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No.1
27 魔法で充電?
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大黒丸から救命ボートで10秒ほど移動して陸地の桟橋へ、警備の兵にロープを投げて係留してもらった。
エンジンを切って先に出たラウリーとハバキを追って領軍の駐屯地へ行くと、セルビスとラルクアがコンテナの前で待っていた。
「さっきラウリー氏とハバキ隊長が来たけど、確か予定ではラウリー氏はそのまま船で休むはずだったよな?ハバキ隊長とマサルがここに来るはずだったが何か問題でもあったのか?」
「あぁ、その予定だったが、ちょっと予定が変わったんだ」
コンテナをめぐるあれこれをセルビスに説明していたら、ハバキが近付いて来た。
「とりあえずマサルの魔素の量がとんでもない感じになってるみたいでな。これから先のコンテナの搬送に関して一回練り直しになるから、領主の所に今から行って話をしてくる。ここは頼むな」
ハバキはそう言って、そのまま領主館に向かって飛んで行った。
「コンテナの移送計画を練り直す?燃料の話も一気に動き出しそうだし、マサルはいい仕事が始められそうだな」
「あぁ、大黒丸で運送会社でも始められそうだ」
「マサル殿!そろそろこの車を動かしてくれんかぁ?」
ラウリーがコンテナの中から大声で聞いてきた。
「あの爺さん、本当に400歳超えてんの?」
「? あぁハバキ隊長にでも聞いたのか。確かそのはずだぞ。ファウストの街の最初の入植者としてその当時の領主と一緒に来てからずっと魔法管理組合の長をやってるはずだ」
「なんか気の遠くなるような話だな」
「まぁでも寿命を言うなら俺もラルクアもマサルもマリアも似たような年月生きられるんだから、これから長い付き合いになりそうだな」
セルビスに肩を手の甲で軽く叩かれ、歩いてコンテナに向かうと、目をキラキラさせたラウリーがEVビークルの周りを歩き回って隅々まで見ていた。
「ラウリー師匠、これからタイヤを付けてコンテナから出すので少し待っててください」
タイヤはコンテナを送る前にセルビスとラルクアが救命ボートで運び出してくれていたので、あとはジャッキアップでもしてレンチで組付ければいいだけ。
コンテナの中に置いてあった油圧ジャッキを使って一か所ずつタイヤを装着していくと少し背の高いSUVタイプの車両が出来上がった。
「思った以上に走破性の高そうな車両だったな。もっとスポーツカーみたいなスタイルの車両になるかと思ってた」
「地面に下の部分を当ててる姿とはだいぶ違う感じになったな」
おそらくイタリアのランボ〇ギーニの新しいEV車両だと思うが…こんなの売り出してたか?
記憶にない車両が現れて少しばかり悩んだマサルだが、実はこの車両、アメリカのモーターショーに出品される予定で運ばれていた、ワンオフ車両であった。
とりあえずキーをコンテナから探し出し、車のキーエントリーに挿入後、インパネに光が灯り、メーター類が現在の状態を表示し始める。
「なんかメーターが時速370kmとかまであるんだけど本気か?」
「その速度はどんな速さになるんじゃ?」
俺が運転席に座ったらドアの開け方を見ていて覚えたのかラウリーが勝手に助手席に乗り込んで来た。
「あー370kmってのは…確か飛天翔族の最高速度が40km/hぐらいだったから、その9倍ぐらい?」
「9倍…それは…えっ?こやつは空を飛ぶのか?この間聞いた話では走ると言っておったが?」
「道路がどこまでも真っすぐで、段差なんかがまったく無い場所であれば、それぐらいの速度で走れるってだけで、ここらではたぶんその半分の速度も出せないと思うぞ」
とりあえずバッテリーは半分ぐらいまでしか減ってないみたいなので、動かしてみるか。EVとか運転した事無いけど…
マサルがパーキングブレーキを解除してそっとアクセルを踏んだらモーターの回転が速くなる時特有の、何かが昇りつめる様な音と共に、車両がゆっくり動き出した。
「ほぉ…なんとも乗り心地の良い車両じゃのぉ…ここではもっと早く走らせられんのか?」
領軍の駐屯地の敷地は直線で200m程度は確保できそうだけど、ここでmax加速とかしてもいいのだろうか?
