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No.1
12 動かすまで時間がかかるのが巨大船の宿命
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「ハバキ!ちょっといいか?」
内政畑の連中と船を動かす話をしているハバキに、マリアと一緒に近付き声を掛ける。
「とりあえずこの船を街の近くまで移動させるつもりだが、海の深さがある程度確認できる海図を確保できるか?それと案内の為の船を出来るだけ確保して欲しいがどうだ?」
俺の声を聞いたハバキと話をしていた、このグループのリーダーのタッツィージョが手で合図をして皆を黙らせた。
「本当にこの巨大な物体を動かせるのか?」
「あぁ。この船の最大船速で街に近付く事はさすがに出来ないが、水深が20m以上ある事が確定している海域であれば救命ボートの倍の速度で移動できる(ハズ)」
「えっ?!こいつがそんなに速く動くの??」
「ハバキ、救命ボートの速度はどの程度だ?」
「水上限定で言えば、飛天翔族の一番早い奴の1.5倍ぐらいの速度でここまで一度も止まらずに来れる」
「なんと…」「そこまでの速度がだせるのか?」
リーダーの男を除いた参加者が口々に信じられないといった内容の言葉を漏らし始めた。
「静かに。…マサル殿。今の話は間違い無いのだね?冗談でもホラでもなく間違いなくその様な移動速度を保証できるのだね?」
おっと、かなり気合の入った顔で確認してくるじゃん。
「あぁ、スペック上は間違いない。ただ、そんな速度でどこまでも無制限に行けるという訳ではない。こいつを動かすには特別な燃料が必要だが、それを補給できる手段が今のところないので、おそらくだが今までの経験からの想像になるが、3週間程度…20日程度はその速度で移動できるはずだ。それか積荷をある程度降ろせれば1.5倍か2倍程度の期間そんな速度で移動できるかもしれないが、さすがにそこまでは経験がないので確実とは言えない」
俺の説明にハバキ達全員が息を呑む様に静かになった。
「ちなみに確認しておくが、この船…巨大すぎて船とは到底思えないが、この船はどれくらいの荷物を載せて移動できるのだ?」
「確か最大積載荷重が公称5万トン程度って話だったと思うが…そうだな、5万トンを分かりやすく例えるとすれば…あぁちょっと待っていてくれ」
俺はマリアを離れた場所に引っ張っていった。
「なぁマリア、医務室に体重計あったか?」
「体重計?…見えるところにはなかったと思うけど…ねぇ、5万トンを何で例える気なの?そのために重さを量ろうと思ってるんでしょ?」
「あぁ。そのつもりだが…一応体重計がないか確認してきてくれないか?俺は他にも何か代わりになりそうな物を物色してみるから」
「まぁいいけど…ねぇラルクア、一緒に行ってもらえる?」
「あぁ護衛は任せてくれ」
「マリア、俺が選ばれなかった理由を後で教えてくれな?」
セルビスが若干不満げに聞いた。
「まぁいいけど…怒らないでよ?」
マリアとラルクアが部屋から出て行った。
「なぁセルビス…自分をいじめるのはほどほどにな?」
「それはどういう意味だ??」
「まぁそれは置いておくとして…お前ってそこそこ装備が重そうだよな?」
「いきなり話が変わったが…まぁそうだな。ハバキ隊長とは比べ物にならん重さの装備を常用してるが、それがどうした?」
「そいつをちょっと脱いで持たせてもらってもいいか?重さを知りたいんだ」
「まぁいいが…」
セルビスが鎧を脱いで渡してくれた。
「重っもっ!?こんなの着てよく走り回れるな」
両手に感じる重さは大体7~8kgほどだろうか。
「脚の装備と腕の装備と武器を合わせたらこの鎧の倍ぐらいの重さになりそうだな」
「まぁそんなものだろうな」
15kg程度の装備を身に着けた戦士が目測ではあるが大体100kg程度だと思う。それを元にすればそこそこ分かりやすい説明が出来るな。
