそうで、そこから定期的にモンスターが湧き出てくるらしく、暗い所に一人で行かない様に子供の頃からしっかりと教育されているそうだ。

まだまだこの世界、油断がならない様だな。

マリアを挟む様に、俺、マリア、ラルクアの順で廊下を進み、医務室に到着。
「マリア、どれが必要なものなのか確認できるか?」
「見ればたぶん分かると思う」
「それなら俺達は入り口のところに居るから探してみてくれ」
「うん。分かった」
部屋の中は一応先に俺とラルクアで安全確認を済ませておいたのでマリアに危険が及ぶことはないはずだ。
「ここはなんだか清浄な空気の香りがしますが聖域か何かなのでしょうか?」
「ここは医務室でたぶんお前が感じているにおいは消毒液のにおいだと思うぞ」
俺は何度かここでお世話になっていたので勝手知ったる感じで棚の中から消毒液の入っているチューブを取り出して持ってきた。
「このキャップ開けて嗅いでみな」
「これは朝食べたピーナッツバターの入れ物みたいに開ければいいのか?」
「あぁ」
ラルクアが消毒ジェルの蓋を開けて香りを嗅ぐ。
「あぁ…これは何という高貴な香り…これは持ち帰っても大丈夫でしょうか?対価はどの程度必要ですか?」
どうも消毒液のあの香りが随分とお気に召した様だ。
「それは一応医療器具の一種だからそんなに安いわけではないが…ストックはそこそこあるんで一個ぐらいなら持って行ってもいいぞ」
「そうか。ありがとう」
ラルクアはとても嬉しそうに消毒ジェルのチューブを懐にしまい込んでそれから少しの間たまに引っ張り出して嗅ぐような事を繰り返していた。

こいつらには注射のイメージと消毒液の匂いがリンクしていないから、あの香りが悪い感情に結びつかないんだろうな。
マリアが医務室で見つけた少し大きなバッグに何か色々入れて戻ってきたので、一応医務室の中にあった鍵で施錠して戻った。

「とりあえずマリアに必要なものは確保できたのか?」
「うん。そんなに種類は無かったけど日本製のがあったから1パック分持ってきたのと、痛み止めとかも少し持ってきたから大丈夫だと思う」
「そうか、そう言えばあの時って人によっては痛みを伴うって聞いた事があったな。マリア、我慢しなくていいから痛み止めを飲む状態になる様なら俺に言うんだぞ。一応これでも大人の女性と付き合っていた事があるんだから、妙な気づかいとか必要無いし、変な感じに勘繰ったりもしないから」
俺の言いたい事を一応理解してくれたらしいマリアは一回強く抱き着いて見上げながら笑顔で頷いてくれた。

これで少しは安心してもらえただろうか?

その後俺は、マリアが気になってしまいついつい目で追ってしまうのだが、マリアと目が合って苦笑されるなんて事が増えた気がする。


そして今日のお食事会のメニューをマリアと考えていたら正午になっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...