地面が土ででこぼこがそこそこあるが、それなりに平坦。
とりあえず腐ってもランボル〇ーニ、時速100kmぐらいは出せるか?
ラウリーを助手席で待たせて一回外に出てセルビスに敷地の広場全域を使って加速してみる話をして車両に戻り敷地の端まで車を移動させる。
アクセルを半分程度踏み込んだだけでDSCが反応してこの路面での最高効率状態での加速がイメージ出来た。
「たぶんここの広さだと時速100km以上は出ないと思うから、そのつもりで楽しんでくれ」
「分かったから早うせえ」
たぶんラウリーはぶったまげるだろうな。小便漏らさなければいいが♪
俺は見ている連中も含めて全員が驚く様を想像しつつ、アクセルをめいっぱい踏み込んだ。
「うほおぉ~~~~!!!!おあぁぁぁぁぁああ!!」
約3秒程度の加速で時速115km程度まで加速して急減速する間、ラウリーは叫びっぱなしだった。
「まぁこんな感じの加速が出来る車だけど、満足してもらえたか?」
「…寿命が縮むかと思ったわい。でもすごいのぉ~こんなのがあったら楽しそうじゃのぉ…」
「そんな目で見るな。これは領主のヨーセフさんに譲渡する予定になってるの」
「じゃぁ次に出せる車を見つけたらわしに売ってくれるか?」
「そこらは領軍と領主におねだりして勝手にそっちで話し合ってくれ。俺にはたぶん決定権とか無いから」
その後EVビークルの加速を見た領軍の兵士たちが加速を経験したいと大騒ぎになり、気づいたらバッテリーの残量が5%を切っていた。
「エネルギー切れだから今日はもう動かせないの!だからほら、みんな解散しろってば!」
バッテリーの表示がエンプティーを示して充電を促す表示が出ても乗りたい連中がまだたくさんいたため、だましだまし走らせていたら、とうとう最後には動かなくなってしまった。インパネ周辺の表示はまだ点いているので、システム的にはまだ動いているが動力に回す電力が無い状態の様だ。
しょうがないので兵士数人に後ろから押してもらって、兵舎の前で見ていたラウリー達の近くまで移動させ、コンテナの中から引っ張り出してきた太陽電池モジュールと充電ユニットを繋げる作業をしていると、ラウリーが何度か手を広げたり握ったりしていたかと思えば、広げた手の指の上に放電でもしている様な音と共に光を放ち始めた。
「のぉマサル殿、これがこの車を動かす燃料になるのか?一応さっきからそのEVビークルと言うておった車の中で動いておった何かのイメージを作ってみたんじゃが」
昔何度か見た事のあるプラズマボールの放電イメージを感じさせる様な青白い光を放つラウリーの指の先からはそこそこ触れたら痛そうな音がしている。
「普通電気って地面に向かって落ちるんだけど、なんでラウリー師匠のそれは空間に広がって拡散する様な見え方をしてるんだ?」
「地面に向かって落ちる…ふむ…。 今ワシがここで空に向かって放出しておるのは、自らの体に向かって入り込みそうなのを魔素の壁で防いでおるからじゃ。それが無ければワシの体を通って、もしかしたら足元にでも向かうのかもしれぬ」
ラウリーの説明を聞く限り電気を放出している様に聞こえるが、これがはたして充電できる規格に合うのかどうかは分からないが…
「とりあえずラウリー師匠が出している電気が充電に使えるかどうかを確認しないとそのままバッテリーにぶち込んだりしたら爆発するかもしれないのでちょっと何か確認できるものが無いか見てくる」
マサルがそう言ってコンテナに行き、少しの間何かを動かすような事をしていたが、何か小さな箱状のものを持って出てきた。
「テスターがあったのでとりあえずこれで電流と電圧を確認してみよう」
どうもこのテスターはこの車で使用する規格に合わせたものであったらしく、400V~1000Vの辺りをグリーンバーで表示してある。おそらく電圧はこの範囲であれば充電ユニットが扱える電力になるのだろう。そして電流に関しては100A~400Aがグリーンバー表記になっているのでこの範囲であればいけそう?