ちなみに目測で重量が分かる様になりたければ、毎日10kg20kgなんて量の肉をさばいて料理していたら気づいたら500g単位での違いが分かる様になる。ただし100kgを超えた人間の重さを知りたいのであれば、もう少し重たい量の肉を毎日扱う奴じゃないと分からないかもしれない。
「ちなみにセルビスの体格って街の兵隊基準で言えばどんな感じなんだ?」
「そうだな…体格的には平均って感じだが、筋力があるんで若干重めかもしれんな」
なるほどなるほど。
セルビスと話をしていたらマリアとラルクアが戻ってきた。
「一応こんなのがあったけど使えるかな?」
8セグの3桁表示できる体重計(家庭用)らしきものを箱ごとラルクアが運んできてくれた。
「おーナイスマリア。あとでハグしてやるな」
「ベっ…別にそんなのしなくてもいいし…」
赤い顔で明後日の方向を向いてボソボソと何かつぶやいているマリアを放置しておいてラルクアが持ってきた体重計を開封して中に入っていた電池を入れたら動いた。
そういえばここってどれぐらいの重力?引力?なんだろうか。地球でも天秤を使った重量計じゃないと、同じ決まった重さをどこででも量れる重量計というのは存在しなかったはず。だからこの手の体重計には国別の設定があるのだが…分かりやすい物を乗せてサンプルにするしかないか。
「マリア、お前の体重何キロ?」
「えっ?…………は?」
モジモジして何かつぶやいていたマリアの顔が能面の小面みたいになった。
「あっ!いや、何でもない!!失礼しました!!!」
やべぇ…女に年齢と体重の話題はタブーってのコロっと忘れてた。
代わりになるもの…水で良いか。
俺は2ℓ入るピッチャーを出して水を規定量入れて体重計に乗せてみた。一応リセット機能があったのでそれを使ってピッチャーの重量は引いておいたので問題ないだろう。
「1.6kgか…よし、セルビス、装備を戻して乗ってみてくれ」
「あぁそれは構わないが…」
「あまり勢いよく乗るなよ」
「あぁ分かった」
セルビスがそっと体重計に乗ると体重計が85kgを表示した。
「マリア、水2kgが1.6kgと表示される場合にセルビスの重量が85kg表示でした。俺らの世界でセルビスは何キロになる?」
「えっ?!えーっと…ちょっ、ちょっと待ってね!」
マリアはタブレットPCを急いで取りに行って何やら計算してるが、これくらいの計算なら日本の小学生なら暗算できるんじゃねぇの?
「ハイ残念!時間切れです。正解は106kgちょいでした。マリアは後で計算の勉強をする様に」
「いきなりそんな事言われても…」
ブツブツ文句を言うマリアを放っておいて、俺は待たせていたタッツィージョに説明を始めた。
「一応今確認した感じだと、俺達の元居た世界よりこの辺りは少し体が軽くなる感じでな、その差を確認した所、大体元の世界に比べてこっちの重さってのはざっくり0.8倍程度になる様だ」
「ふむ、それで?どの程度の積載量があるのか説明できそうか?」
「あぁ、一応セルビスがファウストの街の兵隊の平均的な体格という事を聞いたので、それを基準にするならば兵士50万人に相当する重さの物を運べる。計算上もう少し細かく言うならば、大体47万人ぐらいか?もうちょっと多いぐらいだな」
「「「「「「はぁ?」」」」」」
さすがに兵隊50万人はインパクトのでかい数字の様だな。
もっと細かく言うのであれば、船体の応力からの強度を求めて、そっちが元の世界のままの強度を示すならば更に数倍の積載量になるのだが、そこまではわざわざ計算しなくてもいいだろう。
「ちなみにファウストの街の人口って何人ぐらいになるんだ?」
「えっ?あぁ人口…おい」
タッツィージョが1人の男に視線を向けて声をかける。
「ファウスト税制台帳の税の回収時期の統計で、大体2万4000人ほどです」