「少しばかり不安ではあるが、とりあえずラウリー師匠、この端子の端っこの光ってる辺りを片手で握って電気を流してみてくれ」
電圧を測るモードにしてもう片方を地面に埋めた鉄の棒に繋げて放電してもらったら、何度か出力を上げてもらった辺りで400Vを超えた数値まで針が動いた。
「電流を測るのは…確か、電気が流れる回路の途中にテスターを入れる必要があったはず?…ラウリー師匠、今の電圧を限界として流れる量を少ない状態で放出とか出来るか?」
「そのさっきから言っておる電圧とか電流の意味がよく分からんのじゃが?」
電流と電圧の違い…確かどっちかが川で言う所の流れる速さで、どっちかが川の断面積みたいな話を聞いた事があったが…どっちだったかな?
「さっき調節した時に変えたのが電圧で、それとは違う量か速度の余った方が電流だと…思う?」
「その言い方からもしかして、マサル殿は詳しく知らんのか?」
「仕事でそっち系の勉強とかしてない奴の知識って大体こんなものだぞ。あっちの世界では詳しく知らなくても作ってあるものが規格で合ってるなら使えるし、違ってたら規格が違うって表示する様な自動判断装置が組み込まれているのが普通なんでね」
「なんともはや…何も知らんでも勝手に間違いを確認してくれるような装置が付いていて当然か。とんでもない世界じゃのぉ。まぁ今の説明で流れる速さが電圧の様じゃ。その事から、流れる量が電流を意味する様じゃの。なんとか調節してみよう」
ラウリーがそう言って数度測りなおしたら、針が100Aを超えた。
「ラウリー師匠、今の電気の発電量をどれぐらい維持できる?」
「それほど長くは維持できんぞ。出来て…そうじゃのぉ…ここに来てから今までぐらい…いや、もうチョイ放出出来るかもしれんか?」
ここに来て今まで…1時間程度か?
「とりあえず今のラウリー師匠の発電量でどこまでバッテリーに電気が溜められるか確認してみるか」
一応の目途だけでも確認しておけば、それ以降で魔道具みたいな何かで電気を作れるかもしれないって事になるのを期待して充電してみたところ、ラウリーが倒れる限界まで放電させて24%ほどまで回復した。
「ワシ…もう…無理…」
そんな言葉を残して軽い音と共に倒れたラウリーであった。
ひとまず24%まで蓄電容量が回復したのはいいが、これを使ってしまってはバッテリーの消耗が早まるだけなので、そのまま太陽電池モジュールを日のよく当たる辺りに設置して充電する事にした。
この太陽電池モジュールってかなり持ち運びしやすい構造になっていて、一つの台車に全てが収まるように設計されている。それとなんとなく見栄えを重視した設計意図を感じるというか…それに使っている素材がメッキ処理されていてビッカビカな感じなのがそこそこ無駄な感じがする。そもそもこの手の太陽電池モジュールは持ち運ぶことを想定してないはずなのに、それが出来る構造ってのが意味不明…これってもしかして、展示する為に作られてるのだろうか。
まぁどんな意図があるとしても、このモジュール一式を運べるようにすれば行く先々で充電する事も可能だし、ラウリーほどの電気を作れる人材を確保するのが難しいとしても、20%程度でも充電できる人を確保すれば、休憩しつつでもそこそこ早く移動できるって事になる。とりあえずハッチバックのドアを取り外すなどの処置が必要かもしれないが、太陽電池モジュールを車に乗せて移動する事も可能かもしれない。
ラウリーのおかげで魔法を使って充電なんて裏技まで手に入れたEVビークルの価値はかなり高くなったと思ってよさそうだな。後でマリアにEV車両を探す様にお願いしておこう。ラウリーも欲しがってたし。
その後昼飯を屋台で確保して時間を潰しながら充電具合を確かめていると、大体半日程度の充電で24%から73%ぐらいまで充電できたので、天気の良い日であれば、朝から1日充電すればほぼ満タンになる事が分かった。
それとEV車両をヨーセフさんに譲渡する話だが、自ら運転したいヨーセフさんの為に俺が助手席に乗って指導する事になってしまった。