「それならば、運ぶだけならファウストの街の全員を飢えさせる事無く船の動く限りの期間運べるって言っても言い過ぎでは無さそうだな。ちなみに人を運ぶのであれば、全員が床に寝られる状態かどうかは保証できないが」
「そこまでとは…」
その後タッツィージョが大黒丸を移動する場所の選定の為に一回街に戻り、ハバキと他に数人の飛天翔族の兵士を使い連絡を密に取る事にすると言い、ハバキを連れて帰って行った。
ちなみに参加者全員が気を付けて移動したので海に落ちる人はいなかった。
「さてと、エンジンの始動と停止に関してはマニュアルを見て前回動かしたから分かっているが、操船に関しては勉強し直すしかないわけでなぁ…あっそうだ。なぁマリア」
「あたしは船の運転とか無理だからね!」
「…俺の言いたい事がよく分かったな」
「そんなエロい目で見ながら名前を呼ばれたらさすがに気付くってば」
エロい目って…えー…
「いや、まぁ、マリアは俺の事をやっと少しだけ理解してきてるって事で今回は許そう。じゃぁマリアは運転の勉強はしないって事でいいのな?」
「…見てるだけならする」
かわえぇのぉ~♡まだまだ心のドアのオープンレベルは狭そうだがなかなか悪くないぞ♡
その後4人で操舵室に移動して、俺とマリアで非常用マニュアルをじっくり見ていたら、この船を操縦するには今の状況ではサブのオペレーターが居ないとちょっと大変な事が分かった。
「なんかレーダーとかソナーとか海図の情報を確認して色々エラー表示されるのを解除する人が居ないと、ここらではまともに動かせない感じだなぁ…」
通常状態であれば海図と各種センサーによる座礁回避や他の船舶などとの衝突を自動回避するプログラムが動いているらしいが、それらの装備が使えない場合の動かし方として、センサー類からの情報ロスト状態で動く緊急停止プログラムを止めるための人員が必要らしい。
「これはマリアにオペレーターとして頑張ってもらわないと動かせないなぁ…頼めないか?」
「…まぁいいけど…でもそれって英語で表示されるんでしょ?そんなに英語得意じゃなかったからちょっと心配」
「そこらはマリアにもこのマニュアルが読めるんだから問題ないだろ?」
実はこのマニュアル、英語で書いてあるが、専門用語も含めて俺もマリアも普通に読める。おそらく自動翻訳機能がいい感じに仕事をしてくれているのだろう。
「でも、タブレットで表示される英語って読めないよ?」
えっ?
マリアの言ってる事は本当だった。印刷されたものに対しては自動翻訳が働くが、画面に表示される文字に対しては自動翻訳が効かない。
「それならこのマニュアルに書いてある文字の羅列をタブレットPCの文章作成ソフトで表示させて似た様な文字が機械に表示されたら対応する感じにするしかないだろうな」
「このマニュアルの文字を打ち込んでそれを見て対応すると良いの?それならたぶんできると思う」
とりあえず俺とマリアは操船の方法とセンサー群のエラー回避の仕事を分業する事にして各々動かし方を学んでいった。
「マサルーーー!!マリアーーー!!どこぉ?」
ドアの辺りからハバキの声が聞こえてきた。
「隊長が戻られたようですね。連れてきます」
ラルクアが部屋から出て行ってすぐに戻ってきた。
「こんな所に居たんだな。これからここによく来る奴らを連れてきたんだ。一応紹介しておくな」
ハバキに続いて飛天翔族の人が2人部屋に入ってきた。
「こっちがマダラ羽根族のシルビィでこっちが赤羽根族のタイニーだ」
「シルビィです、よろしくお願いします」
「タイニーだ。よろしくな」
シルビィさんが女性でタイニーさんが男。
「よろしくお願いします。俺は新堂 将、28歳、元居た所に彼女が2人居たのと、こっちはマリア・レーヴェン、14歳。俺の大事な妹だから手を出すな。いいな?」
「いつからマサルの妹になったの?」
「マサルが勝手にいってるだけだから信じたらダメよ?」
「そこで勝手に情報交換しないの。それで?今回は道案内と自己紹介だけで終わりなのか?」