一応対向車両などが全くいない世界なので自損事故を起こさない限り車が大破することはないと思うが、ヨーセフさんがアクセルとブレーキの踏む感覚に慣れるまで何回か『俺、もしかしたら死ぬんじゃないかな?』なんて感想を持ってしまった。
一応譲渡と指導まで終えてキーを渡した時、全身に強い消耗を覚えた。
そして…そんなことをしている間に領軍とラウリーに依頼されたマリアが見つけたEV車両とガソリンエンジンで動く車と軽油で動く車両を使う連中に運転を教える仕事が追加された俺は少しの間、魔力タンクとして付き合わされたり指導員として命を運転手に預けるような事をさせられ、気付いたら5kgほど痩せていた。
俺は今、自動車学校の教員の人達を尊敬する思いがふつふつと湧くのを抑えられない。あの時悲鳴をあげさせたもう名前を思い出す事も出来ないおっさん教員よ。あんたはすごかったんだな。
そんなどうでもいい事を考えつつ10日ほどが過ぎた頃、ラウリーの為に引っ張り出したEV車両を使って王都を経由して石油の湧く地のオウラン地方の村まで行く事になった。人員は俺とラウリーとハバキとシルビィとマリア。ついでに侍女のラムとファイーナさんといった面々。
人数からなんとなく想像できると思うが、ラウリーに譲渡された車はドイツ製フォルク〇ワーゲンのEVミニバン。8人乗りのそこそこでかい車両で、大きさがラウリーの琴線に触れたらしく、ずいぶんとゴネて領軍から譲り受けたらしい。
この爺さん本当に魔法協会の長なんだろうか?
俺はラウリー師匠がハバキに爺さん呼ばわりされている理由をなんとなく察しつつ、3日後に移動を開始する為の準備を進めていた。
エンジンを切って先に出たラウリーとハバキを追って領軍の駐屯地へ行くと、セルビスとラルクアがコンテナの前で待っていた。
「さっきラウリー氏とハバキ隊長が来たけど、確か予定ではラウリー氏はそのまま船で休むはずだったよな?ハバキ隊長とマサルがここに来るはずだったが何か問題でもあったのか?」
「あぁ、その予定だったが、ちょっと予定が変わったんだ」
コンテナをめぐるあれこれをセルビスに説明していたら、ハバキが近付いて来た。
「とりあえずマサルの魔素の量がとんでもない感じになってるみたいでな。これから先のコンテナの搬送に関して一回練り直しになるから、領主の所に今から行って話をしてくる。ここは頼むな」
ハバキはそう言って、そのまま領主館に向かって飛んで行った。
「コンテナの移送計画を練り直す?燃料の話も一気に動き出しそうだし、マサルはいい仕事が始められそうだな」
「あぁ、大黒丸で運送会社でも始められそうだ」
「マサル殿!そろそろこの車を動かしてくれんかぁ?」
ラウリーがコンテナの中から大声で聞いてきた。
「あの爺さん、本当に400歳超えてんの?」
「? あぁハバキ隊長にでも聞いたのか。確かそのはずだぞ。ファウストの街の最初の入植者としてその当時の領主と一緒に来てからずっと魔法管理組合の長をやってるはずだ」
「なんか気の遠くなるような話だな」
「まぁでも寿命を言うなら俺もラルクアもマサルもマリアも似たような年月生きられるんだから、これから長い付き合いになりそうだな」
セルビスに肩を手の甲で軽く叩かれ、歩いてコンテナに向かうと、目をキラキラさせたラウリーがEVビークルの周りを歩き回って隅々まで見ていた。
「ラウリー師匠、これからタイヤを付けてコンテナから出すので少し待っててください」
タイヤはコンテナを送る前にセルビスとラルクアが救命ボートで運び出してくれていたので、あとはジャッキアップでもしてレンチで組付ければいいだけ。
コンテナの中に置いてあった油圧ジャッキを使って一か所ずつタイヤを装着していくと少し背の高いSUVタイプの車両が出来上がった。
「思った以上に走破性の高そうな車両だったな。もっとスポーツカーみたいなスタイルの車両になるかと思ってた」
「地面に下の部分を当ててる姿とはだいぶ違う感じになったな」
おそらくイタリアのランボ〇ギーニの新しいEV車両だと思うが…こんなの売り出してたか?