「それも要件の内だけど、一応これを持ってきた。あと案内用の船の確保は進んでいるけど移動の方は何とかなりそうなのか?」
ハバキが丸めた紙というか布の様な質感の物を渡してきたので広げて見たら海図らしき物だった。
「ずいぶんと簡略的な海図だけど…」
「さすがに海の深さを細かく知ってる様な奴が居なかったから街からここまでを一直線にイメージに落とし込んでいろんな奴らの知識を魔法で見てマサルの言っていた20m?の深さがありそうな場所を塗りつぶす感じに用意してみた。これを見れば街に近付けるか?」
海図を見る限りでは街の縮尺に合わせて船の大きさの絵が描いてあり、その情報が間違いないのであれば移動出来そうな場所がある。ただし、街の船着き場から200m程度沖に出た辺りまでしか安全に近付けないと思われる。
「この辺りまでしかたぶん移動出来ないからこの近くに浮き桟橋を待機させておいてくれたら移動後すぐに船に接続して固定できると思う。ただ、ソナーとかレーダーが無いから夜中に移動するのは無理だ」
「夜中に移動するのは考えてないから大丈夫。ではあちらで浮き桟橋を用意させて、こっちの大黒丸を明日の朝から移動させたら昼までには十分に領主一族をここまで連れて来れそうだな」
「時間的には何とかなると思うが…」
「何か懸念点があるのか?」
「いやな、船を動かすのも料理をするのも俺だから昼に間に合わせる様に料理できるかちょっと自信が無くてな。そもそも移乗用の階段を動かすのも俺がする必要があるし食事の時間を夜にする事は出来ないか?」
「…なるほど。確かにマサルの作業量が問題か。分かった。その辺りの交渉はこっちでするからマサルはまずこの大黒丸を街の近くまで動かす事だけに注力してくれ」
という訳で俺とマリアは、まず、二人でこの大黒丸を動かす練習をする事になった。
内政畑の連中と船を動かす話をしているハバキに、マリアと一緒に近付き声を掛ける。
「とりあえずこの船を街の近くまで移動させるつもりだが、海の深さがある程度確認できる海図を確保できるか?それと案内の為の船を出来るだけ確保して欲しいがどうだ?」
俺の声を聞いたハバキと話をしていた、このグループのリーダーのタッツィージョが手で合図をして皆を黙らせた。
「本当にこの巨大な物体を動かせるのか?」
「あぁ。この船の最大船速で街に近付く事はさすがに出来ないが、水深が20m以上ある事が確定している海域であれば救命ボートの倍の速度で移動できる(ハズ)」
「えっ?!こいつがそんなに速く動くの??」
「ハバキ、救命ボートの速度はどの程度だ?」
「水上限定で言えば、飛天翔族の一番早い奴の1.5倍ぐらいの速度でここまで一度も止まらずに来れる」
「なんと…」「そこまでの速度がだせるのか?」
リーダーの男を除いた参加者が口々に信じられないといった内容の言葉を漏らし始めた。
「静かに。…マサル殿。今の話は間違い無いのだね?冗談でもホラでもなく間違いなくその様な移動速度を保証できるのだね?」
おっと、かなり気合の入った顔で確認してくるじゃん。
「あぁ、スペック上は間違いない。ただ、そんな速度でどこまでも無制限に行けるという訳ではない。こいつを動かすには特別な燃料が必要だが、それを補給できる手段が今のところないので、おそらくだが今までの経験からの想像になるが、3週間程度…20日程度はその速度で移動できるはずだ。それか積荷をある程度降ろせれば1.5倍か2倍程度の期間そんな速度で移動できるかもしれないが、さすがにそこまでは経験がないので確実とは言えない」
俺の説明にハバキ達全員が息を呑む様に静かになった。
「ちなみに確認しておくが、この船…巨大すぎて船とは到底思えないが、この船はどれくらいの荷物を載せて移動できるのだ?」
「確か最大積載荷重が公称5万トン程度って話だったと思うが…そうだな、5万トンを分かりやすく例えるとすれば…あぁちょっと待っていてくれ」
俺はマリアを離れた場所に引っ張っていった。