記憶にない車両が現れて少しばかり悩んだマサルだが、実はこの車両、アメリカのモーターショーに出品される予定で運ばれていた、ワンオフ車両であった。
とりあえずキーをコンテナから探し出し、車のキーエントリーに挿入後、インパネに光が灯り、メーター類が現在の状態を表示し始める。
「なんかメーターが時速370kmとかまであるんだけど本気か?」
「その速度はどんな速さになるんじゃ?」
俺が運転席に座ったらドアの開け方を見ていて覚えたのかラウリーが勝手に助手席に乗り込んで来た。
「あー370kmってのは…確か飛天翔族の最高速度が40km/hぐらいだったから、その9倍ぐらい?」
「9倍…それは…えっ?こやつは空を飛ぶのか?この間聞いた話では走ると言っておったが?」
「道路がどこまでも真っすぐで、段差なんかがまったく無い場所であれば、それぐらいの速度で走れるってだけで、ここらではたぶんその半分の速度も出せないと思うぞ」
とりあえずバッテリーは半分ぐらいまでしか減ってないみたいなので、動かしてみるか。EVとか運転した事無いけど…
マサルがパーキングブレーキを解除してそっとアクセルを踏んだらモーターの回転が速くなる時特有の、何かが昇りつめる様な音と共に、車両がゆっくり動き出した。
「ほぉ…なんとも乗り心地の良い車両じゃのぉ…ここではもっと早く走らせられんのか?」
領軍の駐屯地の敷地は直線で200m程度は確保できそうだけど、ここでmax加速とかしてもいいのだろうか?
地面が土ででこぼこがそこそこあるが、それなりに平坦。
とりあえず腐ってもランボル〇ーニ、時速100kmぐらいは出せるか?
ラウリーを助手席で待たせて一回外に出てセルビスに敷地の広場全域を使って加速してみる話をして車両に戻り敷地の端まで車を移動させる。
アクセルを半分程度踏み込んだだけでDSCが反応してこの路面での最高効率状態での加速がイメージ出来た。
「たぶんここの広さだと時速100km以上は出ないと思うから、そのつもりで楽しんでくれ」
「分かったから早うせえ」
たぶんラウリーはぶったまげるだろうな。小便漏らさなければいいが♪
俺は見ている連中も含めて全員が驚く様を想像しつつ、アクセルをめいっぱい踏み込んだ。
「うほおぉ~~~~!!!!おあぁぁぁぁぁああ!!」
約3秒程度の加速で時速115km程度まで加速して急減速する間、ラウリーは叫びっぱなしだった。
「まぁこんな感じの加速が出来る車だけど、満足してもらえたか?」
「…寿命が縮むかと思ったわい。でもすごいのぉ~こんなのがあったら楽しそうじゃのぉ…」
「そんな目で見るな。これは領主のヨーセフさんに譲渡する予定になってるの」
「じゃぁ次に出せる車を見つけたらわしに売ってくれるか?」
「そこらは領軍と領主におねだりして勝手にそっちで話し合ってくれ。俺にはたぶん決定権とか無いから」
その後EVビークルの加速を見た領軍の兵士たちが加速を経験したいと大騒ぎになり、気づいたらバッテリーの残量が5%を切っていた。
「エネルギー切れだから今日はもう動かせないの!だからほら、みんな解散しろってば!」
バッテリーの表示がエンプティーを示して充電を促す表示が出ても乗りたい連中がまだたくさんいたため、だましだまし走らせていたら、とうとう最後には動かなくなってしまった。インパネ周辺の表示はまだ点いているので、システム的にはまだ動いているが動力に回す電力が無い状態の様だ。
しょうがないので兵士数人に後ろから押してもらって、兵舎の前で見ていたラウリー達の近くまで移動させ、コンテナの中から引っ張り出してきた太陽電池モジュールと充電ユニットを繋げる作業をしていると、ラウリーが何度か手を広げたり握ったりしていたかと思えば、広げた手の指の上に放電でもしている様な音と共に光を放ち始めた。
「のぉマサル殿、これがこの車を動かす燃料になるのか?一応さっきからそのEVビークルと言うておった車の中で動いておった何かのイメージを作ってみたんじゃが」
昔何度か見た事のあるプラズマボールの放電イメージを感じさせる様な青白い光を放つラウリーの指の先からはそこそこ触れたら痛そうな音がしている。
「普通電気って地面に向かって落ちるんだけど、なんでラウリー師匠のそれは空間に広がって拡散する様な見え方をしてるんだ?」
「地面に向かって落ちる…ふむ…。 今ワシがここで空に向かって放出しておるのは、自らの体に向かって入り込みそうなのを魔素の壁で防いでおるからじゃ。それが無ければワシの体を通って、もしかしたら足元にでも向かうのかもしれぬ」
ラウリーの説明を聞く限り電気を放出している様に聞こえるが、これがはたして充電できる規格に合うのかどうかは分からないが…
「とりあえずラウリー師匠が出している電気が充電に使えるかどうかを確認しないとそのままバッテリーにぶち込んだりしたら爆発するかもしれないのでちょっと何か確認できるものが無いか見てくる」
マサルがそう言ってコンテナに行き、少しの間何かを動かすような事をしていたが、何か小さな箱状のものを持って出てきた。
「テスターがあったのでとりあえずこれで電流と電圧を確認してみよう」
どうもこのテスターはこの車で使用する規格に合わせたものであったらしく、400V~1000Vの辺りをグリーンバーで表示してある。おそらく電圧はこの範囲であれば充電ユニットが扱える電力になるのだろう。そして電流に関しては100A~400Aがグリーンバー表記になっているのでこの範囲であればいけそう?
「少しばかり不安ではあるが、とりあえずラウリー師匠、この端子の端っこの光ってる辺りを片手で握って電気を流してみてくれ」
電圧を測るモードにしてもう片方を地面に埋めた鉄の棒に繋げて放電してもらったら、何度か出力を上げてもらった辺りで400Vを超えた数値まで針が動いた。
「電流を測るのは…確か、電気が流れる回路の途中にテスターを入れる必要があったはず?…ラウリー師匠、今の電圧を限界として流れる量を少ない状態で放出とか出来るか?」
「そのさっきから言っておる電圧とか電流の意味がよく分からんのじゃが?」
電流と電圧の違い…確かどっちかが川で言う所の流れる速さで、どっちかが川の断面積みたいな話を聞いた事があったが…どっちだったかな?
「さっき調節した時に変えたのが電圧で、それとは違う量か速度の余った方が電流だと…思う?」
「その言い方からもしかして、マサル殿は詳しく知らんのか?」
「仕事でそっち系の勉強とかしてない奴の知識って大体こんなものだぞ。あっちの世界では詳しく知らなくても作ってあるものが規格で合ってるなら使えるし、違ってたら規格が違うって表示する様な自動判断装置が組み込まれているのが普通なんでね」
「なんともはや…何も知らんでも勝手に間違いを確認してくれるような装置が付いていて当然か。とんでもない世界じゃのぉ。まぁ今の説明で流れる速さが電圧の様じゃ。その事から、流れる量が電流を意味する様じゃの。なんとか調節してみよう」
ラウリーがそう言って数度測りなおしたら、針が100Aを超えた。
「ラウリー師匠、今の電気の発電量をどれぐらい維持できる?」
「それほど長くは維持できんぞ。出来て…そうじゃのぉ…ここに来てから今までぐらい…いや、もうチョイ放出出来るかもしれんか?」
ここに来て今まで…1時間程度か?