「なぁマリア、医務室に体重計あったか?」
「体重計?…見えるところにはなかったと思うけど…ねぇ、5万トンを何で例える気なの?そのために重さを量ろうと思ってるんでしょ?」
「あぁ。そのつもりだが…一応体重計がないか確認してきてくれないか?俺は他にも何か代わりになりそうな物を物色してみるから」
「まぁいいけど…ねぇラルクア、一緒に行ってもらえる?」
「あぁ護衛は任せてくれ」
「マリア、俺が選ばれなかった理由を後で教えてくれな?」
セルビスが若干不満げに聞いた。
「まぁいいけど…怒らないでよ?」
マリアとラルクアが部屋から出て行った。
「なぁセルビス…自分をいじめるのはほどほどにな?」
「それはどういう意味だ??」
「まぁそれは置いておくとして…お前ってそこそこ装備が重そうだよな?」
「いきなり話が変わったが…まぁそうだな。ハバキ隊長とは比べ物にならん重さの装備を常用してるが、それがどうした?」
「そいつをちょっと脱いで持たせてもらってもいいか?重さを知りたいんだ」
「まぁいいが…」
セルビスが鎧を脱いで渡してくれた。
「重っもっ!?こんなの着てよく走り回れるな」
両手に感じる重さは大体7~8kgほどだろうか。
「脚の装備と腕の装備と武器を合わせたらこの鎧の倍ぐらいの重さになりそうだな」
「まぁそんなものだろうな」
15kg程度の装備を身に着けた戦士が目測ではあるが大体100kg程度だと思う。それを元にすればそこそこ分かりやすい説明が出来るな。
ちなみに目測で重量が分かる様になりたければ、毎日10kg20kgなんて量の肉をさばいて料理していたら気づいたら500g単位での違いが分かる様になる。ただし100kgを超えた人間の重さを知りたいのであれば、もう少し重たい量の肉を毎日扱う奴じゃないと分からないかもしれない。
「ちなみにセルビスの体格って街の兵隊基準で言えばどんな感じなんだ?」
「そうだな…体格的には平均って感じだが、筋力があるんで若干重めかもしれんな」
なるほどなるほど。
セルビスと話をしていたらマリアとラルクアが戻ってきた。
「一応こんなのがあったけど使えるかな?」
8セグの3桁表示できる体重計(家庭用)らしきものを箱ごとラルクアが運んできてくれた。
「おーナイスマリア。あとでハグしてやるな」
「ベっ…別にそんなのしなくてもいいし…」
赤い顔で明後日の方向を向いてボソボソと何かつぶやいているマリアを放置しておいてラルクアが持ってきた体重計を開封して中に入っていた電池を入れたら動いた。
そういえばここってどれぐらいの重力?引力?なんだろうか。地球でも天秤を使った重量計じゃないと、同じ決まった重さをどこででも量れる重量計というのは存在しなかったはず。だからこの手の体重計には国別の設定があるのだが…分かりやすい物を乗せてサンプルにするしかないか。
「マリア、お前の体重何キロ?」
「えっ?…………は?」
モジモジして何かつぶやいていたマリアの顔が能面の小面みたいになった。
「あっ!いや、何でもない!!失礼しました!!!」
やべぇ…女に年齢と体重の話題はタブーってのコロっと忘れてた。
代わりになるもの…水で良いか。
俺は2ℓ入るピッチャーを出して水を規定量入れて体重計に乗せてみた。一応リセット機能があったのでそれを使ってピッチャーの重量は引いておいたので問題ないだろう。
「1.6kgか…よし、セルビス、装備を戻して乗ってみてくれ」
「あぁそれは構わないが…」
「あまり勢いよく乗るなよ」
「あぁ分かった」
セルビスがそっと体重計に乗ると体重計が85kgを表示した。
「マリア、水2kgが1.6kgと表示される場合にセルビスの重量が85kg表示でした。俺らの世界でセルビスは何キロになる?」
「えっ?!えーっと…ちょっ、ちょっと待ってね!」
マリアはタブレットPCを急いで取りに行って何やら計算してるが、これくらいの計算なら日本の小学生なら暗算できるんじゃねぇの?