「とりあえず今のラウリー師匠の発電量でどこまでバッテリーに電気が溜められるか確認してみるか」
一応の目途だけでも確認しておけば、それ以降で魔道具みたいな何かで電気を作れるかもしれないって事になるのを期待して充電してみたところ、ラウリーが倒れる限界まで放電させて24%ほどまで回復した。
「ワシ…もう…無理…」
そんな言葉を残して軽い音と共に倒れたラウリーであった。
ひとまず24%まで蓄電容量が回復したのはいいが、これを使ってしまってはバッテリーの消耗が早まるだけなので、そのまま太陽電池モジュールを日のよく当たる辺りに設置して充電する事にした。
この太陽電池モジュールってかなり持ち運びしやすい構造になっていて、一つの台車に全てが収まるように設計されている。それとなんとなく見栄えを重視した設計意図を感じるというか…それに使っている素材がメッキ処理されていてビッカビカな感じなのがそこそこ無駄な感じがする。そもそもこの手の太陽電池モジュールは持ち運ぶことを想定してないはずなのに、それが出来る構造ってのが意味不明…これってもしかして、展示する為に作られてるのだろうか。
まぁどんな意図があるとしても、このモジュール一式を運べるようにすれば行く先々で充電する事も可能だし、ラウリーほどの電気を作れる人材を確保するのが難しいとしても、20%程度でも充電できる人を確保すれば、休憩しつつでもそこそこ早く移動できるって事になる。とりあえずハッチバックのドアを取り外すなどの処置が必要かもしれないが、太陽電池モジュールを車に乗せて移動する事も可能かもしれない。
ラウリーのおかげで魔法を使って充電なんて裏技まで手に入れたEVビークルの価値はかなり高くなったと思ってよさそうだな。後でマリアにEV車両を探す様にお願いしておこう。ラウリーも欲しがってたし。
その後昼飯を屋台で確保して時間を潰しながら充電具合を確かめていると、大体半日程度の充電で24%から73%ぐらいまで充電できたので、天気の良い日であれば、朝から1日充電すればほぼ満タンになる事が分かった。
それとEV車両をヨーセフさんに譲渡する話だが、自ら運転したいヨーセフさんの為に俺が助手席に乗って指導する事になってしまった。
一応対向車両などが全くいない世界なので自損事故を起こさない限り車が大破することはないと思うが、ヨーセフさんがアクセルとブレーキの踏む感覚に慣れるまで何回か『俺、もしかしたら死ぬんじゃないかな?』なんて感想を持ってしまった。
一応譲渡と指導まで終えてキーを渡した時、全身に強い消耗を覚えた。
そして…そんなことをしている間に領軍とラウリーに依頼されたマリアが見つけたEV車両とガソリンエンジンで動く車と軽油で動く車両を使う連中に運転を教える仕事が追加された俺は少しの間、魔力タンクとして付き合わされたり指導員として命を運転手に預けるような事をさせられ、気付いたら5kgほど痩せていた。
俺は今、自動車学校の教員の人達を尊敬する思いがふつふつと湧くのを抑えられない。あの時悲鳴をあげさせたもう名前を思い出す事も出来ないおっさん教員よ。あんたはすごかったんだな。
そんなどうでもいい事を考えつつ10日ほどが過ぎた頃、ラウリーの為に引っ張り出したEV車両を使って王都を経由して石油の湧く地のオウラン地方の村まで行く事になった。人員は俺とラウリーとハバキとシルビィとマリア。ついでに侍女のラムとファイーナさんといった面々。
人数からなんとなく想像できると思うが、ラウリーに譲渡された車はドイツ製フォルク〇ワーゲンのEVミニバン。8人乗りのそこそこでかい車両で、大きさがラウリーの琴線に触れたらしく、ずいぶんとゴネて領軍から譲り受けたらしい。
この爺さん本当に魔法協会の長なんだろうか?
俺はラウリー師匠がハバキに爺さん呼ばわりされている理由をなんとなく察しつつ、3日後に移動を開始する為の準備を進めていた。
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