「ハイ残念!時間切れです。正解は106kgちょいでした。マリアは後で計算の勉強をする様に」
「いきなりそんな事言われても…」
ブツブツ文句を言うマリアを放っておいて、俺は待たせていたタッツィージョに説明を始めた。
「一応今確認した感じだと、俺達の元居た世界よりこの辺りは少し体が軽くなる感じでな、その差を確認した所、大体元の世界に比べてこっちの重さってのはざっくり0.8倍程度になる様だ」
「ふむ、それで?どの程度の積載量があるのか説明できそうか?」
「あぁ、一応セルビスがファウストの街の兵隊の平均的な体格という事を聞いたので、それを基準にするならば兵士50万人に相当する重さの物を運べる。計算上もう少し細かく言うならば、大体47万人ぐらいか?もうちょっと多いぐらいだな」
「「「「「「はぁ?」」」」」」
さすがに兵隊50万人はインパクトのでかい数字の様だな。
もっと細かく言うのであれば、船体の応力からの強度を求めて、そっちが元の世界のままの強度を示すならば更に数倍の積載量になるのだが、そこまではわざわざ計算しなくてもいいだろう。
「ちなみにファウストの街の人口って何人ぐらいになるんだ?」
「えっ?あぁ人口…おい」
タッツィージョが1人の男に視線を向けて声をかける。
「ファウスト税制台帳の税の回収時期の統計で、大体2万4000人ほどです」
「それならば、運ぶだけならファウストの街の全員を飢えさせる事無く船の動く限りの期間運べるって言っても言い過ぎでは無さそうだな。ちなみに人を運ぶのであれば、全員が床に寝られる状態かどうかは保証できないが」
「そこまでとは…」
その後タッツィージョが大黒丸を移動する場所の選定の為に一回街に戻り、ハバキと他に数人の飛天翔族の兵士を使い連絡を密に取る事にすると言い、ハバキを連れて帰って行った。
ちなみに参加者全員が気を付けて移動したので海に落ちる人はいなかった。
「さてと、エンジンの始動と停止に関してはマニュアルを見て前回動かしたから分かっているが、操船に関しては勉強し直すしかないわけでなぁ…あっそうだ。なぁマリア」
「あたしは船の運転とか無理だからね!」
「…俺の言いたい事がよく分かったな」
「そんなエロい目で見ながら名前を呼ばれたらさすがに気付くってば」
エロい目って…えー…
「いや、まぁ、マリアは俺の事をやっと少しだけ理解してきてるって事で今回は許そう。じゃぁマリアは運転の勉強はしないって事でいいのな?」
「…見てるだけならする」
かわえぇのぉ~♡まだまだ心のドアのオープンレベルは狭そうだがなかなか悪くないぞ♡
その後4人で操舵室に移動して、俺とマリアで非常用マニュアルをじっくり見ていたら、この船を操縦するには今の状況ではサブのオペレーターが居ないとちょっと大変な事が分かった。
「なんかレーダーとかソナーとか海図の情報を確認して色々エラー表示されるのを解除する人が居ないと、ここらではまともに動かせない感じだなぁ…」
通常状態であれば海図と各種センサーによる座礁回避や他の船舶などとの衝突を自動回避するプログラムが動いているらしいが、それらの装備が使えない場合の動かし方として、センサー類からの情報ロスト状態で動く緊急停止プログラムを止めるための人員が必要らしい。
「これはマリアにオペレーターとして頑張ってもらわないと動かせないなぁ…頼めないか?」
「…まぁいいけど…でもそれって英語で表示されるんでしょ?そんなに英語得意じゃなかったからちょっと心配」
「そこらはマリアにもこのマニュアルが読めるんだから問題ないだろ?」
実はこのマニュアル、英語で書いてあるが、専門用語も含めて俺もマリアも普通に読める。おそらく自動翻訳機能がいい感じに仕事をしてくれているのだろう。
「でも、タブレットで表示される英語って読めないよ?」
えっ?
マリアの言ってる事は本当だった。印刷されたものに対しては自動翻訳が働くが、画面に表示される文字に対しては自動翻訳が効かない。
「それならこのマニュアルに書いてある文字の羅列をタブレットPCの文章作成ソフトで表示させて似た様な文字が機械に表示されたら対応する感じにするしかないだろうな」
「このマニュアルの文字を打ち込んでそれを見て対応すると良いの?それならたぶんできると思う」
とりあえず俺とマリアは操船の方法とセンサー群のエラー回避の仕事を分業する事にして各々動かし方を学んでいった。
「マサルーーー!!マリアーーー!!どこぉ?」
ドアの辺りからハバキの声が聞こえてきた。
「隊長が戻られたようですね。連れてきます」
ラルクアが部屋から出て行ってすぐに戻ってきた。
「こんな所に居たんだな。これからここによく来る奴らを連れてきたんだ。一応紹介しておくな」
ハバキに続いて飛天翔族の人が2人部屋に入ってきた。
「こっちがマダラ羽根族のシルビィでこっちが赤羽根族のタイニーだ」
「シルビィです、よろしくお願いします」
「タイニーだ。よろしくな」
シルビィさんが女性でタイニーさんが男。
「よろしくお願いします。俺は新堂 将、28歳、元居た所に彼女が2人居たのと、こっちはマリア・レーヴェン、14歳。俺の大事な妹だから手を出すな。いいな?」
「いつからマサルの妹になったの?」
「マサルが勝手にいってるだけだから信じたらダメよ?」
「そこで勝手に情報交換しないの。それで?今回は道案内と自己紹介だけで終わりなのか?」
「それも要件の内だけど、一応これを持ってきた。あと案内用の船の確保は進んでいるけど移動の方は何とかなりそうなのか?」
ハバキが丸めた紙というか布の様な質感の物を渡してきたので広げて見たら海図らしき物だった。
「ずいぶんと簡略的な海図だけど…」
「さすがに海の深さを細かく知ってる様な奴が居なかったから街からここまでを一直線にイメージに落とし込んでいろんな奴らの知識を魔法で見てマサルの言っていた20m?の深さがありそうな場所を塗りつぶす感じに用意してみた。これを見れば街に近付けるか?」
海図を見る限りでは街の縮尺に合わせて船の大きさの絵が描いてあり、その情報が間違いないのであれば移動出来そうな場所がある。ただし、街の船着き場から200m程度沖に出た辺りまでしか安全に近付けないと思われる。
「この辺りまでしかたぶん移動出来ないからこの近くに浮き桟橋を待機させておいてくれたら移動後すぐに船に接続して固定できると思う。ただ、ソナーとかレーダーが無いから夜中に移動するのは無理だ」
「夜中に移動するのは考えてないから大丈夫。ではあちらで浮き桟橋を用意させて、こっちの大黒丸を明日の朝から移動させたら昼までには十分に領主一族をここまで連れて来れそうだな」
「時間的には何とかなると思うが…」
「何か懸念点があるのか?」
「いやな、船を動かすのも料理をするのも俺だから昼に間に合わせる様に料理できるかちょっと自信が無くてな。そもそも移乗用の階段を動かすのも俺がする必要があるし食事の時間を夜にする事は出来ないか?」
「…なるほど。確かにマサルの作業量が問題か。分かった。その辺りの交渉はこっちでするからマサルはまずこの大黒丸を街の近くまで動かす事だけに注力してくれ」
という訳で俺とマリアは、まず、二人でこの大黒丸を動かす練習をする事になった。
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俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
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昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
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皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
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